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血液狂者 -Blut verrückt-  作者: 鳥頭
序章 男と獣
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0-1

暗い夜風に鉄錆にも似た匂いが舞う。

その香りを嗅ぎながら、男はどこか心が平静を取り戻していくのを感じる。


街灯一つなく、夜天すらも厚い雲が覆いつくし、漆黒の帳が辺りを埋め尽くしている。そんな中において、男の恰好はまるでその脆弱な肉体を目の前の"獣"から隠しこもうとするかのように、黒一色だった。


ボサボサにくすんだ金色の髪はソフトフェルトハットにしまい込まれ、首元から足先までは真っ黒のレザーコートに包まれている。靴すらも徹底的に黒塗りのレザーブーツに覆いつくされ、手まで黒のレザーグローブで梱包する入念さだ。唯一露出している顔だけは対照的に白く、底だけをみるとまるで顔だけ闇の中を漂っているかのようにも見える。


まるでハロウィンの仮装のような恰好をしながら、鉄錆の匂いを精神安定剤にしつつ男は"獣"と対峙する。


闇の中にあってなお目立つ深紅の毛を逆立たせ、その下にはなお紅い双眸が爛々と輝いている。

四肢は関節部を曲げた状態で大地に食い込み、その肉体を男へと差し向ける準備がなされていることが見て取れる。


刹那。


その折れそうなほどに細い四肢のどこにそれだけの力があるのか、数mほどあった両者の距離は瞬きの間に0となる。男はそれを腕を使い防ぎ、ガキンと硬質な音を響かせながら後方へと流す。コートの下に金属でも仕込んでいるのか男の腕は"獣"の歯牙を防ぎきる。


ポタリ


だが、男は無傷ではなかった。頬からツゥと一筋の赤い筋が流れ、辺りの匂いへと混ざっていく。"獣"の歯牙は男には届いていなかったが、唯一晒された男の顔には確かな傷が残った。


ふと、雲の切れ間から闇の中へと光が差し込み、二人を照らす。光に浮かびださせられた"獣"の姿は異様であった。


年の頃は10台に入ったばかりだろうか、細く、小さく、背を伸ばしても身長は140cmに届かないだろう。そんな少年が、獣の正体だった。

いや、それだけならばまだ理解はできただろう。異様なのは、そんな少年が獣のような雰囲気を纏う以上に異質なのは、その周囲にあった。


赤く、赤黒い幾筋もの線が少年の周囲にはただよっていた。それは自らの意思を持つかのように流れ、少年の周囲を回っていた。


それは、周囲と同じ匂いを発しており―――まぎれもなく、血液だった。


「フン、他人のだけじゃなくて自分の血液まで操れるのか、化け物め。おまけに人の血までかすめやがって、手癖の悪いガキだ」


男は自分から流れ出た血液が浮き上がり、少年の元へと漂う様を見て呟く。先ほどの一撃はどうやら血液によって切られたらしい。そして流れ出た血もまた、少年の武器として自分の元を離れていく。


出血量を抑えるためか補足研ぎ澄まされたそれらは視認しづらく、現に先ほどまでは見えてすらいなかった。このひと時の明りを失えば、再び見失うだろう。おまけに、どんな原理で動いているかも不明な流体だ。動きも予想できない。まさか霧のように細かくなってまで人の肌を切りつけたりはできないと思うが、ある程度は細かく、それこそ榴弾のように襲い掛かってくる可能性もある。


接近すれば最悪全方位から見えない刃で切りつけられるかもしれない。おまけに、切られれば切られるほど相手の武器は増える。

だというのに、自分は今銃を持っていない。武器となるのは己の体のみである。


男はそんなことを考えながら、しかし一切逃げるそぶりも思考も持たず、少年を見据える。


目の前の、紅い眼をした碧い眼の少年を。

ここまで読んでしまった方々、はじめまして。鳥頭です。

初投稿ですので正直続くか心配ですが暫くの間は一日一話かせめて二日に一話投稿できればなーと思っております。書き溜めなんてない。

なろうに限らずラノベ類は女性キャラクターが多い気がするのですが、あえて女性キャラクターは少な目で行きたいとおもっております。でも同性愛じゃないので安心してくださいね。

次回は一旦過去の時勢にもどってハンスがタイーホされるところから入っていくかとおもいます。少しでも興味をもっていただけたらどうぞよろしくお願いいたします!

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