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王国の盾~特異なる者。其れなりの物語~  作者: 白髭翁
第六章 王国の盾は双翼の楯
157/204

十~騎士達の矜持と各々の誇り~

 

 吹き抜ける南風を背に受けて、「何と無く不味い気がする」の言葉を出したクローゼは、自身の転位型魔動堡塁(フォートレス)の上で腕を組み難しい顔をしていた。


 表情に至るまでに、彼は飛び回る献身と相応の刻を使い、アーヴェントらへの報告と進言をしていた。

 そして、各々を「統べる者達」の決断によって、現在「地平線の先程」にユーベンの南側の城壁を視界に捉えていた……


 ――それは、彼専用の転位型魔動堡塁(フォートレス)を五基、等間隔で展開し、彼の後ろには強固な構築陣地で南方方面の連合軍数万があった場景になる――


 ……難しい雰囲気のクローゼに、六剱の彼が疑問の様子を見せて常に随行する二人に問い掛けていた。

 

「副官殿、彼はずっと機嫌が悪い様だけど、何かあったのかい」

「そうですね。私が見たままなら『怒られて』いました。確かに仕方ない所ではありますが、閣下御自身も自責は持たれている様なので、怒っているのとは違うかと思います」


 ユーリの困った表情に、クリフは苦笑いを見せていた。簡単に言えば、自粛と自覚で「真面目な風」を装っているのが機嫌が悪く見えるのである。


 ――ノエリアに『ランヘルをくれ』と言った事も含めて、彼の独断先行が目立った所は咎められる要因ではある――


  苦笑いの 翠緑乃剣(エメラルドソード)に続いて、紫電乃剣(ライトニングソード)のネビルがその話題に触れていた。


「確かに、魔王さながらの態度が陛下の元から戻ってから見えない所ではあるな」

「行く前は威圧感丸出しで凄かった。アレックス君なんか会った瞬間に吐いてたから……えっ、それは別の原因なんだ」


 彼らの周りに向ける話に「それは別の問題かと」とユーリはアレックスの件を否定で言葉を出していた。


 一応にクローゼの後ろ姿を見る、第四牙騎士(フィーアト・ファング)ギュンターと第十一牙騎士(エルフト・ファング)ラファエルも、「魔王然とした」には同意する所だった。


「威圧感は確かに無くなった。ただ、短期間でこの雰囲気は些か驚きではあるが」


「まあ、敵として向かい合ったら、それは恐怖です。経験したから分かりますが。リッケルト殿は認めて頂けると思いますが、最低『その舞台』にと思って対面したらあれで。もう、駄目です」


 ギュンターの声に続く、ラファエルの言葉にクリフは同意を見せる。


「真剣なら僕は逃げるけどね」

「クリフ、そんな事を言うと『騎士たるの自覚は無いのか、矜持を持て』とシオンに言われるぞ」


 ネビルから銀白乃剱(シルヴァーソード)の名が出て、ギュンターは、ラファエルとクリフの言動ともあわせて厳しい表情をしている。

 事のなり行きで、ギュンターはシオンやカレンと話をしていた。自らも騎乗であしらわれ、師であるディートハルトを一線から退かせた彼女達とである。


 その上で、彼の思い返しと決意が見える。


「確かに『騎士たる』の矜持なら相手は関係ない。例え竜伯であれ、魔王だとしても。二人共に自身をよく理解している『言』だと受け取る。間違って無いと良いが」


 ギュンターの声は、当たり前の言葉として受け入れられていた。これから向かう先にある、強者で魔族の存在を認識した上になる。


 騎士達の矜持の語り。背に受ける言葉の綴りに、クローゼは振り返りをみせる。そのままギュンターの言葉に自身を向けていた。


「『何者か』であればいいし、卿らの力は疑っていない。ただ、引くのも矜持だと思う。それも間違っていないと良いが」


 真面目な顔でそれらしい事を言った「感」がクローゼ自身に出ていた。

 そのままをラファエルに向けて「目指すならレイナードだろ」とあの感じ出し、彼の「聞いてたのか」を引き出していた。


 レイナードからの逃亡劇を聞いて、クローゼはラファエルの見方が少し変わっていた。

 単純に出来る男なのだとの認識に至り、認めていたと言う事になる。

 二人の空気が微妙になる。爵位の差はあるが、クローゼはお構い無しの笑みを出していた。


「寝覚めが悪いのが続いてるから、また威圧的になるかもな。それは許してほしい。まあ、ぶつける相手はあの先だしな。それに北も始まってる筈だ。こっちも準備するぞ、魔王が来る前にユーベンを解放する」


 困惑のラファエルを置き去りに、クローゼが指し示す先はユーベンになる。


 諸々の状況を加味して「攻略と進軍」を彼の王と皇帝にクローゼを認める王らは決断していた。

 大きな要因は、エストニア王国北部の大きな森林にあった魔解の王らの軍が、近郊の領地を圧迫した事による。

 単に、魔物魔獣が「食糧」事情で(たが)を外していたとも言えた。


 また、流浪(ポーター)を使えるサバルの死が魔王らに与えた影響も一つだった。


 情報からウルジェラが魔王を捉えた事で、魔界の淵から戻るのに相応の刻みが予想された。結果、不測を踏まえても、北部の主力は南下を開始していたとなる。


 当然、先ず相対するは魔解の王らの軍だった。


 魔解の王。北部に向かったマリス=マグナとデースペアの軍は併せて十数万にもなる。

 数という点で、駐留出来る場所など多くはない。当然、過去の(いくさ)場などは、その条件を満たしていた。

 故に人智の側が、魔解の王らの軍を先に見つける事が出来たのは当然の成り行きになる。勿論、進軍の最中であった。


「前方の森に魔物らしき一団を確認しました」

「予定通り展開し攻撃開始。帝国軍の力を示せ」


 報告を受けたヘルベルト・ヴェッツェルの高揚感に、中央前衛主力を任されたゴルダルード帝国軍は呼応し、精悍たるをみせた。

 連鎖を見るヘルベルトは、僅かに自身の気持ちに触れている。

 ――これ程の陣容を指揮出来るのは、冥利に尽きるな。……それほどの布陣だった。


 皇帝の信任厚い「勇将」の明確な覚悟の上に、戦端は開かれる。戦場は、魔の巣窟となった森林の外れ、北側に広がるなだらかな傾斜の平原だった。

 彼らは、同等規模の人智軍の前衛として、森に向け苛烈な攻撃を仕掛けていく。


 ――等間隔で展開する転位型魔動堡塁(フォートレス)を繋ぐ獣装歩兵(パンター)の大盾。その隙間から竜撃歩兵の竜撃が、魔砲撃で追いたてられる魔物魔獣に向けられ一方的を演出していた――


「逃げ出て来る」を打ち払う光景が暫くを奏で、人の波が勢いを見せた。

 刻をおき、抗う魔の集団が寄せる波に変わり、魔解の軍の反撃が場景にも現れてくる。


 ――塊の前進に魔獣を駆る魔族の一団も姿を見せ、彼らは魔物魔獣を盾に活路を探っていた――


 活路を開く強引が、魔族らの前進に激情の色を着けていった。押し寄せる勢いが戦線の距離を詰めて、抜け出でて迫る魔獣騎兵が存在を顕にしていく。


 それが、場景の偏りに「うねり」をもたらした。


 変わり行く場景を捉えるヘルベルト。その手が「次の一手」を示す様に挙がっていた。

 明確な意志の繋がりで開かれる大盾から、放たれる白牙騎士団の馬蹄が大地を踏み締めていた。


 先頭を行く第九牙騎士(ノイント・ファング)テレーゼ・ファング・ヴェッツェル。

 彼女の輝きが、率いる騎兵の「弧を描く」の刻みを魅せていく。


我が皇帝(カイザー)の御前だ。我らがあの領域にあるのを証明する。駆け抜けろ、遅れる事は許さない。私に続け――」


 セレスタが突き抜けた光景を彼女は目にしていた。しかし、ゴルダルードに刻まれたヒーゼルの領域を彼女は知らない。

 ただ、それを知る者にテレーゼは白牙を刻み、「重なり」を見せて駆け抜けていった。


 歓喜に揺れる軍列を横切り、迫る集団の勢いを()ぎ、先頭集団を蹴散らして――白牙は疾走していく。

 疾走が、魔物も魔獣も魔族さえも凪ぎ払い後続の行き場を消していた。


 駆け抜け置き去りにする光景に、竜撃と魔砲撃の火力が襲いかかり、圧倒を付加していく。


 圧倒の火力で、広がり逸れる魔物魔獣に両翼から、魔弩砲(バリスタ)と剣獣士が駆る剣獣の咆哮と刃が襲い掛かっていた。


 雷の如くな大矢が時差をつけて、連続の光を放っていた。用いるのは、「鉄壁の知将」の異名を自身で笑う鳳凰伯爵グレイブ・フィーニクス、フィリップ・ケイヒルだった。


「間断なく突き崩せ。側面には回り込ませるな」


 ――中央が攻勢が強い。敵としては脅威だが、味方ならこれ程頼もしい事はない……彼の言葉と思いに呼応して、魔弩砲(バリスタ)の閃光が魔物魔獣を突き刺し王国最精鋭が魔解の集団を崩していた。


 また、反対側の咆哮は当然ランガーの部族、誇り高きラーガラルの戦士達だった。

 北中部の諸侯軍を後ろ楯に、その先頭で気を吐くイーシュット。彼の「あたり五人は謙遜」を集めた精強な一軍になる。


「ラーガラルの名に掛けて後れを取るな。ランガーの誇り掛けて魔解の者を蹴散らせ」


 鼓舞する彼の顔は、以前の戦場と「教えを受け剣振るを重ねる」程に精悍さをましていた。

 その奮戦を後ろから支える、シルミオン・クレーヴレスト伯爵は感嘆を隣にいるマーベス・ベルグに向けていた。


「『我らの出番は無さそうだ』と言ってしまいたくなる(さま)ですね」

「亡き父上はランガーの強さを体感しております。ゆえに、私もその認識です。現状は些か複雑な心境ですが……」


 シルミオンは認識に同意する。その上で、「大勢が決した」かの雰囲気を見せ、中央に配置された自身の娘。シオンの竜装騎士団に気持ち向けていた。


 ――大方の見解は、全面的な攻勢の機会を窺うが正しい。知将も勇将もそうであり、堅実な伯爵も大局を見る太公も同意見だった――


 しかし、それは早計だと警告が森の上空に示されていた。……魔翼獣騎兵が現れたのである。

 そして、前面の森から小型の魔動造兵(ゴーレム)の壁が集団として現れていた。


 ――サバルの死の混乱で、主を失った魔翼獣騎兵らマーグナスの配下は、近しいマリス=マグナに身を寄せていた。それを彼は、惜し気も無く使って見せたのである。

 同時にデースペアもカードを切り、立て直すしを試みていた。


 狙うは、縦横無尽を魅せる白牙になる。上下から囲い込む動きをして、絡め取ろうと言う意図が見えていた。


 ――重なる場景が戦場に色彩をみせる――


 色彩に映える白牙の先頭で、魔力の翼を輝かせる白の黒の六楯(クロージュ)が状況に応じていった。


「止まるな! 右側の大盾が開く。一旦戻って体勢を立て直す――」


 テレーゼの言葉と同時。聞こえていたかの勢いでヘルベルトの指示が飛ぶ。

 当然の呼応の連鎖で、右側に迎え入れる空間が開き、反対側から竜装騎士団が飛び出して行く。


 ――前衛に配置され、他国の将の麾下でその采配を受ける気高き「聖騎士」は帝国の将伯の「一翼を願おう」の出撃の言葉に、駆け戻る白牙との入れ替わりを見ていた――


「我らが出る意図は明白。小賢しく飛ぶ魔獣を撃ち落とす。竜装騎士の力を見せなさい」


 銀白乃剱(シルヴァーソード)シオン・クレーヴレストの鼓舞が竜装騎士団を抜けて、機動と展開に迎撃の竜硬弾が力強さを見せ、場景に魔獣を落としていた。


 双方の行き来と連動して、ヘルベルトの前衛軍中央の大盾が前進を始め、魔動造兵(ゴーレム)の列と距離を詰めていく。

 前進で作られた空間に、獣装騎兵(ティーガー)の馬蹄が列を奏で、助走を開始していた。


 その始まりに、竜装騎士団の動きと交錯しつつ獣装歩兵(パンター)の列が直線をなして、獣装騎兵(ティーガー)の突撃を誘発していた。


 突き進む先頭で、脇掛けのランスを突き出す隻腕の副将、ギルベルト・ファング・ヴィルケの豪快が響いていた。


「人形ごときの隊列なと粉砕して見せろ」


 楔型の陣形で進む獣装騎兵(ティーガー)の突撃。その上を魔砲撃の黒が越えて、壁の後ろの魔族や魔物魔獣を打ち崩して行く。

 砲撃の音を越える衝突の音が、小型の魔動造兵(ゴーレム)の弾け飛ぶ勢いを作り出していた。


 魔解の戦線が、崩れ去る音と場を起こしていた。


 抜けた先で旋回し、突き崩し戻る獣装騎兵(ティーガー)の「崩壊への誘い」を見て、人智の将たる全てが「勝機」と連動を始める。


 だが、森の木々を越えて肩を見せた、大型魔動造兵(ゴーレム)の「起き上がる」が人智の驚きと動揺を誘っていた。

 数百もの大型の魔動造兵(ゴーレム)が歩み森を抜けて、その姿を晒し始めている。


 その光景に、マリス=マグナとデースペアが明確な意志を持ち、部衆を引き連れ姿を現してきた。

 眼前に、激情を見せるマリス=マグナは、戦場を裂くような声を上げていた。


人智の者(カス)どもが 調子に乗るな!」


 彼は、言うが早いかの唐突な魔力発動をみせて、衝撃の波が戦場に映つし出されていた。

 獄炎さながらの波動が、戻り返す獣装騎兵(ティーガー)と行き来る獣装歩兵(パンター)の陣形に消滅の空間を作っていた。


 ――放たれた魔力は、対魔力防護を飽和させる、いや、それ以前に「抗う程の刻み」は人智側でも僅かに思える程強力だった――


 強烈な魔力発動に、動揺が走り前線が崩れるかに見える。しかし、空白には大盾の繋がりが起きて、獣装騎兵(ティーガー)は集団の意志を見せていた。

 辛うじて、消滅を免れたギルベルトは、再編の声をあげ、迫る大型の魔動造兵(ゴーレム)の向こうに意識を向けていた。

 ――引くのが正解だが簡単には行くのか。……その思考に苦悩が見えている。


「一旦後退だ。ボルトで牽制しつつ――なっ!」


 ギルベルトの言葉が終わりに至る前に、|大型の魔動造兵(ゴーレム)の振り下ろす拳と蹴りあげる足で、突出した彼らの戦線に穴が開いていた。

 そこを魔解の部衆――魔族の上位個体――が襲い掛かってくる。


 光景と混戦が、魔解の側に勢いを戻すをもたらしていた。


 その中で、ギルベルトもそれらしき個体と切りあっていた。掛けたランスでバランスを取り、愛馬に身体を預け、残る腕で剣を奮うその(さま)だった。

 恐らく食い縛るは、彼の現状の苦悩であろう。そこに聖騎士たるの声が掛かった。


「相応の破壊力は斬り結ぶには不向き。ゆえに、ここは我らに」


 斬り込む竜装騎士の一団の先頭で、シオンは、慈愛なる刃アフェクションブレイドでギルベルトの相手を突飛ばして言葉を掛けていた。


 ギルベルトに一瞬の落ち着きが見えて、続けて迫る腕と足には、テレーゼの魔力の翼と声が出ていた。


「ギルベルト殿引いて下さい。ここは私が――」


 彼女が引き連れた一団は、ヴェッツェルの精鋭で白牙騎兵である。彼らが、テレーゼの魔力の翼と言葉の刻を作っていた。

 大型の魔動造兵(ゴーレム)の腕をテレーゼが、足蹴の爪先はシオンの慈愛なる刃アフェクションブレイドでギルベルトには届かなかった……。



 精鋭が集まり、空間が出来てくる。そこにマリス=マグナの瞳が向けられていた。


「デースペア、あそこに何体か集められるか?」

「唐突だな」

「中々の狩場だ、逃がすには惜しい。……後は任せた、俺の軍も……ふっ、烏合か」


 最後の足掻きにも取れる現状に、人智の統制で押し返される光景がマリス=マグナには見えていた。


「私は引くぞ。まあ、何体かは、やらぬでもない」

「感謝する……可笑しいなお前に感謝などと。後から行く、たぎる血を冷ましてからだがな」


 ――数多くの魔解の王の内、自称で不相応な大半を除いて、彼らは十分その力があった。互いに魔解では相容れない関係だったのではあるが――


「さあ、楽しませてくれるのか人智の者(カス)ども」……マリス=マグナの呟きだった。



 そして、マリス=マグナの言葉通りの光景を、ギルベルトは見る事になる。

 自身に寄る者も、駆けつけた者達も精強で精鋭であった。事実、彼女達だけ出なく、追従してきた何人かは、部衆と呼ばれる相応の魔族を倒している。


 その上で、「強い魔族がここに集まる」の違和感が現実になって、シオンの悲壮感が出ていた。


「クライド、しっかり……なさい。何で……」


 自身を庇い半ば絶命のクライドに、真力と魔力を通すシオンは、マリス=マグナの不敵を聞く事になる。


「俺に傷は誉めてやるが、女こどきでそれでは話にならん。さて、次は誰だ?」


 見渡すマリス=マグナは既に包囲されていた。


 ただ、彼の空間を囲う大型や小型の魔動造兵(ゴーレム)が、中に捕らわれた形の彼女達に状況を押し付けていた。

「押し付けられた側」のテレーゼは、先程弾き飛ばされたマリス=マグナに、怒りの表情を向けていく。


「ならば私が相手だ」

「テレーゼ下がれ。それよりこの魔動造兵(ゴーレム)の壁を何とかするんだ」


 ギルベルトの言葉に出来るならしている。そんな顔のテレーゼとそれを守る白牙の騎兵。勿論、竜装騎士もシオンを守っていた。

 人数の問題では無く、大型の十数体で囲われた壁をどうする事も出来ず……。


 ギルベルトは、マリス=マグナに向かい隻腕の第七の牙(ズィープト・ファング)を見せて、覚悟の足を進めた。


 覚悟の雰囲気に、上がる表情のマリス=マグナ。


 正に触発の刻だった。北側にあった大型の魔動造兵(ゴーレム)が両断され崩れ落ちる。


 ――見たままに上から真っ二つである――


 崩れ去る音と破片の中から、真紅の黒の六楯(クロージュ)が現れる。手には勿論神を切り裂く剣(ゴッドスレイヤー)デュールヴァルド。


 精悍な立ち姿が、押し付けられていた者達の視線を向けさせていた。……微かな安堵が見て取れた。

 視線を受けながら、カレンは自身が行く先のマリス=マグナを捉えていた。


 モンテーニュ公爵令嬢ジャンヌ=シャレの彼女は、異世界からの召喚者だった。

 この世界で、紆余曲折を経て彼女は「カレン・ランドール」になった。それゆえか、カレンはカレン・ランドールに拘りがある。


真紅乃剣(グリムゾンソード)カレン・ランドール――参る」


 良く通る美しい声が、振り流す剣先の動きに合わさって、緋色の瞳には力が込められていた。


 ――王国最強の騎士の確固たる矜持――


 間違いなくそこには彼女がいた。そう、カレン・ランドールがである。



内容ではなく、文章が書けない感じなので、暫くは投稿の間隔が……かと思います。

よろしくお願い致します。


ありがとうございました。

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