勝手に建物に入ることは犯罪だ
なん分、かかったんだろう。
「...あ」
歩いていると道がなくなり、遠くに、小さな。 古い。 町が見え
「...た」
本気でやったあああああ!と、叫びながら走りたいが
そんな体力はもはやない。
歩きながら祈るだけだ
そして、山の坂道から、平らな道に変わってー
町の入り口が、目の前に見えた
「...うそだろ」
そして、その入り口にあった看板には
日本語じゃなく、別の言語が書いてあった
簡単にいって、普通の漢字とは少し違っているような、ひらがなでも、カタカナでもないなにか。
...ここまで来て、話が通じなくて、死ぬようなことは本当にごめんだけど。
そんな不安を抱いたまま、僕は歩いた
町に入ると、静かで、風だけが吹いていた
「...とりあえず、煙は出ていたな」
ゴーストタウンではないだろう。
そうやって町の中を歩いていたら、結構おおきな鉄の建物が見えた
「失礼します」
トントン、ノックをして門を開いた
中には光がなく、暗かった
「あれ...本当にゴーストタウンかな...」
おなかが空いて幻想でもみたのかな
そう考えながら中に入ると
ぱああああん!!!
世界が、反転した。
「だれだ。名前を言え、そしてどこから来たかもだ」
誰かの声が聞こえるけど、返事ができない。一体なにが起きた...?
脳が揺れてる。
いま見てるもの、あれ、もしかして地面なの?
「3回までいう、名前、どこから来たのかを言え!」
怒っている人の声が聞こえる。
頭は鉄みたいなものに握られている。
よし、すこし安定した。
「これで最後だ!!! ナマエ!、ドコカラキタノカ!!!!!」
首に鋭い鉄の感触が感じられる
状況がわからない、本当に。
頭に衝撃を受けたせいか、すぐに整理ができない。
とりあえず、名前と、どこから来たのかを聞いているな!?
ひとう ふつ
「ひとう ふつ! 比島 佛です!」
「君が普通のひとか、そうではないかはどうでもいい! 名前とどこから来たかを聞いているんだ!!」
「だから! 名前が ひとう ふつって!名前が!!」
「...そいつはすまない、だが、どこから来たのかは言ってないな」
ぐいいい、と頭をぎゅうっと握っているからではないでしょうかね!
痛いんですけど!
「あーえーと。その、空から、来ました。」
「...」
ぐいいいいいいいっ。
「いたっ!痛い!超痛い!死ぬ!やめえええ!!」
「今、私が冗談を言っていると思うか?」
いえ、本気だと思います。 はい。
「本当に!冗談じゃなくて! 本当に空から来ましたけど!」
「はあああ...な。」
首にあてられていた鋭い鉄の感触が強くなった
あ、これ、剣だな。
「僕は、いつでも君の命を奪うことができる」
ドキドキと心臓が鳴る
いや、日本から来ました! て言ってもわからないと思うし
空から来たことも嘘ではないし!
「いま、町がゴブリンに襲われたときに、半裸の男が町の金庫まできた、これほど怪しいやつがあるか?」
「知らんけど! ここに大事な物があるとかわかるか!」
文字も読めないのに!
あら?!
「ちょっと待って、ゴブリン?!」
「ああ、さっきゴブリンの連中が町を襲ってきて、僕は残って、君みたいな人を捕らえるためにな!」
ぐいいいっ。
「痛い! 痛い! だから!そんな人じゃないって!!」
「だまれ、首と体が離れているところをみたいのか?」
君が体を押してるせいだろ!!
何やっているのか自覚はあるのかこのやろ!!!
というと殺されるから黙る。
ていうか、ゴブリンはこっちまで来たのか
あれ、もしかして僕が町に呼んだことになっていないな?
なっていたら困るけど
「ふう...どうやったら僕を信じてくれるの?」
「どこから来たのかを正確に言え、そして、何しに来たかも」
それを信じてないから困るんだけど。
だとしても、’異世界である日本から来ましたー(笑)’って言ったら本当に殺されるはずだし。
’極東にある国から来ました。’ということもあれだな。
だったらやっぱり、’空から来ました'をもう一回?
。。。あれが一番、死に近い選択肢みたいだからやめるか。
だったら、この人が僕を信じるために必要なものはなにかな?
一番いい解決法は、ここで、あるところを言って、運よくその場所が存在することだ
まあ、無理だな。
だが、二番目にいい解決法はーできるかもしれない。
「僕はどこから来たかは正確に言った!」
「...死刑だな。」
「ちょっと待って!」
「はあ、今度はなんだ」
「君が泥棒だったらこんなにアホみたいな計画を立てるか!!」
「......は?」
なぜ僕は、いま掴まれているだろう?
それは簡単だ。
町がゴブリンに襲われた、そして、僕は町の金庫がある場所に来た
身分証明書もないし、空から来たと言っているし、半裸だ。
すなわち、この人は僕を泥棒だとみているのだ。
だったらそれを否定したらいい。
つまり
ー僕が泥棒じゃない理由を適当に上げて、とにかく首が飛ぶことを避ける!!
「よーく考えてみろ、君が泥棒だったら、こんなバカな計画を立てるか?」
「...」
ぐいいいぃぃ。
「いた!!!い!!! 返事をしろ! 行動じゃなくて!!」
「たしかに、こんなバカな計画はたてないな」
「だろうな!、そして、僕は武器もこん棒一つだけ、仲間もない、そして半裸だ!」
自分の口で言ったら恥ずかしいけど!
「何度も言うけど、僕は空から落ちた!、嘘じゃない! そして迷路に閉じこめられて! スライムに倒されて! マンモスみて!!!」
「お。。おい、泣くな」
「くっそ、泣かないでいられるか! ゴブリンに頭を傷つけられて! 体力なくてスライムの体液を飲んだら反吐が出るほどまずいし!!
そして何とか何とか町を見つけたらゴブリンに襲われているし!!! 泥棒だと思われるし!! 服がスライムの粘液で汚いなとおもって脱いだら!!
半裸の変態泥棒になったしーーーー!!!!!」
なんでこんな状況になってしまったんだよ
どれもこれも全部、あの神のくずやろうが空中で押したせいだ!
「もう嫌なんだよ!! 何なの...本当に...!!」
僕は泥棒じゃない。
それだけを言うつもりだったのだが、爆発した。
異世界に落ちて1日で、心が折れた。
「ぐう...くうう...!」
涙が止まらない。
「...え...あの...すまない。」
優しい声が聞こえる。
さっきまでと同じ人とは考えられないくらいだ。
「だったら、最後に一つだけ聞こう、君がもし、泥棒だったら、どうする?」
「...わかるか、多分、個別に家に入ってなんか盗むだろう。」
適当に答える。
そうすると、背中に感じられた重い感覚が消えた。
「今は拘束を解くことはできないが、後で解くことを約束しよう。」
と、握られていた手が解放され、後ろに移動し、縄で縛られた。
そして、走る音と一緒に消えた。
「...まあ」
監獄に入ることよりはましか。
...でも、歩いて、掴まれて、泣いたりしたら
疲れがたまった
「...もう分からない。寝る。」
ちょっと寒いけど。
もうわかんない。
疲れがたまっていたせいか、目を閉じたら、すぐに寝てしまった
...ちょうどいいタイミングだし、昔の話をしよう。
僕は、名前通りに、普通の人だった。
名前が普通の人ではないことは無視して、その通りの人生を過ごした
と思う。
成績も平均よりちょっと高い。 運動能力も平均よりちょっと高い。
結構がんばったつもりでやったゲームでも平均より少し高いくらい
まあ、自分は頑張ってないから、と思って頑張ったら、平均よりすこし上だった。
その時からだった、僕にない能力をうらやましく思ったのは
頑張ったら、だれもが強くなれる世界にあこがれた。
...正確にいうと、’頑張れば、何かが起きる世界を望んでいた’
努力なしに、じゃなくて、努力する世界に疲れていた。
まあ、現実逃避だ。
異世界まで来たら、僕もなんか変わるだろう。
...とおもっていたかも。
「...う」
目を開ける。
悪い夢をみた
前をみると、ドアが見える、そしてあれは机と窓だな。
「...あれ」
体が動かなくて、後ろを見る。
後ろには椅子の背、そこに肩と手が縛り付けられていた
あいつ、結局解かなかったな。
ていうか、ここはどこだ? 家みたいに見えるけど。
「起きたか」
「...だれですか。」
声が聞こえて顔を上げる
「やあ、なんていうか、さっきはすまなかった」
前にいた人はー
「いや、だれだよ」
僕はこんな金髪で、イケメンの人は見たことないんですけど。
声も美声だ。
たしかに、さっきの男の声は威圧的だったからな
「あ、そういえば、君は僕の顔を見たことないか。」
「はあ...」
「くふむ、ああ、あー、こんな風に言うとわかるかな」
男の声が、寝る前にみた男の声にかわった。
「落ち着け。 今君に危害を加える気はない...」
「落ち着けるか!」
まあ! 捕縛されているので逃げることもできないけど!
「で、なんで僕はこの...どこ?」
「僕の家だ」
「あ、うん、なんで僕は君の家で捕縛されているの?」
「僕が君を運んできたから...か」
僕はその理由を聞いているんだけどな。
「いま混乱していることは当然だと思う、だが落ち着いて話を聞いてくれ」
「はあ。」
「単刀直入に言って、君が正しかった。」
「盗賊が来たの?」
「まあ、な」
なるほど、正しかったか。
うん? あれ? だったらなんで僕は捕えられている?
「君が何を考えているかは知っているが...」
「...まさか、状況がピッタリすぎだったということか」
「...その通り」
つまり、僕が疲れていて寝ている間に盗賊たちが本当に来てしまったということだ。
「でも、あいつらは僕を知らないはずだが。」
「ああ、また、君の言う通りだがな...」
「また、何か問題ある?」
「...上の人たちが疑問を持った、盗賊たちが君を知らないということに...」
「それは...どういう意味か分からないけど」
盗賊たちが僕を知らないことに疑問をもったと?
。。。何を言いたいのか全然わからない
「言いづらいが、君はいま、盗賊たちの仲間ではないか......と、疑われている。」
「はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ...」
ため息が出る。
「理解はする、だが...」
「心当たりはあるけど、理由を教えてくれない?」
「それが...な」
こういうことだ。
僕は、盗賊たちが町の人たちを騙すために働いていて
僕が盗賊たちがいるところを教えた理由は、町が僕を信頼するようにして、町の宝物を盗むため。
なので、盗賊たちと仲間の可能性があり僕を捕まえておかなければならない。
と、考えられている
「ファンタジー世界のくせに現実的すぎる...」
「ファンタジー?」
「いや、なんでもない。」
「...怒らないのか」
「...怒れないよ。」
寝る前に全てを出し切ってしまったかもしれないけど。
とりあえず、僕は監獄にはいない、家にいる。
それでもこの人がまあまあ頑張ったことはわかる。
捕縛されているけど、まあ、それはそれだ
「それより、これ、解いてくれない?」
顎で体の縄を指す
「...縄を解いたら、逃げるかもしれないからな」
「それは心配しなくてもいいと思うけど...」
ゴブリンと引き分けた人だから。
ため息がでる
「そして、君を監獄に入れない条件にこれが含められている」
「なるほど、だったら仕方ない」
監獄よりはさすがに家の方がいい。
「ご飯でも食べるかい?」
「...はあ、頼む。」
「わかった、すぐ作ってくる。」
そう言いながら、男は部屋を出た。
体内時計で10分ぐらい過ぎると、男は戻った
「お待たせ」
「味噌汁じゃん」
「ああ、不満か?」
「いや、ただ...」
なんで味噌汁?
ここ、異世界なのに。
と考えているだけだ。
「おかしいやつだな」
「...それと、一つ質問が。」
「なんだ?」
「あれ、どうやって食べる?」
僕、見た通り、両手使えないけど。
”心配するな、食べさせてあげるから”
”絶対いやだ”
男に食べさせられるなんて、なんという拷問だ。
くっ...殺せ、とは言わないけど。
「本当に、解いてくれないかな」
「さっき言ったな、すまないが、僕に証明できない以上、無理だ」
「いや、スライムと激闘をした時点で証明できると思う」
「スライムと激闘をしたと?」
「まあ、な!」
偉そうに言った
自慢することではないが。
「...冗談を言うな、スライムはモンスターの中でも最も弱いやつだ」
「そうなんだ」
「10歳でも簡単に倒すことができるのに、そんな奴に苦労するわけないだろう」
「そう...なん..だ...」
「...どうした? 顔色が悪いが」
「気にするな、地味に死にたくなっただけだ」
僕、これから生きていけるかな。
「まあ、それ以外に不便なこととか、聞きたいことがあったら遠慮なくいってくれ。」
そういって、男は笑顔を見せた
イケメンに捕まって笑顔を見せられるなんて
BLで売れそうな設定だな!
「じゃ、遠慮なく一つ」
「ほう、なんだ?」
僕が今、言いたいことは色々あるがー
「こんなに気を遣ってくれて、なんだ、その、ありがとうな」
「......」
男は笑顔から驚いた顔になった
そして、僕の肩を軽くたたいて
何にも言わず、部屋をでた
うん、めっちゃホモー
「ていうか...ごはん、わすれたけど」
そのあと、味噌汁とご飯を
...何とか食べ’させ’てもらって
一人になった
まだ聞きたいことはあるが、いまは恥ずかしいからいいや。