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5.ハルジオンの現状

「お久しぶりです、ルージュさん」

「カタリーヌちゃんお久しぶり。今日はヨロシクね」


ヒカリエとの会議から数日。

改めてヒカリエのメンバーがカタリーヌの屋敷へとやってきた。

ルージュの他にはハルとリリィ。

そして……


「お初にお目にかかります、ハイリススフィア様。エリーと申します。以後お見知りおきを」

「カタリーヌです。どうかルージュさんのように気軽に接してください」


気さくな調子のルージュとは正反対に、丁寧に挨拶するエリー。


それはまるで本物の貴族のような優雅な所作であった。


そんなエリーにヒカリエの一同が驚いていると、


「エリーさん……どこかでお会いしましたでしょうか?」


と、エリーの顔を見ながらカタリーヌは首をかしげた。


「わ、私はギルドで働いていたことがあるので、その時にでもお会いしたのでしょう」

「そうですか……きっとそうですわね。今日はよろしくお願いします」


そう言いながらも、目を泳がせているエリーを見つめ、カタリーヌは自らの記憶を探る。


このプラチナブルーの綺麗な髪……やっぱり見覚えがあるわ。

最近じゃない、もっと昔……。


「さぁハルさん、目的地へ向かいましょう!」


目を泳がせていたエリーは慌てて話題を変える。

自分への注目を逸らすかのように。


先の会議にて、やるべきことが二つ上がった。

一つは花を使った新事業。

そしてもう一つは、町の治安改善である。


彼ら治安改善班の本日の予定は町の状況把握。


「そうだな、まずはカタリーヌさん本人の目で、町の現状をしっかり見た方がいい」

「ハルくん、ちょっとカタリーヌちゃんに厳しすぎるんじゃ……」


相変わらず厳し言い方をするハルを諭そうとするルージュ。

しかし、カタリーヌはむしろ頼もしさを感じていた。


この厳しさは私のためだわ。

なら私も、ハルさんの期待に応えないと。


「ルージュさん、大丈夫です。ハルさん、よろしくお願いします」


カタリーヌはグッと拳を握り、お嬢様らしからぬ仕草でハルに笑って答えた。


「こちらへどうぞ。馬車を準備しておりますので」


ミラノが馬車へハルたちを招こうとするが、


「いや、馬車は使いません」

「……なぜですか? まさかカタリーヌ様に歩けと?」


ミラノは先日のカタリーヌに対するハルの言動を未だに根に持っており、ハルが何か発言する度にこうして気色ばんでいた。


怒ったミラノがズイッとハルの前に顔を近づけた。


本人は威嚇行為のつもりだが、ハルは違う意味で危機感を抱いている。

ハルは表面上は動じずに、を意識しつつ答えた。


「お、俺たちとカタリーヌさんが、一緒に行動しているところを、なるべく多くの人に見てもらった方がいいんですよ」


ハルの上擦った言葉に、確かにと頷くカタリーヌ。


そうでした。

あくまで私が主導で進めているということを、町の皆さんに見てもらわないといけません。

やっぱりハルさんは頼りになりますね。


結局、カタリーヌたちは徒歩で町の南地区を見て回ることになった。


ちなみに、美人に急接近され動揺し、情けない姿を見せたと内心で落ち込むハルは、カタリーヌからの評価が上がったことなど知る由もないのであった。



――



中央区の門を抜け、南地区を進む。

町の端へ進むにつれ、明らかに雰囲気が変わっていった。


あちらこちらに放置されているゴミ。

当たり前のように空倉庫を使用している者。

朝だというのに呑んだくれている者。

喧嘩でもあったのか、半壊している建物まである。


「そ、そんな……」


ハルジオンの現状を目の当たりにしたカタリーヌは、ショックのあまり口元を手で押さえ、目には涙を浮かべている。


「久しぶりに来たけど、前よりもかなり酷くなってるな」と、周囲を見回して言うハル。

「最後に来たのはひと月くらい前かな?」と、腕を組んで記憶を探るリリィ。

「むむむ、当時も酷かったですが……まさかここまでとは」と、眉根を寄せるエリー。

「最初はこんなんじゃなかったのよねー。人が増えるにつれて徐々に風紀が乱れていったのよ」と、困り顔のルージュ。


ショックで固まるカタリーヌだったが、すぐに気持ちを切り替える。


これは本当に急いで対策をする必要があります。

くよくよしている場合ではありません。


カタリーヌは自らを奮い立たせると、


「早急に騎士の方や警備団と打ち合わせをして、この地区の警備を強化します」


力強くそう宣言した。


「お? ヒカリエの。今日はどうしたんだ? 君らも迷宮(ダンジョン)に挑戦か?」


そんなカタリーヌたちの元へ、見知らぬ冒険者風の男が近寄ってくる。


「バーキンスさんおはようございます。今日は町長の手伝いです」

「町長? この可愛らしい嬢ちゃんが? それにしても、流石は『女(たら)しのハル』だ。町長まで(たら)し込んだのか?」

「な、何ですかその通り名!?」


どうやらヒカリエの常連客だったようだ。

狼狽えるハルを他所に、リリィたちはちょうどいいと言ってその男から色々と聞くことにした。


「この辺りには冒険者向けの施設が少なすぎるんだ」


流石は粗野な冒険者。

男は町長の前だというのに愚痴を言い始めた。


「宿を取ろうにも、宿屋があるのは北側ばかりだろ? 道具屋や鍛冶屋なんかも。ギルドまでそっちにあるんだ。不便でしょうがねーよ。重い腰を上げて北側に行ってみりゃ、宿屋が少なすぎてどこも満室……最近はみんな面倒臭がってそこら辺で休んでるよ」


ミラノがその男の荒々しい言動に憤慨しかけたが、ミラノ以外のその場の者は、なるほどと頷きながら真剣に男の話を聞いていた。


確かにこの方の言う通りです。

ここから北地区へ向かうには、中央区を通過するか迂回して遠回りする必要があります。

外から来た彼らのような冒険者は、おそらく門番に止められてしまうので、中央区を通過できないのでしょう。

この方の意見を参考にして、この南地区にも冒険者向けの施設を用意した方が良さそうです。


そう納得したカタリーヌは男に丁寧に頭を下げた。


「貴重なご意見、ありがとうございます。とても参考になりました。この辺りにも、宿や冒険者向けの施設を用意致しますわ」

「いいっていいって、頭上げな。素直な嬢ちゃんじゃねーか。ハルが羨ましいぜ、ったく。おっ、それならついでに、ギルドもこっちに移転できねーか?」


調子に乗った男がさらに注文をつける。


「ギルドも……ですか?」


そもそもギルドの移転は可能なのでしょうか?

ギルドは町が管理するものではないので、私の権限ではなんとも……


困った顔になるカタリーヌ。

それを察したハルたちが、すかさず援護に入る。


「いいんじゃないかな?」と、簡単に言うハル。

「いっそこの地区を冒険者地区にしちゃおうよ」と、明るい調子で言うリリィ。

「以前、支部長も引っ越しを検討していたはずです」と、頷くエリー。

「今度支部長さんに会う時に聞いてみましょう」と、両手を胸の前で合わせて笑うルージュ。


どうやら問題なさそうです。


四人の援護に頷きつつ、カタリーヌはニッコリと微笑んだ。


「分かりました。後日、ギルドと協議してみましょう」

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「この後一体どうなるのっ……!?」


と思ったら、


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


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