十二~覚悟の戦い…決定的な力~
イグラルード王国の国王アーヴェント=ローベルグに、『王国最強剣士』と認められた男レイナード・ウォーベック。その立ち姿を見つめる驚きを、彼自身は意に返していない様だった。
獲物を見据えたエクムントの後ろから、気配も無しで近付いて『ついでに切った』そんな感じを彼は見せていた。
その光景を目撃したラファエルは、エクムントの力と彼らが言う本物、フリートヘルムを知る上で――強い……そう思うしかなかった。
「確かに、赤ん坊だな」
そんな呟きが漏らすラグーンは、ジーアから流れ出る鮮血に治癒の力を受けている。
「遅くなった。もう、大丈夫だ……俺が来た」
何事も無かった顔を見せて、レイナードはそう言った。まだ、ラファエルが遠巻きに彼らを見ていたが、彼はレイナードに出す手を見つけられずにいた……
そんな状況の中で魔力の乗った、真紅乃剱 カレン・ランドールの声が響きその場に流れる。
「真紅乃剱 カレン・ランドール。参る――」
カレン達一団は向きを変えて加速して、テレーゼの軽装騎兵の斜め前方を捉える形になった。
そして、その視界に追撃を見せる黒い軍装の一団を見て、カレンは『当たる』つもりで指示を出し自らの名前で虚栄を切った。
――数で劣る味方の鼓舞とあざとい威圧。それを彼女は使ったと言う事になる――
受けた側も、彼女を知らない訳ではない。テレーゼにしても、敵として真紅乃剱は人外であるとの『達し』を受けている。
だが、彼女の周りを固めるのは、帝国でも有力諸侯であるヴェッツェルの者達だった。
敵の名を踏まえでも、簡単に引き下がる事はなかった。
カレンは声を出した流れで、デュールヴァルドを解き放つ――その瞬間に、戦場の空気感が変わったようにみえた。ただその雰囲気を感じれたのは、極僅かであった。
テレーゼ自体はそれを感じはしたが、カミルの「行け」の声に、隊列から離れてカレンらに向かう一団の動きを止める事はできなかった。
彼女は「待て」と声に出そうとして、状況を悟り――走る最中に意識をあせて紋様に繋げる。
「突破する」
短くきったカレンの声が、後続に通る。迎撃に入った軽装騎兵の動きに指示を変えて、カレンは、デュールヴァルドに輝きをのせた。
唐突な変化に、後続も直ぐ様答えてみせる。
彼らは、フィリップの父が、あの戦いの不手際をエドウィンに擦り付けられて引退したあと、手塩にかけて育てた私兵の選りすぐりである。
二者の交錯と黒の追撃がせまる場面で、カレンの剣技は放たれる。無論、全力などではないが、敵の勢いを殺すつもりで魔力を込めていた。それをデュールヴァルドが加速する。
しかし、放たれて、距離を詰めるカレンの魔力の刃をテレーゼの背中から、翼の様にのびた魔力の輝きが自軍を包みそれを逸らした――
僅かな瞬間だった。
その光景に、眉をひそめるカレンとその後続の少なくない動揺の後、彼らは当たり交差する。カレン自身は、駆けた最中に片手で効かぬ敵を切り、開けた先で手綱を絞めていく。
カレンが馬を返したそこには、思いの外、味方の馬が主を失くして嘶いていた。それは、テレーゼの力を知るものと知らぬ者の差だったという事だろう。
軽く唇を噛むカレンは、遠ざかる軽装騎兵に槍擊の射程まで追いすがって来た、黒い一団を背中に感じていた。カレンは彼らが向かう先に思いを向けて、眼前で馬体を併せて剣を奮う者の中に戻って行った……
カレンの思いの先のクローゼは、先ほどまでの余裕は見えず、波の様に繰り出して来るゴルダルード兵に、何回目かの起動と装填を見せていた。全てが面の一軍を『止める為』という事になる。時折、舌打ちをして……諦めない行進を吹き飛ばす作業をしている。
それを『止める為』テレーゼ達は彼に向かっているが、彼との間には自身の馬黒千に股がったレイナードが、ラファエルと対峙していた。
レイナードは、二百は下らない馬蹄の音が迫るなか、首を揺らして軽い音を出していた。彼の後ろには、クローゼしかいない。他の三人は砦に向かって走っていた。
「砦に戻れ」
レイナードは、クローゼの判断を仰がす、彼らにそう言った。ジーアの心配する言葉が彼に向けられたが、それに当たり前の様に答えていた。
「任せろ。守る」
守る対象はこの時、クローゼに他ならない。その意味で彼には、目の前の敵がどれ程だろうと関係が無かった。明らかに、クローゼは目の前に集中していた。――自身の魔力魔量の限界を見極めながら、初めとは違い……常に『最大魔力』を乗せていた。
だから、尚更である。
レイナード本来の騎乗姿。愛馬、黒千を駆る彼の後ろには、クローゼの愛馬が彼の横についていた。彼女の名は琥珀色の薔薇で黒千のお気に入りであった。
その状況で、レイナードの眼前に迫り来る一団の後ろから、槍擊で敵を食い散らかしている自身の部下の様子を彼は遠目で見て、笑みを漏らす。
――魔獣騎兵五百騎のど真ん中を突き抜けた、彼の力が本物なら……の雰囲気が場には出来た。
「挟撃だな」
レイナードは自身な言葉と共に、手綱を叩いて黒千を促し唐突に加速する。それに、驚愕の表情のラファエルは、踵を帰して同じ方向に馬を走らせた。
「馬鹿かこいつは」
ラファエルの後ろからは、少なくとも二百以上の騎兵が迫っていた。それも、皇帝虎の子の軽装騎兵であった。それに対して一騎駆けなど、『正気ではない』とラファエルの常識ではそうなる。
そんな事が出来るのは、彼の知る限りフリートヘルムだけなのだからだった。
全力で馬を駆るラファエルは、自身が後ろ避ける様に斜行していくのが分かった。味方との距離が近づいた所で、彼は叫び声をあげた。
「撤退しろ。――そいつは駄目だ」
そう向けられた声に、テレーゼは答える事など出来なかったのだろう。後ろを散々に叩かれて、切り離した部下がいて、そして何よりも飛ばされた者達がいた。
そんな彼女は、ここで撤退など出来る筈もない。
それをなした、不可思議な力を表す男が目の前である。間には、只の一騎だけであった。それで引ける訳もあるはずがなかった。
「まとめて私が斬る!」
その言葉と共に、馬群からテレーゼは飛び出す様に加速して帯剣を抜き去る。それは、ヴェッツェルの家に代々伝わる宝剣。彼女自身はその名を忘れていたが、それを授けられた時事はおぼえている。
彼女は、握る手に力を込めてレイナードの距離を推し量る。その時、横からの斬擊が彼女を襲った。唐突な並走からの奇襲。それを彼女はいとも簡単に剣身で捌き距離をとる。
「これをかわすのか」
死角から高速で並走してきた、ダーレンの一撃をなにも無かった様にテレーゼは捌いて見せた。驚きを見せる男の顔を尻目に、更に彼女はレイナードとの距離を詰める。
その彼女の後ろでは、カミルがダーレンを抑えにかかるのが見えて、対面するレイナードが背中に下げていた両手剣を……取り出し、それを片手で一振りするのが映っていた。
相対的な距離が、時間軸ではなく詰まっていく。テレーゼは先ほど見せた『紋様の力』であろう輝きを再現する。放たれた翼が、今度は刃となりレイナードに迫る。……だが、レイナードには、それどころかテレーゼすら映っていない様に見えた。
レイナードの剣が、魔力を帯びて輝くのがテレーゼの瞳に映り込み、その剣筋にかかる自身の翼がもがれるのが見えた――その後の僅かな一瞬。かすかな間に、彼の剣擊が握る剣越しに、自分に伝わるのが彼女には分かった。
テレーゼは、そのまま、後ろに飛ばされて天を仰ぎながら、ただ、通り過ぎるかの様なレイナードをみていく。
その時の彼女には、彼が誰なのか分からなかったが、顎を上げて後ろに視線を向けた。その時の光景だけで、それが何で有るかを理解した。
――人智を超える者――
薄れ行く意識の中で彼女が見た者は、まるで閃光が如くの連擊で、馬群を凪ぎ払う男の光景であった。そして、意識の途切れる瞬間に……届かなかった男の事を思い描く。
竜男爵――どれ程の者かと……
テレーゼの意識を絡め取った。彼女の目的だった男、そのクローゼは実際の所、判断に苦慮していた。
思考を停止したように、何度もその狭小地から湧き出る人の波を既に持て余していた。いくら吹き飛ばしても、その都度体制を戻して挑んでくる。彼らの行動にであった。単純に、彼自身がそうさせている所も有るのだが……。
しかし、彼は限界まで撃つつもりでもいた。ただ、一万の人の量とその狂気。それを理解していなかったのも、この段階で意識していた。
――いい加減止まれよ。最後の一押しが必要か?
その思考で、既に半分に近い自身の魔量の消費を感じていた。あの切り替わった局面から、既に最大発動魔力相当で十を超える所まで、竜硬弾を撃ち込んでいたのだった。
形が変わる程の衝撃が、その狭小地に現れている。しかし、最初の時と違い七百リーグを超える距離がある。その為か、大幅に絶対数を減らすには、至っていない様にもみえる。
その場にある鞄には、まだ十分な魔量充填はあったが、そこの問題でもない。いや、寧ろ数ではなく、決定打が不足している。そんな感じがクローゼにはあった。
それに、遠いからといってここまで人を吹き飛ばすとなれば、その生死に関わらず、彼の精神構造が持たないのは目に見えていた。
魔王の魔力を持つと言っても、彼は魔王ではない。だから、当然ではあるのだろう。
ここで、幻影の王国軍がばれていなければ、それが決定打に成りうるが、既にバレており、恐らく効果は無いのではと思われる。
無論、クローゼもそう思っていた。
味方に目を向ければ、現状を誘発している軽装騎兵。クローゼの思惑を狂わせ彼を追い詰めている彼女らと、レイナードもカレンも戦いの最中にある。その為、クローゼが欲している切欠には至らないと思われた。
その状況で、クローゼから呟きが漏れた。
「ここで、魔王なら……」
何故、そう言ったのか、彼自身が分かっていない顔をしていた。他人に聞かれる声と自分の声を聞く音が違う事を、この時彼は理解していた様に見える。
魔王ならば、現状でも万の敵を黙らせる力がある。
クローゼの認識ではそうなる。『いっそ……魔族の方が楽だな』は彼が人を相手……いや、話の通じない相手に向けた思いであった。
魔王とエドウィンを比べるなど論外かもしれないが、クローゼにして見れば、魔王の方がよっぽど話が通じると。その流れで彼はため息を出す。
そのため息に、彼の傍らに立つ愛馬琥珀色の薔薇が軽い嘶きを併せて、南の方角に彼の意識を誘った。
「ああ、駄目だ……今何時か……時間が分からないけど、まだ早いよ」
思いを巡らせながら、場景として映っているゴルダルード兵達の救済作業の様子を見ながら、次弾を装填して次のそれに備える。その間の一幕であった。
『乗れないわけないだろ、乗れてたんだから』
あの時のレイナードの言葉だが、結局記憶を無くした当初、クローゼは彼女にしか乗れなかった。正確には乗せて貰っていたという事になる。
皆が言うように、興味で動く彼は初めての遠出で迷子になり……彼女に助けられた事がある。クエストに向かえば、帯同義務のレイナードの馬、黒千と共に適当に時間を使っているが、呼べば当たり前の様に現れる。
レイナードの口笛に、揃って現れるので黒千が優秀なのかと彼は思っていたが、どうやら違うらしいと最近は、レイナードとも認識を同じにしている。
黒千の名誉の為に言っておくが、彼も、レイナードが呼べば必ずくる。それに、彼意外には背中を預けない……今は。
因みに、彼は彼女には相手にされていない。悲しい現実だが、黒千は諦めが悪いようだった。彼らしいのだが。
そんな一幕の流れで……琥珀色の薔薇の存在は、クローゼの途切れそうな気持ちを繋ぐのに一役かっていた。そして、その誘いを向けた先に……。
「早いよ……無茶したな。セレスタ」
幻影の向こうに戦場がある。クローゼの言葉。
その幻影の王国軍の中から、それを聞いていたセレスタの青い黒の六循が現れた。その直後、幻実から現実に変わる。黒い軍装の一軍が数を誇張するかの様に、横陣展開していた。
「後一息。最後まで振り絞ります。先ずは、第三大隊から、交戦中の友軍の援護に三つ。残りは砦へ向かいなさい。槍擊大隊は槍擊用意で」
セレスタの言葉が周りを動かして、彼女はとなりのユーリを見た。頷きを返す彼の指す先には、クローゼが見据える先があった。
「閣下の話通りですね。あそこを押さえれは……」
その返しに、セレスタは、軽く呼吸を挟んで声を響かせる。
「残り各大隊は、戦闘用意。見せなさいヴァンダリア騎兵の底力……。攻撃開始――」
強行軍の上に最後一押しを、彼女は彼らに強いていた。その結果が数時間の更なる短縮になり、クローゼの気持ちを繋いで、ゴルダルード軍の気勢を砕いたと言える。その一押しは、彼女胸元にそれが戻った事による……のは彼女の心中にはあった。
結局、最初の槍擊でゴルダルード軍は、全面撤退になる。敗走一方手前であったが、まだ最初にクローゼが視認した辺りで、陣形の体で留まっていた。
無理に双方がその後の仕掛け行わなかったので、そこで戦闘自体は終了する。
最後まで抵抗を見せた、軽装騎兵達も、気絶していたテレーゼを肩抱えにしたクローゼの姿から出た。
「抵抗はやめろ。ヴェッツェル卿の命が惜しかったらな……」
そんな高圧的な言葉に、カミルが折れて抵抗を止めた。
ダーレンと死闘を繰り広げていたカミル・フェヒナーが、満身創痍でありながら帝国騎士の矜持をみせて、苦渋の決断をしたという事になる。
帝国に対する気持ちを、ダーレン自身も当然持っていたが、自分と紙一重の差を見せた男に対する敬意とクローゼ・ベルグの判断にしたがって剣を納めたという形になった……
投降した帝国兵を拘束して、ヴァンダリア騎兵は砦の周り布陣した。約定もないまま前方では、帝国軍が、負傷者や死者の搬送を行っていたが、クローゼはそれを黙認する。
当然蛸壺壕には、自身らしい格好をさせた者をこれ見よがしに配置してである。
そして、その指示を出した彼の眼下には、足首と両手を後ろ手に魔力抑制の鎖で繋がれたテレーゼが、意識のないまま、ベッドに横になっていた。
「フェヒナー殿の判断尊重するが、いきなり暴れられると困るから、今は御容赦願いたい」
そう、声をかけられたカミルは、両手を前で拘束された状態で、それを聞いていた。その声の主は、捕虜になった味方の負傷者の治療まで施してくれた上で、その物言いをしていた。
「現状、私から申し上げる事はありません……ですが、配慮を頂けるなら……お嬢様の――」
「――目を覚ました様です」
カミルの言葉を遮るユーリの言葉がしている。目を覚ましたと言われたテレーゼは、僅かに状況を把握出来ずにいるようである。
暫くの沈黙が続いて、状況を理解したのか唐突に、テレーゼは声を上げた。
「なっ。何が、捕まったのか私は?」
「そう捕まえた。捕虜だ……という事になるな」
テレーゼは顔を横に向けて声を見て、クローゼの顔を確認する。状況に驚いたのか、彼女はジタバタし始めた。そして、感覚的には僅かな思案だろう。
彼女は意決した感じに声を投げる。
「私は、帝国騎士だ。名誉あるヴェッツェルの縁。こんな辱しめを受けるなら、殺せ……そうせぬなら自分で……」
その言葉と裏腹な、絶望すら見せる彼女の行動をクローゼは制し、敢えて冷酷な目でこう告げた。
「貴殿は、大事な捕虜だ。自害などと口にするなら、貴殿の部下の首で墓碑を飾るが、良いのか」
「ひっ、卑怯者。貴様は獄属か?」
言葉の意味が理解できたか以前に、テレーゼからすれば絶望的な状況で、彼女が言う獄属――悪魔――の様な男の声に、言葉を返すことで折れそうな心を支えていた。
彼女は、クローゼの一つ年下で、成人したばかりである。女性と言うより少女と言うのが近い容姿をしている。その彼女が、獄属と呼ぶクローゼに向ける目には、溢れそうな涙を必死耐える感じがあった。
彼女の瞳の先、クローゼの少し後ろには、彼女が信頼するカミルがいた。しかし、彼女の瞳に彼が入らない事を考えれは、彼女の状況がわかる。
当たり前であるが、カミルに発言権などない。それに自身が無理をしてこの場で命を落とせば、彼女の衝動を刺激するのは目に見えていた。
彼にとっては、彼女の父 ヘルベルトの恩義が全てだった。この状況でも最善を尽くさねばならなかった。という事になる。
――ヴァンダリア竜男爵クローゼ・ベルグ。『大事な捕虜』その言葉、飲み込ませて頂く……と秘める思いがあった。
カミルの決意とは別に、テレーゼの沈黙の返答の流れが確定的になった後も、クローゼはその感じのまま彼女を見据えていた。
普段は、殺意もなしにそんな顔しない為、実際の所――ここは『分かったか』と聞くところなのか? という状態になっていた。
気丈にも、クローゼの顔から目をそらさないテレーゼの様子を見てジーアが声を掛ける。
「もう、その辺しときなさい。その子も分かったって言ってるでしょ。全く、女の子泣かせるなんて、男としてどうなのよ」
そのまま彼女はテレーゼの元に歩き、周りの様子を気にする事なくテレーゼを抱える。そして、抱き上げる様に起こして、ベッド座らせ自身も隣に座った。
涙をみせたく無いテレーゼが俯いて、ジーアが彼女の肩をさすっていた。呆然とした表情に変わっていたクローゼが、言葉を探しているとそれに声がした。
「なに? 文句あるの。やっぱり、男としては駄目じゃない。それに、手足を縛ってとか、そんな嗜好がクローゼ君はあるの?」
「あっ、いや、その……捕虜だから」
「えっ、終わったんじゃないの? だって、どっちも関係無しに治療したじゃん。大体、私の所ばっかり息吹きの危ない人連れて来て……へっ、まだなの」
なんとなく遅れて、その部屋にきたジーアは、テレーゼとは別の意味で顔を赤くする。その話で顔を上げたテレーゼにジーアは、何故か「終わったんでしょ」と同意を求める言葉を掛けていた。
「どういう事だ……あっ」
問い掛けに声を出したテレーゼは、カミルの顔を見つけて言葉を詰める。カミルの表情を見て、彼女は複雑な顔から安堵浮かべていった。
「まあ、もうすぐ終わるけど。ヴェッツェル殿が、主将なら仕方なかったけど、副将なら逆にこまる。……という事だから、フェヒナー殿深刻な顔をされるな」
その言葉でテレーゼに再びの疑問が飛んで、クローゼの顔が真剣さをました。
「お礼のお礼……『倍○しだ』と言う事だ」
そう言ったクローゼは、セレスタのやな予感すると書いた顔を見て、一瞬ぎょっとなり笑顔を返していた。……そんな流れになった。




