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幕間その10 ネーデルラント

時間をやや遡る

 スペイン領ネーデルラント

腹心『ファルネーゼ様、国王陛下より手紙が届いております』

ネーデルラント総督アレッサンドロ・ファルネーゼ『ご苦労』


 手紙を読むファルネーゼ

ファルネーゼ『イサベル様が、噂の日本人を連れてこちらにいらっしゃるそうだ』

腹心『王女殿下が、ですか? 一体何をされに?』

ファルネーゼ『日本から来る援軍をここまで案内するらしい』

腹心『援軍?!』


 手紙を渡すと腹心は一心不乱に読む

腹心『日本と言いますと、バチカンから神の奇跡と認定された、あの日本でございますよね?』

ファルネーゼ『そうだな。突如として大西洋に現れた、あの日本だ』

腹心『その日本から援軍が来る? (戦場で)使えるのですか?』

ファルネーゼ『さあな』


腹心『それはそうと、どうして王女殿下がお連れになるのです?』 

ファルネーゼ『陛下の真意は分からぬが、新大陸との交易を考えれば日本を重要な国と判断され、相応の者を応対させているのかもしれぬ』

腹心『しかし王女殿下には、神聖ローマ帝国皇帝という婚約者がいるではありませんか……』

ファルネーゼ『娶るそぶりすら見せない婚約者だがな』

腹心『それとこれとは話が違いましょう!』


腹心『未婚の王女が異国の男達と共に旅をするなど、口の悪い者達が何と噂する事やら……』

ファルネーゼ『それは今更だろう。イサベル様はヨーロッパに来た日本人が国へと帰る際、共に日本へ渡ったとか』

腹心『ただの噂ではありませんか? にわかには信じられません』

ファルネーゼ『その話の真偽は兎も角、日本人と親しくされているのは事実なのだろう。ユグノー戦争で揺れるフランスを通り、援軍をここまで案内してくるくらいだからな』

腹心『仲が悪ければ旅など出来ないでしょうね』


 ふと腹心が思いつく

腹心『まさか、ファルネーゼ様の手柄を奪うつもりなのでは?』

ファルネーゼ『どういう意味だ?』

腹心『アントウェルペンもこのブリュッセルも、ファルネーゼ様の指揮があったからこそカルヴァンプロテスタントから奪えた町です。そこへ王女殿下が乗り込んで、己の功績とする事を狙っているとか』

ファルネーゼ『止めぬか! 思いつきを軽々しく口にするでない!』

腹心『申し訳ありません』


ファルネーゼ『仮にお前の危惧する通りだったとしても、私は一向に構わない。矮小なるこの身の栄光など、偉大なる祖国の繁栄にとっては些事に過ぎん』

腹心『しかし!』

ファルネーゼ『くどいぞ! この身は王国へ捧げると決めた。私は陛下の決定に従うのみだ』

腹心『ファルネーゼ様の御心のままに』


 現在のネーデルラント中心都市ブリュッセル

家臣の一人『ファルネーゼ総督! ロッテルダムからアントウェルペンに向け、カルヴァン派の兵が向かっているとの報告です!』

ファルネーゼ『ご苦労』


ファルネーゼ『近々来るだろうとは思っていたが、よりによって今か』

腹心『王女殿下が到着されるのは、早くて一週間後との事です』

ファルネーゼ『一週間は待てぬ。今すぐ部隊を出すぞ』

腹心『わかりました』

ファルネーゼ『併せて敵の陽動を考え、別ルートから近づいていないか警戒せよ』

腹心『かしこまりました』


 アントウェルペン

ファルネーゼ『状況は?』

守備隊長『カルヴァン派のやつらは町の郊外にある、あの森に陣取っています』


 隊長が城壁の上から指さす

ファルネーゼ『城壁の修理はどうなっている?』 

隊長『修理が終わっているのは全体の7割です』

ファルネーゼ『7割か……。壊し過ぎたな』 


 アントウェルペンはファルネーゼ率いるスペイン軍が攻撃し、占領

ファルネーゼ『敵の数は?』

隊長『正確ではありませんが、およそ8千です』

ファルネーゼ『8千……』

腹心『どうされますか?』

ファルネーゼ『これ以上町の破壊が進むと不味い。町から出て迎え撃つぞ』

腹心『分かりました』


 郊外で両陣営は相対

伝令その1『大変です!』

ファルネーゼ『どうした?』

伝令その1『町の背後に正体不明の部隊、およそ3千が出現しました!』

ファルネーゼ『何?!』


 ファルネーゼは腹心を見る

ファルネーゼ『敵の別部隊か?』

腹心『いえ、そのような報告は入っておりません!』

ファルネーゼ『ならば今すぐ偵察を出し、正体を探るのだ!』

腹心『分かりました!』


伝令その2『ファルネーゼ様! カルヴァン派どもが動きました!』

ファルネーゼ『正体不明の部隊が現れた途端に動いた、のか?』

腹心『連携しているという事ですか?』

ファルネーゼ『偶然かもしれん』

腹心『どうされますか?』

ファルネーゼ『ここで兵を二分する訳にもいかん。町の残存兵力を総動員して警戒に当たらせ、今は町の防備に専念させろ!』

腹心『町を攻撃すると見せかけ、我らの背後を狙う可能性はいかがしますか?』

ファルネーゼ『その時には町から出て敵を挟撃だ!』

腹心『直ぐに伝えます!』


 戦端が開く

ファルネーゼ『偵察はまだ帰らんのか!』

腹心『しばしお待ちを!』

ファルネーゼ『これでは正体が分かるまで迂闊に動けんぞ!』

腹心『カルヴァン派も動いた割には手を出してきませんね』

ファルネーゼ『様子を見ているのか?』


腹心『偵察が戻って参りました!』

ファルネーゼ『よし! それで、敵か味方か?』

腹心『味方、それも日本の援軍です!』

ファルネーゼ『何?!』

腹心『王女殿下もご一緒されているようです!』

ファルネーゼ『イサベル様が?! 来るには早過ぎるだろう? 本人なのか?』

腹心『これを』


 腹心は伝令が持って来た”それ”を見せる

ファルネーゼ『これは?!』

 

 ”それ”は王族である事を示す証拠の品

ファルネーゼ『本当にイサベル様か! しかし、1週間の距離をどうやって?』

腹心『急いで来たそうです!』

ファルネーゼ『急いで?!』


 ふと日本の援軍を見て驚く

ファルネーゼ『もうあんなところまで迫っているのか!?』

腹心『急いで来たというのは本当のようですね』


ファルネーゼ『それで、援軍はどうすると?』

腹心『その事ですが、王女殿下より伝言を預かっております!』

ファルネーゼ『伝言? どのような内容だ?』

腹心『我らの部隊を左右に分け、中央を開けて欲しいと』

ファルネーゼ『中央を? 何故だ?』

腹心『開いた中央から敵陣を突破するそうです!』

ファルネーゼ『中央から?!』

腹心『その後、左右に分かれた我々が敵を取り囲み、撃破するようにと』

ファルネーゼ『本当にイサベル様がそのような伝言を?』

腹心『それが日本人の立てた策だと』

ファルネーゼ『誠か……』


腹心『どうされますか?』

ファルネーゼ『実力も分からぬ者らの言葉を信じる事は出来んが……』


 ファルネーゼは迫りくる日本の部隊をチラリと見る

腹心『少なくともあの進軍速度は普通ではありませんね』

ファルネーゼ『否定はせぬ』

腹心『このままでは我が軍に向かって突撃してきそうです』

ファルネーゼ『……部隊を左右に分けよ』

腹心『分かりました』


 スペイン軍は町へと延びる小道に沿って部隊を二つに分け、接近する日本軍に道を譲るように中央を開けた

 その間を、派手な色合いをした、甲冑姿らしき者達が駆け抜ける

スペイン兵その1『あれが噂の日本人なのか?』  

スペイン兵その2『というか本当に人間?』

スペイン兵その3『馬に乗った奴は頭からつのが生えていたぞ!』

スペイン兵その4『俺も見た!』


 日本の部隊は敵陣へ、真正面からぶつかる

 鉄砲の発射音がいくつも鳴り響き、新教徒側は混乱した

新教徒兵その1『何だこいつら!?』

新教徒兵その2『黒い鎧に黒い兜だと?!』

新教徒兵その3『得体が知れねえ!』

新教徒兵その4『気味が悪いやつらだぜ!』


 スペイン側

腹心『敵主力が後退しています!』

ファルネーゼ『よし! 左右から囲むのだ!』

腹心『分かりました!』


 スペイン側の勢いに押され、遂に敗走を始める新教徒軍

腹心『敵が退却していきます!』

ファルネーゼ『追撃だ!』


 スペイン軍は勝利を確かな物にした

 アントウェルペン庁舎

信長『貴国との約定に従い、助太刀に参った』

ファルネーゼ『援軍、感謝する』


 以降、日本軍の活躍によってネーデルラントにおいてスペインはその領地を増やしていく

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