第6話
「ぅ‥」
急激に意識が闇から浮上してくる。
「エミリー!!」
「ぁあエミリー!起きたのね!」
起きた瞬間、周りが騒々しすぎたせいで一気に脳が覚醒した。
目の前で心配そうにこちらを見ている美男美女は、記憶が間違っていなければ確か悪役令嬢エミリアの両親のはず。
両親のどちらもエミリアと同じ緋色の髪と瞳をしている。特別若いわけではないはずなのに、年齢を感じさせない系の美形の類だ。
そんなふたりから産まれた子供のエミリアは当然美しい。でもお先真っ暗な人生が確実に待っているのだ。かわいそうに‥。
とか他人事みたいに思って現実逃避してみたけど、意識を手放す前に鏡に映った少女が誰なのか、夢を見た今だから嫌でもわかってしまった。そして、激しい頭痛で思い出したこの体の記憶が私に現実を容赦なく伝えてくる。
極めつけは目の前の二人が私を見ながら、エミリアの愛称のエミリーと呼んだこと。
私、悪役令嬢のエミリア・メーガン・ヴェルツナーに転生(?)してしまった…ってことなんだよね…
そして、ここはきっとミスプリの世界なんだろうなぁ、多分…(遠い目)
♢
「エミリー、どうかしたの?」
降って湧いた現実に呆然としていたら目の前の女性が心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
頭は混乱しているままだけど、とりあえずこの場を取りなさないと。
「なんでもありませんわ、お母様」
「そうかしら…?」
お嬢様口調が出来るか不安だったけど無意識にさらりと出てきて安心した。
…っていやいや、安心している場合じゃない!
ここは十中八九ミスプリの世界の中だ。
…といいつつも、前世(?)では死んだ覚えは無いので夢だということを期待しておく。
とにかく、今の状況次第で今後の私の未来が変わってくる。
「それにしても、エミリーったら一週間も起きなかったから、本当に心配したわ」
「一週間…」
「ええ、その間ジオルドが本当にうるさ──」
ばぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっっっっっ!!!
「エミリぃぃぃいぃぃぃい!!!!!」
「ひゃわぁぁあっ?!」
けたたましい音を立ててドアを蹴破るように入り叫びながらこちらに直進してくる男の子に、驚きで肩が大袈裟なほどに跳ねる。
…ひゃわぁって。
それにしてもこの男の子、どこかで見た気がする。それに、今の流れからすると───