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14.ムーンライト

「それでは第32回ヒカリエメンバー会議を始めます」


リリィがテーブルに両肘をつき、手を顔の前で組み、神妙な表情でそう告げた。


「三十二回ってけっこう会議やってんだな」

「何かあるといつも」


ルナが俺の疑問に答える。


「そこ、私語は慎むように」


リリィが俺をキッと睨みながら注意してきた。


「前回はあなたがやって来た日に行いました。あの日は荒れましたわ……」


嫌なことを思い出したと言いたそうに、マリンが俺をジト目で見てくる。


「だから私語を慎んでよ! 今日はアタシが進行なんだから!」


リリィがテーブルをバンバン叩きながら、何故か俺を睨んで言ってくる。


いや、今のは俺じゃないぞ?

そう突っ込みたかったけど、ますます話が進まなくなるので我慢した。


リリィが気を取り直して続ける。


「もう分かってると思うけど、今日の議題は……」


俺たちはルージュさんの計らいでパーティーを組むことになった。

パーティーを組む上で、どうしても決めなければならないものがあるらしい。


そりゃそうだ。

魔物の討伐が主な仕事である命懸けの冒険者稼業。

仲間との連携は大切だ。


俺がそう考えていると、


「パーティー名を決めたいと思います!」

「何でだよ!」


リリィの言葉につい突っ込んでしまった。


「い、いきなりどうしたの!?」


俺の反応がまさかだったのだろうか。

目を丸くしてリリィが驚いていた。


「いや、他に決めるべきことがあるだろ」

「ハル……パーティー名は大事」

「黙りなさいハル。わたくしたちの今後を決める重要な議題ですわ」

「いやいや、リーダーとか戦術とか連携とかの方が今後を左右するだろ」


どう考えても俺の方が正論を言ってるはずなのに、なぜか三人は考えを曲げない。


「ハルくん、パーティー名を決めないと、何も決まらないわよ」


笑顔のルージュさんだが、その目が有無を言わさないと物語っている。


俺の反論も虚しく、結局パーティー名から考えることになった。


「じゃあ一人ずつ発表しようか」


しかも発表形式。


てっきりもっと大事なことを決めると思っていた俺は、勿論案など持ち合わせてはいない。

慌てて思考を巡らせた。


「まずアタシからね」


そう言ってリリィは、いつの間にか用意していた小さめのボードにカツカツとチョークで記入し、みんなに見えるようにテーブルにポンと立てた。


『ヒカリエ・バーニング・ボンバーズ』


そう書かれたボードを誇らしげに見せてくるリリィに、俺たちは絶句した。


「まぁ! いいわねそのパーティー……」

「ルージュは黙っていて下さい」


パァッと顔を綻ばせたルージュさんの口を、隣に座っていたマリンがガシッと塞ぎ、余計なことを言わせないようにした。


「ち、ちょっと! 何でルー(ねぇ)しか反応しないの!?」


リリィが不満気に頬を膨らませているけど、俺は驚きのあまり固まったままで何も言えない。


「次はわたくしの番ですわね」

「ちょっと待ってよ! 感想は!? 何もないの!?」


涙目のリリィを無視して、マリンが自分のボードをテーブルに置く。


『天使の楽園』


「……どう言う意味?」


ルナが首をかしげる。


「良い質問ですわ」


いや、みんなそう思ってるよ、と内心で突っ込む。


「ルナとリリィという可愛い二人の天使に囲まれて、わたくしは幸せですという気持ちを込めました」

「……俺がいないんだけど」


呆れ口調でマリンに言う。


「……仕方がありませんわね」


言いながらマリンはボードに書き加える。


『天使の楽園+α』


「おまけかよ!」

「うふふ、ルナに引っ付いてきたおまけのおもちゃですわ」


抗議する俺を適当に流し、マリンはルナに発表を促す。


ルナは静かに自分のボードをクルッと回して置く。


『ハルリエ』


「……ハルジオンのヒカリエ、的な?」


リリィが難しい顔で聞く。


「ハルがリーダーをするヒカリエのチームという意味」

「「「何でだよ!」」」


俺を含めたリリィとマリンの三人がハモる。


「ハルがリーダーとか!」

「あり得ません」

「いや俺もそう思うけど、そこまでハッキリ言わなくても良くね?」


「私は可愛いと……」

「ルー(ねぇ)は黙ってて!」

「ええ!?」


バッサリ言い切られ、しょんぼりする俺とルナとルージュさん。


まぁ実際、この名前はダメだ。

俺が恥ずかしい。


「えっと、あとは……」

「はい! 私のはね……」

「ルージュの案は結構ですわ。どうせそれにはなりませんので」

「ええ!? なんで!?」


ルージュさんはボードを胸に抱え、涙目で抗議するも三人からスルーされた。


扱いの酷さに不憫には思うものの、リリィやルナの案を褒めるルージュさんの案は聞かなくてもいいかなと思ってしまった。

ごめんなさい。


「で、ハルは良い案ある?」


リリィから問われた俺は、隣に座るルナからボードとチョークを渡された。


「これって大喜利とかじゃないよな?」

「はぁ? アンタ何言ってんの? マジメに考えなかったら後でどうなるか……」

「わ、分かったよ」


どうやらみんな真面目に考えたらしい。

まだ納得はいかないが、ツッコミに回っていた分考えがまとまっていない。


一旦不満は置いといて、真面目に考えることにする。


うーん……


俺はカツカツとルナのボードの裏面に、思いついた名前を記入する。


『ムーンライト』


「月光……」


ルナがぽつりと呟く。


「なるほど! 月光と書いてムーンライトって読むんだ! ちょっとだけカッコいいじゃん!」

「どういう意味が込められているのでしょう?」


意外とウケが良かった。

三人がワクワクしながら俺の説明を待つ。


「ヒカリエって光の家って感じでいい名前だと思ってたんだ。ヒカリエ→光の家→光→ライトって感じに変えて……それにリーダーはルナだろ? だからリーダーの名前、ルナ→月→ムーンとしてプラスしたって感じさ」


説明を聞いたみんなが感嘆の息を漏らしたのが聞こえた。


「アタシの次にいいね」

「わたくしの次にいいですわ」

「リリィのといい勝負よ」

「……リーダーは嫌」


ルナはリーダーと言われて血の気が引いた顔をしていたが、他の三人はなるほどと納得したみたいだ。


あとルージュさんの台詞が誉められているのかどうか判断が難しい。


「それじゃあ出揃ったので、投票に移るよ。自分に入れんのはなしね。決まらないから」


テーブルにそれぞれが書いたボードを並べる。


ルナのが俺の裏になってしまっているのと、ルージュさんの未発表作『ヒカリエ・キュート・ピンキーズ』が並んでいるが、とりあえず気にしない。


せーので一斉に指を指す。


結果

リリィ『ヒカリエ・バーニング・ボンバーズ』1(ハル)

ルナ『ハルリエ』0票(投票不可)

マリン『天使の楽園+α』0票

ルージュ『ヒカリエ・キュート・ピンキーズ)』1(ルナ)

ハル『月光(ムーンライト)』3(リリィ・マリン・ルージュ)


「三票獲得で、ハルの月光(ムーンライト)にけってーい!」


進行役のリリィの宣言で、パチパチとおざなりな拍手が飛び交う。


こうして、俺たちはクラン『ヒカリエ』の冒険者パーティー『月光(ムーンライト)』として活動することとなるのだった。


……ちなみに、この後「リーダーは無理」と死にそうな顔でルナに懇願され、なんやかんやあって俺がリーダーをやらされることになった。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「この後一体どうなるのっ……!?」


と思ったら、


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


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