二十三~獄神。絶望と究極……第三幕~
あがなえない「逃がせ」からの一連で、終息した静寂の景色の中、クローゼは呆然と立ち尽くしていた。
目の前に広がる光景は、大地を抉り突き立つ黒い鋭利な具現が無数にある。正に、打ち出された終着の場に一面だった。
この場景にたどり着く前には、対象防護を突き破る光景と抗う三者の三様な姿がクローゼには映る。……走る剱と槍に嘶きと怒号。恐らくは、もう少し多才だった筈である。
また、クローゼの眼下には大の字で倒れ、鎧に複数の黒い鋭利な物――鉄串の様な細く黒い杭――の突き刺さるレグアンの姿があった。
最後にクローゼが、レグアンの声を聞いたのは「呆然とするな、のだな――ドワーフの鎧をなめるな」であった。唐突に、クローゼの前に飛び出して、双頭の極斧を奮う場面になる。
そして、終息の景色には見覚えがあり、また、自身の根底を覆された事実が、押し付けられている。それは恐らく、クローゼの心を折る流れだった。
――『制御する全ての盾と防壁を突き抜けた黒い鋭利……』正に、魔力を喰らう黒い竜水晶の小型の杭の様相。見たままの現実が、それを告げていた。
所謂、竜硬弾の元。彼自身を貫いた槍の類いに見える――
「……そ、そんな……」
起伏が激しくなった、杭が突き立つ針の大地では、先ほどまで戦っていた者達の姿が彼には認識できなかった。
それが、自身の無力を著実にして「絶望的」な雰囲気を纏わせる。
――何だこれ。有り得んだろ……みんなは? どうなってる? ……嘘だろ。止めてくれよ。本とに……頼むよ、ああっ。
クローゼ自身は無事だった。勿論、何本かは届いてはいたが……。
また、飛び出したレグアンの判断は間違っていない。彼が躊躇無く、クローゼの前に出たのは「直感」と天秤の末だろう。
そして、絶望的な眼差しで見上げるオルゼクスの姿は、魔王たるを認識出来ない程に変わっていた。
「あれは?……」とクローゼが求める明確な答えは、眼前のオルゼクスらしきからは解らず……ユーベンを目指し、東からゆっくりと「不休で整然と行軍する」一軍の中央にあった……
……そこは、死獄の騎士に引かれる馬車の様相の中で、昏睡のミールレスに寄り添うアマビリスが座る光景に行く。
その場には、あの魔造従者が有るだけであった。
「兄上は?」
「お目覚めの時期はわかりませんが、一命は……」
視線を落とすアマビリスは、改めた感じに声をだした。
「そうですか……。ではブロス様。此度の件はこれで宜しかったのですか?」
「上出来だ。覚えもめでたい」
答えを返したのは、メイド仕様の魔造従者だった。ただ、声は男の物になる。
「『見逃せ』と仰ったあの膨大な魔力の核が獄神 罪悪を御す煉獄の・様の六体に繋がっているなど、よもやでしたが」
「まさかお前を伴ってくるとは……いや、逆に信憑性がましたのか、無傷て手に入れられた」
アマビリスは、会話に違和感しか無かった。喋り方から雰囲気まで、あのブロスとは思えない。
ただ、唐突に魔造従者はそう告げてられた時に、彼女は納得をした。
獄炎の光の中での「魔王と眷属神」の強烈な交わりに、アマビリスは、自身の存在がこの為に有ったような錯覚をした。
魔導体の肢体に憎悪したこともあったが、明確な確約に今は受け入れている。
「それは宜しゅう御座いました……」
メイド仕様の魔造従者は、不適な笑みを見せる。
――隔てを壊し、天階の至高に迫るを臨む獄神の至りでは、インジニアムの者に繁栄は保証されていた。
当然、最も欲する者の戻りもである。ただ、アマビリスには、魔王オルゼクスでも良かったのでは無いかとの思いもあった――
「オルゼクス様……が、『今世の魔王ではない』の言は本当だったのですか?」
「今世の魔王ではない。ただ『魔王』などは、至極神 天界を司る起源の・の戯れ事だ。大方が天獄の理と思っておるが、対となる勇者が出る事で保たれる均衡など、戯れでしかない。……ああ、ミールレスも魔王ではないな」
揺れる馬車の動きに紛れて、アマビリスは難しい表情をして疑問を投げ掛ける。
「兄上は……。ただ、勇者が現れたゆえ、今世の魔王は何れかにあるのですか?」
「さあな、と言いたいが未だであろう。いや、天界を司る起源の・はこの事態を予見しておったのかも知れぬ」
ブロスの言葉に、アマビリスは向かう先に思いをはせる。
――行くまでもないのは変わらない。……簡単な思考。魔王を触媒に具現した獄神が軍など必要も有るわけがなかった。その一軍が、如何に強力であろうとも……。
「ただ、絶望のみ……」
「アマビリス様? 如何なされました」
「宜しいです。何でもありません」
当たり前に戻った会話で、「何でもない」とアマビリス言葉を閉じた。
――当然、絶望するのは人智。明確に、彼女の見解で無くともそうである。現状、それに直面する男がいた。言うまでもなくクローゼであった――
彼が呆然と見上げる先。
それは、獄神罪悪を御す煉獄の・の六体を宿したオルゼクスになる。龍装甲天獄が龍鱗の様に一体化して、龍神の人型であった。
――側頭部から左右に三対となる角が伸びて、禍々しい作りの無表情と相まって畏怖を振り撒いていた。そして、広げた六枚の翼がそれを助長する。
右手に持つ龍装神具の剣は変容して、それが本来の形であると主張していた――
獄神の六体……所謂、意識の体の具現がそこに起こっていた。見た目は、おおよそ似つかわしくは無かったが、である。
「様相はままに……か」
呟きを見せた獄神の具現は、依り代のオルゼクスに意識を向ける。ここに至る過程を振り替えるかの様にだった。
――世代を越えた魔王は、封印し槍、魔力を吸う槍、魔斬の流槍に貫かれ、二百年を越える刻で龍装神具に触れていた。
それが、オルゼクスの身体を変質させる。奪われた魔力と引き換えに、魔力を受け入れる「器」として性質を持たせる事になった。
そんな「異質な魔王」とも言える存在になったオルゼクスが、魔力を取り戻す過程で、上限が無いかの高まりを感じたのは其れ故になる――
獄神 罪悪を御す煉獄の・は、振り返りの意識を向けたオルゼクスの身体に、眷属神カーイムナスの魔力を吸わせ、自身の魔力を切り離した強大な核を入れた。
当然、自身を具現化する為にである。そして、龍装甲天獄に誘い……現状、自身の魔力を解放する為に龍装で抑え込んで、自身を具現していた。
それが、現在の様相――獄神の具現――に繋がっている。
――その先は至獄の領域であり、呆然を見せるクローゼには分からぬ事、思いもしない事である――
ただ、圧倒的な威圧感と存在感を見せたオルゼクスの変化に、クローゼの思考は後ろ向きになる。
オルゼクスの変容よりも、先ほどまで自身の剣だった三人が見えなくなった事が大きかった。
当然、絶対の自信を持つ術式が破られ、半ば勝利を思い描いた最中の結果の為だろう。
――何でこんな事に。こんな所に連れてくるんじゃ無かったのか? 呼ばなけれ良かったのか? 突き抜けるなんて無理だろ。……どうにもならない……。
王国最強の騎士と剣士である。恐らくは、人智最高峰。……いや、レイナードとカレンだった。
その二人は立ち上がって来ない。半端に抉られた大地では見つける事はできなかった。
無論、イグシードもである……ある意味絶望的な状況がクローゼを押し潰していく。
思い付きと行きなりと成り行きで、彼は、結果的に現状に至っていた。
――衝撃的な自身の秘密の上に、物語の主人公にでもなった気でいたのかも知れない。ただ、当たり前に越えて来た物は少なくない。そして、クローゼには相応の力があった。
それでもである。……いや、それだからだった。
瞬間のなし崩しな発動に見える一撃で、クローゼの拠り所である操作可能型自動防護式は崩された。
それは、自信を崩されたと同義になる。
生半可な頂きに、クローゼは立っていない。その為に理解出来たのだ。……そう、絶望をである――
光景からの感覚は一息だった。僅かな間、指先ひとつ動かす事も出来ずに見つめるだけのクローゼに、獄神の具現は意識を落とした。
――本来なら、獄の神々にとって人智の人など、「羽虫」以下の存在でしかなく、自ら意識を向ける事などない。また、声を掛けるなど有り得ないが、具現化した今は些かであった――
単純に、「特異なる者」であるクローゼの雰囲気が、ガイアザークの瞳を僅かに向けさせたのである。
「これは……。成る程、我が眷属の神々を凌駕する魔力魔量を持つのか? 人智の者とは思えぬな」
呆然に、値踏みをするかの獄神の具現の瞳が向けられた。
「その器は、そうであるか。……龍装の力を受け、触れて、更に宿すとは……中々に特異な事だな」
クローゼにも聞こえていた。返す言葉無かったが、音は聞こえていた。そして、視線合わせるかの高さに、獄神の具現が降り行く様を目の当たりにする。
――何だ? いや、誰だ? ……自問にも、既に喪失感に奪われた心は、守護者の声すら拒否していた。
「その様相……龍装? ……では無いのか、そうか」
人の対峙なら、まだ距離がある程度だった。
魔装甲楯鱗の小型の盾が、胴衣装甲や衣装甲に留まらず、いつものコートすら覆っている。それを見て、ガイアザークはそう言った。
そして、「だが……程度だな」と左手をゆっくりと動かして、鋭利な爪が主張をする指先をクローゼに向ける。獄神の感覚では、それで払える程度であるだった。
オルゼクス「らしき」の行動に、クローゼは動け無い。……いや、動けば当然に避けられただろう。当たり前には、獄神の認識を越えてクローゼは、その力が十分にあった筈である。
しかし、彼自身が「彼らの無造作な死の理不尽さ」に自ら陥り思い込み、心を内向きにしていた。
――もう……ここまでが順調過ぎだっただけか……小説みたいに上手く行かないんだな。……もう、仕方ない……のか?
諦めの上に、ガイアザークが指先を動かそうとした瞬間。獄神の具現の手前、クローゼとの間に魔方陣が展開する。
現れたのは、戻った髪が再び白くなった究極の牙フリートヘルム・ファング・レーヴァンだった。
唐突に、呆然の微動と獄神の無反応が場景に見え、僅か動いた呆然にフリートヘルムは声を投げる。
「竜伯! 導きの終焉は投げ出しか――」
フリートヘルムは、投げつけた言葉の反応を見る前に、眼前の「無反応で魔王然」な獄神に魔動術式をぶつける。
「究極な絶零の氷牙――」
彼は、起動呪文の詠唱に思念を込め、音に力を乗せて魔力を通す。同時と瞬時に展開する複数の魔方陣から、鋭利な氷柱がガイアザークに届き、当たり、通り過ぎた。
――到達し直撃した氷柱は砕けて止まったが、獄神の具現を見れば、格子に拘束された様相を作り出していた――
フリートヘルムは、一瞬の拘束な一手にとどまった場景を置き去りに振り返り、クローゼを見る。
そこには、諦めを纏った様な「らしからぬ」クローゼの姿があった。
「お前は誰だ――」
らしからぬクローゼに、フリートヘルムはその問いを投げる。獄神の振り撒いた絶望に捕らわれた視線が、究極の牙に引き寄せられた。
――フリートヘルム? ……思考と同時な砕ける音に続き、フリートヘルムの身体を刃が通り過ぎる。寸断する斬撃の軌道だった。
人智の行動など、初めから無かったかの獄神の具現の動きになる。
「フリートヘルム――」
クローゼは声を出せた。切られた筈の究極の牙は何事も無かった様に今度はクローゼを置き去りに背を向けた。
「逃げるなクローゼ・ベルグ!」
カレンにレイナードとレグアンが飛び出した、転位型魔動堡塁に彼はいた。そして、状況の変化を見て、同行して来た淫靡なる夢獄の言動を踏まえてここにあった。
当然、眼前が既に魔王では無いとの認識を持ち、フリートヘルムは来たことになる。
その上で、フリートヘルムは「逃げるな」とクローゼに告げていく。
告げられたクローゼは、彼自身には得体の知れない獄神の具現に、「剣と魔力を奮う」で向かう背中を追っていた。
「あの力……ウルジェラか?」
フリートヘルムの宿す者の力が戻った様な光景に、クローゼは呟きで疑念を出した。その疑念を更に大きくする光景――フリートヘルムが獄神の具現と競演の舞台に立つ様子――が目の前で起こっていた。
ただ、クローゼの興味を惹いたフリートヘルムの力は、彼の人としての力だった。
――幻術と強化に飛翔の魔術中心に、持てる力を駆使して、深い集中と冷静な思考であの力を再現していた――
ガイアザークの「集る虫を払う」様に振る剣が、徐々に切るに変わっていく。徐々にであるが障りが出来ていた。
流れを重ねる中で、「面白い」の獄神の言葉を彼は引き出す。ただ、フリートヘルムは答える事は出来ない。それでも、一命を越える瞬間にクローゼに声を向ける。
「現実に戻れ、クローゼ・ベルグ――」
――感謝する。来世があると信じれるのは、幸運な事だ……神具の欠片を無理矢理剥がされて以降、フリートヘルムは全身を蝕む痛みに苛まれていた。
――死期を悟り、現実を告げられて絶望と呆然との日々を過ごして……クローゼに救われる。
彼は、徐々に増す痛みを誰にも告げる事なく、平静を装いカレンに感嘆を出させる程の域を見せていた。
その現実が、心折れたであろうクローゼの状況を理解させた――
幻影を斬らせるに、極鉱石のプレートが音を奏でるが出て来ていた。
既に限界をフリートヘルムは感じていた。相対的では無く自身の限界をである……。
明らかな金属音が、具現の限界の領域での競演から、クローゼに届いていた。戻れと言われて、思考が周り始める。
――誰だ? 逃げるな? 戻れ? ……俺なのか?
「男だろ!」
唐突に、眼下のレグアンが目を見開き声を出した。
「盾だろ!……動けんのだな」
「レグアン、ああっ、くそっ」
「クローゼ!」
動け無い自身にもどかしさを感じた瞬間に、背中に抱きつくアリッサの声を聞く。レグアンは自身が動け無いと告げていたが、クローゼはそれを自身と捉えた。
「ああ、やれるさ」
クローゼは、それで呪縛から解き放たれる。
明らかに幻影では無いフリートヘルムに、獄神の具現の刃が届かんとした瞬間、刹那の勢いで 対象防護から空間防護と直接防護を連発する。
――神具の剣だろうが、絶対止めてやる……クローゼの行き当たりばったりな絶望からの帰還であった。
煌めきと輝きが四散する光景に、目印を射出す音が重なっていた。
弾き跳ばされるフリートヘルムがかなりの距離を飛んで地面と交錯していた。
ただ、刃は彼には届いていなかった。クローゼはそれに確信を持ち認識する。
そして、獄神の具現の後方に大きな魔方陣の展開をみて、転位してくる転位型魔動堡塁を感じた。
「アリッサ、レグアンを頼む……と言うか、カルーラも? フリーダまで」
「クローゼ、魔王様は何処にある?」
「目の前だ……多分」
沈黙で閉められる会話の終わりに、獄神の具現の後方から、「吐くけど良いよね」と聞こえて来そうなアレックスの起動呪文の詠唱が入る。
「極限なる破壊の力」
黒い空間が魔方陣の様相で現れて、辺りの風を巻き込んで竜硬弾程の・に集約した。それがクローゼの眼にも捉える事の出来ない速さで、獄神の具現に激突する。
空間が振動するかの衝撃が、龍装甲天獄が成した龍鱗を破壊して破片と飛沫を上げていた。
「なっ!」
漏れる音を出す、 獄神 罪悪を御す煉獄の・。天の界での戦いで、五体に受けた『痛み』を永劫の刻を経て感じた故になる。
光景で驚きの表情のクローゼに、通信器の共鳴が声を届けた。
「どう、クローゼ。レニエさんとの会わせ技。凄いよね。でも、僕達は逃げるから後はよろしく。……吐いちゃたし」
「私のクローゼ、死なないで必ず帰って来て」
勝てと言わないレニエの声に、クローゼは落ち行く獄神の具現が地面に両膝を着く場景の先で恵風の精霊が実体化した様相を見た。
「凄いな、あいつは天才か」
「アレックス君は凄いから、レニエさんも凄いし」
アリッサが、レグアンの首筋から魔力を通しながら、彼女らしい口調で確定を口にしていた。
その最中に、クローゼに絶望と呆然を生んだ場景が輝きを放つ。
それは転位型魔動堡塁から、琥珀色の薔薇を駆り飛び出したセレスタの真力発動だった。
――聖極なる恢復の光。包み込んだ光で回復と癒しをもたらす神聖魔法になる。胸元にある宝石に通した真力が広範囲で高濃度の行使を実現していた――
神聖騎士ミレイユと専属の護衛の感じになった、リーアム・サマーフェイズを伴い、我が儘で刻を掛けさせたと「自責」するミラナ・クライフが続いていた。
それにユーベンから立ったクローゼの護衛隊五十程が合流した。
そして、当然の様に通信が入る。
「ユーリには逐次状況を聞いてました。三人は絶対死んでません。もしもでも、私が何とかします」
全く根拠が示せないが、セレスタの硬い自信がクローゼに希望を与える。全ての手配を迅速にこなした、ユーリ・ベーリットの言動が彼女には根拠だった。
「そうだな、大体レイナードの奴が簡単に死ぬわけない。逆に死なれても困る。あんな魔犬残されても……いや、それは良い。ありがとうセレスタ、フリートヘルムを頼む」
変わり身の速さは相変わらずであった。ただ、この時ばかりはクローゼ自身が感謝していた。
――決心は着いた。後の事はその時に……。
「立ち上がったぞ、どうするのだ?」
「ライラ、何でここにいる」
「お前が指揮下入れと。二人を頼むと言った、だからだ」
クローゼは、アリッサとフリーダを見て納得する。
「愛してると言ってやれ」
「なっ、この状況で戯言か?」
「生きてるなら飛び起きるぞ」とクローゼは笑顔をみせて、その場の雰囲気を置き去りに、唐突な変わり身の精悍さで罪悪を御す煉獄の・を見る。
そして、深呼吸して自身の内側に入って行った。そのまま内面との対話。慈悲ある彼女に告げる。
――解放しろ。制御はもう良い。
『クロセ……戻れませんよ』
――ああ、構わない。
『恐らく使い切るでしょう。そう成れば私も助力はできないと。それでも?』
――それでも。どうなるかも分からないが、死なせる訳には行かない。
慈悲ある彼女の同意の感覚で、クローゼは内なるに秘める魔力の感覚を感じていた。
「想定外だが、こっちも予測不能だ」
若干の意味不明はいつもの事である。久々のノープラン。いつも通りのクローゼに立ち戻れた様であった。
「行くぞ、オルゼクス擬き――」
踏み越えたクローゼが、覚悟の叫びをぶつけていた。




