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王国の盾~特異なる者。其れなりの物語~  作者: 白髭翁
第三章 王国の盾と英傑の碑
98/204

二十~剣と牙。そして何でもアリ~

2020/03/19 修正改稿

 サーカムの地を照らすその晴天が、その戦いが奏でる光景を射していた。切られた火蓋から、その全体の様相が変わる程の刻が生まれていた。


 その一角。王国軍の左翼では、帝国軍の崩れ去る様から、ヘルベルト・ヴェッツェル伯の苦心の壁が現れて、その後方に帝国軍の敗走の演舞が集約を始めていた。


「敵の追走を止める。所属は無視して隊を組め。持たせる間に再編。そのまま、逆擊する――」


 ヘルベルトの言葉が飛んで、それを連鎖が浸透を促していく。

 その場景を確認して彼は、自身の娘、テレーゼの方角を見た。当然、親馬鹿なのは自覚していたのだろう。しかし、この時の彼の行動は、帝国の勝利とそれが合致していた。


「我らで決める。そのつもりでかかれ」


 その言葉と共に、彼はその流れに飛び込んで行った……



 北側のその場所で、彼の思いの先テレーゼ・ファングは、何故か呆然と黒い軍装の遠退くと近付く獣装を眺めていた。彼女の向かい側には、切り結んでいた者の空馬が見える。

 そして、カン高い音が彼女の回りで剣擊のリズムを刻んで、そこから遠退く様に尋常とは思えない連続音がこだましていた。


 ――そんな光景の中に彼女はいた。



 その彼女を置き去りにした、黒装槍騎兵の先頭にあるダーレンは、近付く敵にその男の顔を視認する。その流れで「なるほど」と呟きを入れて、微かに息を吐く。


 そして、軽く槍を上げて隊列に指示を出した。


「全力だ。侮るなよ――槍擊用意。時間を稼ぐ」


 その指示と同時に、獣装騎兵が縦列から広がりを見せ、それにダーレンらは平行槍擊の距離を定めて速度をあげた。

 それに光景に合わせ、獣装騎兵の一団からボルトが放たれる。――それはまるで、カミルの「卿らだけでないぞ」の言葉を現す様だった。


 馬蹄が駈る無音の応酬。続く激闘がその場に見え始める。



 その場景に届く剣勢の激突音が、離れた一角で続いている。それは、王国最強剣士レイナードの馬上からの剣擊と第七の牙(ズィープト・ファング)ギルベルト・ファング・ヴィルケの武勢が作り出していた。

 その光景に、レイナードの愛馬黒千(ブラックサウザー)の駈ると、交配種と思われる同程度の馬体の軍馬の躍動が激しさを付加していた。


 それを遠巻きにラファエルは見ていた。


 最初の「奴だ――」の後に剣を走らせた彼は、それを弾かれて以降二人の中に入れないでいる。ただ、その一撃でギルベルトが体勢を建て直し、レイナードとの剣擊と剣勢を交える事になっていた。


 ラファエルの視点で言えば、その場景は意外であった。

 目の前の男の強さとギルベルトの力を自身の記憶で言えば、明らかに『奴』の力が上。その上で、押されはいるが打ち合いの演出まではギルベルトは到達していた。その事が彼には意外となる。


 唐突に、ラファエルの思いの視線からずれる様な馬体の接触がおこる。それがお互いの姿勢に僅かな揺れを入れて、距離を持った間合いが生まれた。


 その距離でギルベルトの声が漏れる。


「その剣筋……感謝する」


 怪訝であるが真剣な赴きのレイナードが、剣を美しく返して一振りをする。一連の流れで、ギルベルトはレイナードに意識が向いたのだろう。更に間合いを外して声を出した。


「皇帝陛下より賜りし物。それでこちらが欠けるとは、些か驚いたぞ。それに、その剣の流れ……弟子か何かなのだろうな」


 ラファエルの怪訝な視線とレイナードの無表情。そこから、レイナードの声が微かな風に乗って届く。


「なんの事だ?」


「軍装は違うが、ヴァンダリアの者なのだろう。なら、あの時のあの剣士だ……その太刀筋、此方には刻まれている。忘れる訳がない。その上の事……」


 ギルベルトの感謝は、ヒーゼル最後の場面の事。そこに彼はいた。

 そう、彼はその中の一人であったが、露払いの如く剣を奮うオーガス・フロックハートの剣で僚友を信じられない程、失っていた。


 そして、彼自身の体にも彼が刻まれている。


「オーガス・フロックハート」


 レイナードの唐突が場に出る。ギルベルトの頷きから肯定がみえた。ただ、それは初対面の雰囲気ではない頷きだった。


「そうだ。間違いない。我が剣、我が武が目指し超えるべき者。その上で、貴様には感謝する」


 風の流れが空間を包み、それに合わせるレイナードの息遣いが見えた。そして、名も知らぬ敵に向けるものか分からない言葉が出てくる。


「最後の相手は」


「見てはいた。最後の最後で『誰が』など思いもしない。最後の十人、その中の誰かだ。いや、それかも分からないな」


「そうか」


 レイナードに突然に訪れた、視点ではない接点があるオーガスの最後を知る者。無駄な高揚感は彼には見えないが、握る手に力が入るのが分かる。


 それが合図で空気が変わる。


「名を聞こうか」「レイナードだ 」「ギルベルト・ファングだ」と、当たり前でお約束の流れが起こり、空間が縮んだ様に間合いが詰まる。


 しかし、この場合詰めたのは、黒千の――御すから解放した――動きだしであった。レイナードは黒千にそれを任せて、黒千の目指す位置を軸にギルベルトへ剣を走らせた。


 ――クローゼの愛馬の琥珀色の薔薇(アンバーローゼ)。彼女程の繊細さは無いが、黒千もレイナードを地に足がついている様に、相手の死角に送り込む。『そこしかない』この場の三者がそう思う所にだった――


『そこしかない』で、当たり前にギルベルトも剣を合わせる。レイナードの剣は『積み重ね積み上げた』物である。そして、ギルベルトもそうであった。また、二人の剣は奇しくも、オーガスのそれだったという事になる。


 剣の軌道が美しく正確な故に、ギルベルトは彼の剣擊を捌く事が出来ていた。ただ、この時のレイナードは近接騎乗の技術を捨てて剣擊を放っており、それは人智の外に届く程で、辛うじてそれにギルベルトは手をかけた――受けた――のだっだが。


『貰った――』ギルベルトの瞬間的な思考である。


 武技に移る余裕すらない連擊の後……隙間の刻。その直後の初撃。強烈で正確な軌道の剣筋から、次に来た『切り返し』を狙って、ギルベルトは斬擊を入れる。


 ――レイナードが時折見せる『切り返し』。その剣を流す仕草は『オーガスの剣であり、オーガスの癖』だった――


 しかし、レイナードの中の『オーガス』は、ギルベルトの身に焼き付いた彼よりも強かった。

 ギルベルトに当てられたその切り返しから、レイナードは重厚な剣身の強さを感じさせない、しなやかな三連擊を放つ。


 ――交錯する斬撃と連撃――


 その連撃でレイナードは、ギルベルトの剣を折り左腕を飛ばし落馬させ、空を切った三連目を一振りとして軽く流し、晒した頬に微かに痛みと温かさを感じていた。

 そして、自身が来た方向にあるラファエルを眼光に据えて、その向こうの状況を見て思案する仕草をした……




 レイナードの視線の先で、クローゼ・ベルグの護衛隊が彼の元を離れる場にあった、正面から来る寡兵とも言えぬ二騎の騎兵に、銀白乃剱(シルヴァーソード) シオン・クレーヴレストは激昂をみせる。


「オーウェン=ローベルグの軍旗に、白旗無しで、たった二騎とは愚弄するにも程がある。殿下。ならばこちらは銀白乃剱(シルヴァーソード)の私が――」


「――まずは、敵の力量を見よう」


 彼女がオーウェンの言葉を引き出して、自身の指示に繋がっていった。


 その彼女と指示で、魔弩砲バリスタが改良型である事が証明され、正面から来るそれらは馬鹿では無いと実証させていた。それが、フィリップの懸念の『牙』である事の認識も連れてになる。


 オーウェンはその実証で、最終的な選択肢が一つなのを理解した様に見える。その意図がどうであれ、結果的に牙には剱を当てるしかない事をケイヒル伯爵からの言でも分かっていた。


 それに続くケイヒル伯爵からの両翼の状況の伝達に、正面の敵陣に掲げられた『あからさまな帝国軍旗』と再編された帝国騎兵の列。それを見て、オーウェンは最終的な決着の形を示した。


 銀白乃剱と真紅乃剱を前面の牙と思われるに向けて、第十騎士団には自らの言を持って『覚悟と矜持を示せ』と彼らを戦力と成させて見せる。それをオーウェンが、フィリップ・ケイヒル伯爵に託す、そんな流れだった……




 その時点でクローゼは、その両翼の流れを確認していた。そして、自身は右翼の牙を止める準備の最中に、魔弩砲の通常射撃を見ることになった。


「普通に()てんだな。で、それを弾くカレンみたいな、剣技か……あれ」


「白のと男爵とこの赤い、あの嬢ちゃん。大丈夫か? 敵さんあの数の矢、凪ぎ払ってたぞ」


(おご)りじゃないが、真紅乃剱(カレン)は強いよ。今の彼女は負ける想定が出来ない」


 ――彼女には驕りなどない――


 クローゼの言葉は自身に向けた物だった。魔王に獄の眷属神の化身と対峙したクローゼに取って、レイナードはまだ(・・)人である。

 しかし、カレン・ランドールは既にその領域を超えている、と彼は思っている。それは彼の言動からも分かる。


「それにあの剣。向こうには悪いが」


 そんな呟きをして、ラグーンにジーアを任せて「負けそうになったら良い」と告げていた。そのまま、存在感が在るのに『ない』を演出している男に、クローゼは向く。


「じゃあ、パトリック。ヤバそうなのが来たら撃て。どっちかは任せる」


 その言葉に頷く彼の横で、ジーアも何故か「任せなさい」と答えていた。その場をみたクローゼも、軽く手を上げてそれに答える。

 そして、自身の行く場の途中で何かを思いも付いた顔した。


 ――そういえば、カレンに強いと言わせるシオンて、聖騎士らしいから。そういう事か。あっちが無かったら、シオンの本気見たいけどな。


 その感じのクローゼが動き出した頃に、中央では、別の静寂があった。クローゼ自身は差して驚か無かったが、その場を沈黙させる光景だった。


 それは、ディートハルトの魔弩砲を狙った武技。その長い輝きの魔力の波を、カレンが剣技で上から叩き切った光景だった。

 出した側も、出された側も、中央の対峙は、後先ではなく驚愕の後で沈黙を見せた。


「クレーヴレスト殿。私が大きい方を」


「勝手に決めるな」


 四騎がその場の注目を浴びる中、シオンに向けたカレンの言葉は相手の剣技の大きさで、ディートハルトの方は自分が相手すると言っていた。


「私の方が年が下。名が同格なら、私が先に行くのが道理では」


「別に試合う訳では。……まあ、勝手になさい」


 同意とも取れるそれでカレンは馬から飛び降り、申し訳け程度の声で自身を名乗った。


真紅乃剱(グリムゾンソード)カレン・ランドール――参る」


 その瞬間。一旦納めたデュールヴァルドに手を掛けて放つ間に、その距離を詰めて斬擊を見せた。


 カレンの標的から外れた、第四の牙(フィーアト・ファング)ギュンター・ファング・リッケルトは、百メーグはある距離を飛ぶ様に詰めたのを、驚きを隠せない表情で見て、ディートハルトの強さを再認識していた。


 ディートハルトは馬上で一撃を受けて、その衝撃を逃がす様に馬から降り、カレンの落下する地点に目掛け武技を放つ。カレンが無造作にそれを切るのに併せて、距離を詰めて剣擊をあわせた。


 四度の金属音が響き相対的な距離が開く。


「王国最強剣士。成る程、嘘ではないらしい」


「剣士は別にいる」


 カレンは呟きを掛けて、剣先を走らせて剣技を放ち距離を詰める。それに武技を向けて消し去り、ディートハルトはカレンの剣の受けた。

 つばぜり合いの様相で、ディートハルトは更に声をむける。単純に、受けた剣身の強さにその剣勢をずらして受けていたが――


「力を持て余しているな。残念だが貴様の力の先は見えぬと思え」


 ここで、終わりだとディートハルトは告げていた。積み上げた技量は、年月が勝る彼にあった。帝国騎士で最も強かった彼の自負も言葉に含まれていた。




 この時既にクローゼは王国軍の右翼に在って、この光景を見る余裕は無かったが、もしも、視認出来ていたらどう思っただろか。


 だが、カレンはそれを自覚していた。


 レイナードと試合いクローゼに全力をぶつけて、魔王に一撃をあわせ、自身がどれ程であるかを理解していた。そして、露になっているカレンの口角が僅かに上がる。


「初めてが、貴殿ならそうだったかもしれない」


 カレンは、言葉に併せて力を込めて突き放し、デュールヴァルドに身を任せる様に剣を流した。


 ――それで一呼吸――


 その直後からの連擊は、まるで剣舞の様に美しく、正確な軌道から繰り返される人智を超えるかの如くな剣速と剣圧が、ディートハルトからあらゆる物を奪っていった。



 その場景をギュンターは、対峙する銀白乃剱(シルヴァーソード)に意識を向ける余裕なく見つめて、馬体を僅かに動かした。

 そして眼前を純白の閃光で遮られる。その白い光を視認で来たのかと彼は思った程の鮮明さに……光源を彼は見て、美しい声を聞く。


「余所見とはなかなか面白い。それは警告。次は無いと思え」


 突き出された剣先が、ギュンターの視線に向けられていた。次が来るかと構える彼に「相手をしてあげます。来なさい」の言葉が届き、ギュンターは「ふざけるな」の声とともに馬蹄を鳴らした……。




 中央での剱と牙の局面が進む中、王国軍左翼では、釣られなかったノースフィールの私兵達が、元傭兵らしく。また、らしくなく奮闘して戦局を支えていた。

 その状況で、第十騎士団二千は北側の奇襲の対処に向けて動き出す準備に入っていた。


 それに、黒装槍騎兵がオーウェンの前線に向かうまで聞いて、クローゼは自軍右翼に飛ぶ。


 クローゼが向かった先の状況は、簡単に言えば、徒歩兵力による背後の取り合い、または混戦の膠着状態にあった。

 ライムントの武断による徒歩兵力の投入で、横陣で展開する感じになった両軍が、切れ目を探して南側に段々と延びている。その感じになっていた。


 既に、咆哮の効果は薄れており、絶対的に数が少ないランガー達も勢いだけで押し切れなかったとも言える。――ただ、損害を無視して。投入さられた両軍の兵力差を考えれば十分効果的であった。


 その兵力差を上手く埋めて、騎兵を使い混成気味の戦線を王国第七軍団長ザカリー・ウォッシュバーン伯爵がまとめていた。


 その彼が、イーシュット達を一旦下がらせる算段が付いた所で『牙』投入があった。イーシュット達が限界まで行った所。少なく無い損害を受けた上で、一旦の流れにである。


「お兄ぃ、こいつ。つよいつよい」


「そんな事は、見れば――」


 第二の牙(ツヴァイト・ファング)コルネリウス・ファング・ゲルツァーに追いかけられているクアナの声に、イーシュットは第六の牙(ゼクスト・ファング)バルトルト・ファング・シュパンと剣をあわせてながら、奇怪な技によって倒される、王国軍の兵や自身の護衛を見ながら答えていた。


 引き際の襲撃で、膠着の戦線が崩れる流れ。この時連れて来た剣獣士二人が一度にやられていた。


 その状況であったが、クローゼは右翼後方まで近付いて、目算で転位型魔装具を使った。不可侵領域(フィールド)を起動させた状態で、何となく流れ込む敵の列の上で魔方陣が展開する感じにした。


 そしてクローゼは、あたり前の様に敵の列を押し退けてその場に立つ。ままに、驚きと混乱を両軍に起こし彼はそこで叫ぶ。


「何でもアリだこの野郎!」


 意味不明な言葉の後に、不可侵領域(フィールド)を敵陣方向に扇型に拡げて、敵を吹き飛ばし、操作可能型自動防護式アクティブプロテクション対物衝撃盾(シールド)対魔力防壁(ウォール)に移行する。


 一連で振り向き様に、彼はイーシュットとクアナを探す。その最中に直接防護(ダイレクト)を断続的に発動した。更に、視認したイーシュットとクアナの二人を対象防護(ターゲット)にロックする。


 その流れで驚きと混乱が収まる前に、双剣を抜いて牙らしき者、イーシュットとクアナに剣を向ける二人に無造作に竜硬弾を放ち、その高速の弾道が風を切る。


 コルネリウスは、それを察知したのか剣先から身をよじり、バルトルトは自身の紋様の力を使った。

 その流れで、コルネリウスはそれをかわして、バルトルトが撃ち抜かれて倒れるのを見た。


「紋様の力を突き抜けただと」


 バルトルトが使ったのは、魔力の球の様な物。それを突き抜けたのは竜硬弾の特性になる。


「お前の方が強いのか?」


 クローゼから向けられた言葉に、答えるでもなくコルネリウスは魔力の刃を放っだ。しかし、無造作に近付くクローゼの魔方陣の光を見せられる事になった。


「ヴァンダリアの魔術師か?」


 今度はクローゼがそれに答えるでもなく、竜硬弾の装填から起動までの流れを問いにむけた。


 ――軌道を外すコルネリウスに、カチカチの音を続けて、クローゼはそのまま歩いていく――


 クローゼが歩き行く中、時間の経過が静を動に変えて敵が動き出した。だが、クローゼはそこに振り向きもせず、腕を胸の前でクロスさせて後ろに竜硬弾を放つ。


 勿論、魔力を全開でのせてであった。


 それなりの数を吹き飛ばした感じに、カチカチの音を続けるクローゼによって、またその空間に静寂に似た何か訪れてくる。味方であるイーシュットの目にも……それは異様に見えた。


 ――これ程なのか。この男は……


 とイーシュットは、断末魔に近い声をあげる足下のバルトルトに剣を突き立てながら、その光景を彼は見ていた。

 クアナの「クローゼ。つよいつよい」の声に、戦線維持を受け持っていた。ノースフィールの者が、それに追従して来た帝国兵に攻撃を加え始める。


 この時コルネリウス自身は、強さの基準の違う感じのクローゼに戸惑っていた。それを証明するかのように、囲まれた感じの場所に武技を放つ気配を見せて、流れる様にそれを放った。


 しかし、その魔力の刃はクローゼの魔量吸収(アブソーバ)の魔方陣によって湾曲する感じな吸収され、その消滅と共に消えていった。そして、逆に流れる様な「これも行けんだな。――チートっぽい」の意味不明を聞かされていた。


「化け物か」


 コルネリウスの認識が、一定の水準を越えたのだろう。そんな声と共に自分土俵にすべく、彼は文字通りに飛んでクローゼとの距離を詰めた。


 ――隙だらけだ。これを化け物と思ったのか。


 コルネリウスが、魔力は弾かれたが自身の剣なら届くと思ったのは、その行動で分かる。聞いた話と見た、体感したでは違う。そう思ったのかもしれない。


 流れる剣が当然の様に連擊でクローゼ襲う。しかし、クローゼも当然の様に魔方陣の煌めきを見せつける。

 そして、表現できない顔のクローゼにコルネリウスの思考が混乱する。斬擊を弾かれて、彼は咄嗟に後ろに飛んで距離を取った。


 単純に、手詰まりな感じがコルネリウスから見え、彼は当たり前に武技を放つ体制になり、それを放った。その先のクローゼの顔が、アレックスに言わせるとヤバい顔していたと言う事になる。


魔力反射(リフレクション)


 クローゼの声に、コルネリウスは魔方陣の展開を見て、自身の武技で自身を両断し……思考を停止させる。そして、断末魔すら無く崩れるコルネリウス。


「これもありか。……チートだな」


 クローゼは完全に、武人としてのコルネリウスと違う土俵に立ち。ほぼ初見殺しであったが、彼を倒すに至る。そして彼の死に様は、コルネリウスが合流して戦線を崩すた為きたのが、ライムントの直軍であったの故、クローゼの恐怖を増大させた。


 ただ、クローゼが『もし』万能であったなら。


 何本かの牙がすり抜けたのに気付いて、それに対処出来ていたなら。或いはそのまま押し切れたかもしれない……。


 そう、すり抜けるのに気付ていれば……である。



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