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5.勇者たちのその後~カーネルとの出会い~

「そうだったのか。で、てめぇは何者だ?」


俺の問いに、黄色い道化服の男はふっふっふと笑いながら答えた。


「私はカーネル。エルシア王国のとある町にて、冒険者を束ねるしがないクランのリーダーをやっている者ですよー」


マントをバサッと(ひるがえ)し、片手を胸に添え、深々と頭を下げながら自己紹介する仮面の男。


一見丁寧な動作だが、人を馬鹿にしたような仮面、人を馬鹿にしたような口調、この男の全てが俺を苛立たせた。


だが俺は、なぜだか黙ったままカーネルの話に耳を傾けていた。


「実は近くを通りがかった際、とても強い負の感情を感知しましてねー。もしかして仲間になってくれる人がいるのではと、胸を躍らせてここまで来たのです」


笑みをかたどった仮面だが、それがさらに悪い笑みを浮かべたように見える。


「仲間だと?」

「ええ、私のクランは現在、メンバー募集中なのです。もしあなた方が加わってくれるのであれば、これ以上ない宣伝塔になりますねー」


宣伝塔だと?

こいつ、もしかして俺たちのことを知っているのか?

ヒミス村まで情報が伝わるだけでかなり時間がかかっていたんだぞ?

ましては他国の、一介の冒険者が俺たちの正体を知っているはずが……


「俺たちを仲間にしたところで、いいことなんてないんじゃないか?」


俺は探るように聞く。


「いいことがないはずがないんですよねー。だってそうでしょ、勇者様」

「んな!?」

「驚くことはありませんよー。あなたのお仲間が勇者様と叫んでいたではありませんか」


カーネルはふっふっふと笑いながら、両手を広げて種明かしといった感じで言ってくる。


いや、おかしい。


ルブルはかなり閉鎖的な国だ。

確かにこの二人は勇者だなんだと騒いでいたかもしれないが、他国の一般人が勇者事情を知っているはずがない。

まして今の俺たちの装備では、お世辞にも勇者には見えない。


「おやおや、どうしましたか? 私は変なことを言ったでしょうか?」


俺がカーネルに怪訝な顔を向けていると、カーネルは首をかしげながら聞いてきた。


「どう考えてもおかしいだろ。今の俺様たちを見て勇者だと思うはずがねぇ」

「あぁ、私は世界情勢にも精通しておりますので、あなたがルブルの勇者カナタであることは知っています。ついでに現在亡命中であることも」


カーネルのセリフに俺は驚愕した。


名前や肩書だけでなく、つい最近国を追われてきたことまでカーネルは知っていた。


カーネルは驚く俺を置き去りに話を続ける。


「魔獣に襲われていたあなたを見つけ、ひょっとして仲間になってくれるかも?という打算もあってお助けしたのですよー」


笑ながら、そう話を締めくくるカーネル。


「俺はこの男を信じていいと思うぞ」

「勇者だけじゃなくて私の傷まで治してくれたの。きっといい人だと思うわ」


俺が黙っていると、ダンとアスカがカーネルを支持する。


が、正直、胡散臭いことこの上なかった。


確かに命を助けられてかもしれないが、それはそれ。

この男の仲間になるかどうかはまた別の話だ。

感情がどうだとか言っていたが、どう考えても俺たちを狙ってやってきてやがる。

絶対に裏があるはずだ。


俺は訝しげにカーネルを見やる。

カーネルはふっふっふと肩を震わせ、俺の返事を待っているようだった。


鬱陶しい野郎だ。


そう思いながら俺は思案する。

今俺たちが置かれている状況と今後の展望を。


現在、俺たちはルブルから亡命中だ。

理由は国王の勅令。


そのせいで俺たちはたくさんの屈辱を受けた。


俺の当初の作戦は、一度他国へ流れて力を蓄え、ルブルの国王と大臣、ついでにあの村を全てぶっ殺すという流れだ。


だったら、この男を利用してルブル陥落のための強力な手下を集めさせるのもありかもしれない。

ついでに冒険者として名を馳せれば、金と名声も手に入いる。


俺はそこまで考えてからカーネルの誘いに乗ることにした。


「カーネル。仕方ねぇから俺様がてめぇのクランに入ってやる。だが俺様に指図はするなよ」

「ふっふっふ、あなたは本当にいい顔をしますねー。これは今後が楽しみです」


欲望のままに笑う俺を見て、カーネルも笑う。


こうして俺はダンとアスカを連れ、エルシア王国のギルドに加入することになった。



――



ハルジオンへやってきて数日。


冒険者としての登録を終えた俺たちは、不満げに自身の冒険者カードを眺めていた。


「チッ、どうして俺様のランクがFなんだよ。農家の手伝いなんかやってらんねぇよ」


俺は組んだ足をテーブルの上に投げ置き、いかにもやってられないといった態度で怠けていた。


「まったくだ、俺は食べるのは好きだが作るのは嫌いだぞ」


ダンは腕を組み、憮然とした顔で憤っている。


「私は汚れるから畑も戦闘もごめんなんですけど。そもそも知らないオッサンやオバサンに使われるのが、めっちゃ気に食わないんですけど」


やかましく騒ぐアスカ。


カーネルがいないことをいいことに、俺たちは拠点で何をするでもなくダラダラと過ごしていた。


いや、違うな。

他の二人とは違い、俺は今後の作戦を思案している。

今はカーネルが新しい部下候補を連れてくるのを待つ段階ってだけだ。


「ねぇねぇカナタ、これからどうするの?」

「ああ?」


舐めた態度をとるアスカに俺がガンを飛ばす。


「な、何よ。もう勇者じゃないんだから名前で呼んだっていいでしょ?」


一瞬おじけづいたアスカだったが、別にいいでしょと逆に睨み返してきた。


「ふむ、確かにそうだな。俺も勇者ではなく、久し振りにカナタと呼ぶぞ」


頷きながらアスカに同意するダン。


「てめぇら調子に乗んなよ。呼び捨ては許さねぇ。せめて様をつけろ様を」


ダンとアスカを睨みつけそう言い返したが、二人は強気な態度を崩さない。


「いいではないか。また昔のように名で呼び合うのも」

「そうね。その方が冒険者仲間って感じになると思うわ」


ダンが少し懐かしそうに言うと、アスカも嬉しそうに同調する。


「ふざけんなよ! 俺様とてめぇらが対等なわけがねぇだろ!」


確かに孤児院時代、俺とこいつらは一緒に過ごしていたが、今は違う。

俺は選ばれた男だ。

こいつらとは違うはずだ。


そう思って言ったセリフだったが、ダンとアスカの反応はまたしても俺の予想に反していた。


「何を言っている。俺たちは同じ孤児院で育った対等な存在だぞ。俺はお前たちを友だと思っている」

「それは流石にキモいんですけど……でも対等っていうのはその通りよね。なんせみんなランクFなんだし」


勝手に話を進める馬鹿二人。


「俺様はそんなこと認め……」

「おやおや、相変わらず元気がいいですねー」


いつの間にか帰って来ていたカーネルが、笑いながら会話に割って入る。


「てめぇ邪魔すんじゃねぇ! 今大事な話中だ!」

「そうですか……面白い話を持ってきたのですが」


残念そうに肩を落とすカーネル。

その仕草はオーバーで、明らかに話を聞いてほしそうだ。


「チッ、話ってなんだよ」


苛立ちつつも、なぜか俺はカーネルの話を聞く姿勢になっている。

俺の反応にカーネルは嬉しそうに肩を揺らしながら話はじめる。


その内容に、俺は驚きを通り越し、怒りの感情が沸々と湧き上がるのを感じた。


他の二人は驚きつつも、どこか嬉しそうに安堵している。


俺はそれも気に食わなかったが、もうそれどころではない。


「ハル……生きていやがったか」


そう。

ハルはあの状況で生き残っていたらしい。


まぁそれはいい。

いや、よくないが、一旦置いておく。


あのクソ雑魚野郎、俺が散々な目に遭っている間、助けに来るどころか、この町で女どもに囲まれて冒険者気取りだと?

勇者のパーティーに入れてやった恩を忘れやがって!


勇者としての地位を失い、罪人として国を追われ、受けた屈辱の数々。

最近静かだった俺の心の内が、黒く、渦巻くのを感じた。

忘れかけていた怒りと憎しみが、一気に押し寄せてくるようだった。


「ひひひ……ハルが生きていた」


思わず笑いが漏れた。


これも何かの縁か。

ハルを地獄のドン底まで叩き落としてやる。

生きていることを後悔させ、あの時死んだ方がよかったと思わせてやる。

そして……ぶっ殺す!


「ひひひ……おいカーネル、いい案があるんだが」


そう言った俺を見て、ダンとアスカが顔を引きつらせる。


対称的にカーネルは楽しそうだ。


アジト内に俺の笑い声が響く。


再会が待ち遠しいなぁ……ハル!!

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「この後一体どうなるのっ……!?」


と思ったら、


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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