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王国の盾~特異なる者。其れなりの物語~  作者: 白髭翁
第五章 王国の盾と魔解の王
144/204

十九~魔解の王。魔王級は勇者に任せる~

プラス1で。

 衝撃的な激突を予感させるミールレスの魔力発動は、あからさまな「行く気」を見せて、クローゼの『魔力反射(リフレクション)』の魔方陣の展開を呼び込む形になった。


 刹那の衝撃的反発の輝きが――その場に起こる。


 輝きを見る対峙の綻びに、放たれた魔力を弾き返し、ミールレスを魔力の波に包む光景が出来る。それを魔造従者(サーヴァス)の剣士一体を斬り伏せて、二体目に掛かるカレンは感じていた。


 斬り掛かるに遅れを取るとは思わない。しかし、その「不可思議な剣士」も相当である。そう認識を向けてカレンは暫擊で、二体目の輝きが消える姿を作りだした。その残光の先に「助力」を申し出た騎士が……二体目のそれを消し去る様子を視認する。


 ――これ程とは……瞬間的なカレンの流れる思考だった。一瞬、あの戦場で対峙した光景に重ねて、カレンは、怪訝が出ているのを自覚していく。


 そのフリートヘルムに斬り掛かる、彼に向かった三体目。そこにカレンが向いた時、氷結の壁が斬り掛かるを遮り流浪(ポーター)の二つ目の扉が「氷付け」になるのを彼女は見た。


 そして、彼女自身はその三体目を袈裟斬りで両断していた。……この時の疑問は、後日彼の口から答えをカレンは聞くことなる。


「まともにやっても届かないと感じたので、隙を作って見せただけと言う事です。あの時は斬られても……でしたから。当然手を抜いた訳ではない。と言うのは明言しておきます」


 手を抜いたと言う感覚は、ミールレスを包み込んだ光の遥か先で、イグシードが手加減して逆に手こずっている光景にも感じられた。


 相対的比較から、ライラと六本腕(アスラ)には数段の差が明らかにあった。そして、イグシードと六本腕(アスラ)にも、階層での数階の差があった。単純に発動魔力換算で六本腕(アスラ)はクローゼと同格に……イグシードには見えていた。


 ただ、試合った上と、重ね併せて魔量を防御に向ける事の出来るクローゼとは、明確な差がイグシードにも見えていたとなる。無論、六本腕(アスラ)が格下だと。その上で、単純に「手を抜く」で言えば、有言実行の為にと言うことだろう。


 (いず)れにしてもその差なら、イグシードによって確定的な結果になると思われる。そんな余裕を見せるイグシードも、クローゼの勝利を疑っておらず、彼に……いや、ライラに取って必要な刻の為に、クローゼの場から彼は意識を離していった。



 クローゼ自身が、イグシードの様子に気付いたかは別に、絶対的な自信を見せ勇者にさえ認められ、奇襲――魔力反射(リフレクション)――に成功した場景が、その結果を露にしようとしていた。


 迎撃(カウンター)を決めたクローゼの目に、光が巻いて白い煙りすら見えた光景が消えて、ミールレスの姿が浮かび上がる。それは、相応の状況による打撃と理解が遅れ立つその様相だった。


 今までの流れなら、ここでクローゼのどや顔の言動が続くかに思われる。しかし、この時は瞬殺の勢いで二人がミールレスに迫っていた。


 障壁が薄らぐ所に、両手持ちの横凪ぎと双剣の右側を突き出し左を隠すそれで――両側からの剣勢として二人は見せた。


 僅かに遅れ、「交わして受ける」ミールレスの肩口を貫く竜硬弾の軌道。それと反対の至獄色の腕を畳んで受けた、強烈な金属音の剣擊が場景を舞台にしていた。


 演者たるクローゼは、そのまま高速で身体を回して左の剣先を向けて後ろに至り、ミールレスの半身を引き出す。そして、対となっている自身の相 棒(つるぎ)なるレイナードの流れる様な連擊の剣刃を呼び込んで行く。


 半身で受け変わる――ミールレスの微小な隙に、二人の廻る動きが無言の攻撃を重ねていった。それは、クローゼの双擊と魔衝撃に王国最強の剣刃と魔衝撃が、複数の軌道を描いて連なり合う呼吸に見えていた。


 相応の最中で、魔解大公たる至獄色の鎧からの「反撃の魔力発動」が対象防護(ターゲット)の唐突で重厚な発動に併せられ、剣士の周りの場景をだけを変えて流れていった。


 意図的に上がるクローゼの口角。その感じから領域の双剣がそれに続き、レイナードが微塵も疑いも無くミールレスの範疇(はんちゅう)に踏み込んでいく。

 そして、魔王級とも取れる魔力鎧に輝きの乗った剣刃を走らせていた。


 ――連続の剣擊に重なる魔刃。その具現の衝撃が、クローゼ魔装甲楯鱗(スケール)の反射と交わる自身の(つるぎ)の剣勢に「色と音」の演出していた。


 その光景が無言の連係を続けて、ミールレスを追い込んでいった。重ねる剣舞と魔力の煌めきに、輝きが連なって、破壊と衝撃をその空間を叩きつける。

 その場が、壮絶な変化を見せるに至る相応の刻で、相互に血肉の弾けと飛沫(しぶき)を生んでいた。


 ギリギリまで踏み込んで、クローゼもレイナードもミールレスも境界線の見える位置まで到達する。


 ――三者自身が想像を越えた光景……立ち入るそれを躊躇(ためら)わせる……ある種の至高の刻みが出来ていた。


 それを見る、外界とも言える様な獄属の観客席には、心持つ欠片を掴み出したイグシードに、達成感をみせるライラが立ち入っていた。

 それを合わせ見る様に、デュールヴェルドを倒れ込んだヴァニタスの太腿に突き立てるカレンとその獄属の眼前に剣先を見せる、フリートヘルムの視線が加わっている。


 呆然と見入る中でも、ライラの表情は唐突に現実に引き戻されていく。


 彼女の表情が変わるその瞬間に、終局の兆しが見えてきた。壮絶に解き放つ様にミールレスの魔力の解放が見えて、クローゼも覚悟の上を行く、切り札を見せていく。


 ――何時もなら、「何とかしろ」と声をあげる場面と状態だった。クローゼもここまで来るとは些かであったのは、彼自身の片隅にもみえる。

 ただ、勇者が在ってカレンがいる状況で、声も指示も泣き言も呟きも見せず、クローゼは落ち着きはらっていた。


 その双翼神乃楯(イージス)発動の瞬間に、魔解の真なる王と呼ぶに相応しいミールレスは、微塵の間も無く、至獄が渾身の先をも見せるかの反撃に移っていった。

 先ずは、邪魔な「その盾の主を」とミールレスは狙いに行く。「初見ではない」それの僅かな隙を彼は見ていた、となる。


 発動と同時、クローゼは囲う魔力の多重な厚みを消していた。それは、ミールレスの力量を見たクローゼが、自身と照らして魔王の時と同じ選択をした事による。


 その状況で自身を守るは、胸の盾のと薄い魔量に再生を止めている楯鱗の盾だけになる。硬化機動楯(マヌーバ)は、他に回す魔力の兼ね合いで使わなかった。


 ――種明かしは一度だけ……クローゼの魔王に向けた言葉とその意味。それを目の前の男が知っているとはクローゼは思ってはいなかった。


 微小な魔力の者ならいざ知らず、万全の瞬殺を血肉の裂き斬るで返された相手に、向けた敬意として使ってみせた。

 そして、向けられる魔刃をクローゼは「紙一重」と感じていく。ただ、それは自身が勝つと言う意味である。それを確信した表情をしていた……


 出だしから、相手が誰であったとしても……彼自身が認めた唯一の(つるぎ)は、この刻この場に至るまで常に彼の最善の先にあった。

 ――無言の集中力と鍛え上げた身体と剣の技に、積み上げた日々の重ねが「剣と力と刻の流れ」を経て「一握り」の者を更なる高みに昇華させた。

 

 それをクローゼは知っていた。必ず出してくるその先を。――分かるだろレイナード。……だった。


 そんな確信のクローゼに迫る、ミールレスの右手に込めた渾身の一撃。それに、レイナードの本能剥き出しで奮われた渾身が重なり、障壁も魔装の鎧も色も「腕ごと」叩き斬った光景を生み出す――


 ――その瞬間を真紅乃剱(グリムゾンソード)カレン・ランドールの瞳が捉えて、瞬きの後にレイナードが「無言で怒りの形相」の魔力発動を受けて飛ばされ、双翼が輝きを見せたのを彼女は刹那で置き去りした、だった。


 魔解大公……いや恐らく、魔解の王の名は彼の物だろう。クローゼはそう思った。その一部始終を勇傑なりで捉えてになる。迎えた終極で、目の前には肢体の止まったミールレスがあった。


 圧倒的に制圧するつもりが、クローゼ自身も膝を着く状態にまでに至り、魔力をわけたレイナードもカレンに間髪助けられて大事に至らなかった、と言う状況であった。



 壮絶な一連を示す様に、森の一角が景色を変えている。無論、最上の結果の上にの場景の筈だった。

 ――しかし……である。


「とりあえずだ。メイドが魔獣に乗って突然出て来て、あいつを魔獣が咥えて逃げるとか。ありか?」

「見たままだな」


 ヴァニタスの地に伏せる頭を、足先でつつくクローゼに、先ほど迄、フリートヘルムに魔力を通されていたレイナードが返していた。


 クローゼの言葉通りの光景が先ほど起こっていた。ただ、見送ったそれは、唯一追いかける事が出来たイグシードが、ライラの件を優先した為にそうなったと言う経緯があった。


「『ついで』だったんだろ。なら、良いじゃないか別に、約束の方が大事だろ」

「あんなに強いとは。なら、今度は勇者のお前に任せる。インパルスだったかは、一撃だったからそんな物かと思ってた。本当に魔王級だったな」


「まあ、良いけどな。でも、あっちも暫く駄目だろ動け無くなってボロボロだっただろ。それに手とか生えてくるのか魔解の者は?」


「生える……種族もいるが、彼は『獄魔族』だった筈だ。だから、無理なのではと思う。それよりも、イグシードは勇者だから分かる。あのインパルスを一撃とか、ミールレスの腕を叩き斬るとか、獄属を取り押さえるとか。……魔解は敗れるのか」


 イグシードとサフェロスの約束――契約――通り、欠片を取り出されたライラが、明らかに違う存在にみえる二人の会話にそう締め括っていた。


 六本腕(アスラ)の為に少数だった焔魔(えんま)族は、彼女一人になっていた。その為だろ彼女は魔解の括りに、少なからず思う所があった。


「魔解までは、攻め込まないから魔解が負ける事はないよ。ただ、人智にある者は負かすつもりだ……ここだけの話、別の道も考えとしてはある。大事な人が今、魔族になってるのもあるが……あっ、そうだ」


 話の途中で、クローゼはヴァニタスに向けて、紫の竜水晶を見せていく。そして、一段上げた感じに声をだしていた。


「これは、お前のか?」

「そんなの何処にでもあるだろ」

「神具の欠片だろ、何処にであるものか?」

「知るか、この剣を抜け。と言うかお前ら助けろ」


 うつ伏せで上体と顔を上げて、擬態である魔族の容姿から訴える声をヴァニタスは出した。それに、三者三様に声が帰っていった。


「我は奴の従属者だ、だから無理だな」

「我も色の対価に竜の巣の件が有るからな」

「我がお前を助けて何の得がある?……大体、勇者があるのにそんな無謀な事を。今のを見てお前はするのか?」


 価値観が彼らにあるなら、仲間意識は低いのだろう。「助けろ」の意味合いにもよるが、この状況を黙認していた。ウルジェラはクローゼの倫理観で動いている。その点で、クローゼの感覚は特種だと認識していた。


「残念だなヴァニタス。諦めろ、黙ってるなら勝手に断定する。その上で聞きたい事がある。それに答えれるなら助けてやるが、出来ないなら永劫は終わりにしてやる」

「何だと、貴様――ぐっ」


 ヴァニタス自体は、動けない訳ではない。たた、デュールヴェルドか地面迄達しでいて派手にはできなかった。それをクローゼか貴様の言葉当たりで、回していた。


「痛いか? 兎に角聞くぞ。吸血鬼(ヴァンパイア)にされた人は元に戻せるのか?」

「知るか、あの女の話なら妖艶なる羨獄(イルディラ)に聞け。紫黒の吸血鬼(フリーダ)はあれの所業だぞ。我が知るわけ――あがっ、ぐう」


 また、話の最後辺りで、今度はクローゼ自身の反発の拳かヴァニタスの肩に叩き込まれていた。

 抜ける衝撃が地面を揺らし、肩が潰れる感じになっている。……ヴァニタスは、地面に額を預けて悶絶していた。


 その様子を見下す感じに、クローゼは立ち上がった。

「知らんなら用はないな 。……サフェロス、とりあえず契約成立だな。次に会う刻もいい関係ならいいがな。イジェスタは、魔王件が落ち着いたら、俺の優先分から初めに選ばせてやる。それまで敵対するなよ。……これで、一旦終いだ」


 ヴァニタスを足蹴りにして、面と向かって獄属の二人にクローゼはそう言っていた。その並びに立つウルジェラは、その表情に懸念を見せていく。


「クローゼ、雰囲気が良くないぞ。彼女らの顔を思い浮かべて見ろ」

「自分では、十分冷静だと思うが。駄目なのか?」


 周囲の視線に懸念が入っているのを、クローゼは感じて、会話の流れを実行して目を瞑り顎をあげていた。

 一応にそれを済ませて、改めての感じにアリッサについてその場の獄属達に聞く。無論、ウルジェラに問うのも明確には初めてだった。


 妖艶なる羨獄(イルディラ)の名と極神 探究を司る知識の・(シエンティア)六体(りゅうたい)に触れた極属が、王国の北側を遮る竜の背の向こう側の国で「賢者」らしきと呼ばれている事柄が出てきた。それならば……であると。


 話の流れは、明確な問い掛けに従属者としてウルジェラが答えて、なし崩しの頷きが続いた結果であった。

 また、続く「アウロラ様なら出来るんじゃないのか」とのイグシードの言葉に「融通が利かない」と獄属らの一致を得て、クローゼの話術次第で「出来る」なら出来ると言うことになった……


 ……一石二鳥を狙ったクローゼの「誘い出し強襲」の一幕はそれを聞いた事によって、終息に向かっていく。結果的に、アリッサの件の黒幕は「ヴァニタスでは?」の見解については彼には、全容は分からなかった。


 勿論、既に擬態ではなく骸骨格な様相になり、地面に顔を付けるヴァニタスが話をすれば分かるのだろう。しかし、その気配は既になかった。


 永劫の刻に空虚を感じ、永劫に一番しがみついているのは、恐らく虚無なる無獄(ヴァニタス)だと思われる。怠惰を見せて、その実は勤勉な暇潰しに奔走した獄属だったと言えた。


 その雰囲気で、後は始末するだけ。と言う空気感にイグシードの「転位して待ち伏せするか?」の言葉か出て来る。しかし、クローゼの「前座の前座だから。前座のランヘルで、お前に任せる。案外忙しいんだ」と他人任せな感じを見せていた……



 既に、クローゼの意識の外に置かれた、ミールレスは三匹の魔獣の内、大型の魔獣に牙を立てられて咥えてられていた。

 勿論、肢体は固まったままである。ミールレスは並走するメイド仕様の魔造従者(サーヴァス)に動かせる眼と口を向けていた。


「ヴァニタスはどうなった?」

「今のところまだ、人智にあると思われます」

「何故分かるのだ」

「また、繋がりが断たれておりませんので」


 ミールレスは、魔獣を駆るそれの不釣り合いな様子に、掛けた声の答えが意味する事に、更なる疑問を投げていく。


「奴が消えたら、お前はどうなる?」

「勿論、神具の欠片……の欠片に戻ります。ですが、心配無用にて。ランヘル迄は恐らくお連れ出来るかと」


「助けられたのだ。それが消えるのは些かだが」

「我らに自我などありません。私はただ、ミールレス様に依存して情報の提示をしているのみ。ゆえに、お気になさらぬよう」


 離れ行くにつれ、硬直ともとれるそれが薄れていく。その感覚を甘受して、ミールレスは痛みと共に魔獣を駆る魔造従者(サーヴァス)を自らの瞳に映していた。


 ミールレスにとって突然の遭遇。クローゼにとっては思いつきの上で意図的な遭遇。結果は、不測を入れてもクローゼらに軍配が上がったと言っていい。


 万全の体制で一対一なら、別の壮絶さを見せたのだろう。恐らくはそうである。結果的に対峙の流れが不明確であった。故に……


 ――どちらも、魔王オルゼクスには届かず、無論、勇者イグシードにも及ばない……強者であり、その雰囲気は類似するが、他者を活かせるクローゼ・ベルグの「盾」としての力が、彼らの絶対的な差である……に至る――


 クローゼ自身が分かっているように、彼は色と輝きと煌めきを与えられた強者であり、それを自認した上で才能を諦めても努力を続けていた。


 根本的な部分で恵まれているのではあるが、素のままでは、少しばかり腕の立つ貴族でしかない。まあ、それが十分恵まれているの部分なのだが……。


 彼の少し恵まれている部分を追加するなら、彼の魔力魔量は現時点で、合算六万を越えて発動魔力は千を越える。

 ――「魔力が一千」で「魔力魔量が一万」の守護者が六つと彼自身が加わって、その数字になる。


 その彼と対峙したミールレスは、凡そ「魔力が五千」で「魔力魔量が五万」の神具の欠片を宿す者であった。

 また、クローゼが自らに「剣」の認識のあるレイナードは、その換算で言えば「魔力は二千に届くか」で「魔力魔量が三千余り」になる。


 クローゼの周りの魔導師たちが、その名の通り全属性持ちの魔導を極める者で達になる。

 勿論、只の魔導師ではないが、その前提で魔導師と呼ばれる者達が「魔力が三百以上」で「魔力魔量が三千」を越える辺りが基準であるのを考えるとレイナードも特種であった。


 そして、彼は珍しい循環流動体の剣士であるのを付け加えて、彼と同等の評価である真紅乃剱(グリムゾンソード)カレン・ランドールについて述べるなら、彼女は、「魔力は三千を越え」て「魔力魔量は六千を上回る」純粋な放出流動体の騎士になる。


 ――『力』が同じなら魔力魔量の高い方が強い。


 それを入れて、クローゼらとミールレスの戦いを見るなら、特異なる者に鍛え上げた人智の者を加え、獄魔族で魔王の母体になれる宿す者の勝負の結果だった。という事になる。


 そして「及ばない強者」に至る。


 魔王も勇者も神と同義の上で、クローゼが持つ「発動魔力六分の一魔王」にして「合算魔量は魔王と同等」を見るなら現時点でも「魔力は六千を越え」て「魔力魔量は六万を上回る」は最低限なのだろう。


 その上で、神の五体に類似するなら、人智や魔解が及ぶ所ではないと言うことになる。


 それをクローゼは十分に理解していた。勿論、アレックスなり、ジーアなり、ウルジェラなりの意見を総合して得た彼の見解ではある。


「魔王級は。勇者、お前に任せる」


 既に、勇者もお前呼ばわりな、クローゼ・ベルグ・ヴァンダリア・ヴルム=ヨルグなのだが、その彼が言う「前座の前座」正確には、前哨戦の前座なのだろうその一幕が終わり告げた辺り。その幾ばくかの後に、魔族や人が水晶に変わる出来事が幾つか起こった。


 それを正確に理解出来たのは、ミールレスだけであった。……一応にそうである。



土日にも投稿予定。五章は今暫く続きますで。

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