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王国の盾~特異なる者。其れなりの物語~  作者: 白髭翁
第三章 王国の盾と英傑の碑
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十七~それぞれの価値…開戦の時~

 王国の状況とは別に、驚愕の走破から始まった帝国の明確な敗走。それは、クローゼ達がサーカムに向けて後退した前後に、秩序だった形式になりゴルダルード帝国軍は平静を取り戻していた。


 この戦いで対となるゴルダルード帝国も、その為に幾ばくかの距離を下がり再編成を余儀無くされ、時間的な経過は相対的に必要な時間を費している。


 その流れの中で、ライムントは天幕の前で腰かけ、状況報告を居並ぶ牙と共に聞いていた。積み重なるを無言のまま受けて、それを噛み砕くような表情をして思いをめぐらせる。そんな雰囲気だった。


 一連の報告が終わり、彼の目の前には跪くヘルベルト・ヴェッツェルの顎を引いた姿があり、その後ろには、捕らわれの身であった三人が連なる光景が出来ている。

 そこでは、カミルの説明を含む報告の声がライムントに向けられていた。


 当初は、カミルのみが単身で皇帝であるライムントに報告した上で、テレーゼをという流れにする。そんな、彼の言葉があったが、彼女があまり上手くいっていない彼女の父――いつまでも子供扱いする自身の父親――を頼り今に至っていた。


 続く、捕虜の身になりながらも、恥辱に耐え敵の情報を引き出したテレーゼの功績。それをさりげなく……明確にしたカミルの言葉をライムントは、時折頷きを交えて聞いていた。

 第三軍団の敗走には眉をひそめて、ゲルオークとエクムント事には「そうか」と声を出した。


 ――ゲルオークの名誉の為に付け加えるべき事があるなら、それはライムントの帝位についてである。

 そのままを見れば、ライムントのそれは……簒奪だと言える。時間をかければ、自ずと手に入る物を力づくで手に入れた。

 そして、彼の父を天極へと誘ったのが、ゲルオーク・ファング・ヘルターであった――


 ライムントにとって、ディートハルトとコルネリウスは、アーヴェントから見たカレンとレイナードになる。

 その上で、ゲルオークは彼らのと同格。その認識をライムントは持っていた。ゲルオークの帝国継承の事から分かる様に、ライムントの陰の部分を彼らが受け持っていたと言える。


 彼はエクムントやラファエルともに、騎士ではなく本当の意味で牙であった。皇帝の影であるとゲルオーク自身の認識もあり、彼は、自分は別格で正統な二人と同格と思っていた。

 格付けや本当の意味の強さとは、真剣を交えなければ分からない事ではあるのだが、彼はそれを踏まえてそうであったと言える。


 受けを主体とした彼の剣は、帝国の気質とは異なり剛剣とは言えない。しかし、それとしても、帝国最高の騎士二人には負けない自負が彼にはあった。その上での断末魔の叫びだった。余談であるが。



 そこまで、ライムントがゲルオークの事をその時考えていたかは分からない。ただ、出した声は悲観的なものではなかった。


「つまり、ヴァンダリアに集約されるのだな」


 当代の戦場を駆るヴァンダリアに、彼自身も後退を余儀なくされた。その状況で、彼は目の前の者の責について不問にした。


「魔術師の魔力と幻術。そして、人外なる者どもに、我が皇帝の十三の牙(カイザー・ファング)を三人も叩き折られるとは。ベルノルトに至っては余の眼前。現状を甘受し、ドライ将伯の命を持って第三軍の責は一切問わぬ。ヴェッツェル伯それでよいな。テレーゼ・ファングも異論無かろう」

 

 ライムントの言葉に、跪く彼らは恭しく恭順を示す。そして、続く言葉に……ラファエルは吹き出す汗を感じる事になった。


「ヴァイトリング。我が命を受け赴いた先で、僚友を打たれこの場にきた卿の気持ちはどうだ?」


 その言葉自体が、何を意味するか分からないラファエルは、顔を上げる事も声を出すことも出来なかった。並びある牙の眼の刺さっているだろう様子に、背中が震えるのを感じていた。


 ライムント自体はこの時、奮起の言葉を期待していたのかもしれない。だが、ラファエルにはどうであるかわからなかった。そうして、暫くの思考の後、意を決して彼は顔を上げる。


 そこには、皇帝の横に立つ護衛の任を受ける、第十の牙(ツェーント・ファング)ヘルミーネ・ファング・フローリッヒの見下す様な冷たい目があった。


 ――分からんだろう。真剣な恐怖など。 ……反吐が出るその態度……


 声を出す前の僅かな間に、ラファエルの思考が乗っていた。変わらずの彼女の感じと視線に入る皇帝と究極の牙(エントリヒ・ファング)第一の牙(エーアスト・ファング)第二の牙(ツヴァイト・ファング)のそれらが霞んでみえた。


「皇帝陛下。発言を御許可を……」


 ヘルベルト・ヴェッツェルが驚愕の表情をしたのを、声を出したテレーゼは分からなかっただろう。

 そんなことはお構い無しに、真っ直ぐな目で、彼女は声を向けた先を見つめていた。


「許す」


 ヴェッツェル伯の動揺を見てとったライムントだが、短く切った声で、テレーゼに促しを向けた。


「感謝致します。皇帝陛下の御心使いを受けるまでもなく。ヴァイトリング殿も我が心中と同様に、然るべき気持ちかと。ただ、私が力及ばず捕虜となる不覚がなければ、斯様な苦渋の選択をなされなかったと思われます。ヘルター殿に皇帝陛下の牙二人をお付け頂いたにもかかわらず、ヴァンダリアの魔術師に――」


「――良い。責を問ている訳ではない。ラファエル・ファング。卿の気持ちを問うただけだ、他意はない。では、改めて聞く。その二人は強いか」


 唐突なライムントの言葉。その後の仕草が牙を流すように見てラファエルに向けられる。彼の上げた視線に、それが鮮明に映ったのだろう。彼の表情が変わった。


「皇帝陛下。見たままを……でありますか」


「そうだ。思いままだ」


 威圧感はない。そんな印象の言葉にラファエルは答えをだした。


「恐らく……最後の牙まで届くかと」


 その言葉に、帝国最高峰にある牙の二人は顔を見合わせて、それを凌ぐ牙は動揺すら見せなかった。


「という事だ……フリートヘルム」


「御意」


 ライムントは『届く』との言葉を、傍らに立つ男にそのままを流した。それに短く切った返しをした究極の牙(エントリヒ・ファング)は、真っ白な髪を軽く揺らして一礼をする。


 美しい所作は、信頼によって紡がれるが見えた。その動きに、納得のライムントが、皇帝然とした振る舞いをラファエルに見せる。


「その上で、もう一度牙を奮うか?」


 本来なら肯定以外の選択肢などない。しかし、その時のライムントの顔は、そうでは無かった。ラファエルは、折れた心を見透かされたのではという顔をしていた。そして、何かを振り絞る。


「敵う事ならもう一度。いや、違います。必ず」


 彼は、自分など『どうでもいい』と思われていると感じていた。ゲルオークの手下程度だと。表だった牙では無かった。流石に、意志を持たぬ者を討てと言われた事は無かったのだが。


「良かろう。それならば、卿を今この時より帝国騎士とする。その上で、第五軍の獣装騎兵(ティーガー)を与える。それを持って、ズィーベン将伯 ヘルベルト・ヴェッツェル麾下で力を奮うが良い。再編成で数は減るが、卿の力でそれを補え。良いな」


「御意」


 皇帝の言葉に短くそれだけを答えた。ライムントの言葉は、彼に初めて向けられた『彼だけの命令』であった。


 ――初めてだな。使い捨ての暗殺者では無かったのだな……俺達は。


 若干の高揚を見せるラファエルをおいて、ライムントはテレーゼに続けて命じていく。


「テレーゼ・ファング。卿はこれよりヨルグガルデに戻り。転進中の麾下兵力及び、我が騎士団の軽装騎兵(ヘッツアー)と合流後、それを戦線に復帰させよ。出来うる限り迅速にだ。……で良いかヴェッツェル伯」


「御意」


 勅命へテレーゼが答えるより前に、彼女の父がそれに合わせた。突然の言葉に、テレーゼの顔が不満のを見せる。あからさまな父親の根回しと取れるライムント発言に、それを向けていた。


「皇帝陛下。私もこの場で戦わせて下さい」


「勅命だぞ、テレーゼ。控えよ」


「嫌です。また、父上が何かしたのでしょう。私は……」


 ヴェッツェル伯の嗜めに、膝が浮くかの勢いでテレーゼは断定を返して糾弾していた。ただ、それは明確な行動のカミルに止められる。


 その場景に、ラファエルが改めてライムントに送る視線に力を込めた。


「皇帝陛下」


 出された言葉に場景が止まる。そして、緊迫の雰囲気が流れていく。ただ、流された訳ではないがライムントはそれを受け入れる。

 受け入れの許可を与える言葉が出され、ラファエルの表情に合わさる。


「御預かりする兵はそれなりの一軍。私とて存分にとは思います。ですが、経験は一両日では成るものではないと自覚致します。その点御考慮を願いたく思います」


「どうしろと言うのだ」


「畏れながら、具申致せば……牙を御せる指揮官を願いたく。さすれば、我が力存分に――」


 茶番だな。という顔のライムントにラファエルの言葉がとまる。止めた形のライムントは、ヘルベルトの苦々しい顔に、きらきらした目のテレーゼを見て妙な笑顔を見せた。


「卿らは先ほどといい。示し合わせておるのか」


 動いた距離を戻ったカミルが、寡黙に下を向いている以外は、ライムントと顔合わせる三人はそれぞれの思いの顔している。


「ラファエル。卿の言なら、軍団を預ける将伯以外では牙しかおるまい。そう言いたいのか」


「御意に」


「将伯に単独部隊など任せる訳にはいかぬな。ヴェッツェル伯。どうだ?」


 これも選択肢のない言葉であるのをヘルベルトは理解して、そのまま顎を引いて見せた。背中から、ラファエルに向ける気配は、ある意味殺気の様にも取れた。いや、恐らく殺気だろう。


「余の心持ちには、既に牙のあり場所はある。ゆえに、テレーゼ・ファング。第十一の牙(エルフト・ファング)を御せ。先の件は別の手立てをとる」


「御意に。感謝致します」


「卿の父が軍団の長だ。私情は挟むな。ラファエルは自身の言に責任を持て。期待するぞ」


 ライムントの言葉に、二人の息のあった『はっ』の音がして、ヘルベルトに皇帝の勅命が届いた。

 その一幕を最後に、ライムントの噛み砕いた思案がその場に出される。続けられる決意を締めくくる言葉でそれは終焉をみせた。


「……以上だ。委細は追ってだが。余、自ら前線で指揮をとる。それが我が帝国の正しい覚悟だ」


 予定では、ロンドベルグすら視野に入れていた親征。それを、寡兵と侮った訳ではないだろうが、新鋭の軍団に前衛を任せてこの現状である。


 リルヴァール攻略も危ぶまれる中で、前方からの王国軍集結の報はライムントにとって朗報であったと言える。その為、当初の予定にあった、イグラルード王国軍の無力化を目的とした、正面決戦による決着を彼は決断する。


 最終的な決戦の場になるサーカムに向けて、ライムントが持つ力は、十本の牙と帝国軍――兵力 八万五千――騎兵一万五千。騎兵の内、軽装騎兵(ヘッツアー)が二千となる。


 損害が大きかった第五軍団から、再編成して前線には正規編成の六個軍団。それに、ライムントの本軍に第五騎士団の再編成の獣装騎兵(ティーガー)を含む、投入出来る全てだった。

 後方の輜重隊の警護の為に、騎乗兵のみの第五軍残存兵力を残していたが、と言う事になる。





 綴られる物語。遡る点からの一応の終着点である戦いが、それぞれの決意と思惑が交差するこの時に始まろうとしていた。


 少なくない日時を費やして、決戦の場にイグラルードとゴルダルードの軍旗が並び立つ場が出来た。質の問題はあるが、始めから結果見える戦いではなかったと言える。


 オーウェン=ローベルグを将帥とする約七万が、サーカム近郊の平原に構築した陣容は、前線を徒歩兵力を配置して、その斜め後ろに騎兵を置く布陣となった。

 北から、第五・第六軍団が左翼を固めて、中央に第一軍団。右翼を第七・第四軍団が布陣していた。そして、深めに取った中央にオーウェンの本陣があり、前線との間に残る兵力が配置されている。


 その場景にはクローゼが愛馬琥珀色の薔薇(アンバーローゼ)に乗り、副官のユーリを伴ってその陣地を横切るが入っていた。

 前線に並ぶ自軍の向こう側に、帝国軍の陣地を眺めながらゆっくりした足並みでになる。


「先ほどの陣は、五と六です。今見えるのは第一軍で、あれが伯爵の言われた切り札でしょうか。反対側にあるのが、第一騎士団ですね。閣下。あの、聞いてますか?」


「ああ、聞いてる」


 説明をするユーリが、心ここに在らずな感じのクローゼに確認を入れた。気の抜けた返しに仕方ですねな顔を彼は見せていた。


「護衛隊には騎乗技術でついて行けませんから、覚えてください。肝心な時に、迷子とか冗談にもなりませんから……」


 ユーリの言葉は、クローゼが「ヤバい奴は任せてください」と反省の色もなく、フィリップの話の流れで答えて、護衛隊と供に『遊撃の任』を受けていた事を言っている。


 勿論、対象は牙である。その対策に、右翼はイーシュットらランガー達がつき、左翼は次点の騎士サンディが多数の騎士とそれを担い、中央はシオンの第一騎士団が戦線維持と平行して、担当する事はなっていた。


 そして、クローゼは全体的にそれをする。


 という様な、戦局自体には関係ない位置にいたと言えなくもない。

 事実、展開した王国軍の真ん中に陣取る第一騎士団は、全て騎士であり、唯一無二な王国最強集団であった。その自負がシオンにはあり、クローゼの言動自体も『眼中にない』。そんな感じを出していたからでもある。


 加えて彼女は、現状ノースフィールの私兵を麾下に入れて、前線指揮官として裁量も与えられていた。

 その為、その気になれば騎士団の多数を振り向ける事も可能で、『個の力』警戒するフィリップの懸念自体も、それほど意識していなかった様にもみえた。



 準備を進める第一騎士団に、クローゼの視線はむけられていた。単に情景として捉える様に眺めていたのに出されたのがユーリの言葉になる。


「兎に角、一通りは確認を願います。ところで、先ほどの大柄の騎士の方。閣下を見て、萎縮されておりましたが大丈夫でしょうか。と言うより、閣下何かされました」


「ぶっ飛ばした」


「ああっ。そうですか」


 問いかけの答えに、言葉通りの顔したユーリに突然クローゼが向き直る。


「そうだ。ユーリどう思う。ラーガラル最強が、イーシュットじゃなくてクアナだったって。見えないだろ」

 

「極獣闘士でしたか。見た目の問題ではないと思いますが」


「いや、あれだ。耳がこう『ぎゅーん』となってるだけで人だろ。……まあ、尻尾付いてるけど。あんな可愛らしい感じで、最強とかないだろ」


 唐突に、興味の顔をクローゼは向け、ユーリはやれやれの風を見せる。


「普通に人ですが。私からすれば、閣下の方があれですね。それと、お二人にも言われたと思いますが、余り強さに固執するのはどうかと思われます。人の価値はそれだけでは無いかと。もしかして、閣下には私は無価値でしょうか 」


 興味本位の話に、真顔を向けられたクローゼは「いや」と言う否定を連発して、最後に呟きを入れた。


「すまない。ユーリは俺よりも価値がある。そう思う……ほんとに。……あの二人に言われるの慣れたから、ユーリのそれは助かる」


「いえ、言葉が過ぎました。申し訳ありません。敢えて、このままお聞き頂けるなら、人は皆同じだけそれがあると私は思います。敵も味方もそうであると……。あっ、公用語に訛りがあるらしく、敵だと疑われましたが、私は味方で閣下の副官です」


「それ何回目だ? ……気にしてるのか」


 話の流れを切る様に、ユーリが言葉をまとめた。それでクローゼの顔が穏やかになる。そして、今度はユーリが「いえ」を連発し、なんとも言えない顔した。


「まだ見習いで黒装槍騎兵ブラックランサードラグーンにはついて行けませんが、味方で閣下の副官です」


「分かった。気にしてるんだな。オリジナルの槍。俺のお前にやる。練習しろ。大丈夫だ、ユーリもヴァンダリアの一員だ。俺が保証する」


 その言葉に苦い表情をみせて、ユーリはそれを否定する。


「いや、閣下の言葉にあの人、納得されなかったですが。セレスタさんがいなかったら、あの人にずっと誤解されたままだったかと」


 その言葉をクローゼは聞かなかった様に「戻るぞ」と声かけて、――『黒色槍騎兵』とテレーゼが、彼らをそう呼んだのを……一瞬過ったそれで、『黒装槍騎兵』だと訂正したのを思いだしていた。


 ――公用語に、時々混じってたの◯◯◯語なのな。どんな設定だよ。まあ、脳内変換かもだけど。


 黒装槍騎兵――オーウェンの補佐として自軍を第七軍に任せて、本陣にあるフィリップ・ケイヒル伯爵が、切り札と呼んだヴァンダリア騎兵。


 その名称が、彼らの認識になっていた。


「黒装槍騎兵を動かす時は、状況に依らず決定的な場面になる。心してくれ」


 そう、フィリップがセレスタに言った流れで、クローゼはふらふらしている事になっていた。


「カレンがいれば、大丈夫だろ。ケイヒル伯爵的には、カレンも切り札だし……なら、ヤバい奴は任せてくだい」


 その言葉で呆れた顔のフィリップに「任せた」と言われて、何を任されたのか分からないが、クローゼは「任されました」と答え……後からセレスタに怒られていた。


 その光景をユーリは、強目の揺れを表すクローゼの背中を見ながら思い出していた。その顔は僅かに綻んでいる。それは、多分先ほどの約束がそうさせているのだろう。


 そんな背中を見せるクローゼは、真剣さがないわけではなく。自身の存在の部分で、現実感が足りない様にもみえる。そんな揺れる背中とは別にこの世界の人々の価値観で、物語は進んで行く。


 対峙する多くの人の群れが、物語に溶け込む様にその渦に巻き込まれて行った。人々の声が飛び、開戦の様相がまして……戦いの火蓋はおとされた。


 開戦の時である。


 動き出した刻。互いが持つ切り札は双方には分からない。ただ、フィリップ・ケイヒルは、もう一つの切り札と言った物を端から惜しげもなく使って見せた。


 魔弩砲(バリスタ)またの名を雷弩砲(ライトニングバリスタ)……そう呼ばれるものをであった。




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