3話 異なる者
僕はイジメられている。
殴られ、蹴られ、パシリにされる。
理不尽に怒鳴られ物を隠される。
多分イジメと聞いて思い浮かぶ行為の殆どを受けたことがある。
何故、僕がイジメられているか。
それは…俺が強すぎるからだ。
いや、正確に言うとイジメを甘んじて受け入れている理由が強すぎるからだな。
俺の家は現代社会の裏に潜む妖の討伐を生業にしている。
本業はただの格闘家でしかないが、その格闘技が異次元なのだ。
"人外級格闘術:黑神"
神が如く圧倒的で、高圧的な黒い気を操る格闘術。
その術は既に万能の域にいたり、不老の力すら備わった血統技術。
そんな物々しい説明がつくような戦闘技術を会得している俺は正直強すぎる。
なにせトラックに轢かれてトラックの方がスクラップになるほど頑丈だからなぁ。
「まぁ、こんな化け物についてくる物好きなんて、」
「悪かったね、物好きで。」
「悪くないだろ別に。」
ゆっくりと近づいて来ていた声の主に俺は答える。
「やっぱり鈴か。」
「うん、戒人君とお昼食べようとおもって。いっつも屋上にいるよね。」
「ん、そうだな。」
「好きなの?」
「べっつにー?」
「ふふっ、何それ。」
学校ではいじめられっ子な俺に親しげに話しかけてくるこの子はクラスメイトの小金井鈴。
とあるきっかけで俺がわざとイジメられている事を知る1人だ。
黒髪ロングのツインテールを揺らしながら実に楽しそうに笑う顔を見るとクラスの男子共が夢中になるのも頷ける。
「?、…どうしたの戒人君。」
「いんや?こんな可愛い子とお昼が食べられて幸せだなぁー。」
「ちょっとー、からかってるでしょ。」
「いやいや、本気だって。」
「むーー!」
いや、マジで可愛いなオイ。
ジト目、涙目、ほっぺプクーのコンボでぐらつかない男は特殊性癖の持ち主か男が好きな人くらいだろ。
「あっ!そうだよっ!」
「ん?どしたん?」
「どうしたもこうしたもないよっ!戒人君またアユに変なこと教えたでしょ!」
「変なことって言うなよ!由緒正しいウチの秘伝の技だぞっ!」
「だってアユが笑顔でコンクリの塀砕いたんだよ!?しかも素手で!」
「それはしょうがないでしょっ!そう言うもんなんだから!」
アユと言うのは鈴の妹の小金井歩ちゃんの事だ。
歩ちゃんは何故だか我が家の黑神流の才能があるようで、本来ならば当家の人間にしか使えない技をどんどん吸収して行くのだ。
それが楽しくて親父といっしょに色々教えてやっていたらすごく強くなってしまったのだ。
「どうするの?このままアユが戒人君みたいになったら。」
「えっと、おめでとう?」
「何も、めでたく、ないっ!」
「うおっ!」
流石にキレたらしい鈴が声と共に殴りつけ来た。
因みに、俺と親父が色々教えているのは鈴も同じなのだ。
何が言いたいかと言うと、、、
「あのー、鈴さん?」
「何も言わないで、、、、。」
「あ、うん。気をつけてね?」
「はい。」
まぁ、鈴が拳で屋上をへこませたわけです。
「とにかく!昼飯食おうぜ?」
「そうだね、悩んでたってしょうがないもんね。」
「悩みってJKの自分が、素手でコンクリをへこませるようになった事か?」
「分かってるなら言わないでよぉ〜。」
「別に俺はそれでも好きだけど。」
「……………」
あっ、止まった。
「そ、そうなんだ。」
「顔真っ赤だよ?」
「だ・か・ら!」
「ごめんて。」
ま、イジメられてても俺は人生勝ち組って訳ですよ。
カエデ
あれ?なんか私がいないところで戒人が別の女の子に好きって言ってる気配がする。