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王国の盾~特異なる者。其れなりの物語~  作者: 白髭翁
第四章 王国の盾と精霊の弓
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二十三~最後の懸念。クローゼの物語~

 遮るも物もない。その平原の様な場所で、鞭の様なしなりを見せて走る――そのヘルミーネが放った、魔力の刃が行き着いた先。その光景は……美しい立ち姿のレニエが、クローゼを見据える場景に繋がっていた。


 委細な経緯を振り返れば、鋭く伸びるヘルミーネの魔力の刃を、その騎兵が間髪な手綱捌きでかわして、ヘルミーネが――カレン・ランドールを思わせる――瞬間的な飛び出しに、その男が馬を捨て剣を合わせた光景からはじまった。


 ヘルミーネは、百何十メーグはあった距離を、数呼吸の間につめてそのまま連擊に移り、それを、その男……七つの剣士シエテ・エスグリミスタのレオン・イールギア・デル=ソルが受けたとなった。


 合わさった双方が驚愕を隠し、奮う剣で高速の音と火花を散らしていた。奇しくも共に、絶望的な刻を越えて信念と矜持を保とうとする、皇帝の牙と刃であった。――その光景に、クローゼは僅かに驚きを入れていた。


 ヘルミーネもレオンも一度は引いたそれで、相手が誰で有ろうとも、二度は無いと誓っていた。そして、合わせる剣で、目の前の相手がその狭間の域に有るのを理解していく。――気を抜けば折れる――その感覚を共有して剣を交えていた、となる。


 ただ、受けた刻からの経過、その違いがそこに亀裂を入れていく。ヘルミーネが絶望から流した汗と積み重ねた物が、レオンの身体に斬擊を浴びせていく。その瞬間、彼女の刃は魔力の防護で弾かれて、魔力の乗った声を彼女達は聞く事になった。


「止めろ! 間違いだ――」


 それは、対象防護(ターゲット)を連続発動したクローゼの大きく響き渡る声だった。突然の仲裁は、ウルジェラの「あれは人だな」の呟きにクローゼが咄嗟に取った行動であった。その響きは、引き絞る弓と遅れてきた馬蹄、その動きと音も奪って行った。


 その状況で距離を取り、その音に驚きと怪訝を見せる二人に、クローゼが複雑な感じをみせていた。


「……まて、俺のあれだ。……早とちりだ……」


 クローゼの声の先、その二人を呆然とさせた流れの結果が、レニエの眉を動かす事になった。その場面になる……


 ……それは既に、獄の入りが二極を残すになったのに併せて、彼らが野営から夜営の準備に入る場景の中で……起こっていた。当然、彼()とは、クローゼ達とノエリアの行動の結果の一軍となる。凡そ、半数近くを失ったパルデギアードの騎兵だった。一応の流れを経ての現状ではあった……


「……戦闘用意とは、突然なんですか! 」

「申し訳ありません」


「貴女は、大丈夫です。勝手な事をする様な人ではないですから。でも……クローゼ! 」


「なっ。……だけど、ウルジェラが――」


「我は知らん」


 レニエに見据えられる感じで、並ぶ三人にが各々の反応をしていた。当然、問いただされておるのはクローゼである。その彼は、既に「だって」の様相であった。


 そこで、矛先をクローゼに振られたウルジェラに、今度は、レニエの声が乗っていた。その表情は、真ん中のクローゼを通り過ぎた感じになっていた。


「ウルジェラ。 説明して頂けますか? 」


「我は、見たままを言ったまでだ。それを奴が早まったのだろう。故に我は知らん」


「何だよ。だったら始めに言えよ。勘違いするだろ。ウルジェラ、何が見たままだ」


「何故、我まで怒られねばならんのだ。我は関係ないぞ」


「何だと。お前、いい加減――」


 クローゼは、レニエの視線に言葉を詰まらせる。既に、周りは呆れた感じになっていた。そこに、羊皮紙の巻物で、手をポンポンとしていたベイカーが単純にレニエに声を掛ける。


「パルデギアードの皇女もお見えだ、レニエ殿もその位に……いや、あれだ……」


「クローゼ。怒りませんから、何があったのか教えてくれますか? ノエリア様にも、御説明申し上げまねばなりませんので」


 レニエの表情に、たじろぐ感じの雰囲気で何人かが囚われて……結局、説明をしたクローゼは、別の意味でレニエから追及されていく。


 当然、ノエリアには丁寧な口調のレニエが儀礼を尽くして、レオンの誤解――エルフの一団を魔族と思った――も含めて認識を共有してからであった。


「最近、様子がおかしいですよ。前にも増して、感情の起伏が激しい様に思います……」


「……以前から。……まあ、本人は気付いておらんぞ。レニエは、奴がどんな者か知ってあるのか」


「はぁ? ウルジェラ何言ってんだ。……と言うか、何でレニエだけ名前で、俺は『奴』とか『お前』なんだよ。大体な……」


 レニエの優しく、彼に向けられた顔が僅かに雲っていた。声を出したウルジェラもそれを見て取っていた。ただ、クローゼはレニエに何と無くの促しを受けるまで、気が付かなかったのであるが……


「なるほど。知ってあるのか……まあ、またの機会だな。……クローゼ。今度は正確に言うぞ。魔族の一団に連れられた、魔物集団が此方に向かってある。数はここの倍ほど。……何故分かるか? 百眼(オキュラス)だ。向こうも此方を見ている」


 先程の流れで、それが確実なのをその場は理解した。そして、一連の流れを見ていたノエリアが厳しい表情をしていた。


「恐らく、我々を追ってきた魔族。我らが時間を作るゆえ、この場は――」


「レニエ。今度は間違いない。やるぞ、良いな」


 クローゼは、ノエリアの言葉を遮って、レニエの表情をみてから、ノエリアに頷きを向けていく。


「勿論、我らも戦いますよ。……ヘルミーネ。今度は大丈夫だ。ユーリ、颶風の弓士(アルクス)の二人に用意をお願いしろ。……は良いけど。どうする? 」


「存分に。それに合わせて戦います」


「わかった。あと、ヘルミーネ、魔量充填(チャージ)をあるだけくれ。後、ロックするから、前に出てくれ。竜擊はレニエの護衛だ。……後は適応に」


 クローゼはレニエの声に、そこまで言って、ノエリアの表情を確認するように顔を向け直していた。それに、彼女は驚いた感じを見せていた。


「まあ、適当になさってください。定石ならですが、一軍の将、それも王族の方に申し上げることはありませんので」


「お前ら、の倍だ」


 一応に、適当な言葉通りのクローゼに、ウルジェラはその言葉をかけていた。唖然まで見えるノエリアは、容姿と言葉使いに開きのある彼女に、その点は同意の様で軽い促しをしていた。


「一万位か? ……魔王がいないのは確実だから、後は雑魚だろ。それに、レニエとエルフの戦士二千だ。負ける要素なんてないな。お前も適当にしとけ。とりあえず、これが試したい。ああ、ヘルミーネは無理しなくて良いけどな」


「試したい」の剣を抜いて、その刀身を返しなから、ウルジェラに視線を向ける事なくそんな雰囲気のクローゼだった。若干の不安が、クローゼにか関わる側に出ていたが、颶風の二人がレニエの元にきた辺りで落ち着きを見せていた。


 彼は、その様子を引きずったまま、ヘルミーネの指示で届けられた魔量充填(チャージ)を順調に消費していく。そして、思い立った様にレニエに顔を向けていた。既に、ノエリアは誰に、その疑問を向けて良いのか分からない顔をしていた。


「魔王の件、報告したか」


 レニエの頷きと、その手に持つ弓の名が、ガンドストラックであるのを彼は瞳に入れていた。そして、その後ろに、スキロとリプスの姿がレニエをこの場の「エルフの最上位」であるとの感じも、クローゼは受け取っていた……


 ……暫くの刻の流れを経て。


 クローゼは完全武装で魔装甲楯鱗(スケール)輝きを見せる――最大魔力魔量(フルチャージ)待機状態(アイドリング)――万全の体であった。


 そこに、迫り来る魔族と魔物の一団が、彼らの視界に入ってきた。その光景にクローゼの覇気が向けられていった。


「じゃあ、やるぞ」


 それと共に突き出した剣から、起動の呟きで放たれる竜硬弾。――それが、増幅された魔力で空間を裂く様に、今までと比べ物にならない速度と距離を見せて、着弾点の場景を一団ごと吹き飛ばしていた。


 それは、対物魔衝撃筒アンチマテリアルライフルのそれを凌ぐ威力に見えた。



 その光景を、ノエリアは、定石に自軍騎兵を両翼に置いた、その右翼で見ることになる。 ただ、本来なら、壁となる前衛があっての物であった。それを踏まえて、「敢えて」クローゼの適当(ことば)に合わせていた。


 続けざまに見る驚愕は、その前衛部分の「支えと崩し」を全て、クローゼが一人で行うその場景であった。――明らかに、あり得ない距離を発光から残光に移動し、敵との距離を詰めて、その前衛とも言える集団を止めていた。その映る様になる。


 一応は、先程レオンと対等以上に渡り合ったあの彼女が、時折、馬上からその魔力の刃で支援はしていた……。


 魔方陣らしき輝きが「万の数」相応の長さを持つ敵の集団の前進を止めている。そして、中心部で放たれる――破裂音を伴う何かで魔族や魔物を吹き飛ばしていた。……その場景が合わさっていく。


 また、近付くそれらを撃ち抜いて、連続の煌めきを魅せる魔方陣らしきで、魔族の武力と魔力の行使を「防ぎ、弾き、返し、切り裂き、消し去っていく」その一連が、ノエリアの瞳には映っていた。


 更に、ノエリアの視界の外側から、視線先の混乱に前進したエルフの一斉に引かれた弓が襲い掛かる。既に、騎兵の出番すらなくなった。その感情が、彼女を通り過ぎていた。それが、黒い煌めきに意識を向けさせていく。


 ――魔術師か? いや、魔導師か?


 だが、そのノエリアの思考は、そのまま彼女自身が否定する。恐らくクローゼの足下には、魔解部衆を名乗り多くの自軍を葬った。 レオンと「比類するか? 」の魔族らしきの屍が数体……勿論、その他と共に切り伏せられていた。


 そして、降り注ぐ多数の矢――恵風の精霊使いの射手(シルク・ガンドアルク)の奏でる精霊の弓(エレメンタルボウ)ガンドストラック――その最後の一撃で……その場は終演を見せていた……


 追撃にきた魔解の者の終焉がそこにあった。獄の入りに近付き射し込む光。それに映し出される、角度で変わり輝く煌めきを伴った黒の六楯(クロージュ)の双剣の姿。それに、向けるノエリアの気持ちは「畏怖」であった。


 雰囲気を変えて、血糊を払う青色の飛沫。その双剣の振り返る様相は、レオン・イールギヤ・デル=ソルの受けた印象では「異質」であった。若干被るあの光景を踏まえてであった。


 ――恐らく、剣では後れは取らない……が、もしも、なら。懸けた命の向こう側まで見えるのだろうな。それでも、……引く事は出来ないけれど……。


 その黒の六楯(クロージュ)の歩く感じに、馬体を合わせて「乗られますか」のヘルミーネに「直ぐそこだ歩く」とクローゼの返し……彼女は掛ける言葉を探していた。


 この随行で、ヘルミーネの仕事の主は、レイナードやカレン・ランドールの代わりであった。……眠りから覚めて、身体を整えてから続けられるクローゼの飽くなき努力。おおよそ決まった刻に僅かでも、行うそれであった。


 ヘルミーネには、今でもわだかまりはあった。加えて、彼の女性に対する言動がまだ、馴染めない所は、彼女自身が実感している事だろう。


「レイナードに、何回負けたかわからない。後、ちょっとと思うと出して来る。まあ、それが才能の差なんだろうな。何とかは何かを隠すって……」


「あいつは数えてるけどな」と続けられたそれは、ヘルミーネが流れを確認する素のクローゼと剣を合わせた時に、彼がそう言っていた事だった。


 その事とは別にしても、彼女も彼に「全力でこい」と言われなければ、加減が必要であった。それは、彼女の慢心ではなく事実になる。ただし、先程のクローゼには、絶対に勝てないと自覚が彼女にはあった。――心折れるではなく、素直な気持ちである。


「……どうだった? 俺は強かったか? 」


「クローゼ様は、受ける動きが、今の所相性が宜しいかと。御会いしたばかりの頃とは剣筋に無駄がなく、少し鋭く変わられた気がします」


「お前……いや、君が言うなら、信じとくよ」


「呼び名はお好きな様に。強かったと思います」


「そうか……」


 この時のクローゼの心境は「如何なるか」である。これが、偶発的なのかは捨て置き、目の前状況に無理を通して強気な態度を取った。その事実は、彼に取って「折れる心を繋ぎ止める何か」を見ようとしたのだろう。


 そして、煽って利用した感の強い、パルデギアードの当事者を目の当たりにして、その惨状とも言える結果に、心情穏やかではなかったのも事実であった。それは、彼の心情を探るまでもなかったといえる……。


 一応に歩き、レニエがクローゼに穏やかさを向ける中、大方が当たり前の感じに向ける視線に、パルデギアードの側は驚き以外にない顔をしていた。その雰囲気をウルジェラが、かけた声で一変させる。


「それほど怪異でも、魔王に勝てぬは難儀――」


 見るからに、恐ろしく強い光景を見せられて、レオン……いや、クローゼの認識もであるが、それ「以外」には、光が見えた所でその言葉であった。


 ただ、ウルジェラの意図と言葉が終わる前に、唐突にクローゼがウルジェラの首輪を掴んで、その腹に拳を叩き突けていた。――抜ける衝撃と圧力で、ウルジェラの鮮血はじける悶絶の光景がその場に通っいった。それが、その場に絶句を呼んていた。


「クローゼ! お止めなさい」


 それを破るレニエの声。――その状況で、何と無くウルジェラの口角が上がったのに、クローゼの二発の動作が見えて、レニエの言葉とヘルミーネの僅かな動きが重なった。それで、辛うじて彼は止まっていた。


「黙れ、お前は」


「……何を、怒ってある」


 掴み上げる感じに、ウルジェラの顔と声に向けているクローゼは、そこで、ヘルミーネの微かに揺れる手が掛かっているのに気が付いた。


 ――何怒ってんだ……俺?


 そう思い、クローゼはウルジェラを離していく。その彼女が崩れるのを、ヘルミーネが支えに入ったのを見下ろす感じで立っていた。


 その固まる感じの雰囲気で、唇を拭うウルジェラがレニエに顔を向けていた。


「いつ刻から、おかしいか分からぬ。レニエ、……奴が何者か知るなら、(わか)らぬでもあるまい。……奴の意に反する故、 この場では言えんが」


「良いぞ。言っても……その方が、可能性がつたわる。レニエ良いな」


 そのクローゼには、レニエは難しい顔をした。それにノエリアは当然な感じに配慮を示す。既に、彼女は、驚きの類いは押させえ込んでいた。話の先はレニエであると認識にあるようだった。


「込み入った事情なら、我らは夜営の準備にもどる。先々の件もあるゆえ、心苦しいが後程時間を頂きたい」


 ノエリアの声にレニエが頷きを返して、ウルジェラの言葉を聞く雰囲気を作り出した。レニエの一応の指示の後にである。


 何か言いたげな、ベイカーを立ち会いにクローゼとレニエとウルジェラが言葉を交わす場が出来ていた。形式的にヘルミーネは護衛の体で、ユーリは何故か辞退していた。


 クローゼに関する、認識の共有が成されて、「特異なる者」の見解出ていた。――魔王の魔力を持った、六つ守護者を持つ存在――


「言わば、魔力の矛盾で、不安定なお前が出てある。同義の相反の糾合に、入れ替わったお前がついて行けておらん」


 若干、引っ掛かる感じの雰囲気をクローゼは見せたが、その事自体が分からないの結論を求めていった。


「だから、何だよ」


「人智の身体に、魔解の魔力がある。魔力は同じだが異なる物。『極なる守護者が獄なる魔力』を持った。その相反の同居が、異質なお前の意識体を揺らしておる」


「分かる様に言えよ」


「お前の魔力は魔王(かみのこ)と同じ。このまま増大すれば、真名のお前(おまえじしん)が食われるぞ。だ」


「魔王級では無くて、魔王、その魔力(もの)だったのか……」


 ベイカーの言葉が唐突に挟まり、クローゼの思考が内向きになった。ウルジェラの言葉で、どこまで知られているのかと彼は額に手を当てていた……。


 暫く、彼はその事に囚われて、その場の会話が三人で進められていた。それをクローゼは何と無く、音として聞く事に至っていく。


 彼が聞いていた、ベイカーとウルジェラの会話の部分で言えば、クローゼについて、魔力発動による過剰な魔力魔量の消費があり、その揺り戻しで、本来なら同一であるそれが増大した。


 本当なら、過度に干渉できない守護者の意識体の様なものが、加護の様な物を越えてクローゼ自身の意識に干渉している。勿論、クローゼ自身、クロセのクローゼになるが、人智で魔解の魔力を持つので、その影響が振れやすい。


 そして、これまで経緯で意識が好戦的になって行ったという事になる。元々変わり身が常の彼が、善悪では無く「力に寄る」側に意識が行っている。となる。


「……ままの流れなら、この神具の欠片を奴は欲するだろう。それに我は逆らえん。と言う事だ」


 ウルジェラの言葉を向けられた、レニエは難しい顔を見せていた。無論、ベイカーもそんな感じになっていた。


「だが、奴は魔王を倒す為に、……いや、誰かを守る為に、これからも魔力を使うのだろう。奴の性質上、揺れ戻しの増大は避けられん」


「もしも、クローゼがそれを使ったらどうなりますか 」


「五体を持った、極光風の精霊(シルヴェルスト)と言えば、レニエには分かりやすいだろう」


 それに、驚きと疑念が混じった、レニエらしくない顔を見せてウルジェラの次の言葉て理解した。


「そんな存在が、力の論理で動くのは、最早『魔王』以外の何者でもない。それも、人智も魔解も関係無い――」


「神具の欠片なんか使うかよ」


 突然、クローゼは、現実世界の住人に戻ってウルジェラに、否定の言葉投げた。勿論、そのまま疑問を向ける為である。


 ――こいつ、俺の記憶、何処まで持ってたんだ。


「既に、影響下だぞ」


「はっ。そんな訳あるか。使って無いし」


「黒くなった宝石に覚えがないか? それは神具の欠片だぞ。お前……その女……だか分からん。ただ、その女は、神具の欠片を使える者だ。それ故だ」


「……あるけど。何でお前がそんな……」


「素直は良いぞ。『受け入れろ』でほぼ全部とは、驚きを通り越して呆れるぞ」


 明らかに、表情を作って見せてウルジェラは、「大丈夫だ我はお前の従属者だ」と付け加えていた。恐らく衝撃的な事なのだろう。クローゼの記憶の始まりに、その光景があったのだった。


 その後に、ウルジェラがレニエとベイカーに自身の欠片に対する制約の追加を、当然の様にクローゼを交えて進めていた。


「獄属って、悪魔じゃないのか」


「フリートヘルムという、あの白い男は『悪』だったか? 」


「いや、違うな……多分視点が違うだけだ」


「では、あの刻、そこの女に取ってお前は善だったか? 」


 話の流れに反応するヘルミーネの事をクローゼは当然感じていた。


「いや、絶対的な悪だよ。……帝国から見たら」


「それで、今の我は悪か……レニエどうだ? 」


 向けられた、ウルジェラの言葉に小さくであるが、否定をレニエは示していた。それが、クローゼの印象を決定付ける。


「お前は、悪ではないな」


「純潔の名で、人を捨て置く極の眷属もある。お前の屋敷にいった獄の眷属もある。色々だ」


 クローゼの表情を楽しむかの様に、ウルジェラの言葉が彼の心についていた。


「我には刻がある。暫し付き合ってやる。感謝しろ。……いや、程ほどにな」


 淫靡なる夢獄(ウルジェラ)は、クローゼの顔に若干の困惑……その気持ちのままの顔を見せていた。


 ――まあ、何とかなるだろ。


 ここに、来て特異(いつも)のノープランである。



四章終幕になります。五章は『王国の盾と魔解の王』の予定です。以後、投稿のペースを落として、修正作業を致します。その点は御理解ねがいます。


……かなり大幅に、初めの方の仕様を変えますが、ストーリーに影響無いようするので、適時対応ねがいます。


ネタバレ的には、勇者とか、ドラゴンとか、ガトリング砲!? とか……残り二つの楯とか……。


魔族と魔物の辺りも……です。


タイトルは変えたい所です。米国の……とか、後あれで。


よろしくお願い致します。ありがとうございます。



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