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6話 酒場へ行こう2

 酒場での話し合いはまだまだ続き。廃人とは、上級国民のなれの果てということは唯ちゃんには理解してもらえたのである。


「はぁ…まぁいいわ。――――所で、あなた達は今日の寝床はある?って聞くのも変よね…一銭も持ってない訳だし。」

「ありませぇぇぇん。」


 唯は、つぶらな瞳で銀鶏に訴えかける。

 そんな私も、一銭もない訳ではないが、ここは便乗しよう。


「師匠の寝床にお呼ばれしますぅ~~。」


「はぁ…そうなるわよね。その予定だったけど。その代わり、タダとはいきません。」


「えぇぇーー!」



 唯と小盛は、大はしゃぎする。

 一銭もないのにどうしろというのだ。まさか…身体で支払えとか言うのではあるまいな。私の処女…いや、童貞が奪われてしまう。


「お待たせいたしました。コケッコーの刺身と焼きコケッコーの盛り合わせです。」


「ご苦労様~。さぁ、お食事も来た訳だし。頂くとしますか。遠慮せずお食べなさい。」

「はぁ~い。」


 さっきから思ったのだが、師匠はなんで上からの態度なんだ…。どっかの上級国民か。そういう性格は知っていたが。


「あの…師匠。遠慮せず頂くのですが、代金持ってなく宿屋に泊まるすらままならない、私達はどうやって支払えば宜しいのでしょうか?もしかして、身体での支払いとか言ったりしませんよね…?」

「あむぅ。ふむぅぎぃぃぃ」


 唯ちゃんがコケッコの刺身を食べながら、物を申している。てか、先に食うな。


「ふっふっふ…半分は正解よ。さぁーどう煮たり焼いたりしてあげましょうかしら…ふっふっふ。」

「・・・・」

 

 銀鶏が巧笑いをしながらこちらを見ている。


「私達食べても美味しくないですよ…恐らくゲロの味します。お風呂にも入ってないので…泥の味もします。」

「ふぎぃぃ。うんうん。」


 唯ちゃんは、食べながらコクコク頷く。食べながら同意するな。小盛は、唖然とする。


「あら、そうかしら?二人共容姿は整っているし。以外と食べたら珍味かもしれないわよ。まぁ、あなた達を食べても勿体ないだけじゃない。あなた達は明日から私の元で働いて貰います。それが対価よ。」

「なぁ~~~んだ。パクパク」


 唯ちゃんはホッとした態度で食事を続行する。私も安心したので食事を始めることにした。


「私は魔法ショップにいつも、マジックアイテムを収めてるの。その素材集めに、これから付き合って貰います。そのがてらに、あなた達がこの世界で食べていけるように調教――――じゃなくて指導してあげます。善意なる女神に感謝するように。」


 流石は師匠。口は偉そうだが、根は面倒見のいい方だ。まぁ…自分一人でも()()()やっていけるのだが、ここは甘えて…アレをしてもらおう。ふっふっふっふ

 小盛は一人で巧笑いをしていた。


 それから3人は軽い雑談を行い、食事を済ませ。酒場の上にある宿屋へと向かうことになった。

 酒場の上に宿屋って…いやらしすぎません?




――――――――――――――――――――――――



「三人部屋に切り替えたから、こっちよ。」


 銀鶏が部屋へ案内する。木で出来た扉で看板が鯨の形をしていた。中に入ると三人部屋にしては狭かった。ベットは1つ・・・鯨の形をした、でか~~いベットだ。お風呂はちゃんとあるみたい。日本と変わりない。無駄に大きなお風呂とシャワーが実在する。何故、お風呂にクジラのシチュエーションがないのか、小盛はツッコミを入れたかったが、やめておいた。


「明日は早朝に出発するから、先にシャワー入ってきなさい。後、シャワー浴びながらお風呂沸かしておくように。」

「はぁ~~い。ありがとうございます~。」

「はぁ~~~い。」


 ニコニコ。まさか、異世界でもお風呂に入れるなんて!――――とは思わない。何故なら初日だし、まだそこまで現実離れした実感がないのだからな。でも、少し麻痺をしていたが彼女達と接して、現実では一生味わえない、ほんわかな旅行気分は本当に最高だ。現実世界での社畜疲れをここで洗い流そう。こんな可愛い子達と一緒に寝れるなんて――…。なんて幸せなんだ。

 ん?待てよ。お風呂に入る。私…今、女なんだが…ついに見てしまうのか!自分の身体を。これはついに踏み込んではいけない領域に足を入れてしまうのか。だが致し方ない。これが本能である。とりあえず、落ち着こう。


「ヒナちゃん一緒に入る?」

「え?」


 一緒に入る?何を言ってるんだ?この娘は?一緒に入っちゃ駄目だろう。だって、あなたはJK。私は35歳のおっさんなんだから。だが、私はそれぐらいでは動じない。だって、大人だからな。でも、どうしても一緒に入りたいなら仕方があるまい。ありがとう神様。女として生まれさして来てくれて本当にありがとう。

では、遠慮なく。


「私、考え事をして入りたいからお先にどうぞ。」

「ふふふ恥ずかしがり屋なんですね。じゃぁお言葉に甘えてお先に失礼します~。」


 これが童貞である。チャンスを棒に振る。哀れな…何も言うまい。私は、人間として最善な行動を行っただけだ。しかし、人間の本能としたら・・・

 ブツブツと小盛は呪文を唱える。

 唯は一人お風呂場へと向かった。


「あら~、一緒に入ればいいじゃない。じゃないと私の入る時間が遅くなるし。」


 この人は、シャワー入りながらお風呂沸かせだの、一緒に入って順番を短縮させろだの、効率厨か。ちょっとはこっちの気にもなってくれ。

 小盛は、銀鶏に殺意を沸きながらも、話を濁すかのように質問した。


「ごめんなさい。ゆっくりお風呂に入って、明日の整理がしたいので。それより師匠。唯ちゃんが死んでた時なんですが、カウントが0になるとどうなるのですか?」

「率直に言うとわからない。」

「・・・・」


 銀鶏はベットに座りながら真面目に答えた。


「わからないというか、恐らくこの世界から消えるっていう事実だけは知っているわ。」

「っと申しますと?」

「私も何人かとパーティを組んだことがあって、不運にも全滅しかけたことがあってね。その時にいた、ある一人を蘇生し損ねてね。恐らく、教会に飛ばされてデスペナルティでもうけた程度と思ってたの。でも、いなかった。その亡くなった人はギルドにも所属してたらしいんだけども、それから一切見なくなったって言ってたわ。」


 小盛はゴクリと唾を飲む。つまり、この世界でカウント以内で助けなければ死ぬのか?

 あの時、唯ちゃんを軽くみて見捨てようとしていたが

 師匠が助けれていなければ唯ちゃんは・・・


「お待たせしました~!気持ちよかったです~!」

「はやっ。」


 小盛と銀鶏は、唖然と汗を垂らす。唯ちゃんにこの話は気まずいだろうと察したかのように、小盛はお風呂に向かった。


「唯ちゃんが早く出たんだから、あなたも早めにね。」

「お風呂も沸いてるので、どうぞ!私はシャワーだけにしました。」

「あら、お風呂は置いときなさい。一番風呂は私よ。入りたかったら、シャワー浴びて出て、私が入った後に、また入りなおしなさい。」

「わざわざ…二度風呂しません。」


 小盛はお風呂場で無意識に服を脱ぎ始める。

 この世界を舐めていたこと。現実世界とは違い、死が簡単に訪れること。そして、まだ仲間になりたてのメンバーを失うことを考えると恐怖した。


「廃人様も、油断すれば・・・天に滅しますね。もう少し慎重にいかないとだなぁ・・・」


 一人黙々と喋り、湯舟に浸かる。


「あれ?いつの間にか、お風呂入ってたけども…自分の身体見ても興奮しないな?そりゃそうか…自分の身体だし…てか、お風呂入っちゃった。師匠に怒られる…でも、やっぱりお風呂は気持ちぃぃ~」


 一人の少女は、お風呂を堪能したのである。


「お待たせしました~。師匠どうぞ~。」

「あら~結構長かったわね。もしかして、長風呂派?湯舟には浸かってないでしょうね?」

「ちゃんとシャワーだけですよ。」


 嘘をつきながら、銀鶏とお風呂を交代し、唯ちゃんと寝る場所の話し合いをした。

師匠は、くそなが~~~~いお風呂を済まし、就寝することに。


「さぁー。明日も早いから寝るわよ。」

パチン


指を鳴らすと共に、灯りが消え


「お~~~~すごーーい。」

「いいから寝るわよ。」


その日の夜が終わったのである。

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