1話 プロローグー転生して転換へー
「おい、雛見沢。今日は残業か?」
「いえ、今日は用事があるので定時帰るつもりですが。」
「あー。別に定時で帰るのは結構だが…ノルマは達成するのだろうなぁ?今月、定時で帰ろうとするのお前ぐらいだぞ?周りのことも考えろよ?」
殺伐とした空気から電話の音が鳴り響き、周囲からの目線を感じる。
「残業します…」
俺の名は、雛見沢 小盛 35歳。独身。大手通信会社の委託業務の派遣社員をしている。たかが派遣だが、半強制的な圧をかけられ残業を毎週している。断ることは可能だが、月に決められたノルマ数を達成しなければ契約を満了させられる成果主義の会社で務めている。営業職に就いてるがコミュニケーションは得意ではない。どちらかというと人と接するのが嫌いだ。媚を売り、聞きたくない話をヒヤリングして、契約を結びつける仕事をしている。
帰宅するのはいつも、22時頃。コンビニで買ったお弁当とサラダを貪りながら、22時半には、シャワーを浴びる。一日の疲れを落としきれるはずもなく、シャワーを済ます。23時からやっと自分の時間だ。
少ない時間だが、俺はゲームが死ぬほど好きだ。こう言っちゃなんだが、20代の時にプレイしていた。
『ワールドオブエンド』という多人数型オンラインゲームでは、自称トッププレイヤーと言っても過言ではないぐらいプレイしていた。最初は、「どんなゲームなのか?」っと好奇心で始めたゲーム。世界が壮大に広がるマップ、そして、中には信じれないぐらいの人が飛び交っていた。その世界に俺は引き込まれ。いつしか、最強という文字だけを追いかけた。寝る間も惜しまず、休日も返上し、当時大企業で務めていた給与、そして賞与含むお金を全て課金へ費やし。レベル・武器共に、一般人が成し得ない境界まで成り上がったのだ。
現実世界から逃げ、仮想の世界で生きる人間のことを廃人と呼ぶらしい。俺はその部類に入るのだろう。ゲーム内では、同じ人成らざるものが集い、研鑽し、高みを目指したものである。一般プレイヤーからも憧れ、時には嫉妬を抱かれ、女の子達にもキャーキャー言われてた気もする。正直、悪い気はしなかった。
だが、時は残酷だ。まさに青春の20代を全てその、『ワールドオブエンド』に時間を費やしたのである。20代後半にはもう、完全に飽きていたにも関わらず、最強の維持をしていた。だが、諸行無常とはよく言ったものだが、30代に入った時には、現実が押し付けられ。仕事もポンポン辞めれる訳もなく。周りが結婚していく中、俺だけが名前の通り『廃人』であるかのように取り残されていた。その反動のせいか、仕事も難職に辿り着き、ここでやっていくのが精いっぱいな状況な訳だ。ここを辞めれば生活が破綻する・・・
さらに、異性関係も全く家を出ることもなく。出会いという出会いを一切していない。合コンや誘いに誘われて行ったことはある。女性と話すと急に感情が高ぶるとか極度のコミュ障ではない。
だが、自己紹介の二言目にはゲームの話をすると、彼女たちは俺のパーソナルスペースから去っていた。ひいていたのであろう。
故に、俺は『童貞』だ。
ゲーム内では、キャーキャー言われていたが、これは違う意味ではないのか?っと錯覚を起こしてしまいそうだ。当時、両親は結婚をしろだの。恋人をつくれだの散々言われて来たが、今となっては、何かを悟ったかのように、そういう話はしなくなった。すまないマザー。こんな童貞野郎を育ててくれて。
何か優れた能力も見出せず。愛を知らないまま育ち。唯一、俺の生きがいのゲームでさえ・・・
「あーーーー。プレイ量が違うから全然勝てね~~~!なんだよこれーー。勝ち方わかるが、時間と金の暴力じゃねぇかぁぁぁーーー。」
ブラック企業の恩恵か、楽しいはずだったゲームでさえ…楽しいというには、複雑であった。
「いつから…こうなってしまったんだろう…。廃人とは…まさに…こういう…こ…zzz」
俺は、過去にひたりながら…眠りにつく。寝たら明日も仕事だが…疲れた身体には勝てない。
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あれ?目覚ましがならないぞ?はっ!
これは、遅刻フラグ!!ノルマがやばい!!
雛見沢は、咄嗟に起きだす。
が
「はっ!今何時だ。何時だ…何時~~~~」
周りを見渡し、周辺を確認したが、草・草・草・・・草しかない!
暴れまわって落ちたのか・・・ん?
手がやたら小さく感じるな?てか、こんな綺麗な手をしていたかな?
そんな訳が?
っと、頭をかいた時に違和感を感じると共に、先ほど出した声量で気づく。
「この髪はなんだ~~~~~~~~~~~~。てか、女声になってるぅぅ~~~。」
雛見沢は気が動転した。髪の毛が肩以上あり、視界に映ったのは、ブロンドヘアー。そう金髪だ!ゴリゴリの!
格好を見ると白と水色のフリルがついた可愛らしいワンピース。靴下は幼女が履きそうな白フリルに、靴まで黒の皮靴だ。
なんだ。夢か?おっさんが疑似幼女になれる体験する夢かと思い、雛見沢は胸を確かめる。
「うん。ない。やっぱり夢か・・・よかった・・・」
「よくないわ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~。」
嘆いて正気を取り戻す雛見沢。依然として夢から起きないこと、自我があること…冷静になり、あるものを調べる。
ゴソゴソ
「うん。ない。やっぱり夢・・・」
「では、ないわぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~。」
この嘆きは嘆きではない。確信であることへの喜び…そう!
叫びだ!
待ってましたよ!というばかりに、叫んでしまったのである。これが俗に言う。
異世界転生だ!!
知ってますよ。うん。知ってますよ。おじさんは知っています。神がいることが。
やっぱり、あったんだ。異世界が!
特殊能力を与えられて、チートでバンバン薙ぎ払い。上級国民確定だねっ。
別に特殊能力の恩恵なんて要らないさ。この世界では、私は身体一つでチートみたいなものさ。
雛見沢は、激涙する。
「うぅぅぅ。」
だけど。
「なんで、女の子なぁぁぁんだぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~。」




