6.新商品研究開発チーム
ハルたちと町の整備を進める一方で、カタリーヌはもう一つの作戦も同時に進めていた。
それは花を利用した新事業計画である。
「この人がカタリーヌ。この町の町長」
「カタリーヌ・ロッズ・ハイリススフィアです。よろしくお願いします」
「そしてこちらはわたくしたちの仲間、アラーネとプラムですわ」
「アラーネです。カタリーヌさんよろしくお願いします」
「プラムなのじゃ。カタリーヌよ、よろしく頼む」
屋敷へやってきたルナたちから仲間の紹介を受けるカタリーヌ。
カタリーヌはルージュやハルの仲間ということでまったく気にしていないのがだ、偉そうな態度をとったプラムにミラノが気色ばむ。
先日のハルといい、このプラムといい、やはり冒険者は粗野で野蛮だ。
カタリーヌ様が貴族位をお持ちだということを、本当に理解しているのか?
「口を挟むことをお許しください。この方はどう見ても、人ではないようなのですが?」
カタリーヌを守るように一歩前に立ち、鋭い眼光をプラムに向けるミラノ。
その視線を堂々と受け、プラムは腰に手を当てる。
「当然じゃ。我は悪魔なのじゃ」
「あ、悪魔!?」
「アーも人じゃないよ。魔人っていうみたい」
「あ、あなたもですか!?」
堂々と正体を明かされ戸惑うミラノ。
慌てて隠し持つナイフに手を伸ばすも、
「ミラノ、少し落ち着いてください。この方々はヒカリエのお仲間ですよ」
そんなミラノをカタリーヌは下がらせた。
ミラノはとてもいい人なのですが、たまに見境がなくなるのが困りものです。
カタリーヌはそう思いつつ内心でため息を吐いた。
ミラノが落ち着きを取り戻したところでマリンが話を始める。
「さて、わたくしたちは新商品の開発チームです。ハルが研究開発に適した人材をこちらへ回してくださいました。わたくしとルナはこの町の工房に知人が多くおり、人材の確保や材料の調達において力になれると思います。アラーネは虫とコミュニケーションが取れるので花の研究にはもってこいです」
マリンの説明にうんうんと頷くプラムだったが、自分の名前が呼ばれなかったことに首をかしげる。
「マリンよ、我は?」
「ポンコツは雑用ですわ」
「ざ、雑用……っ」
冷たく言い放たれたマリンの言葉に、頬を染めブルリと身を震わせるプラム。
カタリーヌとミラノはプラムの様子に首をかしげているが、マリンは構わず話を続けた。
「まずはわたくしたちの知人の中から、特に研究好きな方をスカウトに参りましょう。町長が進める新事業と聞けば、皆様も喜んで参加してくださるでしょう」
――
「お花を使った商品の研究? 面白そうね! 私も協力するわ! キャサリンも参加するでしょ?」
「はい。ソアラさんが参加するなら」
「ありがとうソアラ、キャサリン。心強い」
町内でも数少ないルナの知り合いである鑑定士の女性は、研究内容を聞いて飛びついた。
「やっぱりお花を使った商品っていうのがテンション上がるわよね!」
「ええ。というか、町のお花がまだ何にも使われていないことに驚いたわ」
スカウトに応じた他の女性たちも大はしゃぎである。
同年代の女性が多く集まり、カタリーヌもワクワクを隠せない。
年の近い女性とお花についてお話ができるなんて夢のようです。
顔がニヤけるのを必死で隠しつつ、
「工房はヒカリエのお店の近くです。参りましょう」
用意した工房へとみんなを案内するカタリーヌであった。
――
工房に到着した一行は、ミラノが用意したお茶を飲みながらさっそく会議を行った。
「簡単に作れそうなのは……」
そう言ってカタリーヌは腕を組む。
ハルさんが言っていたのは香水という物でしたね。
どんな物なのでしょうか……
揮発性が高いと言っていましたが……
「ハルが言っていた香水という水も気になりますが、すぐに作ることができるのは花の香りの香油でしょう」
「まずは一つ完成させる」
マリンの意見にルナが賛成した。
特に反対意見も出ず、方向性が定まった。
「ヒマリやバーラの花は香りがいいですよ」
「分かります! 私もバーラの香りが好きなんですよ」
カタリーヌは自身が好きな花を列挙していく。
マリンがスカウトした最年少の少女、16歳のリュカもカタリーヌの意見に同意した。
「そのお花をアーに見せてくれれば、アーのお友達にお花を採ってきてもらえるよ」
「そんなこともできるのですか?」
「うん。アーには〈眷族支配〉っていうスキルがあるの。お花が好きな魔虫にお花探しをお願いできる」
驚くカタリーヌに、アラーネは胸を張ってそう答えた。
そうでした。
アラーネちゃんは蜘蛛の魔人でした。
魔虫を操る力もあるのですね。
カタリーヌはまだ小さなアラーネに感心しながら頷いた。
「なら、各々が好きな花を挙げていき、それらの花から研究を始めればいいのではないか? 全ての花が香油なるものに使えるとは限らんじゃろ?」
何でもない顔をして、珍しく良い意見を出したプラム。
そんな彼女に、
「プラムにしてはいい案ですわ」と、うふふと笑いながら棘のある言い方をするマリン。
「珍しい」と、素で言うルナ。
「たまに鋭いよね」と、プラムのツボを心得ている教育係のアラーネ。
「うう……」
ヒカリエメンバーからのいじり、プラムはまたしても頬を染め、モジモジとし始めた。
プラムさんはどうしたのでしょう。
お顔が赤いようですが、具合でも悪いのでしょうか。
カタリーヌは首をかしげてプラムを見守るが、ミラノを含めた他のメンバーは何かを察したようで、残念なものでも見るかのようにプラムを見つめていた。
「と、とりあえず、私の知り合いにオリーブ油の販売に携わっている方がいますので、その方から油の生成方法などを入手して参ります」
スカウト組最年長、24歳のシャノーラがコホンと咳ばらいをしてそう言った。
「必要な道具が確定したら私たちの出番だね」
「はい、鑑定屋の私たちなら、金属加工が得意な工房につてがありますから」
ルナがスカウトした鑑定士のソアラとその助手のキャサリンも頷き合ってそう言った。
「では、シャノーラさんが油の生成方法を調べている間に、わたくしたちは好きな花をアラーネに渡しておきましょう。油の生成方法が分かり、必要な道具が判明し次第、ソアラさん方に道具の調達をお願い致します」
マリンが今後の動きを確認していく。
それに一同は頷きながら同意した。
町の整備も急務ですが、こちらの研究も頑張ります!
カタリーヌは内心でグッと拳を握り気合を入れる。
「それではみなさん! 頑張りましょう!」
「はい!」
カタリーヌの気合の込められた言葉に、研究チームのメンバーは嬉しそうに返事をしたのだった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「この後一体どうなるのっ……!?」
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