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14.受付嬢からの依頼

幽霊屋敷の依頼(クエスト)から数日が過ぎた。

俺はまだ館での新生活に戸惑っている。


まず、館も敷地も広過ぎて手が回っていない。

三階建てのお屋敷だけど、メインで使っているのは一、二階だけだ。


館は中央にメインの棟が、ありその両側に各部屋が並んでいる。

一階の中央にはロビーと客間。

この客間は食堂として利用している。


向かって左側にはキッチンがあり、右側に風呂がある。

貴族の所有物件だっただけのことはあり風呂はけっこう広い。

一人だと少し寂しい。


二階中央には大部屋がある。

ここはルナがオーナー権限で書庫にしている。

ルナとの同棲時、彼女の書庫に寝泊まりしていたけど、ルナのコレクションは結構有用なものが多い。

本なんて高価な物をこれほど集められるSランク冒険者に感服しつつ、余裕ができたら魔法の勉強に使わせてもらおうと勝手に考えた。


三階にはファントムロードと戦った大広間がある。

片付けは済んだけど使い道が無く、今のところ放置している。


そして肝心の部屋割りだ。


この館には俺、ルナ、リリィ、マリン、プラムが住むことになった。


実はアラーネもカフェでの修行を終えたら住みたいと言ってはいるが、それはルージュさんとも要相談だろうな。


「左右で分けられるよね」

「何を?」


リリィの一言に俺は首を傾げる。


「ハル……まさかあなたはルナやリリィと隣の部屋で休めると思っているのですか?」


マリンが冷ややかな目で見てきた。


「え? いや? まさか、そんな」


残念な仲間とはいえ、美少女たちと一つ屋根の下という状況に心が浮かれていた俺は、マリンの鋭い指摘に言い淀む。


「お風呂と反対側が男子棟だね」と、したり顔のリリィ。

「それはいい考えですわ」と、頬に手を当てるマリン。

「……私はマリンにも危険を感じる」と、怪訝な顔でマリンを見やるルナ。


勝手に話が進む中、


「では我がハル様の護衛としてお隣の部屋に……」


邪魔にならないよう縮小させた翼をパタパタとはためかせるプラムが、俺の隣に寄ってきた。


その言葉を遮るようにルナが割って入る。


「ハルの隣は私」


眠たげないつもの目から一変。

真剣な表情、バトルモードのルナの顔になっていた。


「え、でも我が主人であるハル様をお守り……」

「オーナーの言葉は絶対」


食い下がろうとしたプラムを分らせる一言。


「じ、じゃあお向かいに……」

「ま、待ってよ! それならアタシもルナと近くの部屋がいい!」

「そ、そうですわ。わたくしもルナとリリィの部屋の近くにします」

「あれ? あれれ?」


結局、二階左側にある四部屋に俺とルナ、通路を挟んで向かいにリリィとマリンが寝ることになった。


寂しがっていたプラムを心配して見ると、


「こ、これが……放置プレイ!? さすがはハル様。我のツボを理解しておられる!」


とか言って、なぜか嬉しそうにモジモジしながら、パタパタと反対側の棟の部屋に向かって行った。


粗末な扱いを受けて喜んでいるのかな?

取り敢えず様子見でいいか。


でも、もしアラーネがこの館に来るなら心配だな。


純粋なあの子にこの変態を見せるのは躊躇(ためら)われる。

どんな悪影響を与えるか……


俺はモジモジしながら自室に向かうプラムを見て、そんな心配をしたのであった。



――



今日はカフェの仕事の日。

メンバーは俺とルナ、リリィ、そしてアラーネだ。


アラーネはかなり成長していた。

メニューをしっかり覚え、注文を間違えることもない。


紅茶の種類も分かるし、美味しく淹れられる。


「アラーネちゃんの顔を見てるとワシも元気がみなぎってくるわい」


なんて事案になりそうなことを言う客も多く、マスコット的なポジションを確立しつつある。


今ではルージュさんからキッチンの仕事を教わるようになっていた。


あれ?

もしかして俺より出来る子なんじゃ……


テキパキと頑張るアラーネを見て、俺は頼もしく思う反面、寂しくもあった。


「ハルお兄ちゃん。今度家に遊びに行くね」

「ああ、歓迎するぞ」


寂しくは……ないな。


笑顔で寄ってきたアラーネを見て俺はそう思った。



――



カランカラーン


「いらっしゃいませ!」


元気よく開かれた扉に向かってアラーネが応対する。


「こんにちは……むむむ、可愛い子ですね」


聞き覚えのある声にそちらを見ると、店の入り口でアラーネの前にしゃがみこみ、訝しげな顔をした眼鏡の美少女がいた。


「いらっしゃいエリー。今日はどうしたんだ?」

「あ、ハルさんこんにちは! 今日はお仕事のことでお話があったのですが……それより、この可愛らしい子はどなたですか?」


アラーネの顔に自分の顔の高さを合わせ、眼鏡をクイクイしながら訝しげに見るエリー。


「こ、こんにちは。アラーネです」

「ぐっ、か、可愛いですね……私はエリーです。ハルさんの専属職員です」


敵意のようなものを感じたのか、俺の後ろに隠れつつおずおずと挨拶するアラーネ。

それに対し、エリーは意味の分からない自己紹介をする。


「専属職員ってなんだよ。あまりアラーネを威嚇しないで……」

「アーはお兄ちゃん専属の女です」


意味の分からないエリーの自己紹介に、キッと睨み返しながら意味の分からない張り合いをするアラーネ。


「なな、なんですかこの子! まだ子供なのにこんな!」

「アラーネお前何言ってんだよ」


アラーネはフンと(きびす)を返し、驚愕する俺たちを置いて接客に戻っていった。


呆然とする俺たち。


「二人とも入り口で何やってんの?」


カウンターからリリィが声をかけてくる。


その声にハッとして、俺は取り敢えず、口をパクパクしているエリーをカウンターへ案内した。



――



「それで、仕事の話ってなんだよ?」


俺は紅茶を飲んで落ち着きを取り戻したエリーに、今回の要件を聞いた。


「あ、そうでした」


エリーは思い出したかのように今日来た目的を語りだす。


「実は皆さんにおすすめの依頼(クエスト)があったので伝えに来たんです」

「俺たちにおすすめってことはパーティーランクを上げる依頼(クエスト)か?」

「ええー。アタシ討伐がいいんだけど」


俺の発言を聞いて、明らかに嫌そうにするリリィ。


前回は幽霊屋敷騒動でA危険度(ランク)の魔物と戦うはめになったが、前々からパーティーランクを上げようって話になっていた。


その提案者は目の前のエリーだ。


だからおすすめの依頼(クエスト)は、そういう低難易度(ランク)の類だと思っての俺の言葉だったのだが、


「いえ、今回はB難易度(ランク)の討伐依頼(クエスト)です」


そう前置きして、エリーは依頼(クエスト)内容の説明をしたのだった。



――



『蛇の魔物討伐』

町の南方、森で巨大な蛇の魔物が出現した。

目撃された場所が農村と近く危険なため、大至急討伐を願う。

依頼難易度(クエストランク) B

依頼(クエスト)期間 10日

報酬 10万J(ジュエル)

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「この後一体どうなるのっ……!?」


と思ったら、


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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