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1.来訪者

迷宮(ダンジョン)が出現して二ヶ月。

ハルジオンは多くの人で賑わっていた。


迷宮(ダンジョン)を攻略し、一攫千金を目指す冒険者。

そんな冒険者相手に商売をする商人たち。


噂は広まり、今では他領からやってくる人も少なくない。


「店は相変わらず忙しくて大変だけど、迷宮(ダンジョン)のおかげでルージュさんが言ってた再生計画は達成だろ」


迷宮(ダンジョン)の裏ボスだの、美人だらけのカフェだのといろんな要因はあるが、俺たちヒカリエの知名度は鰻上りだ。

今やハルジオンで俺たちを知らない人はいないだろう。


つまり、半年前にルージュさんが言っていた『ヒカリエ再生計画』の第二段階、人気を集めるという目標は達成したことになる。


俺たちは忙しくも、のんびりとした心持ちで日々を過ごしていた。


とは言うものの、俺も冒険者の端くれ。

訓練は欠かしてないし、何度か依頼(クエスト)にも行っている。


カオス・スカル戦で使った魔法剣。


原理は簡単で、自分のマナを剣に移し、そのマナを魔力へ変換、魔法を発動という流れ。

遠隔で魔法を発動させる手順と同じだ。


そんな俺の新しい必殺技に、チーム月光(ムーンライト)のメンバーは驚いていたのだが、


「ハルスカリバーが魔道具ってのは知ってたけど、そんな効果だったんだね」

「え? いや違うぞ? これは……」

「間の抜けたハルとは違い、ハルスカリバーは有能ですわ」

「おい、だから違うって。というか、俺の剣をその名前で呼ぶなよ」


外ハネの赤毛が特徴の少女と桃髪の神官衣の美女が、口々に俺ではなく俺の持っている剣を誉めてくる。


「ハルはすごい」


眠たげな目で俺をじっと見てくる黒髪の美少女だけは、剣ではなく俺を誉めてくれた。


「俺を誉めてくれたのはお前だけだよ、ありがとうルナ。リリィにマリン、お前らは後で覚えとけよ」


そんなやり取りがあったが、どうにも剣に魔法を纏わせるということは難しいらしい。

ルナもそういった効果のある魔道具以外では見たことがないと言っていた。


階級(ランク)冒険者のお言葉だ。

きっとそうなんだろう。


せっかく魔法剣を覚えたことだし、剣の扱いについても学びたい。

頼みのルナ先生に頼んでみたものの、


「私の剣は我流。だから教えられない」


と、静かに断られてしまった。


以前ナーズの森で会った冒険者パーティー『トライアス』のリーダーであるルディッツから剣を教わろうとも思っていたのだが、今のところハルジオンに来たという話は聞かない。


早く引っ越してきて欲しいものだ。



――



冒険者としての仕事はのんびりとやっている訳だが、屋敷での生活はそうもいかない。


現在の住人は俺を含めた七人。

ルナ、リリィ、マリン、プラム、アラーネ、エリー、そして俺だ。


男一人に対して女の子六人という、何とも恐ろしい男女割合だが、一癖も二癖もある仲間たちだ。

事故はあっても事件はない。


マリンが結構潔癖だったり、エリーが意外と家事ができないということが判明したり、色々と新しい発見もあり、それはそれで面白かった。


何はともあれ、共同生活自体は役割分担しつつ上手くやれていのだ。


一階の玄関ホールはくつろげる空間になっている。

その一角で、俺は魔法の本を読んだいた。

同じテーブルにはルナもいる。


ペラリとページがめくれる音がホール響く。

そんな静かな時間。

そこへ……


「そろそろ限界だよ! 冒険行こうよ冒険!」


やってきたリリィがテーブルをバンバンと叩きながら声を上げた。


「ですが、この町で有名になるという目標は達成しましたわ」


すぐ近くで休んでいたマリンが、若干面倒臭そうに言った。


このやりとりは既に何度か繰り返されている。

毎回相手をしてやるマリンは面倒見がいいというか、お姉さん気質なのかもしれない。


そんなマリンの言葉が不服だったようで、


「ハルはどう思うの!?」


リリィが仲間を求めるように、本を読む俺を覗き込むようにしながら聞いてきた。


「え、えっと……お、おれは、どど、どっちでも……」


チラッと視線を一巡させ、俺は本に顔を隠しながそう言った。


「ん? どうしたの?」と、首をかしげるリリィ。

「具合、悪い?」と、本から顔を上げるルナ。


そんな中、マリンがうふふと嬉しそうに笑う。


「あなた、わたくしたちの部屋着姿を見て戸惑っていますわね?」


共同生活がスタートした当初、俺は普段見ることのない仲間たちの部屋着姿にドキドキしてしまっていた。

しかしそれは時間の経過と、冬場でみんなが厚着だったことでなんとか乗り切ることができた。


だが、季節は巡り、春が訪れた。

暖かい陽気が続き、みんなの部屋着がどんどん薄着になっていくのだ。


正直、目のやり場に困る。


チラッと見える首筋や太もも。

同じ風呂を使っているはずなのに香る女の子の匂い。


俺の思春期童貞心(ピュアハート)は煩悩でいっぱいだ。


おかしい……どうしてこうなった?

こうならないためにルナの部屋を出たはずなのに。


マリンに内心を言い当てられてドギマギしていると、ルナがマリンに問う。


「マリン、男の人に肌を見せないんじゃなかった?」

「そ、そそ、そうだよ。いつもの服を着ろよ」

「嫌ですわ。自室でまであんな暑苦しい格好したくありませんもの。そもそも、今更この変態男から肌を隠したところで……」

「あー、ハルは変態だもんね」

「待て、ちょっと待て。何度も言うが、あれは俺は悪くないぞ? 俺も被害者だ。あれはあのポンコツ悪魔が俺の服に気付かなかったのがそもそもの……」


以前の風呂場で鉢合わせるという大事故を、未だに持ち出すマリンたち。


俺が変態の(そし)りを受けていると、玄関の扉がノックされる音がホールに響いた。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「この後一体どうなるのっ……!?」


と思ったら、


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