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トロイアの涙

作者: Seashore

(星明かり 影に照らされた光

 心の川沿いに金鱗の膝を預けて


ベルベットの宵の帳に 二つの月暈をゆっくり閉じたなら)


『藍色の空を散歩している あなたの側面イメージにそっと触れさせて…』




露氷の枯れ嘆く枝葉が わたしの心に絡みつく


 空虚をさ迷う瞳の奥に眠る 光の大気が濡れた髪に反射する


鋭い光の角を向ける 氷の流れるたてがみのユニコーン


 透明な人形をすり抜けていく

 心をはりつけにする赤ん坊の泣き声


―――花火のように 口を閉ざした茂みから

  モノクロの鳥たちが飛び去り


 魂の流したガーネットの涙が 灰色のアスファルトを叩き割る


駆け回るクレヨンの足音が 沼地に浮かぶ本の中に咲く蓮の

散りゆく吐息を捲り(めくり)踏む――……



空間の歪みと収縮する吐息の中

―――やがて鳴る 甘き美に響き渡るニュクスの賛美歌


 夜の鳥は暗幕の上空を切り開き

 星の水晶の雨雫に その宇宙そらをさらす



軽快に踊る毛むくじゃらな妖精の弾む笛の音色に


 降り注ぐ氷の花が微笑みながら

 あなたのてのひらの温かさの中で姿を変え


黄金の黄昏の色を写し あなたの手に芽生える

深い樹木の枝へ入って行く―――



 目覚めたあなたは草木を掻き分け


呻り声を上げるトラの背を撫でる


 胸にぶら下げた双眼鏡で遠くを見つめ


トラの背にまたがり 獣道を進んでいく


 過去の建築の美しさをなぞる時…

得も言えぬ優美な香りの感触に 時計の針が動き出す



両手を包む陶器の感覚 ユーカリの木の机の陽が影に落ちる

琥珀色の水珠に伸びる つぼんだ果実の花弁が

 わたしの(ハート)へ微笑んだ









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