佐藤城(1)
『君はえらいやつだからな、その次は何とかなるはずだ』
と言ったが、遠くから見ても、冗談とは思えない大きさの城。
結構遠くにあるけど、壁しか見えない
「すごいな」
そのスケールに僕はただ感嘆させられる
近づくと、壁の前の地面は穴が空いていて、水が溜まっていた
過去に来た気分だ
「入り口はどこだろう」
周りは全部、壁だ
まさか、異世界の人たちでも飛ぶとかの選択肢はないから、多分。
どこかに橋とか入れるところがあるはず。
「ていうか、普通、城の周りには町とかあるんじゃないかな...」
これくらいの大きさだったら周りに町とかあってもおかしくないけど
と、思いながら馬に乗って歩いていると、橋があった
めっちゃくちゃ大きな門の前には、鎧で武装している警備員たち
「入れるかなぁ...」
不安しか感じない。
僕、身分証はともかく、どう見ても怪しい人だからな
...入れなかったらどうしよう。
「おい!」
「ひゃい!」
誰かに呼ばれて体が固まった
「うわ、めっちゃビビッてる、あんた、怪しいな」
「なんか、すみませ...ん...?」
後ろから現れた人は、紫色の髪をした女の子だった
肩まで届く短髪、赤色の革の鎧
大事な部分だけ守っている服装。
まあ、簡単に言うと、現実の100人に『この人、美少女?』と聞いたら、100人全部『yes』と答えるくらいの美少女だった
「...で、だれでしょうか」
「あたし? あたしは美少女!」
「いや、知っているけど」
「あ、そう? おっぱいが大きい美少女はどう?」
「名前を言え」
せっかく考えないようにしていたことが!
「あたしの名前はアスカだよ、よろしくね、えーと」
「...ひとう ふつ」
「えーこっちは名前を教えたのに言わないの? ずるいなー、だったら、あたしも『道を歩いていた超美少女』で!」
名前だよ
こいつのテンションをつかむことができない
「で、僕になんか用でしょうか」
「君、城に入りたいんでしょ?」
にやりと、笑いながら、顔が近づいてくる
「近い、はい」
「わざとだよ!、ふむふむ...わかった!」
「何を?」
「君はどうて...うぶぶぶぶっ!?」
両手で口を黙らせる
「何がやりたいのかを言え」
「にゃはははっ、簡単だよ、城に入りたいんでしょ?」
「ああ」
「でも、様子を見ると入れない理由がありそうだし」
「とりあえず、身分証がないから」
「どこから来たの...」
日本から、知るわけないから言わないけど
「で、条件はなに?」
「へえ、計画に乗ってくれるの?」
「聞いてから」
持っている金もないし、寝るところもないから、とにかく僕は城に入ることを考えないとだめだ
不法だけど、まあ...仕方ないものだ
「隣にいる馬をあたしにちょうだい、それが条件!」
「...高いな」
全然高くないけど
これはほぼ盗んだものだし
「ええ、ケチ!」
「ちげぇよ」
でも、これを売ったら、後で追いついた人たちが探すかもしれない。
「で、どうする? こんなにきれいな超絶美少女の提案だよ?」
...持っていることよりは、持っていない方がいい
「取引成立だ」
「にゃはっ、そうと決まったらさっさと行くか!」
「え、計画は?」
「もうすぐわかる!」
不安が大きくなった
そして城の前に行くと、警備員さんが話をかけてきた
「すみません、ここを通るためには身分証の提示が必要です」
「はーい」
「...はい、確認しました、隣の方は?」
さあ、これが問題だけど、どうするのかな
「旦那様です!」
「ぷふうううっ?!!」
「いや、結婚したんですけど、旦那様が身分証を忘れてですね、にゃははっ!」
適当に言うなこいつ。
「そうですか、確認しました、佐藤城には初めてでしょうか」
「いえ、ずいぶん来ています、旦那様は初めてですけど」
城の名前がダサいと思う僕と、もう旦那様って呼ばないでほしい僕だった
「承知いたしました、でも、出る時も身分証の検査があるので、発行してください」
「はーい」
そういって、僕の背の何倍もある大きな城の門が、動いた
...さがす
絶対に、こんな普通の僕でも、逆転はできるかもしれない
城の門が開くことを見ながら、僕は強く思った
そして、夜になって、何にもできない自分があったが、それは後で言う
そうやって僕と(自称)美少女は中に入って
「(自称)美少女じゃなくてアスカだよ!」
「どうしてわかるの」
「あたしのおっぱいをじろじろ見ていたから」
「ミテイマセン」
本当に
「...おお」
城の中は、なんていうか
すごかった
どこを見ても建物ばっかり
建物が大きくなったら、現代の都会だといってもいいと思う
まあ、でも、昔の感じはあるけど
「さてさて、では! 約束通り!」
そういって、アスカはにやにやしながら、近づいてきた
「すぐ売った方がいいと思うよ」
僕は馬の手綱を渡した
「にゃはっ、ありがとう!」
「こちらこそ」
意外にさっと入った気はするけど、人生、わからないものだから
「じゃな! 機会があったら、またあとで! 旦那様!」
「それやめてほしい」
恥ずかしいから
「にゃはは、だったら、ありがとう、普通の人さん、また会えたらいいね!」
「...ひとう ふつって言ったのに」
昔から全然役に立たない名前だ
まあ、ふつ ひとうよりはこっちがいいけど
そして、アスカは馬をもって消えた
...よし、僕も情報を集めてみるかな
そして、今
「いや、本当に、無理だな」
夜になってわかったことは、僕には異世界の文字が読めないということ
そして、金もない人だった
「やばい...本当にやばい...」
せめて、今日寝る場所だけでも見つかったらいいのに
でも、ただで泊めてくれるところなんてあるはずないな
...早く、何とかしないと
焦らずに、落ち着いて行動しているけど、精神は限界だ
あれだ、行動していると、急いでいるから考えていなかったことが
止まってしまうと、いろんな不安が体を侵食する
賢者タイムということか!
「違うな、うん」
でも、ここにきて得た大事な情報は、インベントリーの中の地図
夕方に、地図を見たら、城の中を詳しく知ることができた
「地図自体はほぼ埋まったけどさ。。」
とりあえず、輪の感じで城を回っている
でも、なにも見つかることはなくて
「どうしよう」
そろそろ泊まる場所も探さないとこまる
道で寝たら捕まるな
だとすると、徹夜かな
「四日くらいシャワーもできなかったし」
でも土とかは消えているからよかったとは思う
「...僕、めっちゃにおいしているかも」
土とかはなぜか消えていたけど、体から馬のにおいがするような気がする
徹夜はともかく、シャワーだけでもしたいな
そう思っていると、目の前に光っているところがあることに気づいた
「馬屋...かな?」
中にはいろんな馬がいて、寝ていた
「...」
いや、知っているよ?
人間としてここで寝ても本当に大丈夫なのかなくらいは思っているよ?
「......」
結論から言うと
藁の中は暖かかったから、人間としてだめじゃないかなと思わないようにした
「ふう...は...」
悪い夢を見ていた
昨日の事件が無限に繰り返していた
もっと力があったらいいのに
だったら、あんな結果にはならなかったのに
「くそ...」
夢だと知っていて、起きようとしても体が動かない
だから、繰り返し夢をみながら、後悔することになった
そうやって何時間いたんだろう
「起きろ」
誰かに、呼ばれた
「ぐ...」
朝の光がまぶしくて前が見えない
「...あ、君...か」
目の前には、人が立っていた
昨日、出会った人
昨日なのか、二日前なのか
日の感覚があいまいになっている
「...好きにしろ」
さっきの夢のせいか、全身に力が入らない。
まあ、入ったとして、逃げることができるわけでもないけど
「逃げないのか」
「はっ、逃してくれるの?」
「...それはできない、仕事だから」
仕事、仕事か。
「まあ、いいか」
僕は起きて、藁を体から落とした
「ていうか、仕事だから悪く思うなとか言うな」
「すまん」
「...昨日と比べて、ゆるくなったな」
昨日はあんなにおおげさだったのに
まあ、でも仕方ないもんだ
「行こうか」
僕は、手を差し出した
諦めたい、ということじゃなくて、方法がないだけだ
「後悔しているか?」
「...なにを?」
「...」
「君を助けたことを言っているのか? それとも、僕が馬鹿だから友達を置いて逃げてきたことか?」
その質問に、何も言わずに、手を掴まえて、移動した
「後悔はめっちゃしているよ、でも...まあ」
多分、僕は同じ選択をする
そんな性格だからな
まあ、あれだよ、人間は、後悔する人生を生きるしかない。というやつ
しらないけど
「...損な性格だな」
「そんな損な性格に、君は救われたが」
僕は手を掴まれたまま、移動する
手で感じる鉄の感覚は、あんまり好きじゃなかった
そうやって10分、何にも言わずに歩いた
「...」
「大きいな」
ついたところは、城の中の城みたいな感じ
「佐藤城には、このような建物が3個ある、地図にも表示されるはずだ」
「おう」
だったら、ここが...ううん、たぶん。
「王国騎士団と、冒険者ギルド、魔法使いの図書館の三つだ」
「王国騎士団...ねぇ...」
聞いたことがある名前だ
「地図に出てないギルドとか、団体もあるけど、まあ、こっちだ」
「あれ、入り口に入るんじゃないの」
「...」
黙って返事しない
まあ、そっか
普通、ファンタジーで『騎士団』という物は誇りが高く、名誉を得ているやつらだ
そんな奴らだから普通に拷問して、情報を得ることはできない
表面的にはね。
...と、まあ、そんな話が多かったな
「はあ」
覚悟を決めても、怖いものだ
昨日折れた指がまた痛くなるような感じ
「ここだ」
「普通の家だな」
意外だ、なんかもっと怖いイメージあったけど
「普通の家だから」
「あ」
あれかな、疑う心配がないようにのやつ
家はセイの家より大きい家で、金持ちの匂いがした
現実世界でもあこがれるくらいの家だと思う
「で、僕は何をしたらいい?勇者の居場所とか、聞いても答えないと思うけど」
「そうだな、知っている、とりあえず...」
緊張する
逃げても無駄だとは知っているけど、やっぱり逃げた方がよかったかもしれない
時間稼ぎをしても、無駄だと、心のどこかがあきらめているかもしれない
まあ、どんとこいだ。
「風呂に入ろ、においすごいから」
「ひゃい?」
...そうやって、異世界に来て、はじめに風呂に入ることになった
めでたしめでたし
「って、どうして?」
風呂の中から泡を吹きながら考える
怖かったからとりあえず入ったけどさ
「僕、これから一体なにをされるんだろう」
今回は、危ないとき助けに来る人もいない。
目を閉じると、昨日の3人が見えるような感じ
「ふ...最悪」
安心したら、不安になる思いが心から出る
「ふああ...」
寝たら、またあの夢を見るだろう。
寝たくないのに、眠い
今は、急いで何かやっていた方が心が落ち着く
「出るか」
風呂から出ると、ジーンズが置いてあった
...僕、実は過去に来たんじゃないかな
異世界じゃなくて
服を着て、リビングをでると、机の上に、鉄の鎧と、兜があった
もちろん、真っ白い剣も。
そして、目の前には、マグカップでゆっくり飲み物を飲んでいる
「やあ」
「だれ...?」
女の人がいた
後ろに束ねた真っ白い髪と白い服
下は軽いジーンズ
昨日みたアスカが、爆発的な感じの美人だと言ったら
この人は全体的にバランスが完璧だった
で、だれだこの美人
「...ああ、女だったから驚いたのか」
女は軽く笑って、机の上にある兜を持つ
そして、頭に兜をかぶって、頭の後ろに手を移動して兜を押すと
かちゃん!
と、めっちゃかっこいい音と一緒にさっき見た顔が出た
「...声は?」
「この兜にはいろいろな効果があって」
「うん、わかった」
男の声になっていた。
あの体で男の声がでることは少しホラーだな
「まあ、こんなものだ」
軽く笑いながら兜を取った
やっぱ、美人だな
「じろじろ見るな」
「すみません」
「まあ、いいや、とりあえず座るか、話をしよう」
そういい、女は椅子に座った
「いやだったら、逃げてもいいよ、追いかけないから」
「...」
僕は、黙って反対側の椅子を見る
どうするか
この言葉を信じて、逃げるか
ここに座って、話を聞くか...
...うわ、悪いイメージしか見えない
何日も連続して不幸だったから、悪い想像しかできない
「どうする?」
「...聞く」
でも、得なのはこっちだ
いい、もう
やってやる...!
「飲む?」
マグカップを僕のところに置きながら言った
「遠慮しておく」
何が入っているのかわからない
今の目標は、無事に情報を得て、出ることだ
「顔色、悪いな」
「...君は余裕ありそうに見えるな」
「まあ、ね」
軽く笑った
僕は、緊張感で胸のドキドキがとまらない
「...そうね、まず、君が勇者の居場所を話さない理由から始めたいけど」
「知らねぇからだろ」
「そう」
話、終了してしまった
「じゃ、僕から聞いてもいいか」
「いい、君が嘘をついたから、あたしも嘘をつくかもしれないけど」
...ここで対応したらだめだ
余計な話は避けて、何かいいことは...?
「え...名前は?」
「...」
...緊張し過ぎて、やっちゃった
何言っているんだろう僕は
今はミーティングみたいな感じの話じゃないから...!
「...理恵、だ」
「あ、ども、ひとう ふつです」
だから、僕は何をやっているんだろう。
「緊張するな、本当に、話を聞くだけだから」
「話を聞くだけ...」
指が痛くなる
ため息が出るのを何とか止めた
「本当だ、あたしはもう、騎士団じゃないから」
「...はい???」
「じゃあ、話をする気になったか?」
いろんな疑問が頭をまわる
信じるとだめだ
でも、脳とは逆に、僕の心は
「いつから?」
「今日の朝くらいだったな」
信じる気がまんまんだった
「まあ、信じるか信じないかは君の自由だよ」
理恵さんは、軽く笑って、僕を見ていた
「...僕は、信じられない」
「そう」
当然だ。
ここで、馬鹿みたいに信じるほど、僕はアホじゃない
でも。
でも、だ
「だから、僕が信じるようにしてくれ」
信じたい、と思っていた
「いいだろう、なにをしたらいい?」
「誓え」
「だれに? あたしが知っている誓いは、今日まで所属していた『騎士団の誓い』しかないけど」
「かっこいいけど、そんなことじゃない」
僕は、この人を信じたい
だったら、簡単だ
「昨日、僕が救った君の命に誓え、僕が、昨日君を助けたことが間違いじゃないことを証明してくれ」
何もなかったように振る舞っても、笑いながら冗談を言っても
心の傷は、消えない
素直に言って、僕はボロボロだ
だから、必死になった僕には、味方が必要だ
「おねがい」
「...結構、大変だったそうね」
目の前が、うまく見えない
異世界で、もう限界だと何回思ったんだろう
「はあ...いいだろう、誓う」
「...」
ありがとう、という言葉がでない
「あたし、4番隊騎士団、理恵 エミは、もはや騎士団ではないが。。」
理恵は、席から立って、兜をかぶった
「騎士団として持っていたすべての名誉を、かけて誓う」
剣は自分の真ん中に、空を突き刺すように
「...これでいいか?」
兜を脱いで、僕を見ている目は
とても綺麗な、青色だった
「顔が赤いけど、熱でもあるか?」
「うるせぇ...」
信じてみる
何も持っていない人ができることなんて、どうせそれくらいだから
「なにから話したらいいだろう」
理恵は、マグカップを見ながら、記憶を思い起こしていた
「説明したいことは多いけど、何から聞きたい?」
「全部」
僕は、何も知っていないから
「そういっても困るな...」
「僕も何から聞いたらいいのかわからない」
聞きたいことは多いけど、整理がうまくできない
「とりあえず、なんでそんなに勇者を探しているの?」
最初に聞きたいことは、健一さんと、セイと、シスターさんの状況
でも、こいつがわかるはずない
あの日、僕と理恵は一緒に逃げてきたから
なので、他の質問を考え出した
理由...
そう、勇者という人を探さないとだめな理由。
最初は、ただの悪党たちだと思っていたけど、疑問ができた
僕が知っている『騎士団』というのは、誇りが高く、人々を守るために存在するところだったから
「君たちが悪いやつらじゃなかったら、そこまでして勇者を探したい理由があるはずだよな」
「悪いやつらなのかはともかく、よくあそこまで頭が回ったな」
褒められた。
「何の理由もない事件はないから」
「はっ、緊張していたさっきとは別人みたい」
「緊張すると、変な言葉が出るから...」
そんなタイプだから、仕方ないと思う。
「褒めたら、調子に乗るな」
「はい、すみません」
こんなタイプだから、仕方ないと思いますよ!
「うん、わかった、そこから説明するか」
そして、理恵は話を始めた
「最近、魔物の数が急に増えたことは知っているか?」
「...そう?」
異世界五日目の僕がわかるはずがない
「単刀直入に言って、魔王が復活したんじゃないかと思っている人が多い」
「だとして、普通の人たちを拷問してもいいのか?」
「...」
理恵は、静かになった
これは少し、まずかったのかな
「...騎士団は、国の剣になり、弱者を守るために作られた組織だ、言い訳もできない」
『国の剣になり、弱者を守るために作られた組織』
僕が考えていた騎士団の理念そのままだ
「それほど、大変なのか」
騎士団が、理念を捨てて、勇者を探す
普通の状況じゃない。
「たから、騎士団をやめたのか?」
「まあ、少し違うな」
理恵は目を閉じた
「あたしはな、世界を守るためには何でもする覚悟が出来ていたと信じていた」
「...」
「だから、抵抗はなかった」
汚くても、悪党になっても構わない
その覚悟が、ある
と言っているような気がする
「でも、殺す気はなかった。」
「...」
「卑怯だと言いたいのか?」
「...はあ、いや」
こっちは、それより何倍も卑怯な人なので
「死ぬ覚悟をしたが、君に命を救われて、まあ...あれだよ」
「恋に落ちたとか?」
「はっ、ない」
ですよね
まあ、そんなことを考えて助けたことはないけど
「ありがとう、そして、すまない」
「...いいよ」
感謝したとしても、誤ったとしても、過去に戻ることはできないから
「あ、そういえば、もう一つ、聞きたいことがあるけど」
「なんだ?」
「どうやって、僕を見つけたの?」
カンカンカン!
「...誰か来たみたいだけど」
理恵の表情が、固まった
「...逃げろ」
「は?」
「多分、騎士団だ、君を捕らえる気かもしれない」
「はあ!?」
「とりあえず、静かについてこい」
そして、理恵はリビングから出て、風呂のところに入った
「これか」
そして、壁を押すと、下から門が現れた
「驚かないな」
「二回目だからね」
「行け、あたしも行くと多分ここに気づくはずだ」
カンカン!
ドアを叩く音がだんだん大きくなって、風呂まで聞こえた
「そして、さっきの質問だが、それはあたしもしらない、でも、わかったことはある」
「わかったこと?」
「状況が都合よすぎる、その時、君が殺される前に、君を殺せなかったことだ」
「それがなにがおかしいの」
健一さんは言った、「幻の平野」に行ったと
だから、遅くなったはずだ
「...人を簡単に信用するな、あたしも含めてだ。 人を信じるときは、確かな理由があるときだけだ」
「いま、健一さんと、セイ、シスターさんを疑えという意味か?」
「...ああ、そうだ」
「...お前、女じゃなかったらぶん殴った」
理恵は黙った
「あたしが言いたかったのはそれだけだ、走れ、もし、副隊長だったら、絶対に殺される。」
「...わかった」
「行け」
理恵はそう言い、後ろに歩いて行った
「なあ...」
「どうした?」
美しい、真っ白な髪が揺れた
「また、会えるな?」
「...できればね」
その言葉を聞いて、僕は後ろに走った
互いに、少し、笑っていたと思う
「はあ...はあ...」
地下にある通路は狭くて、息苦しかった
「長いし。。」
5分くらい走っても、終わりが見えない
『...人を簡単に信用するな、あたしも含めてだ。 人を信じるときは、確かな理由があるときだけだ』
「...いや、まさか」
僕は簡単に信用する人ではない、たぶん
信じるか、信じないかの選択肢がなかっただけだ
信じるしかないから、信じる
多分、それだと思う
「多分...ねぇ...」
異世界に来て、悪い状況を予想することだけが増えた感じだ
ここから出ると、目の前に騎士団がいたりとか
そして、目の前に、階段が見えた
階段を上り、門を開けると
「お願い...!」
だれもなかった
「ふう...」
安心するのはまだ早い
これからどこへ行くかを考えないと
「でも、そんなところ、簡単に見つかるはずがない...」
インベントリーを開いて、地図を見る
城の北
入り口からずいぶん離れている
「これは...」
地図に『王国騎士団』の文字が、書いてあった
「騎士団...魔法使い...冒険者...?」
頭から思い出したことを口に出す
「地図に出てない団体や、ギルドも...ある」
どうして、セイは僕を王国に行くようにしたか
セイは、多分だけど、ギルドに所属していない
『盗賊ギルドに入ったらいいんじゃない?』
頭の中で、声が聞こえた気がした
「僕は、どれだけ馬鹿なの...」
セイが何にも考えずに、ここに行けというはずがない
話は通じるから、行ける
1日回りながら城の中の地図はほぼ埋まった
「盗賊ギルドを探す...!」
目標は決まった、あとは行動するだけ
なにが起きるのかはわからないけど
今は、行くしかない
「なんか、異世界に来てずっとこんな感じだった気がする」
平和に一日を過ごした記憶がないような
まあ、まだ一週間も過ぎてないから
「1週間より短い時間でよくここまで苦労できるな」
自分に感嘆した
それでもまだ生きている
人間の生存力、すごい
「あ」
そう思っていると、目の前に知っている人がいた
「アスカ...」
昨日であった、(自称)謎の美少女さんがあった
ここで呼んでも大丈夫なのかなと思っていたら、あっちもこっちに気づいてきた
「お待ちしておりました!旦那様!」
「いや、それもういいから」
「いいから、少しだけ付き合って!」
小さい声で、僕にそういった
来た方向を見ると、悪い印象の男が3人ぐらい
「...ナンパ?」
「そうなんですよ、あたしはもう結婚したって言ったのに!」
「...」
「テヘ。」
かわいい笑顔でごまかすつもりだこいつ
「ギルドに行くと思ったら、急に消えたけど、こんな状況になっているとはね」
「でも、かわいいあたしから目を離した旦那様も悪いと思いますよ?」
「...さっさと行こう」
「ええ!もちろん!」
まじめに相手すると終わりがないと思って、適当に言葉を切って行く
男たちは、ついてこなかった
「ふう、助かった、ありがとう、だんー」
「やめ」
「にゃは、何か欲しいものあるの?、あ、下ネタはだめだからね」
「...盗賊ギルドはどこにある?」
こいつとまじめに話をすると疲れるから本題に入る
「えーと、ここから、南に、400mくらいかね」
「よし、ありがとう」
「ふうん~こんなにかわいい美少女を置いていくの?」
「...」
にやにやしながら僕を見ているアスカ
何かを企んでいる、100%だ
「すまん、僕はアイドルにだけ関心あるから」
「ええ、なにそれ」
うそだけど。
「まあ、そんなことだと思って」
「でもさ、あたしアイドルだけど」
「まじですか」
こうなるんだったらもっとおかしい職業がよかった
「あたしに嘘をついても盗賊ギルドに行かないとだめなの?」
「うぐっ」
「うん? ねぇ、行かないとだめ?」
「...冗談はやめるか」
「ういーす」
理性がなんとか耐えた
よくやった、自分
「ここから東、怪しいと思われるバーにある」
「なんだその『怪しいと思われるバー』は」
「バーの名前だよ?」
なんでそんな名前しているの
馬鹿じゃない?
「まあ、教えたからあたしはいくよ」
「お、おう」
「なんか、また出会う気がしたからね、じゃね、元気でな、だんな様」
「だから、それやめろって...」
そして、嵐のようにアスカは消えた
また出会える気がした...か
「...まさか」
僕に関心があるとか、みたいな考えはしない
そんなわけないから!
どや!
「...行きますか」
そして、5分くらい歩くと、バーっぽいところがあった
「僕、なんでいつもここの文字が読めないことを忘れるんだろう」
名前が『怪しいと思われるバー』よりは本当に「怪しいバー」の方が探すのが簡単だった
そして、外で立っていても何も起こらないと思って中に入ると
「いらっしゃいませ!」
怪しそうなバーだった
なんで壁にバトルエックスがある!?
あれはゲームだけで見るものだと思ったけど
「おう、いらっしゃい、あんちゃん、何か探しているのかい?」
周りを見ようとすると、禿のおっさんが話をかけてきた
「はい、盗賊ギルドを探していますけど」
「...ほう? なんで?」
「えーと、友達が盗賊なので...?」
嘘は、ついてない
「...名前はなんだ」
「ひとう ふつです」
そういうと禿のおっさんはあきれた顔をした
「君じゃなくて、友達の名前を聞いている」
「健一さんですけど」
「...ああ、お前が...ついてこい」
バーの後ろの壁を押すと、また隠れた門が現れた
「驚かないな」
「ずいぶんなれたので」
3回目だし
「健一から君の話は聞いた」
「...え、と、いつ...?」
「手紙でな、新入が入るかもしれない、と書いていたな」
「話だけだったんですけどね」
こんな風になるとは思えなかったし
1週間前の僕に君は死んで異世界に何の能力もなしで行って苦労するよ!
と言ったら狂った人だと思われるだろう
「とりあえず、話を聞くか」
『...人を簡単に信用するな、あたしも含めてだ。 人を信じるときは、確かな理由があるときだけだ』
理恵の言葉が、頭に流れる
「はい、もちろん」
でも、僕には、信用する以外の選択肢が残っていなかった
「なるほど、そうだったのか」
僕は、今までの話をした、三つのことを除外して
1.僕が勇者の居場所を分かっていること
2.僕が理恵を逃したこと
3.そのあと、理恵と出会ったこと
嘘をついている罪悪感はあったが
「そうだったのか、大変だったな」
「...はい」
「とりあえず、わかった、これから君は少しここに泊まってくれ」
体がビクッとする
「健一はこうなることを予想してた、状況が悪くなった場合、君の手伝いをしてくれと」
「盗賊は...すごいですね」
本当に、すごいと思う
「でも、ただでは無理だ、君は明日から盗賊の訓練をやる」
「はい?」
「健一が書いた手紙には、ゴブリンと1対1で引き分けたとあったが」
黒歴史だ
「まあ、ここで生き残るくらい強くならないとこまるからさ、一員になるためには少し制限もあるし」
「...」
「どうした、黙って、おかしいことでもあるか」
「健一さんは、今どうなっているのか知っていますか」
禿のおっさんは黙って、僕をじっと見た
「あの...」
「行方不明だ、死んだのか、生きているのかもわからない」
「............」
「ついた」
通路を通って出た広い場所には誰もいなかった
「...あの」
「どうした」
「いえ、普通、気絶させられる状況なので」
「お前、どんな生活してきたの」
説明すると長い話だ
「で、ここまで僕を連れてきた理由ですけど」
「ここで特訓をするのだ」
なんか、漫画のロマンみたいなやつが出てきた
「特訓...ですか...?」
「お前は少なくともレベル15以上を相手して、逃げられる程度にならないとだめだ」
「え。。とりあえず、僕、ゴブリンと引き分けですけど」
15は少し強すぎだと思うけど
「普通のオークのレベルを基準にしているからさ」
オークは普通15なのか
意外に弱くない?
「ちなみに、強いオークのレベルは?」
「25から29くらいかな」
2倍くらい強くなりましたけど
「まあ、とにかく、そのために君を訓練する人を昨日よんだから、明日になったら来るはずだ」
「はあ、ありがとうございます。」
「...友達の頼みだからな、じゃ、明日な」
そういい、禿のおっさんは戻った
ため息がでる
「...怪しい」
何の事件もなしに、うまくこうやって盗賊のアジトに入れるなんて
疑いすぎることもあれだけど
今までの僕をみたら、なんの事件もない方がもっとあやしい
「だとしても、なにかできることもないし...とりあえず何があるのか把握するか」
そして、僕はおかしなところで異世界をなめていたことを分かった
「...コロセウム?」
「シャワー室...?」
「え、なにこれベットがめっちゃふわふわする」
「訓練室めっちゃ大きい!」
などと感嘆をしていたら、何時間か過ぎた
「やばい」
ファンタジー異世界のくせに、元の世界のどんなところよりも質がいい
恐るべし、異世界
「一体、僕、どんな訓練をやるんだろう」
ていうか、異世界の特訓に僕がついていけるのかな
「ステイタス」
レベルはわからない
...あ、そういえば、僕、レベルアップはできるかな
「...まさか」
レベルアップは、するだろう。
そういったけど、不安だけだった
「あら、予想したよりは早く来たね」
後ろから声をかけてきて、逃げた
「あら」
「すみません! よくない記憶があるので!」
そういって、僕はベットの後ろに隠れた
「大丈夫だよ、ゆっくりしてね」
女の優しい声が聞こえる
「本当にすみません、後ろに誰か来ると不安になるので...」
最近、悪いことばっかだったからかもしれない
あ、いつもこんな風だったか
「あら、それは大変だね、無理だったら戻るけど、どうする?」
「...出ます」
そういって、僕はベットの後ろからでた
「あら、鬼でも見た顔だね」
この世界、鬼もあるのか
...いや、つっこむところはここじゃないか
「僕、そんなにひどい顔していますか」
「しているよ?」
「はあ...」
別に何か変わったことは無いと思う
びっくりしたことは事実だけど
「ふふっ、顔じゃなくて目がすごく泳いでいるから」
「いえ...それは...どこを見たらいいのかわからなくて」
そう、すごい恰好だった
簡単に言って
「あら、思春期の青少年には刺激がすこし強いかな?」
まさにその通りだった
水着なの? と聞きたいくらいのすごい服
健康美が見て取れる褐色の肌
横に束ねた黒色のサイドテール
って、普通の髪色じゃん
とにかく、素直に、目を置く場所がない
「だとして、胸のところだけ見ることもあれだとおもうけどね」
「見てませんよ」
「あら、そう?」
「...」
「本当に?」
そういい、女は近づいてきた
「あの...」
「ほ.ん.と.う.に.?」
近い、距離が近い
ここでは、素直に答えるか
「...まだ、見てません」
「あら、引っかからないね」
そういって、笑った
もちろん、距離はそのまま
「私はこれから君の先輩になる人だよ、よろしくね」
「あの...近いです」
「わかってる♪」
悪魔だ
「え...と、僕はひとう ふつです」
「普通人?」
「いえ、ひとう ふつです」
改名するかな、マジで
「あら、そう、ううんー私のことは『先輩』でいいよ」
「...」
「はい、呼んでみたら?」
「あの、名前は」
...苦手だ、この人
「うん...君が頼りになる人になったら教えてあげる」
「はあ」
「あらあら、そんなに嫌そうな顔をしなくても」
そんなに嫌そうな顔だったのか、と思い口に手が行った
「盗賊は、信頼した人にだけ、名前を教えるものだよ」
「...健一さんはすぐ教えたような」
「副団長は特別だからね」
「へぇー」
...うん?
「副団長!?!?」
「あら、これも教えなかったのかな」
「全然です!」
え? 副団長!?
そういえば、なんか言おうとしてたような
「レベルは少し足りなかったけど、実績とこれから期待してるといわれて、すごい速さで上がったよ」
「え...でもレベル...」
「33だ」
健一さんは、33だったのか
そういえば、僕、ステイタスを見ることができたな
「完全に忘れていた...」
「あら、何を忘れていたのかしら」
「ステイタスを見ることです」
僕がほぼ唯一持っている能力を使っていない
「あら」
それを言って、黙った
「なんか言ってください...」
「『先輩』と呼んだらね」
「。。。。。。ナンカイッテクダサイセンパイ」
「あら、硬いね」
これが限界だったので
「だったらかわいそうな後輩のために説明するよ」
「はーい」
「まず、私のステイタスを見ます」
「ステイタス」
セイの時と同じく、顔の隣に二次元のスクリーンが現れた
レベルは23、あれ、意外に
「弱いと思うのは後にして、後輩くん」
「思ってませんよ」
思ったけど!
「問題が多すぎて指摘することがいやだけど、全部聞く?」
「...はい」
「ん? 聞こえないけどね」
「はい...お願いします...せんぱい...」
「よろしい」
いやだ、本当。
「で、まずは...そうね、言う必要あるの?これ」
「え...と、何を?」
「ステイタスは見ようとするとすぐに見えるはずだから、やってみて」
「...」
ていうか、どうやってステイタスを閉じるんだろう
確かに、前は...
「寝て起きたらで閉じていたな」
「閉じることも同じだよ」
「はい...」
小学生になった感じだ
で、閉じると思うだけでも閉じられるのか
ゲームみたいだな
「お、きえたきえた」
「で、またやってみて」
また、ステイタスが現れることを想像する
すると、また現れた
「ここで後輩君に質問、言わずにステイタスを見ると何がいいと思う?」
「え...ばれずに相手の状態を確認できること...?」
「そう、後輩君のレベルは5もないでしょ?」
「あ、そうですか」
「あら...自分のステイタスもわからないの?」
あきれた顔で僕を見る
「え、と、確認する時間が無かったと言い訳してもいいでしょうか」
「まあ、いいけどね」
「ありがとうございます、先輩」
「...あら、ずいぶん簡単に言うね」
「まあ」
助けてもらったから、これくらいなら簡単だ
「素直になった後輩君のためにもう一個、アドバイスしてあげる」
「まだ、あるんですか」
まあ、何個あっても驚かないと思うけど
「後輩君のレベルはたった1、ゴブリンと戦ったらぎりぎり負けるんじゃないかな?」
「はあ...」
引き分けだったけど
「盗賊は、レベルが低い、だけどね、後輩君」
「はい」
後の話になるけど、ここで聞いたことが、僕の異世界人生を変えた
「持っている手段を全部使って、最後まで生き残る、それが、盗賊だよ」
「手段を、全部使う...」
「後輩君は弱い、すごく」
「...まあ」
異世界に来て、何にもできない自分
僕が、弱いから
「誰でもすぐに強くなりたい、でも、そんなことはない」
僕にはチートパワーはないから
「だから、持っているものを全部使って、方法を見つけて」
「...でも、僕、持ってるものは2個だけですけど」
「あら、それも使い方次第だよ? 後輩君」
インベントリーとステイタス
これを、使い方次第って、言えるかな
「よく聞いて、後輩君」
「ひゃい」
だから、近いこの人
「もっているスキルをどうやって使うのかは人によって違う
私はね、後輩君ができること、できないことを考えてと言っているんじゃないよ」
先輩の目が、まっすぐに僕を向いていた
だから近い、近い!
「できるようにならないと、だめなんだよ、後輩君」
「...それが簡単にできたら、僕もここまで苦労してませんよ」
「あら、だれも簡単だとは言ってないよ?」
にこっ、と先輩が笑った
「たくさん失敗してね、でも、生き残って、そうしたら、経験が解決してくれるはずだよ」
「経験...」
経験値、つまり、EXPか
経験値がたまると、レベルが上がる
当然な常識だ
と、考えたいけど...
「あら、どうした?」
「いえ、少し心配事があって」
ここは現実よりゲームに近い
経験を重ねることだけでも、能力があがるということは
『現実ではない』
つまり、異世界...ゲームに近いこの世界はは元の世界のルールとは違うという意味
まあ、もとから気づく部分だけど
だったら、僕が知っているゲームの知識が、少しは通用するかもしれない
たぶん。
「心配事にしては、笑っているけど、後輩君」
そう、その意味は、レベル1でも、レベル99になれるという意味だから
ゴブリンと引き分けた僕でも、ドラゴンスレイヤーにもなれるということ
「早速ですけど、先輩、訓練をお願いしてもいいでしょうか」
「あら、急にやる気がでたね」
それは当然だ
現実では絶対不可能だったレベルアップができるということだから
まあ、頑張って能力が下がることは無いから
頑張るだけだ




