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幕間その2 ザ・ヴァージン・クイーン

 イングランド王国に渡った伊達政宗ら。

政宗「そろそろ帰ろうかな」

景綱「それは妙案! この国は十分に見て回りましたからな!」

政宗「嬉しそうだね」

景綱「正直、この国の食べ物には飽き申した……」

政宗「言いたい事は分かるよ。味が単調なんだよね」

景綱「流石、若! 良くお分かりで!」


政宗「ところで景綱はさ」

景綱「何でしょう?」

政宗「伊達家に忠義を尽くせる?」

景綱「藪から棒に何を言われるのです! この景綱、若の為なら命など惜しみません!」

政宗「やっぱり景綱がいて助かったよ」

景綱「勿体なきお言葉!」

政宗「それでなんだけど、伊達家が奥州を支配する為に、景綱には是非ともやってもらいたい事があるんだ」

景綱「伊達家の未来の為ですか?! 一体何でしょう、若!」


政宗「その為にはこの国に残る必要があるけど、出来る?」

景綱「この国に? 私一人が残るのですか?」

政宗「そうなるね」

景綱「一人でこの国に……」

政宗「景綱しか出来ない事なんだよ」

景綱「やり申す!」

政宗「そう言ってもらえて助かるよ」


景綱「何をやれと?」

政宗「その前にあの女王様の事だけど、景綱に惚れている事は気づいてる?」

景綱「それがしに好意を持っている事は分かりますが……」

政宗「気づいているんなら話は早いよ」

景綱「一体何です? イングランドの女王が関係するのですか?」

政宗「察しがいいね」


政宗「やってもらいたい事はそこまで難しい事じゃないと思う」

景綱「と申しますと?」

政宗「夜這いでも何でもいいから、あの女王様を抱いて欲しいんだ」

景綱「何ですと?!」

政宗「好きな男に抱かれるのは女の幸せとか、この国の人々は言ってるよね? 景綱にはそれを叶えてもらいたいんだよ。出来れば子供も欲しいところだけど、あの女王様は50近いんだってね。歳が歳だから子供は厳しいかなぁ……」

景綱「あのぅ、若、一体何を仰っているのです?」

政宗「この国は女でも王になれるんだから、男の子でも女の子でも構わないんだけどね」

景綱「お待ち下され!」

政宗「どうしたの?」 


景綱「人の上に立つ者が色恋なんぞに惑わされてはなりませぬ! 国の行く末を思い、あるべき道を進むべきです!」

政宗「えっと景綱、それって……」

景綱「若は伊達家の繁栄だけを考え、それを叶える為の道を進むべきです! この国の事など心配する必要はありません!」

政宗「早とちりが過ぎるよ」

景綱「早とちり?」

政宗「全ては伊達家の為なんだよ」

景綱「一体全体どのように?」


政宗「景綱はこの国の跡継ぎ事情は知っているよね?」

景綱「今の女王は未婚で子供がおりませんので、皆頭を抱えているそうですね」

政宗「そうだね」

景綱「そしてこの国には王位継承者がいるのでしたな」

政宗「だね。その中には、今の女王様の正当性にかねてより疑義を呈している、幽閉されているメアリー・ステュアートの子供にも、立派な王位継承権があるみたいだよ」

景綱「メアリーとやらもスコットランドの女王でしたな」

政宗「今は息子のジェームズに王位を譲っているけどね」


景綱「流石は若です! しかし、それが何か?」

政宗「伊達家が縁を持ったのは今の女王様だよ。このまま女王様が王位を譲りでもしたら、たちまち築いた縁も失うさ」

景綱「成る程、そう言われてみればそうかもしれません」

政宗「だからもっと強い縁を築いておかないとね」

景綱「それが、某に女王を抱けという命令に繋がるのですか?」

政宗「女王様が子供でも産めば、その子が跡継ぎになるだろうからね」

景綱「理屈は分かりますが、某とは身分が違い過ぎますよ?」

政宗「構うもんか。それこそこの国の問題でしょ?」

景綱「若は人が悪ぅございますな」

政宗「全ては伊達家の為さ。イングランドの力を使って奥州をまとめあげるんだ!」

景綱「若……」


政宗「じゃあ、景綱、達者でね」

景綱「本当にお一人でお帰りになるのですか?」

政宗「当たり前でしょ」

景綱「そ、そうですよね。分かってはいるのですが……」

政宗「帰りたくなった?」

景綱「い、いえ、伊達家の為にこの身を尽くすのは本望です!」

政宗「そこまで無理をしなくてもいいんだけど」

景綱「無理ではありません!」

政宗「そう? じゃあ頑張って」


政宗「時期を見て呼び戻すから、それまでは頼むよ」

景綱「若のご期待に応えられるよう、死力を尽くします」

政宗「気負い過ぎだよ。下手に振舞うと周りから暗殺されちゃうよ?」

景綱「そ、そうですな! 慎重に振舞います!」

政宗「慎重かつ大胆に頼むよ」

景綱「お任せあれ!」


 こうして、景綱は一人イングランドに残った。


 そんな事とは知らない女王エリザベスは、部屋の中で一人涙に暮れていた。

 

エリザベス『とうとう景綱様のお帰りになられる日が来てしまったのですね……』


 家臣らが止めるので見送りには行けない。


侍女『エリザベス様はずっとあのお調子です』

家臣その一『問題ない。国へ帰った男の事などすぐに忘れてしまうさ』

家臣その二『そんな事よりも、女王陛下の暗殺を企む動きがあると、秘密警察から報告が入っている。この宮殿の警備を含めて厳重にせねば』


男の声『お頼み申す!』

家臣その二『何だ?』

エリザベス『この声は!』

侍女『エリザベス様?!』


エリザベス『やっぱり景綱様だわ!』

景綱『これはこれは女王陛下。お恥ずかしながら戻って参りました』

エリザベス『一体どうして?』

景綱『……実は、仕えていたあるじからお前の顔など見たくないと言われ、船から下ろされてしまいました』

エリザベス『まあ!』


景綱『折り入って女王陛下にお願いがあり申す』

エリザベス『何でも仰って!』

景綱『無一文で放り出された故、今夜の宿さえ事欠く有様。庭掃除でも何でも構わぬので、是非ともここで雇って頂きたい』

エリザベス『ええ、ええ、勿論ですとも!』

家臣その一『いけません、陛下!』

家臣その二『そうですぞ! 軽々しく人を雇うなど!』

エリザベス『黙りなさい!』


景綱『親愛なる女王陛下、そのような物言いは如何なものかと存じ上げる。人の上に立つ者は、下で支えてくれる者あってこそですぞ』

エリザベス『そ、そうですわね。言葉が過ぎました。謝罪します』

家臣その一『い、いえ、我々も出過ぎた真似を……』

家臣その二『そ、そうですな。景綱殿は昨日までの客人。仕える主人から解雇されたとて、見捨てるのも情がない』

侍女『女王陛下が素直に謝るなんて……』


 その後。

家臣その一『どうしたものか』

家臣その二『あのまま国に帰っていればいいものを……』

家臣その一『一人きりは哀れだと、自室に泊める勢いの女王陛下だ』

家臣その二『こうなったら已むをえまい』

家臣その一『待て!』

家臣その二『どうした?』

家臣その一『誰か来る!』


官吏『ご報告します!』

家臣その一『どうした?』

官吏『アイルランドで大規模な反乱が発生したとの事です!』

家臣その二『何だと!?』


家臣その二『アイルランドの反乱、使えないか?』

家臣その一『何に使うというのだ?』

家臣その二『いやなに、戦場では誰が死ぬか分からんよな?』

家臣その一『そういう事か!』

家臣その二『日本から来た戦士殿に、この国の戦場を経験して頂くとしよう』


 次の日。

家臣その一『女王陛下、アイルランドで大規模な反乱が発生しましたぞ』

エリザベス『何ですって?!』

家臣その二『速やかに鎮圧部隊を送るべきです』

エリザベス『そ、そうね』


家臣その一『そう言えば日本の客人は、この国の戦争に興味がおありでしたか?』

景綱『いかにも』

家臣その二『女王陛下、景綱殿にも参加して頂くのはどうでしょう? 役に立てないとこぼされている景綱殿に、活躍する機会を与えられては?』

エリザベス『馬鹿な事を仰い!』

景綱『いえいえ女王陛下、私からもお願い申す』

エリザベス『そ、そんな危険な事!』

景綱『危険は百も承知しております。いえ、たとえ必ず死ぬと分かっていても、女王陛下に助けて頂いた恩に報いる為なら、どんな死地にも喜んで赴きましょうぞ』

エリザベス『景綱様……』

家臣その一『誠、騎士のかがみですな!』

家臣その二『全く』


家臣その一『では景綱殿、アイルランドへ行って下さるか?』

景綱『引き受け申す』

家臣その二『客人も鎮圧軍に参加するとは、皆の士気も高まりましょう』

エリザベス『待ちなさい』

家臣その二『どうされました?』

エリザベス『ワタクシもアイルランドへ行きます!』

家臣その一『何ですと?!』

家臣その二『冗談はお止め下さい!』

エリザベス『冗談などではありません! イングランド王国の正当なる統治者にしてアイルランドの王、エリザベスがその統治国に行くと言っているのです!』


 処女王エリザベス、アイルランドへと遠征する。

物語の都合上、皆語学力が凄まじいですが、羨ましい限り・・・

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