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【ショート】刻は掛かるか?

 ガーナル平原のとある場所に、小さな街並みを模した構造物がある。そこで、黒い武装の一団が対象の建物を伺っていた。


『扉、敵、二人』

『確認、了解、排除?』

『否、狙撃、二人、同時』


 遮蔽物から覗き、手信号(ハンドシグナル)で、指示を出すクローゼが、反対側で展開する分隊長を否定し、大きく手を上げ『狙撃』の指示をする。


 合図と同時に、扉の前に立つ衛兵の一つが頭を揺らした。それが倒れ崩れ落ちるのに、隣の衛兵が向き、二つ目も側頭部を狙撃され前のめりに倒れる。


 ――流石だな。


 そう、クローゼは狙撃者の顔を浮かべて、 自身の横に待機する第三分隊に『行け』と合図をする。その指示で、特殊異装甲兵の彼らは魔動術式の発動し、音も無く扉の両脇に展開する。


『建物、内部、状況、確認』

 

 目視で状況を見るクローゼの指示で、壁に背を寄せる一人が、無詠唱から魔方陣を展開し、中の様子を確認する。


『対象、捕捉。敵数、確認。明解(クリア)

『了解、待機』


 クローゼは、状況を受け取り対面の分隊に指示を出す。


『第二、突入、準備』

『了解』


 反対側の分隊も、クローゼの手信号(ハンドシグナル)を読み解き、無音で移動し突入の位置に展開した。


『行け』


 クローゼの手信号(ハンドシグナル)に、各分隊長は頷き、突入を仕草で指示をする。即応で上下の丁番が散弾魔衝撃筒(ショットバレル)で撃ち抜かれ、扉が内側に倒れた。


 扉の転倒音と同時に、第二分隊が魔衝撃騎筒(カーバイン)を戦闘射撃姿勢のままで突入する。

 それに続き、半自動装填式の魔衝撃筒(ショックバレル)らしく「カチカチ」の音も無く、模擬竜硬弾の着弾音が連続した。


 初動で確保した空間に、射出口を低くし、即応な射撃準備姿勢で第三分隊が飛び込み、その先の制圧に向かう。連携で交錯する分隊により、内部の各部屋が制圧されて行くのが、外側に雰囲気として伝わっていた。


 その様子にクローゼは、魔衝撃騎筒(カーバイン)を担ぐ様に突き上げ、遮蔽物から姿を晒す。


「流石は黒い盾(シュワルツシルト)。連携は凄いな。負けてるぞ」

「我らも努力します。ですが、彼らは元々帝国の諜報員で応変なのです。それに、冒険者適正も高いですから」


 黒の楯(ブラックシールズ)の隊長がそれに答えて、警戒態勢のまま、控えめに勝ち誇る黒い盾(シュワルツシルト)の隊長と隊員に苦笑いをしていた。


「まあ、厳しく言えばだ。それに、ジーアさんの動魔(ドーマ)相手なら遜色ないしな。よし、ここまでにする。戻るぞ」


 と、クローゼは空いている手を大きく振り、全体に終了の合図を送った……。





 その合図を、狙撃地点で魔動遠眼鏡(テレスコープ)越しに状況を見ていた、エイブリルが確認する。それを、隣で伏せるヴィニーに彼女は送った。


「終わりのようね」

「そうっすね」


 ヴィニーの口調に、エイブリルは僅かに眉を動かし立ち上がり、軽く土埃を払う仕草をする。それで、伏せ撃ちの姿勢のままなヴィニーの背を一瞬見て、通信器で展開する狙撃兵らに終了を送っていた。


「ブルック殿?」

「あ、終わりっすね。――よっと。いや、久しぶりの外回りなんで体痛いっすげど、楽しい」


「閣下が言ってた『サバゲー』って、こんな事してたのね」

「ああ、いつもは代わって貰ってたから、初めてだったっすね。なんか『特殊部隊の戦術』とか何とからしいっすけど。俺が参加するのは……こんな感じっす……です」


 立ち上がり、専用の狙撃魔衝撃筒(スナイパーバレル)を持ち上げたヴィニーが、エイブリルに向き、唐突に語尾を正した。

 それに、エイブリルは少し表情を柔らかくする。


 ――いつもとは、また違う真剣な顔は意外だったけど……。


「別に普通でいいわ。執務室でもそうだけど、私に無理な敬語で話す必要はないから」


「あ、いや、そう、すっか」

「ええ、立場もそうですし、貴方は能力もあるのだから」


「あ、でも、副官殿も才能ある……っすよ。さっきのも、いつもよりいい感じだったんで。……それと似合ってるです」


 黒の衣装甲(コストユーム)胴衣装甲(ボディアーマー)を着けて、計測用の魔動遠眼鏡(テレスコープ)を持つエイブリルの姿に、ヴィニーはそう言った。

 その向こうで、いつもの相棒がヴィニーに『行け』とけしかけている。


「そう? 黒はあまり似合わないから。それに、鎧では無い軍装が似合うと云われると、少し複雑ね」


「あ、あれっす、なんなら、これ色変わるんで」

「ええ、知ってるわ」


『そうじゃない』だろの男の肩に、分隊長の手が掛かり、見合わせる感じで「まあ、あれだよ」の小声が続いていた。


「そろそろ、転位型魔動堡塁(フォートレス)に戻りませんと、他の分隊の回収もありますので」


 分隊長の促しで、エイブリルは「ええ」と当然に歩きだした。彼女が横を通り過ぎた相棒の男は、置き去りな彼に『やれやれ』の身振りをする。


 ――そんな風に見られても。あれっすよ


 ヴィニーは、その雰囲気に首を軽く振り、分隊長がエイブリルに、観測手との適正と狙撃手との相性について話すのを聞いていた……。





 擬似的な街並みの広場に、数基の転位型魔動堡塁(フォートレス)が並ぶ中心で、焚き火を囲む場景が見える。


「クローゼ様、余計なあれっす」

「すまない。たまには良いかと思ったんだ。嫌われたのか」


「好かれてるのかも、分からないっすよ」


 その中で、クローゼがヴィニーの肩を抱いて謝っていた。言葉とは裏腹に、いたって普通にクローゼは話題を続ける。


「でも、聞いた話しだと、相性良いみたいだな」


「あれっす、俺と相性が良いと言うか、観測手とか指揮官として、『これ』と、いや、違うです。そう、狙撃隊と相性が良いと言うか……っすね」


「そうか」とクローゼは、ヴィニーが言うならそうなんだなと思っていた。


「いや、あれっすけど、クローゼ様の云ってる事が抽象的過ぎて、俺らも『これ』の事そんな分かんないんですけど、何か普通にこなしてたんで」


 ――まあ、サバゲーだしな。


「まあ、そう言うな。遊びだとは言わないが、深く考えるなよ。と言うか、十分イメージ通りだぞ」


「その、雰囲気って云われると益々っすよ。でも、その感じに違和感無く入って来たんで、彼女向いてますよ」


 と、反対側でジーアに捕まるエイブリルとテレーゼの様子に、二人の会話が出ていた。

 また、二人の会話中の『これ』とは、そのまま特殊作戦部隊の訓練の事になる。


  ――特殊異装甲部隊(シクスシエルズ)――


 元々はユーベン強襲部隊であった彼らが、完全にクローゼの趣味で、特殊作戦部隊の(てい)になった。装備品は殆ど特殊部隊風で、魔衝撃の筒もあからさまに銃器を模したものになる。


 王国側の黒の楯(ブラックシールズ)と帝国の黒い盾(シュワルツシルト)の小隊二つに、狙撃分隊三つで、凡そ八十名程でクローゼ直属の兵になる。


 また、騎乗戦闘に特化した彼の護衛隊二個小隊も彼の直属であるが、私兵と魔解の者らと共に、クローゼの『彼女達三人』の暗黙な承認がなければ動かせ無い為、実質彼の兵はこの部隊になる。



「そうか。なら、さっきの話考えておく。まあ、本人次第だけどな」

「いや、いいっすよ。無理に組ませて貰わなくても。……駄目になると立ち直れないっすから」


 狙撃に関して、クローゼがヴィニーに絶対の信頼を寄せているのは、この部隊の者はよく知っている。それに、ヴィニーのエイブリルに対する気持ちも。

 普段は、警備についている者も多く、焚き火を囲む主要な彼らは、二人の会話を何と無くもどかしい様子で見ていた。


 会話の二人が、向かい側に彼女達に向く。その先は先で、ジーアの雰囲気にも、もどかしさが出ていた。


 ――まあ、時間が掛かるか。


 と、ガーナル平原のとある場所で、獄の刻は流れていた。




練習用のショートストーリーです。短編ですが、設定上この物語の中で書いておきます。

宜しくお願いします。

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