5話 酒場へ行こう
「銀鶏さんですよね!私です!ヒナリンです。わかりませんか?」
銀鶏は首を傾げて、考える素振りをみせた。
「あー。ヒナリンちゃんね!知ってる知ってる。元気にしてた~?10年ぶりね!元気にしてた?」
何やら棒読みに聞こえる。まさか忘れてしまったのであろうか。
「本当に覚えてますか…?一生、ピヨピヨスライムをメテオしてたヒナリンですよ~。」
「あ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~。」
ようやく思い出してくれたようだ。
「あの害悪少女のヒナリンね。懐かしいわねぇ~。まさか会えるなんてね。とりあえず、隣の冒険者さんも困惑しているから、酒場に行きましょう。夜も近いしね。」
隣にいる見習いアサシンはのけ者にされ「ポカーン」と立っていた。申し訳ない。身近に知人がいて舞い上がってしまった。
「いえいえ、大丈夫です。あの…私もご一緒しても宜しいでしょうか。恥ずかしい話ですが…怖くてずっと一人で、挙句の果てにこの始末でして…」
「もちろんよ、行きましょう。」
都市メルンビルクの酒場へ向かうことになった。
「やった~。師匠の奢りだ~~~。」
「何言ってるの。貸しよ。」
「・・・・・・」
3人はメルンビルクの南の方にある。酒場「メルンホワール」に到着した。
「いらっしゃいませ~!メルンホワールへ!何名様でございますかぁ~?」
「3名で、あっ。あそこのテーブルでいいわ。」
「はいっ。かしこまりました~。」
3人はカウンターテーブルのすぐそこの四人テーブルへ座った。
「なんで、あなたこっちに座るのよ。そちらのアサシンちゃんの隣に座りなさい。」
「あっ。はい…」
「あははは」
(謎に師匠に怒られた。師匠はとてもいい人だが、人と接するのが嫌いな方だ。だから、人のパーソナルスペースは保っている。だがそこがいい。自分もそうだからだ。)
「まずは飲み物をお願いしま~す。」
定員さんがドリンクオーダー頼んできた。
「私はレモンスピリッツを1つ。」
「師匠お酒飲むんですね。じゃぁ、私もそれにしてください。」
「お客様…すみません。そちらの方の年齢確認証明書をご提示して頂きたいのですが…」
「はぁ…?」
「当り前じゃない、あなたどっから見てもおこちゃまじゃない?」
(いやいや、中身は35歳のおっさんだっちゅーの!この乙女丸出しの少女じゃ、酒も飲めないのか!糞が!)
「ありません。」
「アサシンちゃんと同じものにしてなさい。同じ年頃なんだし。」
くそ~~~。無駄にお酒ルールはあるのかぁ~。無念すぎる~~~。
「じゃぁ、私は烏龍茶でお願いします。」
アサシンちゃんはつぶらな瞳でそう答えた。
「そんなものないわよ…ここは日本でも中国でもないわよ…」
「え~~~~~~(泣」
銀鶏は落胆し定員さんにレモンジュースを二つ頼んだ。
「かしこまりました~・・・。」
定員が困惑しながら去っていった。酒場ルールなんかゲーム上にはなかったぞ。ちゃんとしろ運営!まぁ、ゲーム内じゃ飲み食い出来ないのだが。
「で、改めて自己紹介します。私は銀鶏。銀の鶏って書いてギンケイよ。個人で旅をしている魔女って所ね。あまり、人と関わりを持たないから聞きたい情報はそこまで持ってないわよ。ここに来たのは1カ月前ぐらいかしらね。最初は、混乱したけどもワールドオブエンドの世界と知って、すぐ慣れたわ。」
銀鶏はサラっと自己紹介をした。それに続いて、アサシンちゃんも即自己紹介した。
「わ・・わ・・わたしは、篠森 唯と申します。前いた世界では高校生をしてました。友達に誘われて少し触ったんですが…よくわからなかったので、即辞めたんですけど…寝ているといつの間にか…ここにいました。」
「本名で名乗るのね…。まぁ聞いた感じ、こういうゲームは初めてで飛ばれたようね。」
まだ、新規参入がいたのか…しかも、そこまで興味がなかったのに、こんな訳の分からない世界へ飛ばされるのは可哀想すぎる。泣いちゃう。私がこれから面倒見てあげよう。リアルJKだけに!まさに外道。
「あとは、ヒナリンだけよ。」
「えっと、ですね。」
自己紹介するのだが、なんか嫌だな。実はおっさんでネカマなんですぅ~。って公開するにも気が引けるし、ある程度伏せて話をしないとひかれるかもしれない。てか待てよ。師匠も10年前の出会いだし。この唯ちゃんだって、勝手にリアルJKと決めつけたが、実はリアルDKの場合だってある。危なかった~~…今はそんなこと言ってる場合じゃない。
「私はヒナリン☆魔法少女に夢見る少女!16歳。キラ☆」
「あーはいはい。そういうのんいいから。ネトゲ廃人の小盛さんですよねぇ~。」
冷めた目で、本性を知ってるかのように、洗い流した。
「・・・・・はい。私は現状ヒナリンと申します。別にコモリンでもいいです。10年このゲームをしてたトップランカー廃人です。寝ている間に、今日転生し、とりあえず、やれることをやっていた所存であります・・・」
「今日なんですね~!私も一緒なんです~!身近に同期がいて助かりました~。これから仲良くしましょうね!」
唯は雛見沢の手を握り、手を振るように喋る。
お~~~これが無垢なるJKの慈悲なる愛情か…そういえば、唯って名前だから…男でないよな…。確定ですよ。これは。私が一生かけて守りますよ。うん。
「お待たせしました~~!食べ物はどうされますか?」
「いつものを適当に並べて頂戴。」
レモンスピリッツが1つにレモンジュース2つが配られた。
「まぁ、自己紹介的なにかが済んだ所で、乾杯しますか。かんぱーい!」
3人は乾杯と共に飲み物を飲む。ゴクゴクゴク。すっぱ。酸っぱい。
少し飲んで、唯がモノを申した。
「所で、トップランカー廃人ってなんですか?」
「ぶ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
「汚いわよ…こちら向けて吐かないでくれる…」
ゲホゲホ…何を言い出すと思いきや…忘れていたよ。無垢なるJKよ。廃人とは何か…伝えるべきではなかったか。
「廃人というのはね。」
「あ~~~~私が自分で説明します。」
銀鶏が説明しようとした所に、雛見沢は被せて、話をした。
「廃人というのはですね。中世ヨーロッパの時代に、侯爵の子供達が英才教育を受けて、その後厳しい試練を超えて上位の地位を確保した、なれの果て達のことをさすんですよ~。」
「へぇ~。そうなんですね~!廃人と言う名だったから、壊れた人なのかと思いましたよ。ヒナちゃん凄い方だったんですね!」
「全然違うわよ…」
銀鶏は、またレモンスピリッツを軽く飲み、こちらを見てくる。
雛見沢は、ウインクの連打で師匠に訴えかけた。
「全然可愛くないわよ。」
酒場での話はまだまだ続くのである。




