うまく行かない一日(3)
ご飯を食べて昨日捕縛されたところへ来た
「...昼ごはんで納豆が出るとは思わなかった」
実は、異世界じゃなくて田舎じゃないかな
とりあえず、情報が必要だ
今までで一番気になったことはやはりー
「勇者の名前だったな」
本でも読んで情報を手に入れたいけどー
「文字...違っていたな」
見てもわからない
言葉は通じるけど
さっき健一さんに頼んだこの世界の本は、忘れたみたいだし
何やっているの。
「超恥ずかしいけど、仕方ないか」
...
「...だから」
「はい」
「僕にこの本を読んでくれだと?」
「はい...」
まあーこうなりますよねー
「...はああああ」
「ため息長いな! おい!」
「いや、あきれただけだ」
ですよねー
「わかった、なんの本を読ませて欲しいの?」
「あれ、やってくれるの?”
「じゃ、戻るか」
「すみませんでしたあああぁ! ぜひ読んでください!」
土下座した
「勇者の本、か?」
「ああ、少し気になってきた、その、誰だっけ」
「...佐藤さま?」
「うん、その人」
ていうか、それ姓じゃない? と思ったけど、黙っているか
「あの人の本か、少し待ってて」
そして、セツが持ってきた本は、絵本だった
「子供用じゃね?これ」
「絵があった方が理解やすいだろうと思ってな」
内容は普通の、勇者のストーリーにでそうな話だった
異世界から来た、勇者は賢者と人間型に変身ができる龍、そして誰なのか詳しくは書いていないやつの3人の仲間が一緒に四天王を倒して
最後には魔王と戦い、国に戻って
王になり、文字と金の改革を行って、その後、平穏に生きたという話
まあ、普通の昔話だ
「まるで伝説だな」
「でも、実際にあった話だ、伝説の勇者さんはな」
...実際にあった伝説、という感覚かな
「で、最後にあるこのカタカナ...じゃなくて、佐藤語はどんな内容?」
本の最後には絵がなく、カタカナと英語が書かれていた
「それか? それは佐藤さまが未来のために書いたと言われている文字だ、佐藤さまが作った50個ぐらいの言語と略字でもない言語だ」
「...略字?」
「健一が見せたんだろう?あれだ」
「えーと、漢字...か」
「感じ?」
いや、それじゃないけど
とにかく、こっちでは漢字を略字だと言っているのかな
そして、カタカナはない。。
「ちょっと見てもいい?」
「ああ」
そういって絵本を持ち、カタカナで書いているところを読む
「いま、これを見ている人が日本から来た人なら、読み続けてほしい、だが、もし君がこの世界で生まれた人なら、読むことをやめてくれ」
は?
本を読むと、頭の中から直接声をかけられた気がした
「気のせいかな」
「まず、俺の話からするかな、俺は佐藤 加見、今からだと、500年まえ、世界を救った勇者だ、いまは魔法を使って本で君と話している」
気のせいじゃなくて、本当に本が声をかけていた
「まず、君には謝らないといけないことがある、500年前の話だが、魔王と戦っていた俺は、本当の力を解放した魔王に倒されてしまった」
あ、よくあるシチュエーションだな、最後、魔王と戦闘する勇者は、魔王に倒されるけど
結局、魔王は新たな力を持って復活した勇者に負ける
少年漫画、ゲームの王道だ
「なので、俺は神と契約をした、次に来る勇者の力を借りて、戦うと。」
「はい?」
アホみたいな声が口からでる
「わかっている、怒るだろうな、でも、俺はそれ以外に使う手段がなかった。」
いやいやいや、手段がなかったとしてもさ
「とにかく、君が持つべき能力を奪ったことになる」
「おかげさまで一日で3回ぐらい死ぬ危機があった」
スライムに、ゴブリンに、マンモスに、隣にいるセツにもな
ふむ、4回だったな
「なので、僕がいるところまで来ると君の力を戻せるようにしておいた、正確な位置は頭に伝達する...
そして、すまない、俺ができることはこの文字に力を込めて最低限の力をあげることだけだ」
ーインベントリー lv1を習得しました
ー能力把握ー lv1を習得しました
「は?」
「こっちに来ることも大変だと思う、でも、頑張ってくれ」
そして、頭の中で聞こえていた声は消えた
「-い」
インベントリと能力把握。。?
これ、どうやって使うんだろう
「おい!!」
「はい!?」
隣で大きな声が聞こえてびっくりしてセイを見ると
「レベル...43?」
頭の右上に、簡単なステイタスがあった
「ほう?レベルが見れるのか」
「えーと、さっきから」
「ぼっとしているから心配したけど、異常がなくて安心し...は?今なんと?」
「だから、さっきこの文字を見たときから見れるようになった」
「...はあああ??」
人のレベルが見える、これが能力把握かな
自分自身の能力は見えないけど。
ていうか、能力把握は見るだけでできたけど、インベントリはとうやって使うんだろう
また、なんか位置を頭に伝達するって言ったのに、何も変わらないし。
でも、rpgゲームの一番基本的なことであることの二つは手に入れた
何もないことよりは100倍ましだけど...
0に100をかけても0だな、うん
「詳しく、話をしてくれ。」
「うわ、顔が近いぞ」
気づいたら、セイの顔がすぐ隣にあった
「その文字は勇者様が直接つくったと言われる文字だ。。と言ったっけ?」
いや、もともとある文字です。
「それがなに?」
「...それを君が読んでしまったということは、君が次の勇者になれる可能性が高いということだ」
「は? どういう論理?」
「そうだな、その内容で推測される一番確率が高い論があった、それは、勇者様が次の勇者のための」
「メッセージだと考えたのか」
セイは無言で、首を縦に振った
「で、どんな内容だったのか説明してくれない?」
「あー」
ふっと、説明してもいいのか、と考えた
この世界で勇者の立場は危ない
僕はいま、僕の墓場を作っているかも
「心配するな、僕は君の味方だ。」
そんな僕の心を読んだのか、セイはまっすぐに僕の目を見て話した
「心配してないよ」
いや、したけど。
「お前を信じる、でも、それより言わないとだめなことがある」
「なんだ?」
「顔近い、ホモー」
そして、僕は本の文字を見て、聞いたことを説明した
「なるほど、君は異世界から来たのか」
「...あれ、会ったときに言ったな」
「誰がそれを信じるか...俺は記憶喪失とかだと思っていたぞ」
「それが普通の反応だな」
そのまま信じたら頭がおかしい人だ。
まあ、今も十分頭おかしい人に見られるかもしれないが
「ていうか、良く驚いていなかったな」
「なんか、異世界に来てこんなことばっかりだからな」
慣れてしまったというか、変な感じだ
「とりあえず、大体の事情は分かった、わからないが」
「どっちだよ」
「どっちもだ」
堂々と言うから何にもいえないな
「とにかく、能力把握以外の能力も手に入れた、といったな」
「ああ、インベントリーというやつだけど」
rpgゲームに絶対にあるやつ、簡単に言って、魔法のカバンだ
人間が普通にもつカバンの方がより多く運ぶことができるけど、空間はあんまりとらない魔法のカバン
というイメージだ
「ふうん、とりあえず、手を開いてくれ」
「おう」
「そして、インベントリ、と言ってみたら」
「インベントリ」
と言ったら、手の前に二次元の四角形が出た
「出たな」
「君にも見えるの?」
「いや、目の瞳孔が開いたからな」
すごい、さすが43レベル
「で、何かあった?」
「えーと」
懐かしい物があった、ていうか
「カバンがある」
カバンの中にカバンがあるというのはこれを意味するかな
インベントリの中には、僕が山を登った時、持っていたカバンがあった
「その他には?」
でも、今大事なものではない、今大事なことは。。
「なんか、地図だと書いているものがあるけど」
「それをタッチしてみて」
言われてタッチする
...ていうか、タッチってカタカナじゃない?
「多分、開くと今まで行ったところの位置がでると思うが」
「ああ、なんか、隣に’幻の平野’とか書いている」
そんなところに落としたのか神のくそやろうめ。
「他には?」
「町の名前、栗縁って書いてる」
インベントリでは普通に日本語で出るな
助かったと思う
「で、絶対に行ってないと思うところがあるけど」
「ふうん、どこ?」
「永遠なる剣が寝ているところ」
かっこいい名前だな
ここからずいぶん北のところにあるし
「あそこは...龍が住んでいるところだが」
「ですよね」
異世界に来て思ったことがある
現実世界でもうまくいかなかったけど。
異世界では誰かが企んでいるように、うまくいくことが全然ない。
勇者もくそやろうだ、と言いたいけど、なにかトラブルでもあったんだろう
「何であそこに勇者はいると思う?」
「ううん、知らん、だが、言えることは俺が知っている中では、あそこは魔力の濃度が一番高いところだ、それと、伝説の聖剣が寝ている場所だ」
「勇者さんの墓場はどこにある?」¥
「それも知らない、勇者様の本の最後は、息子に後の国を任せて、消えたという内容だ...か...」
「なるほど、ここか」
簡単な推測だった
「ていうかさ、ここに勇者の剣があることはどうやって分ったの?」
龍がいる場所に入って、無事に戻った、とは考えられない
「龍が教えてくれた。といった」
「......」
「...あいつらが言った。俺ではない」
「勇者の剣を守っている龍...か」
何か、見えるような気がした
「剣があったら500年前、消えた勇者もいるかもしれないと思って行った人の数も結構あるが」
「どうなった?」
「戻った、半殺しになって」
うわあ...
「普通の人はこれを知るはずがない、とにかく、裏側の噂だから」
「そんなものを君はどうやって知ったの」
「健一」
そんな情報を教えてもらってもいいのかと考えたが
’わははは別にいいだろ’
と言い、笑いながらサムズアップをする健一がみえるような気がした
「龍が住んでいるところ...か」
だとするとそこまで行く途中のモンスターのレベルも半端じゃないような気がする
「今の君では無理だな、ていうか、世界中探してもあそこへ行ける人はほぼいないと思う」
「まじか」
だとすると、どうしたらいいのかな
「やくにたちそうなところは...」
「ある?」
「ううん...」
「ちなみに、その龍のレベルは?」
「97」
いきなり100ぐらいの数字が出てきたぞおい
「無理じゃん」
「無理だな」
でも、そこにある勇者の力(多分)を取らないと、大変なことは変わらない
力がないと、スライムにも殺されるかもしれない世界だ。
「でも、スライムとかに殺されることよりは龍の方がいいかも」
「何言ってる君は」
まあ、でも、スライムぐらいだったら何とか倒せたし
何とかなったらいいけど
「で、この地図ってさ、1cmで何キロぐらいなの?」
「隣の山が出口から200mぐらいの距離だから。それで計算してみろ」
「あそこからここまで1mmもないけど」
「mm...ってなんだ?」
「死にたい」
「死にたいという意味なのか?」
いや、そうじゃなくて。そのままの意味だけど、ツッコミの力がない
距離は地図を見ると大体ー2500kmぐらい。
異世界のスケールが結構すごい
「今年以内に行けるかなこれ」
多分無理だと思う
この異世界、日本より広いと思われるし。
ふっと、窓を見る
「夕焼けだ」
太陽が沈んでいた。
長かったような、短かったような一日だったな
「いや、ながい」
こんなに色々あったけど、いまでは夕焼けだ。
つまり、今は7時ぐらい。
そして僕は、昼ご飯を多分ー
「12時に食べたよ」
「ありがと!」
時間の概念は変わっていなかった。
つまり、これで7時間だ。
携帯が欲しい、ていうか暇つぶしするものが必要だ
一日って、こんなに長いものだったんだ
「どうするかぐらいは明日考えてもいいか...」
時間はまだある
ゆっくり考えても遅くはならないだろう。
ほぼ最終クエストみたいな感じだし、いま言っても無駄だと思う
「そか、だったら僕は夕ご飯でも用意するか」
「ありがとう」
本を読んでくれたことと、いろんなことを含めて言った
「いや、結構いい収穫だった。」
「そうなのか?」
「勇者の話を直接聞くことができる人は少ない、と思ったら光栄だろう」
そんな大したものではないけどさ
真剣な話に聞こえたかもしれないが、僕にとってはとんでもない迷惑だ
「じゃな」
「おう」
そういい、セイは下に降りた
そして、僕はインベントリ中にいるカバンを出す
中にあるものは、余分の服と緑茶、保温ボトル、そして
「ノート?」
僕はこんなものを入れた記憶がない
そういえば、父さんがカバンの整理を手伝ってくれたな
「混ぜてしまったのかな」
そう思ってメモを開ける
そこには、真剣で、丁寧に書かれた字があった
「あ」
これは、父さんの字だった。
僕は、元の世界で、疲れていた。
部屋に引きこもり、ゲームと小説だけ読んだ
そうしていると、時間はあっという間に過ぎてしまってー
こんな風に生きても大丈夫なのかと考えたとたん、父さんから何かをしてみたら未来のビジョンとかが見えるかもしれない
と言いながら山でも行くかなと思い、父さんのカバンを借りた
「あ...」
メモの中には、父さんの手紙。
1ページ分の量だった。
「どこから始めたらいいのかわからないな。
俺は、いい父親としていようと考えたときがあった。
心が正しく、勇敢で、失敗を怖がらない子になってほしかった
そして、それはうまく行ったつもりだけどー君はとう思うだろうな。
君が外に出られなくなった理由は僕にはわからない。
父親として、君を支えることが足りなかったかもしれない。
何かあるなら、相談してくれ、そして、頼れ。
それが家族というものだと俺は考えてる。
。。書いていたら、長くなったな。
今回の旅行は、君にとって、いい刺激になると思う
俺が好きな山だ。楽しんで来い。
お前は、俺の自慢できる息子だ。
いつも愛している
目の前で言えない俺を許してくれ
では、いい旅行を」
いう言葉が、無くなった
「はああああ...」
僕は後ろに倒れて、ノートを頭につける
大変なことになったな。
今頃、家族たちはどうなっているんだろう
元の世界では、何日が過ぎているだろう。
ここと同じ時間かな?
「だめだ、どうやってもネガティブになってしまう...」
元の世界に戻りたい。
...普通、ラノベとかゲームとかはこんなこと気にしなかったけどな
そして、僕も気にしないだろうと思った。
「...カバンの中はこれで全部かな」
で、カバンを閉じようと思ったら、中で何が光った気がした
「なんだろう」
そして、中から出できたのは、僕の想像以上のものだった。
普通、異世界に行くとしたら、服だけの状態になっていく。
まあ、普通の異世界物ではな。
だから、驚いた。
「携帯電話...」
そう、中から出てきたのは、僕がせっかく山に登るからと思い、カバンの中に入れた携帯電話だった
「電源は入らないけど、これは結構いけるかも」
壊れたのか、それとも充電が出来ていないのかはわからない。
でも、直すことが不可能でもないし、無いことよりはあった方がよい。
「...結構いろいろあったし、何をやらないとだめなのかは整理しないとだめか」
まず、’盗賊のギルドに入るか’だ。
入って悪いことはないと思うが、不安が頭から離れない。
まあ、勇者だと疑われている人は全部つかまっていると聞いたし、選択肢はほぼないけど。
そして、二番目は勇者の力をもらうこと
もともと僕の力になる予定だったことが、無くなったこと
...だったら神が言ったことはなんなの? と思ってしまうが、それは勇者に聞いたらいい話だ
「勇者もわからないかもしれないが」
そこに行く方法は後で考えるとしてー
三番目は携帯を直すこと
直してどうする?とは思っているけど、なにかやくに立つことがあるかもしれない。
まあ、直せるかは別の問題だと考えて。
で、最後の難問だけど
「元の世界に戻ること...だな」
そう、僕にはこれが一番重要だ
方法が、あるかもしれない。
ここは魔法だらけの場所、勇者はどう考えたかしらないが。
僕は、戻らないとだめだ。
でも、そのための方法がわからない
「夕ご飯の時に、起こしてくれるだろう」
カバンをインベントリの中に入れる、そして
ベットに倒れたら、すぐに睡魔に襲われた。
二日間の疲労に、僕は、耐えられずに寝てしまった。
明日くらいはいいことがあったらいいのに。