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間話3.悲惨なようで夢のような一日

「トイレと通路、浴場向かいの部屋は俺がやるよ。プラムは浴場を頼む……大丈夫か?」


心配そうに問うハル。

それに答えるのは、


「もちろんなのじゃ!」


いつものボンテージ衣装でも、マリン作のワンピースでもなく、汚れてもいい薄着姿のプラムであった。


本日の掃除当番はハルとプラム。

清掃場所は浴場のある東棟一階なのだが、


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」


突如その場所から悲鳴が上がった。


悲鳴の主はプラムである。

声は浴場から響き、慌ててハルが駆け付けた。


「プラム! どうした!? 何があっ……」


駆け付けたハルが目にしたもの。

それは、お湯を出す魔道具を暴発させ、全身ずぶ濡れになったプラムだった。


プラムが着ていた薄着はぴっちりと肌に張り付き、妖艶な肢体をあらわにしている。

下着をつけていなかったプラムのあられもない姿。


バタン!


そんなプラムを視界に収めるなり、ハルは鼻から血を吹き出して倒れてしまう。


「へっ!? ハ、ハル様!? ハル様ーーー!!!」


その後、生死を彷徨ったハルから、小一時間説教を受ける。


しかしプラムは、


はぁはぁ……

またハル様に体を見られてしまった……

下から上まで舐めるような視線……

うう……

わ、我の体は、ハル様のお眼鏡にかなっているのだろうか……

もし好みでなければ「掃除もできねぇポンコツには、そのエロい体を使って稼いでもらうしかねぇな」なんて言われてしまうのではないだろうか……

如何わしい店に突き出され、そこで名も知らぬ雄どもから……

あぁ……


反省のポーズのまま、頬を赤らめモジモジし始めたプラムを見て、ハルはため息をついたのだった。



――



「それと、それ……あとこれを」

「分かったのじゃ!」


パタパタと飛翔し、上段の棚へ本を並べていくプラム。


食堂の上階、二階の大部屋はルナの図書室となった。


大量の書籍を運びこんできたルナを見かけたプラムは、荷物運びや図書室の整理を手伝っていた。


「手伝ってくれて助かる。背の高い本棚を用意したのはいいけど、上の方は届かないから」


自由に空を飛ぶことのできるプラムの手伝いに、大変満足するルナ。


「これくらい朝飯前なのじゃ! ……ん?」


ハルのように実害を(こうむ)っていないためか、ルナはあろうことかプラムから目を離してしまう。


プラムは背の高い本棚のさらに上、下からは決して見えない位置に木箱のようなものを発見した。


「これは何じゃ?」


まるで隠されているかのような配置に興味をそそられたプラムは、すぐさまその木箱を開ける。

そこには大量の本が入れられていた。


「『好きという気持ちの伝え方』? 『気になる彼を振り向かせる方法』? 『彼を満足させるテクニック』?」


恋愛指南の本が詰め込まれており、中には男女の秘め事に関する知識本なんかもあった。


プラムが首をかしげていると、背後から激しい殺気に射抜かれた。

背筋を悪寒が走り、慌てて後ろへ振り返る。


そこには、漆黒のドレス姿へと衣装を変化させ、視認できるほどに魔力を(ほとばし)らせているルナがいた。


普段眠たげな瞳は、怒りに駆られているかのように見開かれている。


そんなルナの殺気をもろに浴び、景色がスローで流れる中、


あの本の持ち主はルナか……

ひょっとして、ハル様を振り向かせようと考えておるのか?

我のサキュバス的直感では、ハル様はルナに惹かれているように見えたのじゃが、気のせいだったのじゃろうか……

いや、そんなことよりも、マズいのじゃ。

このままでは殺されてしまうのではないか?

あんな強大な魔力をこの身に受けたら、どんな快か……いや、どれほどのダメージを受けるのやら……


ついつい欲が出てしまい、回避が遅れたプラム。

ルナから放たれた渾身の魔法に、プラムの意識は一瞬で飲まれてしまった。


…………


「はれ?」


気が付くと、プラムは玄関ホールで眠っていた。


「あれれ?」


なぜこんなところで寝ておるのじゃ?


そう思って周囲を見回し、先ほどのことを思い出せないことに気付く。


「何か見てはいけないものを見てしまったような……」


プラムが首をかしげているところを、物陰からじっと見つめるルナ。

魔法の余波で失われたプラムの記憶は、きっと戻ることはないだろう。



――



気分転換にフラフラと庭へ出るプラム。


「お? あれは……」


広い庭の一角。

簡易小屋にて、リリィがペットの魔物の世話をしている姿が目に入る。


「おーい!」


パタパタと翼をはためかせ、ブンブンと手を振るプラム。


そんなプラムに気付いたリリィは、


「え!? プ、プラム!? ちょ、こっち来ないで!」


両手を突き出して拒絶のポーズをとる。


なんじゃリリィのやつ。

あんなに手を振って我を呼びおって。


呼ばれていると勘違いしたプラムは、嬉しそうにしながらリリィのいる簡易小屋へ向かう。


この時、リリィは日課である乳搾りを行なっていた。

カフェの仕事が休みの日でも、時間がある時はしっかり搾乳し、新レシピの開発に使用していたのだ。


今あの子が来たら、絶対に貴重なミルクをダメにされる!


リリィは必死にプラムの接近を拒むが、プラムにその気持ちは伝わらない。

むしろ拒めば拒むほど、プラムは嬉しそうに突っ込んでくる。


「ンモーーー!!!」

「な、なんじゃ!?」


そわなプラムの前に、モークのリバニスが立ちはだかった。


まるで大切な人を背に庇うかのように。


「リ、リリーナバーニングスター!?」


リリィが驚いたように呪文のような言葉を叫ぶ。


何を言っておるのじゃ?

魔法でも使うのか?


と、プラムな首をかしげていると、


ものすごい瞬発力でリバニスが身を(ひるがえ)し、後ろ足にてプラムを思いっきり蹴り飛ばした。


「フゴッ!!!」


何が起こったのか分からぬまま、プラムは数メートルも後方へ吹き飛ばされる。


こ、これは……走馬灯?


流れる走馬灯を、まるで演劇でも鑑賞するかのように眺める感覚に陥るプラム。


思いば良い人生、いや、悪魔生じゃった。


思い出される幸せな記憶。

ハルに氷づけにされたり、ハルに怒られ売り飛ばされそうになったり、ハルに全裸に剥かれて視姦されたり、ハルに体で稼ぐよう言われたり……


かなり都合よく記憶が捏造(ねつぞう)されているが、プラムはそんなことには気付かない。


焦るリリィの声を遠くに聞きつつ、プラムは意識を手放したのだった。



――



「腹が減ったのじゃ」


そう思い立ったプラムは、何かつまめるものはないかと調理室へ向かった。


そこにはすでに先客が。


「ん? マリンか? 何をやっておるのじゃ?」


調理室では、マリンが何やら実験?を行なっていた。


「あら、プラムですか。ちょうど良いところへ来ましたね」


こちらへお座りなさい、と微笑むマリンに勧められるまま、プラムは椅子に腰掛ける。


「実は料理の特訓をしていたのです。せっかくですので、あなたに試食していただきましょう」

「おお! 我もちょうど腹が減っておったのじゃ!」


調理をしているとは思えない厨房の様子は気になるものの、マリンの提案に嬉々として乗るプラム。


そして目の前に並べられる……料理?に驚愕した。


な、なんじゃ!?

カフェで食べた色鮮やかな料理をイメージしておったのじゃが……


食欲をそそる色とは正反対の黒や紫といった毒々しい色をした物体。

禍々しいオーラを醸し出すそれに、流石のプラムも狼狽(ろうばい)せざるを得ない。


「さぁ、召し上がれ」と、微笑むマリン。


プラムは額に脂汗を浮かべ、


「え、えーっとぉ、そういえば我、最近ダイエットなるものを始めたのじゃったかなー。せっかく用意してもらって悪いが、今日のところは……」


目を泳がせながら、必死に食べない言い訳を探すプラム。

ふと、マリンと目が合う。


「うふふ、さぁ、召し上がれ」


頬に手を当て、恍惚とした表情を浮かべるマリン。

その目は有無を言わさないという、狂気に満ちていた。


ゾクッ!


そのサディスティックな視線に、体を縄で縛られたかのような快感を感じてしまうプラム。

言われるがまま、おぞましいそれを口に運ぶ。


「……ブハッ!!!」


毒に耐性のあるプラムであったが、この料理?に抗うことはできなかったようだ。

ピクピクと体を痙攣させ、テーブルに崩れ落ちた。


「あら? どうしました? まだ残ってますわよ?」


そんなプラムを見ても、攻めの手を緩めないマリン。


プラムの体は毒による麻痺と興奮でブルブルと震えている。


そして、マリンの手で二口目を口に運ばれ、プラムは絶頂しながら気を失った。


白目を剥き、しかし幸せそうな表情で倒れているプラムを見て、マリンはゾクリと肩を震わせる。


「うふふ、美味しい料理ができなかったのは不服ですが、これはこれで使えますわ。今度ハルが変態行為を行った際は、食べさせてあげましょう」



――



今日はなんと楽しい一日じゃ。


プラムは上機嫌に鼻歌を歌いながら、通路をパタパタと飛んでいた。


ハルからはエロい視線を浴びせられた上に長々と正座させられ、ルナからはあまり覚えていないがすごいことをされた気がする。

リリィのペットから足蹴にされ、マリンからは新手の拷問を受けた。


ルンルン気分でホールへ着くと、ハルたち四人が談笑しているのが見えた。


何やら楽しそうに話しておるな……

まさか我をのけ者にしてみなで仲良く……

いや、もしかすると、我がいないのをいいことに悪口を……


プラムはそんな思いを巡らせ、ワクワクモジモジしつつ聞き耳を立てた。


「あいつはポンコツだけど、悪い奴じゃないよ」と、ハル。

「お馬鹿ですが、いじめ甲斐がありますわ」と、マリン。

「アホだけど前向きだよね」と、リリィ。

「すぐ余計なことするけど、好き」と、ルナ。


期待していた内容ではないが、プラムは胸の奥がこそばゆくなるような、いつもとは違った喜びを感じた。


「ハル様ー! 皆の者ー!」


プラムはそんな照れくささを隠すように、四人の元へ飛び込んだ。


のだが、直前で自分の足につまずき、ハルに胸を押し付けるようにして盛大に転倒した。


「ブハッ!」と、鼻血を吹き出して目を回すハル。

「何やってんだーーー!」と、叫ぶリリィ。

「そそっかしいですわ」と、呆れ口調のマリン。

「誘惑しないで」と、怒るルナ。


そして、三人からの叱責にモジモジするプラムであった。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「この後一体どうなるのっ……!?」


と思ったら、


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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