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王国の盾~特異なる者。其れなりの物語~  作者: 白髭翁
第五章 王国の盾と魔解の王
143/204

十八~受け入れる事。押し付ける彼~

こんな感じに。

 こんな転機とも取れるの物語の頁は、側面でも同じ刻を見せていく。オルゼクスが「魔解に降りた」とカルーラが聞いた時に、フリーダが知ったアリッサの状態は酷い物であった。


 旭光を越えた辺りで、異変を見せて少なくない極の刻みの末にフリーダが見た光景になる。


「申し訳御座いません。想像以上でしたゆえ、部屋から出さぬのがやっとでした」

「衛士を幾名か寄越してあれ。妾があたるが些か疲れてある」


 フリーダの言葉に女吸血鬼(ヴァンプ)の一人が頷きを見せていた。そして、そのまま扉を開いていく。……部屋の中の光景は、一目で惨劇であると認識が通るそれである。


「アリッサ、どこにある?」

「姿が、外には出てはいない筈ですが……」


 彼女達が部屋に入り、その空間を探っていた。気配という点で言えば、普段のフリーダなら造作も無いと思われる。しかし、散々の高揚感と魔王の血が逆の意味でそれを狂わせていた。


 静寂に、落ち来る微かな空気の揺れが彼女達に見えて、その視線が頭上に向いていく。その先で扉が開いた側の天井の角に、肢体で身体を支えたアリッサの姿があった。


 瞬間的に「閉めよ――」とフリーダの言葉が飛んで、カルーラが残影を見せて扉が閉まると同時に消えていた。


 瞬間の間で、幻影かと思わせる揺らいだ姿の交錯が起こり――実体が定かでない虚影の演舞が、音ともに部屋の惨劇を積み重ねていった。


 正気を保つ側の僅かな思考――此ほどは……であった。見つめる先のアリッサの美しい顔が、剥き出しの牙と見開いた目の紫色で、正気でないのを示している。


 幾ばくかの共演の末に、後ろから抱き締める優しげなフリーダの姿で幕間(まくあい)が起こる。巻いて首に掛かる腕に、見上げる躊躇らしきが見えて……頷きに併せアリッサの牙が白く透き通る肌に通っていった。


 そして、微かに色を見せる魔力が彼女を包んでいた……。


 ……相応の刻を紡いで、ベットに半身を立て下半に置いたアリッサの髪に指を通す、フリーダの姿があった。惨劇を思わせた部屋を後に、落ち着き眠るアリッサをフリーダは見ていた、となる。


 微かな音が開かれる瞳とともに声になっていく。アリッサの瞳に映るフリーダは、優しげな表情を見せていた。


「……フリーダ様?」

「アリッサ。気分はどうだ?」


 問いかけた言葉と問いかける答えが、その場に流れて、かけた言葉が自身のある場所に気付きをもたらしていく。


「ここは……?」


 状況を把握出来ないアリッサは、思い返すように自身の記憶を手繰っていた。……静かに待つ刻の先に、突然の「渇き」が押さえきれない衝動として起こった。それを思い返して、自我の最後の記憶と感じていた。


「妾の屋敷だ。暫くは妾の側を離さぬぞ。色々と話さねばならぬが、こうなったのは本意ではないゆえ、ゆるせ、アリッサ」


 自分が自分でない部分が、アリッサにはあるように思えて、フリーダの言葉に答える事が出来なかった。


 フリーダにしてみれば、不本意であろうがこの絶対的な不可抗力は「結果」だけ見れば願った事である。アリッサが、人であろうが人狼を偽っていようが関係無く「であれば良い」と言う事どおりの行き先になった。


「兎に角、今は休め。馴染んでこれば傷も傷跡も癒える。それまではゆっくりとしておれ」


 明確で僅かな頷きをアリッサは向けて、欲望としての「睡魔」に囚われた様に眠気を自覚し、その言葉を受け入れていた。


 アリッサが再び休息に向いた頃には、イグラルード王国でも、彼女自身の事が近しい人達に伝わっていた。ただ、クローゼの自責と躊躇で、彼女の妹エリーナには伏せられていた、となる。


 当然、フェネ=ローラには伝わっていたが、レニエの配慮と相談をかねた話で、今の所伝わらない様になっている。勿論、どうにかする前提であった。


 ……ただ、今のアリッサ自身は、そこまでの配慮が必要だとの自覚はないだろう。


 恐らく、自分は自分であると今はまだその認識にある。「吸血鬼になったのね」の言葉の自認するのは、少し先になると思われ、一応に、深い眠り向かうアリッサであった……



 当たり前に、この状況を作り出した者の存在は、今の所不明確で、魔族の側は「オブラス」の襲撃の不測だとの認識であった。


 ヒルデも自責の念を持ち。ビアンカは傷心の上に自らも責めていた。無論、ヴォルグも自身の不甲斐なさを認めている様子であった。


 付け加えるなら、屋敷の者も含めて「アリッサが人狼である」と認識を持っていた人智の人でさえ、結果には、大方は安堵の声を上げていた。……事実関係を知る知らないに限らずになる。


 結果的に、アリッサの自我は存在をみせている。その点ではあのテーブルを囲んだ、カミラもノーガンも安堵を持って、前後の事実には特に声を上げる感じには無かった。


 それが、当面、アリッサの代わりをカルーラが務める事になった「魔都ユーベン」の事情になる。それを受け入れるかは、人智の側次第だったと言えた。


 別の側面では、バルデギアード領内に侵攻中の魔王軍についての不測をもたらしたとなる。


 現状、魔解の王不在の三軍が「統制と連携」の言葉を投げ捨て、指揮を取るサバルの負担になっている事実があった。……単純に、数万規模の魔族の三軍が各々に好き勝手に一喜一憂し、右往左往していた。それが現実にはあった。


 当然、魔王軍自体は増えてはいるが、高く分厚い城壁に、ノエリアの手腕と亜人の介入によって停滞してたとなる。

 ……ただ、百眼(オキュラス)で、点を繋ぎ采配するサバルに、正攻法で指揮するノエリアの力は、容姿と物腰にそぐわない「女傑」の名をそうであると魅せていたとも言えた。


 その為、マリス=マグナとインパルスに漆黒兵団が帝国領域に復帰する予定で、デースペアは自勢力の軍を戻して南方に向かう手筈であった。


 しかし、襲撃事件の流れで、クローゼがインパルスを倒してしまった事と、ヒルデが手傷を追った事で、もう一度「改めて」の話にならざる追えない。

 その為、不測を含んだ――インパルスの勢力「フラルゴ」の今後の動向など――停滞の流れが続くと思われる。


 また、抱え込んでいる人智の側の人々が信頼する人狼。アリッサの動向が不明で「彼女が不在である」との認識の上に、色々な噂が流れ始めて不穏な空気がユーベンに漂いだした。


 ほんの僅かな刻の流れではあったが、ビアンカの状態が拍車を掛けているのも要因かもしれない。その為、商人らを巻き込んで、さして刻がかからす勢力圏の人智の側には広がるのだろう。


 アリッサが、平和だと思ってしまった日常は、現実だった様であり、そのままの流れに乗って現状が変化して行くのであった……



 ……現実問題として、虚無なる無獄(ヴァニタス)がそこまでを計算した上で、行動を起こしたのかは、些か怪しい所ではある。しかし、彼が知るか知らぬかよらず彼自身の刻みも続いていた。


 ランヘルへ向かう最中で、ヴァニタスは何日かの強行に追走していた。そして、魔獣の休息の為に道中にある森で、ミールレスの座る背中をみていた、となる。


 ――何をそんなに急いでいるのだ? ……見たままのヴァニタスの思考であった。


 ただ、背中を見せるミールレスが、唐突に頭を動かして立ち上がった。それにつられて、ヴァニタスもその視線の向こう側に意識を合わせて、驚きを見つける事になる。


 ……それは瞬間的に飛ぶ様な勢いで至りきた六本腕(アスラ)の立ちいる姿であった。


「なんでここに六本腕(アスラ)が?」


 そのヴァニタスの声に、ミールレスは若干の動きを見せてその三面の顔を確認する様子が、見て取れた。

 同行した、魔造従者(サーヴァス)は魔獣ともに森の奥に「魔獣の食事」の付き添いでおらず、その為、三者が木々の切れ目である開けた場所で、等間隔で線上にならんでいる様子になっていた。


 認識と理解が空間を通り抜けて、六本腕(アスラ)の首が回り、その視線がミールレスらを飛び越えてその後ろに向かっていた。


 怪訝な、ミールレスとヴァニタスの仕草と併せる様に、唐突な声が彼らの後ろから掛かってくる。


「動くな! ……俺が誘き寄せたんだよ。ウルジェラ、そいつが虚無なる無獄(ヴァニタス)か? 。で、あっちがついでのあれか。兎に角、ヴァニタスは見失うなよ、色々と聞きたい事がある」


 掛けられた声に振り返るヴァニタスの目には、明らかに、見知った雰囲気の三者と数名の男女が見えていた。


「まあ、そうだな。……それは任せておけ」

「面倒な手順でこれがしたかったのかよ」


「馬鹿見たいに無防備で、目的の奴が近くで集まってたからな。まとめて始末するチャンスだろう。まあ、ついでも居たことだし、ここなら制約無しだ」


「まあ、約束の相手をやれれば俺は良いけどな」


 当たり前に、この状況でイグシードが「囮の六刃」を持ち、クローゼに向けた声を出していた。彼らは獲物を狙う表情を見せて会話を流していた。


 勿論、そこに在るのはクローゼ達になる。……クローゼと半身竜人のイグシードにライラ。それに並ぶ王国最強剣士と騎士に、「黒い」黒の六楯(クロージュ)のフリートヘルムだった。


 その後ろに立つのは淫靡なる夢獄(ウルジェラ)欲然なる烈獄(イジェスタ)激然なる威獄(サフェロス)である。


 六本腕(アスラ)まで入れて、光景が異様である。……単純にそれを繋いでいるのは、それなりな――衣装甲のみクロージュ――軍装のクローゼだった。

 見たままなら、緊迫の場景に「ククク」とウルジェラの漏れる音が出ている。


 遠目から、傾げると見据えるに驚きがクローゼの上がる口角に向けられて、後ろの獄属の「作る表情」がその場景を現実に繋げていた。


「ヴァニタスを強襲するとは、あれは何だ?」

「自分の事を『何とからしい』と。あの顔と口調で、獄属の我らをその気にさせる『あれ』はなんと言えば良いか分からんな」


「良い言葉があるぞ。『悪魔』だ。クローゼ・ベルグは、我らをそう思っている」


 観客席でその光景を見る感じの彼らに、ヴァニタスの怒号が向けられてくる。


「貴様ら――」

「黙れ、相手は俺達だ。そこの魔王擬きと後ろの三面銅像野郎もまとめてあの世に送ってやる!」


「クローゼ、『あの世』って何処だ?」

「レイナード。……そこか?」


 ヴァニタスの叫びに応じた言葉に、緊迫を消すような二人の会話。行くなら「彼も」のセレスタの潤んだ感じの言葉で、二人は来ていた。


「二人とも、悪ふざけはなしだ。遊びでは無いぞ」


 テュールヴァルトに掛かる手に併せるかの声が、二人の雰囲気に向けられていく。


「二人は付き添いだろ……。まあ、真剣にはやるけど。よし、フリートヘルム。因縁の野郎は殺さない程度に殺していいぞ、擬きは俺がやる」


 踏み抜く感じを――強奪の魔掌によって――半身を戻した究極の牙(エントリヒ・ファング)に向け、確固たる頷きを呼んでいた。


「サフェロス、約束は守れよ。……あっ、どうしてもやるのか?」

「当然だ、戻るまで刻を貰ったのだ。あの不覚も含めて一族の恨み刻んでやる」


 クローゼに言葉にイグシードが続き、殺気を蒼黒の焔に現すライラの姿が「六刃で宿す者」だと認識をその場景に魅せていた。

 その光景にサフェロスの答える声が、余裕すら見えて勇者に返されていく。


 声と空間の流れに、敵と認識する三者の並び立つを置き去りにして、クローゼは不敵な雰囲気を出していた。自身の魔力の影響下にもある黒の六楯(クロージュ)の三者は何れも強者であった為だろう。


 向けられるその表情に僅かな怒気が、ミールレスに見えてくる。


「下らぬ。全て相手をしてやる。掛かってくるが良い」


 置き去りを掴み引き寄せるかの声が、ミールレスの口から放たれて、「人智(カス)魔解(ゴミ)が――」の勢いで更にその向こう側から、六本腕(アスラ)が――最後の六刃一振り――に飛び出しをみせる。


 重なり放つ覇気を越えて迫る、奪い取る威力に蒼黒の炎が刃となって義憤(ぎふん)を叩きつけていた。――クローゼの視界と視野にその光景が入り、その瞬間の動きに彼は勇者の表情を見た。


 勇者イグシードはそれに併せる動きで、「外道が――痛みを知れ」のライラが放つ言葉を聞く。その刹那に彼は思い返しをしていた。


「揃ったら、ヤバいなら折ってしまえば良いだろ」


「やめろ!……違う。やめて、欲しい。それの所有者に思い入れはない。ただ、私のを含め六本の刃(つるぎ)には、紡いできた者達の血肉と矜持の重ねがある。……勇者のお前には、分からないかも知れないが……」


 欲然なる烈獄(イジェスタ)が強奪を終えて、クローゼに連れられ、秘匿された隠れ家となったばかりの転位型魔動堡塁(フォートレス)に着いた獄の刻の話になる。

 話の流れで、イジェスタが「勇者なら壊せるな」の言葉にライラがそう告げていた。


「イグシードなら、揃ったら所で勝てるだろ。 魔王を倒す勇者なんだから」


 伝承や叙事詩に歴史を紐といても……いや、目の前それを証明する者が三名もあるのは事実である。それを踏まえて、刃を合わせたクローゼの言っている感覚は「やってみないと分からない」を加味しても、楽観的であるとは言えないだろう……


 ――矜持の積み重ねか。約束だからな……イグシードの思い返しからの刹那の揺れであった。


 瞬く間に、イグシードは意識を変えて場景を捉えていく。そこには、蒼黒の炎を巻き奮われるライラの連続の剣に、六本腕(アスラ)が多碗で絶え間ない刃の回転を向けていた。


 衝撃から、近距離への移行の末にライラの眉間に寄る「不回避の自覚」が襲う。迫り来るのは、喪失の意識の間に奪われた彼女の刃であった。


 ――純然なる強さ――


 半身竜人のイグシード・ヴァーニル。彼が選ばれし勇者である証明がその瞬間を越えていた。


 六本腕(アスラ)とライラの決定的な交錯を引き裂く様に、閃光の動きで六刃の刀身を六本腕(アスラ)の金属の様相の胴体に突き立てる。そして迫る刃の持つ手ごとを掴んで――握り潰してその剣を奪っていた。


 越えた勢いのままにそれを魅せて、割ってはいる感じに六本腕(アスラ)を蹴り飛ばし、そのまま、身体を回して死に体だったライラの腰辺りを抱えて回転していた。


 回り行く視界の前にライラが捉えた、瞬きすら出来ぬ光景だった。一瞬続いていた剣擊の音が消えて、飛び退く感覚が彼女の身体を羽根の様な軽さにしていた。


 気付けば着地と恐らく続いていた木々の砕ける音の波がライラに現実を見せて六本腕(アスラ)が埋まった様に粉塵が相当な距離を見せて上がっていた。


 なし崩しに預けた身体を支える腕から、ライラは視線を上げてイグシードの表情を見ることになった。そこには唐突に「愛してる」と言うあの軽い印象は見えない。……勇者然として、先を見据えるイグシードが落とす視線で言葉を掛けてきた。


「ライラ。……いや、君の矜持(プライド)は取り返した。……間違ってないよな、これで」

「ああ、そうだ。間違ってない」


「さあ続きだ。あいつ意外と頑丈(がんじょう)だな。で、行けるか? 刻むんだろ手伝ってやる。……ついでだけどな」

「ああ、そうだな。……頼む」


 彼らの向かい行く先には、六本腕(アスラ)が立ち上がり、潰れた手を錬金術の様に再生して刺さる六刃を引き抜く様子があった。


 開いた距離を詰める勢いで二人は飛び出し、六本の剣を構える六本腕(アスラ)に向かっていった……


 ……出した声から、激情の光景が起こるのをミールレスは気にする事無く、クローゼとの対峙にらしさを出していく。――ヴァニタスには、そう見えていたのだった。


 訪れた、クローゼらとミールレスの間に位置したヴァニタスは、その手前から逃げる様に移動し派手な音と衝撃をミールレスのその様子と重ねて見ていた。

 その瞬間的に状況が変化したのに、ヴァニタスはの思考は混乱していた、となる。


 ――六本腕(アスラ)だぞ。暴走してるのだろ。蹴り飛ばしたぞ。なんだ? まさか勇者とか? ……ちょっとまて、目の前のあれあれだろ。と言うか、彼奴ら、裏切った……いや、違う、なんだ?


 ヴァニタスが、短い流れで回した頭が出した「答え」が……流浪(ポーター)であった。現実的に、彼に取って正解な判断で、恐らく、この場の獄属全てがその選択をするのだろう。


 そして、当たり前にヴァニタスは扉を作り開けていく。そして、一瞬の安堵。だだ、次の瞬間の光景に、作り出した仮初めの表情ではなく。彼は絶望を見せる事になった。……そう、本当の意味でのである。


 それは、作り開いた扉を丸ごとドーム状の分厚い氷て包まれ閉ざされた光景にであった。


「な、がっ」


 言葉とも言えない音を出したヴァニタスの絶望は、フリートヘルムによる魔法の氷によって成されていた。

 その光景をヴァニタスは引きずる様に、身体を動かして……帝国最高峰の騎士と王国最強騎士の立ち並ぶ姿を視界に入れる事になった。


「弱い自身の心と決別の為、御相手願おうか。虚無なる無獄(ヴァニタス)殿」


 究極の牙(エントリヒ・ファング)フリートヘルム・ファング・レーヴァンが、あの日あの刻あの場所で落ちた囁きの権現との対峙になる。

 絶対的な覚悟を究極の牙(エントリヒ・ファング)は持っていた。消し去りたい過去と戻り立つ場所の為にそれをヴァニタスにみせていた。


 絶句が空虚を走り、ヴァニタスは胸元に手を埋め込む様に入れて小さな紫色の水晶を幾つか掴み出した。そして、「なんでこんな――」の声と共に光らせばら蒔いていく。


 怪訝と応戦の構えが二人の騎士に見えて、彼らは人型の何か立ち上がる様子に直面する。突然に現れたそれは剣士の様相を見せて、六体が立ちはだかるの状況を作り出していた。


 ただ、真紅乃剱(グリムゾンソード)は微小の動揺も見せず、掛かる手に僅かな意思を乗せて、「露払い、引き受ける」と高速の剣擊を走らせていた。


 それに呼応して、フリートヘルムも立ちはだかる魔造従者(サーヴァス)に剣刃を向けていた……



 ……両側の差違の刻の流れと同じ空間で、僅かな場景の進みの中、対峙するクローゼ・ベルグとミールレスは、既に完全臨戦態勢の様相を見せて、膠着の雰囲気が始まる前に見えていた。その緊迫感を冷静な剣士の声が動かしていく。


「クローゼ、俺のは抑えてくれ」

「半端距離は駄目か?」

「見たら解るだろ」


「ああ、諸々被ってんな。ミールレスだったか?」

「お前は、ヴァンダリアだろう」


 クローゼの特定の確認を断定で返したミールレスの様相は、具現化した魔刃の二刀に、至獄色しごくいろ――黒紫色に類する――の具現化した魔装の鎧で身を堅め、偽紫色(フォースパープル)の魔力の障壁を纏う姿であった。


「ああ。……色々と受け入れないと行けないな、お互いに、本物は色も煌めきも輝きもないぞ」


御託(ごたく)はいい。来るなら来い」


「良いだろ。どの道やるんだ。奇襲しなかったので察しろよ。言っとくが、今の俺は半端なく強いぞ。殺るな全力でこいよ」


 クローゼの言葉に、ミールレスが僅かな動きを見せて「御託(ごたく)はいいと言った」の言葉と共に魔力を放つ仕草をする。


 それに、クローゼは「くたばれ!」を併せていた。


 偶発的な遭遇ではなく、奇襲でもない。クローゼとミールレスの対峙であった、となる。




ここ数話、殴り書きな書き急ぎで誤字脱字に色々と失礼致しました。相変わらずなのがもう。

次回は土日辺りな投稿になるかと思います。 勢いで……もなきにしもあらず。まあ、土日で。


色々失礼いたします。ありがとうございます。


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