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5.カナタパーティーの仕事②

「クソが! クソ雑魚野郎の分際で俺様の邪魔をしやがって!」


俺は酒の入ったコップをドンとテーブルに叩きつけた。


未だに怒りが収まらねぇ。


「まさかまたハルたちに横取りされるとはな」


モヒカンの大男(ダン)は憮然とした表情で腕を組んでいる。


既に目の前にある大量の皿は空だ。


「ありえないんですけど! てか、私の言った通りちゃんと準備しておけば、ハルに邪魔れることもなかったと思うんですけど!」


金髪碧眼の成金女(アスカ)はまた自分のことを棚に上げて文句を言ってやがる。


服が汚れるから戦闘には参加しないとか言って、普段からこいつは武器を持っていない。

クソが。


あの後俺たちは町へ戻り、少し早いが酒場で昼食をとっていた。


話題は邪魔してきやがったクソ雑魚野郎(ハル)だ。


あいつの悪口を聞いていると不思議と心が落ち着く。

まだイライラは残っているが、さっきよりはマシになってきた。


「チッ、なんだかさっきから騒がしいな」

「うむ。何かあったのか?」

「……森がなんたらって言ってるわね」


森……?


俺はなんとなく聞き耳を立てた。


「おい聞いたか? なんでも、倉庫街の外れが突然森になったらしい」

「そんなまさか」

「いや、俺もチラッと見てきたんだが、間違いねー」

「どういうことだよ」

「分からんが、魔力が濃かったし、あれは危険な匂いがした」

「ハハハ、経験からくる勘ってやつか?」


……森か。


どうやらさっきまで俺たちがいた辺りに、突如森が出現したらしい。


「あの男たちは馬鹿なのか? 森がいきなり生える訳がない」

「馬鹿の会話を聞いてると、こっちまで恥ずかしくなるわね」


ダンとアスカは鼻で笑う。


この馬鹿二人はどうでもいい。

問題は突然現れたって所だ。


何も無かった場所やただの洞窟だった場所が突然変化する。

俺はそれが何か知っている。


迷宮(ダンジョン)だ。


俺たちは迷宮(ダンジョン)が生まれる直前の場所にいた。


だからいるはずのない魔物に遭遇したんだ。

間違いない。


「てめぇら……馬鹿か?」


俺は興味なさそうにしていたダンとアスカを叱責(しっせき)する。


「な、なんだと!」

「私よりカナタの方がいつも馬鹿してると思うんですけど!」

「黙りやがれ! ……いいかよく聞け?」


俺はさっきの冒険者風の男たちに聞こえないよう、声を殺して馬鹿二人に説明する。


「その森は迷宮(ダンジョン)だ」

迷宮(ダンジョン)?」

「ああ。突然地形が変わるなんてそれしかねぇ」

「……確かにそうね」

迷宮(ダンジョン)には何がある?」

「……冒険か?」

「だからお前は馬鹿なんだ」

「お宝でしょ?」

「そうだ。レアな魔法具。規模は分からねぇが核となる魔石か魔晶石、下手したら魔結晶もあるかもしれねぇ」

「「…………」」

「分かったら行くぞ。他の奴らが迷宮(ダンジョン)に挑む前に、俺様たちでお宝を回収するんだ」

「ふふふ……がっはっはっは! 流石カナタだ!」

「あはははは! お宝お金ー! あはははは!」


大声で笑う馬鹿二人を(たしな)め、俺はすぐさま倉庫街へと戻るのだった。



――



「チッ、もう入ってる奴がいるな」


日が差し込まないほどの深い森。


薄暗い獣道をランタンタイプの魔道具『ライト』で照らしながら進む。


「居やがった……」


道の先。

数人の人影が見える。


俺はその集団めがけて魔物寄せの匂い玉を投げつけた。


パンッ


「な、なんだ!?」

「この匂いは……嘘!? 匂い玉!?」

「何で急にそんなものが!?」

「言ってる場合か! く、来るぞ!」


ちょうど近くに魔物もいたらしく、その集団は戦闘に入った。


「上手くいったな」


俺は巻き込まれないよう迂回しつつ進む。


さっきから先行組に追い付く度にこうして妨害している。


……当然だ。

迷宮(ダンジョン)の宝を先に盗られる訳にはいかねぇ。


「流石だな。こんな卑怯な方法は俺では思いつかんぞ」


ダンが腕を組んで頷きながら言う。


「卑怯とはなんだ! ぶっ殺すぞ!」


俺は小声で怒鳴りながらダンを睨む。


「仕方ないわ。お金のためだもの」


アスカは欲に目が眩んでいるのがよく分かる。

さっきから金の事しか話さない。


まぁいい。


俺は気を取り直して先へ進んだ。


それにしても……迷宮(ダンジョン)なのか?

俺の知る迷宮(ダンジョン)はもっとこう、入り組んでるというか、洞窟みたいになってる。

これじゃただの森だぞ。


「クソ、さっきから虫がウゼェな。お前ら虫除け持ってねぇのか?」

「あればとっくに使っている」

「カナタこそ実はこっそり隠し持ってるんじゃないの?」


体をボリボリと掻きむしるダン。

アスカは俺を(いぶか)しげに見てくる。


「ったく、森に入るのに何で虫除けすら用意しねぇんだよ。初心者かよてめぇら」


体の(かゆ)みも相まってイライラしてしまう。


この馬鹿どもは本当にルブルで何をやってたんだ?

虫除けくらい準備しとけよ。


俺たちは苛立ちをなんとか我慢しながら、どんどん森の奥へと歩を進めた。



――



特に戦闘もなく俺たちは先へ進むことができた。


少し開けた場所に出る。

そこに、一人の子供が立っていた。

白く長い髪の女だ。


「おいてめぇ」


俺が声を掛けると、その子供はビクッと肩を震わせ、怯えながらこちらに振り向いた。


俺は剣を構えつつ言う。


「俺様はカナタ。いずれ世界を手にする者だ。……てめぇは何者だ?」

「…………」


子供はフルフルと身を震わせ、怯えた表情でこちらをみてくるだけだ。


だが、俺は騙されねぇ。

こんな森の奥に人の子供がいるはずがねぇ。


「黙ってねぇで何とか言えや!」

「わ、わたし……こ、この森を、管理……」


子供は今にも泣きそうな演技をしつつ、震えた声で答える。


「ダン! アスカ! コイツがマスターだ!」


俺の大声に、後ろの二人も反応する。


俺は聞き逃さなかった。

コイツは管理していると言おうとした。


この迷宮(ダンジョン)の管理を、だ。


俺は剣を振り上げ子供に踊りかかった。

背後の気配から察するに、ダンとアスカも武器を取って飛び出してきている。


ここでマスターを()れば、隠された宝や魔石なんかが現れるはずだ。


「キャァァァァ!!!」


子供は慌てて(きびす)を返し、森の奥へと駆け出した。


「待ちやがれぇぇぇ!!」


俺の叫び声にイチイチ肩をビクつかせ、転びそうになりながらも、子供は奥へ奥へと駆けていく。


「ヒヒヒッ! ついてるぜ! ガキがマスターなんてよぉ!」

「がっはっは! 今回の仕事は簡単だったぞ!」

「オホホホホ! お宝を寄越しなさい!」


俺たちは泣きながら逃げる子供を笑いながら追い詰めていく。


愉快だ!

気分が良い!

さっきまでの怒りが嘘みたいだ!

クソ雑魚野郎(ハル)に邪魔はされたが、やっぱり最後には、俺の思い描いた通りになる!

これで資金面は解決……あとは優秀な手駒を集めるだけだ!


「きゃぁっ!?」


子供が目の前で転倒した。


ヒヒヒ、ここまで思い通りになると逆に不気味だぜ。


俺は嬉々として、起き上がろうと慌てふためく子供に踊りかかった。


「ひゃっはっはっはっは! 死ねぇぇぇ!」


終わりだ!


振り上げた剣を、子供の頭に力一杯振り下ろし……

目の前が……

真っ暗になった。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「この後一体どうなるのっ……!?」


と思ったら、


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


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