7話 朝のルーティン
ワールドオブエンドの世界へ来て二日目の朝が来た。
「おっはようございま~す。朝ですよ~。」
ゆさゆさを揺さぶるのは、唯だった。朝だと言うのにフワフワした性格は健在だ。
「おはよう…ございます」
「…寝るの…邪魔しないで」
小盛は寝ぼけながら起きて。銀鶏は再びお布団を被り眠りにつこうとしている。
誰かに起こしてもらうのは、100年ぶりだろうか。現世の時は、夜をまたいで1時頃に寝て、朝6時に起きるルーティンだった。当然、誰かに起こされる訳ではなく。スマートフォンとつけっぱなしのパソコンが同時に目覚ましが鳴り。1つ消すだけでは鳴りやまない。いい加減起きろシステムだった。やはり、平均睡眠時間が5時間だと、身体が重く、会社に行きたくないって気持ちが出てくるので、出社するまでのルーティンは感情を殺して「無」で行っていた性格だ。
それがこんな美女たちと一緒に熟睡し、そして起こしてもらえるなんて…生きててよかったと感動を覚えるではないか…だが…
「…寝るの…邪魔しないで…って言ってるでしょ…」
「いい加減に起きてください~~~」
どうやら、私以上の寝坊助のようだ。やはり、上には上がいる。基本的にゲーマーというのは夜の住人だ。夜22時から4時ぐらいまでが、廃人の領域タイム。つまり、一番集中出来て効率的に活動出来る時間だと言っても過言でない。故に、ゲーマーが朝が弱いのだ。師匠がその類なんだろう。まぁ、自分もなんだが。
結局、唯ちゃんに起こされた師匠は、起きてからは最速で服を着替え、歯を磨きながら、髪を整え出した。器用だなぁ…。
私も出掛ける準備をするか。
「唯ちゃんは、用意を済ましたの?」
「はい。私は髪がショートなので髪を解くのもすぐですし、服は銀鶏さんのやつをお借りしました。」
よく見ると、薄紫色のワンピースを着ていた。唯ちゃんよ…。あなたは一応アサシンなんだから、もう少し動きやすい格好のほうがよかったのでは…。
と、小盛は汗を垂らしながら見つめていた。
それに勘づいたのか銀鶏が話し出す。
「あら、いいじゃない。似合ってるわよ。まるで勿忘草って感じね。」
「えへへ~。ありがとうございます~。」
薄紫のショートヘア―に藍色の瞳。そして、薄色のワンピースと色合いが偏る上に、不協和を呼び込むような色だが、唯ちゃんに対しては癒されるようなオーラを感じた。
「ちなみにですけど、私はワンピースしか持ってません。あしからず」
「ないのか~い」
仕方なく、小盛も白のワンピースを選定し「王道の清純セット」を着こなした。王道じゃなくて妃道か?
「髪はセットしないんですか~?」
「あ~、どうしようかなぁ…」
違う。「セットしない」のではなくて、「セット出来ない」のだ。困ったなぁ、中身が男ってことがバレてしまうなぁ。バレちゃ不味い訳じゃないが、今更伝えるのも嫌なので押し通したいところなんだが。
すると、唯ちゃんが「私が括ってあげますね~」と言い、髪型を整えてくるようだ。これはラッキーとしか言えない。
「何にします?」
「ツインテールでお願いします」
やはり、金髪ブロンドガールと言えばツインテールでしょ!「何よ?なんか文句ある?」「フン!あっち行きなさい。シッシ」とかツンデレ要素満載でモテオーラが出るに決まっている。これは何年経とうが荒びれない不動のキャラ演出なのだ!すると、
「じゃじゃ~ん。出来ました~~」
して頂いたのはポニーテールでした。ありがとうございます。唯ちゃんの概念はツインテールはポニーテールになるのか?サイドテールもポニーテールなのか?それとも、めんどくさかっただけなのか?
しかし、結んで頂いたことに文句は言うまい。ありがとう唯ちゃん。
「あら、似合ってるじゃない。健気な女子力が上がってるわよ」
師匠が褒めてくれた。
「えへへ~。ありがとうございます~。私ってそんな可愛くなりましたぁ~?」
小盛は、らしくない言葉遣いと共に、少しだけポーズを取り、右手の人差し指で顔をツンと突きつけ可愛さアピールを、唯と銀鶏に魅せつけた。
「さっ。朝ごはん行くわよ」
「は~~い」
一切の目線を合わす訳もなく、銀鶏は扉を開け出ていく。唯ちゃんですら、興味もなく銀鶏の後ろをついてまわった。
「無視すんなし…」
スルーされた小盛も仕方なく、朝ごはんの食事場へ向かい、3人で軽い朝ごはんを済ました。
朝食後、3人はメルンホワールから外へ出たのであった。




