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1話 奪われる者

 この世界には大きく分けて2種類の人間がいると俺は考えている。



 まず、奪う者。


 これはいわゆる上に立つ存在だ。例えば、会社の上司。例えば、部活の先輩。


 子供にも大人にも必ず存在する。


 この世界にはあらゆる上下関係があり、全ての人間が略奪者に成り得るのだ。



 そして、奪われる者。


 これは、そのままの意味である。


 すなわち、奪う者に搾り取られる弱者だ。


 それらの力関係は努力による変化と生まれながらの立場、様々な条件が重なり合って形成される。



 そんな2つの内、俺が分類されるのは………
















 ***







「かっ、買って来たよ。」




「ちっ、遅えな。サッサッと寄越せ。」



「う、うん。」



 僕が買って来た購買のお惣菜パンを彼は手荒く奪い取った。



「ど、どうかな?」



「おい、俺は揚げ物のパンを買って来いっつっただろ。なんで焼きそばパンとか買って来てんだよ!!」



「うっ、売り切れちゃってて。それしかなかったんだよ。で、でも焼きそばも美味しいよ?」



「んな事はどうでもいいんだよ。俺は揚げ物を買ってこいって言ったんだからテメェは揚げ物を買って来いよ。ほんっと使えねーな。」



「ご、ごめん。でも、」



「雑魚のくせに口答えしてんじゃねぇ!!」


「うぐっ!」



 彼の蹴りが僕を吹き飛ばし僕は床に尻もちを付く

 サッカー部の彼の蹴りはいつも僕を勢いよく吹き飛ばす。


「ほんとお前弱ぇよな。」


「だって鍛えてないもん。」


「ブフッ、もんってお前。キモッ!」



 主犯格の彼に乗せられ周りのみんながぼくを嗤う、笑う、ワラウ。



「ぐすっ。」


「おい、コイツ泣いてんじゃね。」


「弱っ!」


「おーヨチヨチ、可愛そうでちゅねー。」



 クスクスと、ゲラゲラと、コソコソと、僕の周りに味方なんていない。 皆が皆僕を傷つける武器を持っている。


 心も体もそれに傷つけられて、でも泣けば更にからかわれる。そう思ってひたすらこらえる………





「どいてくるかしら。」


 そんな僕の耳に凛とした声が聞こえる。


 ふと顔を上げると学園の理事長の娘であり、生徒会長であり、僕達のクラスメイトである―飛龍カエデさんが僕らの前にいた。



「わ、悪い生徒会長。ついな?」


「別に騒いでもいいけど私の迷惑にだけはならないでくれるかしら。」


「お、おう。」



 カエデさんの尖った声にたじろぎながら彼は返事をする。

 いつも威張っている彼も飛龍さんには強気になれないようである。



「貴方も、貴方よ。」


「?、僕ですか?」


「ええ、貴方。」


 カエデさんはそう言って尻もちを付いたままの僕に近づくと、僕の襟を引っ張り強引に顔を近づけると、



「私の学園で、問題を起こさせないで。」



 そう無表情に言い放った。



「じゃっ、私は生徒会室で昼食を食べるので。サヨウナラ。」



そのまま僕から手を離し飛龍さんは去っていった。


突然手を離された僕はもう一度尻もちを付きそんな彼女を呆然と見送る。


そう、本来イジメを防ぐべき学園側の人間である彼女でさえ、僕のイジメを見て見ぬふりをする。



僕に味方は()()()()()

















 視点変化・飛龍カエデ




 私は少し早歩きで生徒会室に来ると後ろ手で部屋のドアを閉めた。


「はぁ、ほんと生徒会長って大変。」


先生の手伝いをしながら愚痴を聞いたり生徒の相談、生徒会の仕事をいくつもこなさなければならない。


そんな私にとってこのお昼の時間は数少ない癒しの時間だ。

何故なら、、、



「随分さっきのは冷たかったな。」



 一人これから起きる幸せな時間に思いを馳せようとした私の背後から突然声が聞こえる。


私は素早く()()()()を取り後ろを振り返るが、そこにいた彼に私は相好を崩した。


「いつからそこにいたの?」


そう私が問うと、

 

「あぁん、今来たところだよ。」


「ドアノブは私が握っているけど?」


「その程度で俺の侵入を防げると思ってんのか?」


 彼はニヤリと邪悪に口元を歪める。


「うふふ、思ってないよ。」


 そう私が言うと、彼は口元はそのままに目を細めながら、


「だろうな、」


 と言う。


 そして私は彼と昼食を食べる。

 今日の彼の弁当はとても美味しかった。


 彼の肩に頭を乗せながら午前中の出来事を二人で話しながら、幸せな時間を過ごす。


 この時間が、私が生きている理由だと思っている。



「ねぇ、あなた。」

 

「なんだよ。」


 私が呼びかけると、ぶっきらぼうに彼は返事をする。


「愛してるわ。」


「ブフォッ!!」


 私の愛の囁きに彼は少し照れながら、



「俺もだ、「ちょっと待てい!!」


「何勝手に人のセリフ捏造してんだ。今日はこの前ババ抜きで負けた罰ゲームに恋人ごっこしてるだけだろうが!!」


「えーいいじゃない。ケチー。」


「ケチーじゃねーよこの隠れクレイジー女が!俺は別にお前の事愛してなんかいねーんだよ!!」


「でも私達婚約者だよ!結婚するんだよ!?」


「んなのすげー昔に親が決めた事だろ!もう無効だよ!!」


「ヤダヤダヤダヤダーー!!」


「ウルセー!!」



 今日も仲良く過ごすお昼時でした。

「だから事実の捏造やめい!!」

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