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間話1.ハルの剣

『ヒカリエ再生計画』の一環でパーティーを組んでから、三日が経過した。


俺たちは簡単な依頼(クエスト)を受けながら、戦闘時の陣形や連携について試行錯誤をしている。

まだまだ煮詰めていく必要はあるが、格下相手なら問題なく動けるようにはなった。


週末。

町は休日モードだが、俺たちは活動できる期間が限られている。

今朝もギルドへ向かうべく、メンバーで集まっていた。


「今日は少し難易度(ランク)の高い依頼(クエスト)にしようよ! じゃないとアタシ、今日の夜ご飯抜きになっちゃう!」


心なしか覇気のない顔でリリィが言ってくる。


「いやいや、流石にまだ危険だって。いざって時に動けないだろ」

「アタシに餓死しろって言うの!?」

「そうは言ってねーけど」


潤んだ赤い瞳は、俺の腰のあたりで視線を止めた。


「ねぇねぇ、前から気になってたんだけどさ、ハルの剣って、かなり高そうだよね?」


先程まで涙で潤んでいた瞳が、金のマークになっている気がした。


「これは売らないぞ」


俺は愛剣を抱え込み、リリィから遠ざけた。


「ちぇっ、少しくらいいいじゃん」

「少しってなんだよ、売ったらなくなるだろ」


そんなやり取りをしていると、スッと俺の前にルナが寄ってきた。


「私も、その剣のこと気になってた。いつ手に入れたの?」


普段通りの眠たげな顔だが、その目からは好奇心が感じられる。


「なんでルナが知らないんだよ……って、そうか、あの時は具合悪そうだったもんな」


俺の返答に、ルナは小首をかしげた。


そんなルナの隣に、うふふと微笑みながらマリンが立っている。


「わたくしも気になりますわ。普通の剣なのでしょうか? 昨日はすごい切れ味でしたが……わたくしの胸が何か言っていますか?」

「み、見てねぇよ? ちょうど目がいった先にたまたま……」


慌てる俺を見て、マリンは嬉しそうに笑みを深めた。


俺はこの剣を手に入れた経緯をみんなに簡単に説明した。


冒険者登録のために面接があったこと。

変な老人と面接をしてこの剣をもらったこと。


説明が終わると、みんなは唖然とした顔で俺を見ていた。


「し、知らない人からもらった道具をそのまま使ってる訳!?」と、驚いた声を上げるリリィ。

「危険」と、厳しい目を向けてくるルナ。

「普通鑑定するものですわ」と、呆れ口調のマリン。


どうやら、こういった道具は使う前に一度、鑑定するのが常識だったらしい。


そう言われてみるとその通りだ。


これが魔道具で、突然効果を発揮して思わぬ怪我を負う、なんてことがあるかもしれない。

悪意のある者であれば、呪いの類がかけられていてもおかしくないのだ。


「アンタ普段、この町の人はのんびりしてるとか言ってるけどさ」

「あなたほど呑気な人は、この町にはおりませんわ」


リリィとマリンがため息混じりに言ってくる。

言い返せないのが辛い。


「今から鑑定する」


ルナは真面目な顔でそう言うと、俺の手を取って歩き出す。


そのまま三人に連れられて、町の鑑定屋へ向かったのだった。



――



「アンタって本当によく分からないよね」と、手を頭の後ろで組み、隣を歩くリリィ。

「まったくですわ。魔道具なのは確かなようですが」と、両手を前で合わせ、優雅な所作でその隣を歩くマリン。

「気になる。きっと前代未聞の効果が備わっている。やっぱりハルはすごい」と、俺の剣を凝視しながら、反対隣を歩くルナ。


彼女らに言われるまま、町の鑑定屋でこの剣を鑑定してもらった。


が、結果は……


「すみません。魔道具であることは間違いないのですが、私では、その効果までは詳しく解析できませでした。おそらくこの町でこれ以上詳しく解析できる人はいないと思います」


ルナの行き付けである腕のいい鑑定士でも、この剣の力を見極められなかった。


効果が分からない以上、冒険で使用するのは危険だ。


「残念だけど、パパッと売ってアタシの夜ご飯にしよ」

「はぁ? 気に入ってんだよこの剣。売らねーよ。てか、何でリリィのメシ代になるんだよ」


馬鹿なことを言ってくるリリィに、即座にツッコミを入れる。


「ハル、リリィのお馬鹿な発言はともかく、未鑑定の魔道具ほど危険な物はありません。諦めなさい」

「い、嫌だよ。せっかく愛着が湧いてきたところなんだ」


マリンから急に真面目なことを言われ、子供みたいなわがままを言ってしまう。


「確かに、未鑑定は危険。ハルのためにならない」

「ルナまで……お前はこの剣のこと気になるんだろ?」


ルナも残念そうな顔で剣を見つめている。

せめてルナだけでも仲間に引き込みたかった。


三人から無言で見つめられる。


俺は三人の顔と、自分の手に持った剣を交互に見る。


やっぱりこの剣がいい。

捨てたくない。

というか、新しい剣を買う金がないし。


こうなったら、みんなもこの剣に愛着が持てるように誘導しよう。


「分かった」


その言葉に、三人はホッと安堵した。


だが、俺はさらに言葉を続ける。


「ならせめて、最後にこの剣に名前をつけていいか?」


俺はなるべく悲しそうにしながらそう言った。


「すぐ売っちゃうのに何で名前が必要なの?」


と、当然の質問をするリリィ。


「だってさ、短い間だったけど、共に冒険をした仲間みたいなもんなんだぜ。名前も知らずに別れるなんて……寂しいだろ?」


我ながらなかなかの演技力だったと思う。


この一言に、三人も悲しげな顔になり、ジッと剣を見つめてきた。


最後の一押しだ。


「なぁ、もしよければ、みんなで考えてやらないか? その方がコイツも喜ぶと思うんだ」


「分かったよ! アタシたちに任せて!」と、ドンとない胸を叩くリリィ。

「会議しよう」と、力強く頷くルナ。

「わたくしが素晴らしい名を授けて差し上げますわ」と、何やら不安になるような笑みを浮かべるマリン。


とりあえず作戦通りだ。


俺は内心でニヤリと笑い、みんなを連れて店へ戻ったのだった。



――



「それでは、第33回ヒカリエメンバー会議を開始します」


議長当番のルナが、静かに開始を宣言した。


店へ戻ってきた俺たちは、ホールのテーブルで向かい合って腰掛け、早速命名会議を開始した。


前回は下らないことで会議をするなと思っていたが、今回に限っては大事な会議だ。

何せ俺の愛剣の名前がここで決まるんだからな。


パーティー名を決める時に感じたが、この美少女たちの命名センスは酷い。

好きにやらせていたら、とんでもない名前をつけられてしまうだろう。


俺は主導権を握るべく、挙手をしようとして、


「まずアタシからね」


は、早い!?


俺が挙手する前に、いつの間にか持っていたボードをクルッと回すリリィ。


『ファイヤーシルバーブレード』


…………


おっと、時が止まったかと思ったぜ。


「シルバーブレードは分かりますが、なぜファイヤーなのですか?」


マリンは怪訝な目でリリィを見ながら問いかけた。


「え? カッコいいからだよ?」


当たり前じゃん、と首をかしげるリリィ。


「次」

「え? ちょっとハル? 何かないの? 感想は? 評価は!?」


ルージュさんがいないこの場において、リリィのセンスを肯定してくれる仲間はいない。

残念だったな。


俺の催促に、ルナが持っていたボードをクルッと回す。


『ハルロング』


…………


またしても、場に沈黙が降りた。


「意味は、ハルのロングソードって……」

「次」

「え?」


気にせず解説を始めたルナの言葉を遮り、俺はマリンに目を向ける。

ルナはショックで固まっているが、気にしない。


マリンは涙目のリリィと固まったルナを見て、うふふと笑みを深めながら、ボードをポンと置いた。


『大人の玩具』


「何書いてんだ馬鹿」

「や、やめなさい。わたくしのボードを返しなさい……ああ」


マリンのボードを取り上げた俺は、裏面に自分の案をカリカリと書いていく。


「剣って言えばこれだろ!」


俺はみんなに見えるよう、テーブルにドンとボードを立てた。


(いにしえ)の剣『エクスカリバー』!」


…………


なぜか沈黙が流れる。


あれ?

なんでだ?


俺はボードからそーっと顔を覗かせて、みんなの顔色を伺った。


「ありきたり」と、つまらなそうなリリィ。

「真似は良くない」と、真顔のルナ。

「面白味の欠片も持ち合わせていないのですね」と、冷ややかな目をするマリン。


「そ、そんなにダメか!? 一番マトモだと思うんだけど!?」


どう考えても俺のが一番剣っぽいだろ!?

カッコよくて強そうだろ!?


みんなの反応に憮然としていると、ルナがポンと手を打った。


「なら、合わせればいい」


ルナは自分のボードを裏返し、カリカリと書き始めた。


合わせればいい?

今回といい前回といい、ルナの考えた名前は変な組み合わせの名前だったな。


これは……マズいのでは?


カリカリと書き進める手を、俺は慌てて止めようとして、


「これ」


俺の手は空を切り、書き終わったボードをルナがクルリと俺たちに向けてきた。


『シルバガンハルスカリバー』


「言いにくいわ!」


思わず大声でツッコんだ。


その瞬間、テーブルの中央に置かれていた剣が淡く光った。


「え?」


全員の声がハモリ、視線が剣に釘付けとなる。


光はすぐに収まった。


「な、なに?」と、怯えた様子の怖がりなリリィ。

「勝手に光りましたわ」と、目を丸くするマリン。

「一瞬、すごい魔力を感じた」と、真剣な目で剣を見つめるルナ。


一体何が起こったんだ?


マナ視で剣を確認するが、すでに何の気配もない。


俺は恐る恐る剣に手を伸ばすと、刀身を鞘から抜き放った。


そして……絶句した。


刀身の根元部分に、今まではなかった剣の名が刻まれていたのだ。


この剣の名は……『聖剣・ハルスカリバー』


「はああああ!?」


俺は意味が分からず絶叫した。


「アハハハハハ! ハ、ハル、ハルスカリバーーーー!」と、腹を抱えて爆笑するリリィ。

「と、とても、お似合いですわ」と、フルフルと体を震わせ、笑いを堪えるマリン。

「ハルみたいでいい名前だと思う」と、いい笑顔で言うルナ。


ふ、ふざけんなよ。

なんで勝手に名前が刻まれてんだ?

しかも、こんなダサい名前……


「こんな、こんな意味不明な剣……捨ててやるーーー!」


俺は、心の底から絶叫した。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「この後一体どうなるのっ……!?」


と思ったら、


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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