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王国の盾~特異なる者。其れなりの物語~  作者: 白髭翁
第五章 王国の盾と魔解の王
135/204

十~守られる彼女と守る彼の……~

 三様な雰囲気があった王都 ロンドベルグ。それと対比する魔都 ユーベンを見れば、動き出す馬車らしきの場景があった。


 会場となった場所から、帰り行く複数のそれがみえている。当然、彼等の馬車――引いているのは、馬にも似た大人し目な魔獣のそれ――もあった。立ち並ぶ魔族のそれに、どちらかと言えば主催者側に近いアリッサが声を向けていた。


「ヒルデ様、お気をつけてお帰りください」


「ああ、よもや仕返しもないと思うが。それはそうとビアンカの使ったあれが、魔術と言うものか」


 歓談の中断から平静に戻るそれで、流れる鮮血のジニスにビアンカが施した治癒の力(ヒーリング)の事をヒルデは言っていた。


 その事に、軽い頷きを見せるアリッサにヒルデの興味が増している感じになった。


「便利な物だな。一体、『どう』やっているのだ」

「簡単には御説明できませんが、『魔動術式』に身体に流れる魔力を合わせて使います」


「我らも使えるか?」

治癒の力(ヒーリング)なら、難しいかと思います。それに」

「それに?」


「魔力発動は、普通になされるのであるいは……ですが、ヒルデ様方には、私はお教しえ出来ないので『使えるか』について、はっきりと申し上げる事が出来ません」


 簡単に言えば、彼女の流動に近い人狼は人智――アリッサ――の魔動術式を流用できる。ただ、アリッサにはヒルデら鬼魔族の魔体流動がわからない。


 要するに、試してみないと分からない……結果的に合わなければ調整出来ないので無理となる。


 アレックスに治癒の力(ヒーリング)を習う過程で「自身」の放出系へ変換調整の事は教えられたが、それが魔族全体に当てはまる物でもない。基本的に魔動術式は人の為にあるのが正解だった。


 ヴォルグ以下の人狼達の何名かは、魔動術式――強化の系の魔術――で身体(しんたい)強化の上積みをする。勿論、擬態を解いた――獣化したとも言う――状態でもだった。更に、彼と幾名かは打撃を伴う魔力発動も出来る


 アリッサは既にそうではないが、一般的に人智の認識で魔物近いとされる彼らは、威圧の咆哮(ソウルブレイク)以外の放出系が出来ないと思われていた。しかし、彼らはそれが出来たと言う事になる。


 一重にそれはビアンカの存在が大きい。魔動術式を試みる流れになって、彼女の隠れた才能が開花したと言えた。それは、彼女が人として生活していたのが影響していたのかもしれない。


 何と無く「出来ない」の説明にヒルデは納得を見せて、ヴォルグとノーガンが肘を打ち合う様子に気が付いた。……アリッサの言葉に返事を返す筈が、彼女を怪訝な瞳で誘っていた。


「二人は何がしたいのだ?」

「……さあ、なんでしょうか」


 彼らは互いに半身で、更に見える腕を掛け合う感じが明らかに滑稽な雰囲気を出していた。それに、彼女達の視線が向いていたと言う事になる。


「認めあう男と男の……何とかだそうです」

「ああ、……そうなのか」

「そう言う感じなのですね……」


 正面から、問いかけ聞いていたビアンカも凄いと思われるが、真顔で――男と男のあれだ的に――答えた彼等も些かである。フリーダの勧めで、頭を掻きながら軽く酒を飲んでいたのも、拍車を掛けたのだろう。それに、彼女達の若干な呆れが通っていた……



 ……御者も無しに馬車を動かして、「あの子達が待ってるからー」とカミラがその場を離れ……ザッシュの一団が慌てて追走する。そんな場面も挟んで、彼らは各々にその場を後にしていく。そんな様子が続いていた。


 屋敷の入り口辺りで行われた、如何にも魔族……らしからぬ感じが、死黒を冠する彼らにはあった。元々、フリーダのそれで、彼らも人智の様式に見慣れた感が有ったとは言ってもである。


 どちらかと言えば、彼らは魔族でも主流ではない。魔解での立ち位置も「辺境」な部類になり、種族意識が高い。その垣根を逆説的にアリッサが繋いでいたとも言えたのだろう。


「お疲れ様でした、アリッサ様。後は(わたくし)どもが致しますので、御当主様と御屋敷の方にお戻りください」


 視界には入っていたカルーラの言葉に、ご機嫌なヴォルグを僅かに入れて、アリッサは頷きを返していく。


「宜しくお願いします」


 単純で丁寧な返しに、美しい所作の一礼をつけていた。……アリッサは、明らかに演じている自分に心苦しさを受けているのを自覚する。「姉上に似てきた」と彼女はクローゼに言われた事を思い出して、らしい仕草がフェネ=ローラのそれである、と改めて返していた。


 ――今は辛くはないけど、先を考えると少しだけ……


 ヴォルグを促すビアンカの様子に、彼女は目が行きその光景を心で感じていた様であった。ほんの僅かな流れだった。その場景にも思いが交錯する。


 ――騙してる?……彼が好き? 彼も好き?


「少し変ね……私」


 ビアンカに諭される……いや、押し込まれる感でヴォルグの笑顔が見える。その後に馬車らしきから、アリッサの元にやってくるビアンカに聞こえない様……アリッサは呟きを出していた。


「アリッサ様、こちらに……」

「ええ」……簡単な返事に複雑な感情が伺える。


「アリッサ様、暫くは四人の内一人を警護に入れますので、宜しく願います」

「隊の方良いの」


「そうですね。いないと困りますけど、抜けるだけなら問題ありません」


 ビアンカの言う四人とは、ヴォルグの遊び相手として、フリーダがあてがった人狼のアッシュ、ザッシュ、ロッシュ、マッシュの事になる。――名付けは微妙にカルーラのそれがあるが、一応彼らの呼び名と自認は、良い意味で一致する。


 彼らの立場を言うなら、紫黒兵団の千人長なら分かりやすいだろう。……ビアンカの言葉で言えば、隊の運用自体は基本別で問題ない。ヴォルグと同じで「いる」事に意味がある部類になる。


 ヴォルグにとって、本当の意味で仲間は彼らになる。ザッシュもそうだが小さい刻から彼の相手をしている事もあって、「ずば抜けた人狼」のヴォルグ追従出来る数少ない人狼であった……。


 二人での会話で、彼女達の表情が若干緩くなる。


「正直に言えば、ヒルデ様の件で『物騒になりましたから』とヴォルグ様に言ったら……わかりますよね」

「ええ、『自分で』って言ったのよね」

「はい。なので、彼らには申し訳ないけれど……」

「そうじゃないと彼が納得しない、でしょ」

「はい、別の意味でヴォルグ様の代わりがきかないのは、この間の事で分かりましたから」

「そうね」


 ヴォルグの仕事の大半は、街を巡回する事になる。それで、魔族と人智の者の均衡を保っていた。区画は別になっているが、魔族達は普通に動き回る。生活の水準は別に、対となる魔解の側にも同じような環境はあった。


 ただ、秩序の点で大きく異なる、というのがあっただけである。それを魔王に紫黒兵団長にされたヴォルグが、所有者のフリーダの意向と言う形でバランスをとっていた。


「おい、まだか? で、帰るぞ」


 二人は、ヴォルグの馬車の窓から出した顔に其々を見せる。ただ、見た感じは好意だった。


 言動を伴い動き出す二人。先を行くビアンカの背中にアリッサは自責を見ていた。……結局の所、守られる側にいることにであった。


 ビアンカの申し訳ないは、カミラとカルーラに加えてアリッサの「警護にも」で、休息の問題であった。しかし、アリッサは魔王が出した言葉の意味で捉えていた。「主の主は主君か?」の問題で、彼らはヴォルグを取ると彼女は思っていたからになる。


「フリーダ様は知らない……」


 事の経緯を無視して、アリッサは敬称を呟いている事に違和感を持っていない。助けては貰ったが、ある意味でどちらも騙している事には自覚はあった。


 物語の転機に、後付けの事実で補完した「密命」の受け手だったクローゼが、フリーダとの遭遇の折り彼女に向けた「積極的に指示する」の言葉。


 支持では無く指示のそれ。全面的な信頼と配慮の結果になる。……その事を彼女は思っていた。遠くにある今はまだ想いの人を。それに守られている事もであった……



 その男クローゼ・ベルグ・ヴァンダリア・ヴルム=ヨルグは、向かった先の懸念を飛び越えて行く様を見せていた。屋敷の建屋の入りで出迎えた、伯爵令嬢となったドーラに驚きの表情をさせている。


「ちゃんと指の間も落とせよ」

「うるさい。ちゃんとやってるだろ」


 クローゼの視線の先には、竜の爪足(りゅうそく)を足底清掃用のマットで拭う光景があった。


「大体、何で唐突に竜人擬きになるんだよ」

「『擬き』ってお前、年が同じだからって俺に対する言動があれだぞ」

「兎に角、元に戻れよ。ああ……戻ったら裸か?」

「違うは! ……その辺りは大丈夫だ」


 続くクローゼの「じゃあ、戻れよ。何が大丈夫なんだ」の言葉よりも、イグシード・ヴァーニル――勇者たる彼はドーラの視線を気にしていた。


「もしかして、勇者様ですか?」

「そ、そうだ……が」


「だから戻れよ。性格変わってんだろ。二重人格かお前は」


 当たり前に随行しているユーリとヘルミーネの二人は顔を見合わせていた。簡単な儀礼所作から、一通り可笑しな流れをとりあえず、ドーラの促しで次に進んでいった。


 先導の執事のうしろで、案内をするドーラの背中を彼らが見る形に歩みが進んでいく。場所的に、あから様には前に出ないイグシードがクローゼに耳打ちをしていた。


「おい、彼女の名前は何て言うんだ」

「何だよいきなり」

「声が大きい、こっちの声で察しろよ」


 耳打ちから続く大きな声の重ね。当然注目が集まり歩みも止まる。


「面倒臭いなお前。……ドーラ、まず気は付けて。こいつが名前を教えて欲しいらしいから。二歩くらい下がってから自己紹介してやって」


「ドーラって言うのか……美しい」


 雰囲気がおかしい二人に、ドーラは本当に二歩程下がり、会釈を交えてイグシードに自身を名乗っていく。


「ドーラ=メルル・フロム・ベデスと申します。ドーラとお呼び下さい。以後お見知りおきを」


「声も綺麗だ……」とイグシードの半身竜人の格好に乗る顔が、抜けた表情でドーラを見つめていた。それに困惑をのせた、ドーラのたじろぎが見える。


「ユーリ何人目だ?」

「私の知る限り、ご令嬢で十一人目かと」


「ドーラ、彼女も『この視線』を向けられてたから、手当たり次第なんだよ。だから礼拝の時にでも、アウロラ様かコーデリア様に言いつけといて。……まあ、貴女(きみ)達が素敵なのは認めるけどね」


 ドーラの視線をヘルミーネに促して、クローゼの言葉が向いていた。見たままに苦笑いのドーラが、軽い頷きの後、何事も無かった様に身体を返していった。


 対魔王の件で、イグシードは転位型の魔装具を着けた。計画の為に、転位可能な場所を作るためクローゼに暫くの同行をする事になって……現在に至る。


 勿論「飛べるから必要ない」の後、三人でエルデダールに飛んでからは、イグシードは乗り気になっていた……


 扉が開き、クローゼがこの場所に来たのはその一環では無い。しかし、現状勇者はこの場にいた。


「何で勇者まであるのだ?」

「ちょっと話したら、この格好になった」


 タイランとマーリアに挨拶の所作を向けながら、クローゼは、自身に従属する彼女に声を返していた。彼の「自分は無関係だ」と言う感じに、マーリアが呆れた表情を優しく出していた。


「また、凄いこと……相変わらずと言った所ですねクローゼ・ベルグ」


 色々な意味で、クローゼを知る彼女は彼の移り変わりに客観的な見方を入れる事が出来る。言ってしまえば彼の知識の大半を彼女が作っていた。


 勿論、クロセのクローゼにも影響を与えている。ベッドのある書庫の蔵書の並びには、マーリアの返した意見が多くが入っていた。当然、フローラと机を並べていた頃は、教壇の上からそれを彼女は見ていたからになる。


 その感じで「良からぬ事を考えている」その雰囲気を彼女は察したのだろう。その言葉がタイランの怪訝を生んでいた。


「それで、竜伯爵(グレイブ・ヴルム)何用でお越しですか?」……わざわざ彼自身が来たのだから、それ相応の案件なのだろう。


 タイランは、恐らくその感じだった。当然に、何と無く察したその場景を形作る人達もそうであった。だだ、ゴルダルード帝国に列する者達の平静を装う雰囲気は、若干の微妙さの味付けをしていた。


「領主様。ごきげんよう」


 その場を切り裂くシエラの声……確かに彼女に取っては、クローゼ・ベルグは領主のままであった。それに甘い感じのタイランの表情が出て、微妙な空気感が入れ替わった。


「ああ、ご機嫌好うシエラ。……フリートヘルム殿もだな」


 クローゼは、軽く視線を言葉を向けられた順に流して、今一度マーリアに頷きを見せて用向きに話を合わせていく。……イグシードの動きを軽く制してだった。


「ベデス伯、フリートヘルム殿の隷属の鎖(スレーブチェイン)を解いて頂きたい。伺った用件はそれになります」


「ああ、竜伯爵には連絡が未だだったな。申し訳ない、既に解かれているのだ。その経緯と所見は書面にして出してある。戻られて多忙の御様子なのか、まだ陛下には伝わってないのだな」


「えっ、どういう事ですか」


「流石に、彼も一国の頂点にあった方だ。要するに私は越えられたと言う事だ。不確定な所は、陛下にも事前に伝えてある事だと思うが。……フリートヘルム殿も気付いていない様なので、伝えなければわからないと。一応、ベイカーかジーアにもう一度とも思ったのだが……彼は紳士だよ」


 タイランは、シエラの後ろに騎士の様相の彼を見ていた。


「結果的に、そうなったのなら事後報告と言う事で願いたい。経緯は分かっているつもりで、私的にはお預かりした大事な娘達もいる。その上での判断だと思って頂きたい」


 この人はここまで丸くなったのか、クローゼはそんな感じを持った。無論、頑張って声には出さなかったのだが。


「そう言う事なら、陛下とは向こうで話しただけなので……」そうタイラン向けて言葉を切り、ヘルミーネを軽く意識において、フリートヘルムに姿勢を正していく。


 それに、シエラの後ろに立つ白の騎士と言われた彼は、彼女に綺麗な動きて配慮してクローゼのそれに合わせる感じを見せた。


「フリートヘルム・ファング・レーヴァン騎士伯。ゴルダルード帝国皇帝、ライムント・ファング・ゴルダルードの名代として、申し伝える――」


 皇帝の名が出て、フリートヘルムは更に綺麗な所作で、片膝をついて顎を引いていた。彼の存在は知っていたヘルミーネも、囚われの彼に会うのは今日が始めてになる。――事前に聞いていた事なのだが、緊張が彼女にも見えていた。


「勅命である。――『究極の牙(エントリヒ・ファング)に復帰せよ』以上だ。……陛下から直接聞いた。事情はすべて話してある。その上だ。故にその様に現状を受け入れてほしい」


 僅かだが思考が挟まり、フリートヘルムのはっきりとしたそれに応える声がしていた。……一瞬、美しいかの場景に、手を叩く破裂音にも似た連続が唐突に起こっていた。


 それに確定の顔で、クローゼはウルジェラを見た。しかし、彼女は作り出した容姿にそぐわない腕を組む姿勢で、状況を見守っていた。


 そこから、泳ぐ感じに音を追ったクローゼの視線に、普通の様相の勇者が叩き合わせる手が見えた。別の意味で、イグシードに集まる周囲の意とシエラのキラキラとした「不思議?」のそれが見える。


「クローゼ・ベルグ殿。普段の使いの雰囲気ではなかった。どちらの感じが貴殿なのか興味があるところだ。何れにしても少し見直したよ。貴殿もやれば出来るのだな」

「その服、どっから出てきた?」


「先ほど大丈夫だといった筈だが。……彼女はウルジェラ殿だったな。聞いた限りでは彼女のそれと同じだよ。それよりも言葉使い何とかならないか、別人みたいだ」

「お前に言われたくないぞ。どの口が言うんだ」


「失敬だな、そんな酷い事は言っていない、と思うのだが。そんな言い方されると流石に――」

「だから、二重人格かお前は――」

「貴殿の方こ――」

「お前だ――」


 言い合いが距離感に影響した辺りで、マーリアの雰囲気が教壇に立つ感じに変わる。


「二人ともお止めなさい。何の話ですか、喧嘩なら王都の外でおやりなさい」


 会話の途中に、飛躍的な場所を提示されて、彼らはマーリアの若干動く眉毛をその目におさめる。そして、四つの丸を見せていた。確かに、周りから見ても、どっちもどっちで「何の話だ」である。


「マーリア。勇者があるのは知らんが『何の話だ』なら、その白い男の次の話しだろう」

「次のお話ですか」

「そうだ、階層を通ってその男の対価を回収する。その為に虚無なる無獄(ヴァニタス)を捕まえる、だろう」


 クローゼに向けられたウルジェラの表情に、タイランも興味を示していた。クローゼの頷きから、ウルジェラは視線を外してその興味に言葉を返していく。

「王命の件は詳しくは言えぬが、二人なら我から『そうではないか』は出るやも知れぬな。一応にここまでだがな」


「些か、疑問がありますな。流浪(ポーター)で成されるなら、貴女が代わりに取りに行かれると言う事ですか……。王より賜った案件の話の内では、人智の者では通る事は叶わぬと言われたのでは」


「そいつは通れる。流石に怪異なだけあって、特異なのだ。……因みに、勇者も通れるぞ。お前もそう思っているのだろう。クローゼ・ベルグ?」


 激しい動きでは無いが、確実にウルジェラは言葉通りの相手を見ていた。


「なら話は早い。隠れ家あるんだろ。とりあえずそこに連れていけよ。辺境区までは飛ぶから」


「臨時で代行。彼女達は承知か?」


 一瞬素知らぬ顔をするユーリに、「お前の事だ」の視線が刺さる。たじろぎなから、彼は「事後報告的な」のそれを返していた。


「なら駄目だな、それに百眼(オキュラス)も万能では無いゆえ「今」そこに居るのかわからぬぞ」


「駄目って何だよ。俺はお前の何だ? それに痕跡があれば辿れるんだろ。なら行くだけなら良いだろ」


「無理だな。お前の倫理観で判断すると……と言うよりも後で怒られるぞ、良いのか。……我は嫌だ」


 目的の虚無なる無獄(ヴァニタス)が、本来恐ろしい筈の獄属であるのが、霞んでいる様な二人の会話に、マーリアの諭しが向けらて「今直ぐ」な感じは終息した。


 流れの側面で、ゴルダルードの騎士達の軽い会話があったのを付け加えておく。


 そして、ある種の標的とされたヴァニタスは、同じ軸の流れで、ミールレスの指示を彼なりの解釈で「忠実」に実行しようとしていた。


 暗闇で、憤りを感じているオブラスと言う魔族に小さな欠片を示して、「獄魔の囁き」を向けていた。……とりあえず、拾った小さな神具の欠片を持って、壮大に吹かしていた。となる。




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