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王国の盾~特異なる者。其れなりの物語~  作者: 白髭翁
第一章 王国の盾と魔王の槍
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八~カミングアウトを少々~

 クローゼの言葉で、アーヴェントとの取引を決めた後は早かった。キーナの動きがである。「殿下のご命令だと」当たり前の事の様に、唐突に指示を始めていた。


 侵入方法とルートの確保の為の情報収集。先行部隊の編成。情報部に再度の情報収集と精査。商会を通じた情報提供と協力の依頼。レニエがらみの貴族ルートの考察に人員の選定基準……。


「キーナ殿は凄いのだな。君の行動は想定済と言うところか」

「恐らく。私が単純なのも有りますが」


 職務に向かうキーナを横目に、二人の会話があった。ここに、主要メンバーが顔を揃えているので話しは早くなる。控えていた、彼女達の部下が迅速に動いている。そんな場景であった。


「とりあえず、対価の話しをしたいのだが? 」


「竜撃筒を百。……ヴァリアントから取り寄せて、合わせて二百をとりあえず殿下に」


 竜撃筒の言葉に、アーヴェント怪訝な顔をして、キーナとニコラスがクローゼの顔を見る。キーナの顔は『それを殿下に告げてよいか?』 そして、ニコラスは『ほぼ全部ですか?』の顔になるが、クローゼはお構いなしだった。


 怪訝な顔のままなアーヴェントが、言葉を発する前にクローゼが声にする。


「殿下の御要望にかなう物です。カレン殿が、腰から下げているそれの新型です」


 クローゼの思考でいえば、それはライフル銃。昔風に言えば鉄砲なのだが、銃と称すると同郷の転生者や転移者がいた場合を考慮して竜撃筒と呼んでいる。

 ――ネーミングは、クローゼの致すところなのであえて追及しない。という事にしておこう――



「竜撃筒? 新型? もう少し分かるようにして貰えれば助かるがヴルム卿……」


 アーヴェントにそう問われて、そのまま説明に入ろうとするクローゼに視線が集まる。その場に居るものは既に周知だが、献上品に類似しているが、全く別物のそれの取扱いは、微妙なラインにある。


「殿下暫くお待ちを」


 それに気がついたクローゼが、アーヴェントにそう言って真面目な顔をする。


「少し聞いてくれ。俺が、秘匿性があると言った物の話しを殿下にする。殿下は、俺を理解して頂けると確信ができた。だから、俺の判断を信じてほしい」


 クローゼは、『自分を理解して貰える』と言った。しかし、実際にはあの通信の場で、フローラとアーヴェントの行動を見ての事になる、


 それで、彼に対してそう思い……先程あれで確信した。


「それに、フローラが殿下を特別だと思われた。殿下から殿下様に直ぐなっただろ。なあ、おじ様?」


 クローゼが『おじ様』と呼んだ先には、レイナードが壁にもたれ掛かっていた。何となく、それに思いがある感じに、彼は頷きをあわせる。


「そうだな」


 フローラに『おじ様』認定されているレイナードは、フローラにとって特別な人になる。クローゼを兄様と呼ぶのと同じ認識と言える。彼女にとってはそうなる。


 彼女は、人の名前を覚えるのが天才的に凄い。だから、覚えた人の名を彼女はきちんと呼べる。それが、出入りの行商の小姓であってもだった。


 ただ、フローラが名前や敬称だけでない呼び方の場合は、彼女にとって関係が近くなる。信頼度が増すほどそうなる。色々と逸話はあるが……今は関係無いので省くとするが。



 レイナードの不満そうな答えの感じに、周りは納得して、クローゼは自身の事にもどっていった。そして、アーヴェントと向き会うように、彼に視線を合わせる。


「何か面倒くさいのだな、君達は」

「いえ、面倒くさいのは私だけです」


「そうか」と言うアーヴェントに、クローゼは竜撃筒の説明をする。――簡単にいえば、配合竜結晶を火薬のかわりに使った銃という事になる。アーヴェントには、もう少しこの世界なりの説明をクローゼはする事になったのだが……。



 結局、クローゼの話の終わりから、広々とした会議をした部屋には、先程、最後にニコラスが退出した事で残ったのは三人となる。


 最後に退室したニコラスは、後から来る大隊規模の随員と共に運んでくるそれで、きちんと支払いはすると言われ、あと出しの来客の報告を携えて出ていった。

 クローゼが、いつまでもその場を離れないニコラスを、怪訝な顔で見ていたので、アーヴェントが先に気付いたのだった。



 人が居なくなり、広々とした空間で、彼らは互いを見ていた。クローゼとアーヴェントの微かな息吹きの音の後、少しの沈黙が流れて、アーヴェントが疑問を見せる。


「通信するあれや、その竜撃筒の件。君の発案なのだろう? もう、我々の感覚ではないな。ひょっとして、君は異界の住人かなにかか?」


 アーヴェントがクローゼに向けた言葉は、クローゼには刺さる。刺さったが、彼は妙な確信を覚える。

 

――カレンがそうなのだろう。日本人なのか……いや、違うか。まあ、取り敢えず彼の事は、信頼出来そうだと思うが……。


 

「殿下。私の判断を正しいと思いますか?」


 質問に、訳の分からない質問で反すクローゼを、アーヴェントはそのまま答える。


「私が、卿を理解できるか? という事か」

「そうです」


 その答えの後に、アーヴェントはクローゼを見ながら暫く考える仕草をして、彼はこう切り出した。


「多分、私は君が好きだ。無論男女それではないが。それで、理解したいとは思う。だが、器の問題もある。何か言えぬことがあるやもしれぬが、努力はさせて貰いたい」


 彼の物言いは、もはや主従のそれではないが、クローゼには、結局彼の意図は理解できない……そんな表情を彼は見せていた。


 ――他人に彼を信じろと言っておいて、自分が予防線を張るのどうかという事かな。

 信頼するなら全力で、その方が楽だな。言えない事もあるけど……。


 そんな様子のクローゼは、意を決した感じで、「ここだけの話として頂きたい」と前置きをする。そして、彼とカレンに視線をおいていく。


「異界云々の御話でしたら、簡単にいうと前世の記憶がある。それもこの世界ではない。という事になります」


「そうか、召喚されし者ではないか」


 それは、簡単にごく簡単にではあるが、自分の秘密を他人に初めて話した事になる。

 ただ、アーヴェントの返答には、驚きは感じられず、期待から落胆に流れる感じがした。

 

 クローゼには、アーヴェントの落胆は何となく分かる。分かる気持ちのままカレンを見て、その表情を確認していた。


「カレン殿は召喚されし者という事てすか?」


 そう、クローゼは、自分の疑問を彼らに向けた。アーヴェントは僅かにカレンを見たが、彼女の意向を気にすることなく「そうだな」と呟いた。


 ――真紅乃剱(グリムゾンソード)、カレン・ランドール――


 クローゼは彼の許可を貰い、彼女と二人で話していた。二人を送り出した彼は、複雑な心境になっていた。そんな雰囲気が見て取れる、僅な刻だった。



 ――残念ながら、また別の世界の召喚者だった。それはいい。彼女の話しを聞いていくと、母親のクロセサキと同じ捨てられ系の龍の巫女なんだな。


 「殿下に拾われたから、生きているがそうでなけれは……」そんな、彼女の言葉に思わず、クローゼはクロセサキの事を言いそうになっていた。


「言えないけど、めちゃくちゃ分かる」


「ありがとう、自分の事を分かる。と言って貰えるのは嬉しい事だよ」


 カレンが、クローゼに返した言葉と笑顔は印象的だった……。


 彼らがアーヴェントを待たせた部屋に戻った時、彼がカレンに掛けた声は、クローゼが聞いていたどれよりも優しかった。


「カレン。話しできたか?」

「はい。自分を分かって貰える人が増えたのは、良い事です」


 二人の穏やかな会話が終わった後、アーヴェントはクローゼに向かって建前をいった。その顔からはそんな様子がわかる。


「人選は君達だが、カレンは連れていけ。カレンが私の小飼だというのは有名だ。同行した事実が有れば、建前に信憑性が増す」


 その後で「カレンは暫く君に預ける。というか君達にといった方かいいか」とそう彼は言った。「我が儘気分を満喫してくれ」と話の最後に彼は、そう付け加えていた。


 クローゼとアーヴェントの会話の後、夕食会を終えてから本日のメインイベント? が、厳かにはじまった。そう、クローゼは思っていた。


「殿下、子爵はどんな顔をすると思いますか?」


 見るからに、ニヤニヤしながら、クローゼはアーヴェントに話かける。アーヴェントは、意味ありげな顔をしていた。


 約束の時間になり、通信用の魔動器に高価な白の竜結晶を一瓶丸ごと投入し、クローゼはそれを起動させる。


 クローゼの『ワクワク』は、彼の思考に現れていた。


 ――義姉上は『ぴくっ』だった。子爵はどうたろう? ちょっと楽しみだ。


 通信用の魔動器が起動する。そこに魔方陣が展開して、子爵の姿が映し出された。そして、彼の最初の言葉が、クローゼのそれを打ち砕く。


「アーヴェント殿下は、無事に到着したか?」


「えっ。……知ってたんですか? それなら連絡欲しかったです」


「ふっ、殿下に言え。兎に角、魔王の件は聞いた。こちらも手は打つ」


 そんな、クローゼとグランザの会話にアーヴェントが加わり、その後「込み入った話があるから」とクローゼは退出させられる。廊下に追いやられた感じのクローゼが、誰に言うでもなく呟きを見せていた。


「だから、大人は嫌いなんだ」


 そう言葉にしてクローゼは思う。


 ――黒瀬の自分で考えると彼らに近いんだよな……と。そんな事はどうでもいい。とりあえず魔王の顔でも見に行ってみるか。

 てか、見れるまでいくのか? ……だった。



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