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王国の盾~特異なる者。其れなりの物語~  作者: 白髭翁
第四章 王国の盾と精霊の弓
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十八~極光樹の地。龍装対魔装~

 極光樹の地(アースヘイム)に突如として現れた、龍装神具を(まと)った神の眷属。その真意は、その場の者には分かる筈もなかった。ただ、エルフなる者達には、それが握る弓が精霊の弓「ガンドストラック」であることは理解出来ていた様に見える。


 もし明言するなら彼女は、探求を司る流浪の・(クァーアラム)の吐息から生まれたそれであった。その点から、彼女のそれは正しい。


 天なる・の派生である神々は、元々、具現化出来る「五体」を持っていた。それが、天での戦いによって、その「五体」を失いそれが隔てとなり終焉をみせる。


 その(むくろ)に、重なる龍装神具の残骸を見た天なる・が、極神 探求を司る流浪の・(クァーアラム)六体(りゅうたい)――五体では無くそれを超える点。または、その極神の我(かみのいしき)――にその憂いを告げて、その吐息……ため息を呼んだ。――その憂いとは暴走である――


 憂いが吐息を呼んで、神の意(かみのいと)無く彼ら極属は産み()でて、その流れの結果、彼等は明確な神の意(かみのいと)無き「龍装神具」の探索者となる。


 それは、智や解では計り知れぬ程の刻を(さかのぼ)り、その神々の争いの終焉を僅かに過ぎた頃の出来事であった。


  ただ、神々の五体を砕く程の争いで、神々が纏いしそれが原型を留める訳もなく……憂いは稀有(けう)と言えた。そして、彼ら極属は永劫の刻の流れの中で、ひたすら龍装神具を探し……欠片を集める事になる。


 その時の刻みに、稀有(けう)な憂いでも尚それを封じるが故に、天なる・が多重な階層と深層を作り、天極と天獄の間の世界(ドラゴニアード)が生まれる。それが永遠を刻んで多重を作り、人智と魔解の派生に繋がる。


 しかし、その最中であっても、宛もなく彼等が受け継いだ力のそれ。流浪(ポーター)――複層開く扉――と、百眼(オキュラス)――見探す多眼――で囲いも渡り更に刻みを深める。その不毛な刻みで、時に人智に触れ魔解を会し、模した神具を作り終着への渇望を満たして……極の派生的眷属を受け入れていた。


 だが、その続く流れで、獄神の六体(りゅうたい)に触れた彼等のその過半が、天獄の側に落ちる。そして、彼等らは獄属となった。時折、触れし人智と魔解に痕跡を残しながら……である。


 触れた獄の六体(りゅうたい)に彩られその力を継ぎ足し、自己の満足に欠片で(おご)たかぶる者、虚無(きょむ)(おこた)り欠片を放棄する者、淫欲に溺れ欠片を色染める者……


 ……この三様は、クローゼが今知る内の傲然たる豪獄(アロギャン)と虚無なる無獄ヴァニタスになり、そして、目の前のそれが 淫靡なる夢獄(ウルジェラ)である。


 ――龍装神具を纏った神の眷属――


 クローゼの現状の認識が、彼女を獄属の淫靡なる夢獄(ウルジェラ)であるのを断定し、その断定には、疑いを持っていなかった。繋ぎ合わせた情報と知識が、それをそうさせていく。


 しかし、「外装(がわ)」は? である。――颶風の弓士が、威圧の声をはねのけて、再び、引き絞り飛び上がるのを見てクローゼはそう考えていた。


 今度は四人のそれに、何故かクローゼに視線を送ったまま見据えるウルジェラ。その意とは関係無く、自動発揮されるが如く、颶風らを迎撃する「鋭く伸びる突起」を、その龍装甲といった神具らしきが見せていた。無論、クローゼもそれを視線に外すこと無くみていた。


 ――龍装の神具と同様ね。……なるほど、あれが原型的な奴か。


 至って冷静な彼の思考が、納得を見せていた。それは、朧気(おぼろげ)な確信を不明瞭な否定が中から出て来なかった為になる。


 彼の視界には、颶風の弓士らが作り出した瞬間の思考の流れまでで、高い場のエルフ達は既に逃げ去っていた。それが、感覚で見えていた。勿論、横たわるアルフの子らのそれを連れて……生死の如何にか関わらずではあるが。


 その高い場を見た。降り行く、スキロ=デュシスが片手て居並ぶ塊に合図を送っていた。それに、あの戦士が答える。――「放て」の声らしきそれで、相対的距離を詰めていた一団から、一斉に矢が飛び出してきた。


 小さな的に向かったそれは無数であったが、正確な軌道で重なりもせずに目標を捉えていた。それが「エルフの一矢」を納得させるもので、あの戦士のそれが表情に自負として出ていた。しかし、それは一瞬の弦の奏で覆される。


 それは、具現した精霊の矢がそれを全て撃ち抜く光景であった。愕然とする戦士と見上げる彼等の驚きの表情が、クローゼの視界に入っていた。


 ――今日はやけに調子が良い。


 どこか他人事なクローゼの思考に、続く光景が押し込まれる。再びの奏でが精霊の矢を見せて、先程の戦士の一団に向かって飛翔していた。――躊躇すれば、恐らく届くそれに、クローゼは輝きを連ねる魔方陣を閃光の様に併せていった。


 ――それで、砕ける魔方陣の煌めきと力無く落ちる精霊の矢が、場景に色彩を付け加えていた。そして、一団の戦士と複数の颶風にそれを見せて、その視線をクローゼにむけさていた。


 一瞬の視線の動きで、クローゼはそれ見てウルジェラの動きに意識を向ける。その先には、僅かに見える妖艶で悪魔の顔に、苛立ちをつけているように見えた。


 ――途中で加速しないのな。まあ、一瞬で届くから関係ないのか。それはあれだが……厄介だな、遠距離から近距離まで隙がない。どうする。


 要するに、自身と同じそれ……遠距離を竜硬弾のそれで、近距離を対物衝撃盾(シールド)対魔力防壁(ウォール)という二つの盾で守る。その様相であった。彼自身か隙がないと思っているかは別に、その状態が、彼の自信であるのは間違いない。


 思考の間も場景は流れていく。意を決した颶風の弓士(アルクス)の四人が、バルコニーの場に立ち「刺さるなら、抜ける」と言わんばかりに近距離から引く弓に力を込めていた。


 定量の数らしきで、突き出し伸びるウルジェラのそれをぎりぎりで交わしながら、何度か矢を打ち立てる。


「この距離でも駄目なの」

「これ以上は近付けん」


「顔を狙え」

「さっきからやってます。突然閉まって――」


 絶え間なく突き出してくるそれを交わしながら、カルデ=エリスの声にレアス=アナドの否定が見えて、スキロ=デュシスの回答にリプス=ゼファーか無理と投げ返していた。


 位置的に死角を含むその状況。必死の様相のそれを、クローゼの側で見るラルフとカルエは……呆然と眺めていた。


「彼らが駄目なら、俺の弓では……」


「なら、精霊魔法でやってみれば良い」


 ラルフの呟きを拾い、クローゼは当たり前を向けていく。しかし、ラルフの顔に無力感が出ていた。


「暫くはこれない。ここに来るのに酷使した」


 ――馬鹿なのか お前は?


「言われても仕方ない。こんな風になるとは思わなかった……」


 しおらしい態度に、クローゼは軽く口元に意識を向けてから、反対のカルエをみていく。それに、察したのか彼女も声を向けてきた。


「ええ、彼等は、私と同等の力を『あの矢』にのせています。ですから、恐らくは……」


 そう言って顔をす伏せていく。――なら、レニエを呼んでもあれなのか……


 グランザの「暴れるのはなしだ」の為に、恐らくクローゼは自重して迎撃に意識を向けてはいたが、エルフ達の奮闘を見て、やる気になっていた。勿論、表の顔にはではしないが。


 当然、ある種の自信があった。……いや、それは、ジーアの魔改造の操作可能型自動防護式アクティブプロテクションを全力で試したいと言った所かもしれない。そして、その状況は否応なしにやってくる。


 バルコニーの場で、太ももを貫かれたカルデを庇い、レアスも肩口を貫かれて二人は距離を取ってさがる。それを、援護に回ったスキロも隙ができてそれが頬を掠めていた。リプスの多射で後退の間を作り出し、彼らはバルコニーを諦めてラルフのもとにもどってきた。


「離れれば、『精霊の弓』が来る。気を付けろ」


 スキロが視線を上に向けて、そう、その場に声を通した。しかし、それに答えれるのは、リプス=ゼファーだけであろう。後は、手負いと喪失であった。


 それをウルジェラはゆっくりとバルコニーの場の縁まで歩き眼下に眺める視線で見ていた。


 ――ふっ、この程度で龍装甲(これ)を使わされるとは。


 決してこの程度ではないが、龍装甲を破る事が、「敵わない」だけだったと思われる。


 それを見上げるクローゼは、仮面の中であの顔になっていた。勿論、余裕などない。当然、ウルジェラが弱いとも思っていなかった。ただ、中身は脆いのだろうと妙な確信があっただけである。


「ウルジェラ。お前は、眷属神より強いのか? 」


 ゆっくりとした、何時ものクローゼのペースだろう。よく通る声で、当たり前にそんな事を聞いていた。聞かれたウルジェラも、ゆっくりとその声に意識を向けていく。


「そんな事を聞いてどうする」


「いや、より強いなら、逃げようかと思ってな」


「ふっ。逃げようとは。……『強いか』など我には分からぬ。ただ、元は同じよ」


「なら、俺を倒せたら、お前の方が強いぞ」


 クローゼの言葉に、ウルジェラの口角が僅かに上がった。彼の仮面の中はよく言って「半笑い」である。……ある意味これは、才能なのかも知れない。特異なる者の資質なのか、そうであったがゆえ特異なる者なのかわからないが、この流れでこれが成立するのは普通では考えられない。


「ならば、掛かって来るがよい。……クロージュだな。お前は」


 ウルジェラから、場に向けられた声の先。そのクローゼに、注がれていた視線に動揺が走っていた。エルフ達の目の前、得体知れない魔術師らしきの者。その者の名が、敵と見なした相手から出てきた。その事にである。


「ああっ。ちょっと待ってろ」


 軽い口調でクローゼが答えると、ウルジェラは本格的に笑う顔をする。暫く、いや、永劫の刻みに忘れた――面白い――だった様である。


 クローゼは、それを気にすることも無く双剣を鞘におさめて、コートの内側から、魔量充填(チャージ)を両手で持ちそのまま二本を使う。そして、続け様に更に二本追加して、「こんなもんか」と余裕な感じをみせていた。


 そして、声をころして……悟られぬ様慎重にウルジェラへ視線を向けたままカルエに意識をやった。


「カルエ。俺をあいつに飛ばせ」


「えっ」


「説明してる暇はない。合図をしたら頼む。……それから、兵は引かせろ。守る余裕もない。兎に角あれを止める」


 呼び捨てた、クローゼの有無を言わさぬ雰囲気が、颶風の弓士(アルクス)達やラルフでさえ反論を出来ぬ感じになっていた。


「勝算は? 」


「神具には縁があって、眷属神を切った事も、自身を貫かれた事もある。その上で、秘密兵器がある」


 スキロの問いに、クローゼが向けた言葉を、その場が理解出来たかとは別に、カルエは自身より遥かに若い男の言葉を受け入れた。


「いつでも、かまいません」


 そうカルエは答えを返して、詠唱を始めていく。それに併せて、クローゼも強制的に動く様にした流動を魔法の補助によって、イメージとして併せていった。


 受けて立つ感じのウルジェラが、微かに動いた瞬間にクローゼの合図がして、カルエの魔法が彼を包んでいた。そして、高速とも言える勢いで、彼はそれなりの距離を飛翔する。


 その瞬間に、彼の姿が黒から灰色がかる銀に変わり、金色のきらめきをも併せて見せていた。


 そのままの勢いで、直線的に飛ぶクローゼに当然の突起が襲い掛かる。直線で突く様に伸びるそれが三本、クローゼの心臓(コア)付近を狙っていた。――迎撃する、彼の自動発揮される魔方陣。それを、無理矢理突き通して迫ってくる。その状況では、避ける事など出来る筈もなかった。


 そのまま、それをクローゼは受ける。相対的な条件で突き抜けてもおかしくないそれを、彼は砕いて見せた。――黒の六楯(クロージュ)に使われる極鉱石(リミットタイト)が如何に硬かろうが、出されたそれは、神具の欠片である。出来る筈は無かったのだが……


 だが、現実は――それを砕いて折り、勢いのままクローゼはウルジェラに掴み掛かり、その仮面を、彼女の驚きを伴う表情向けていく。そして呟いた。


「精霊の弓の方が、可能性があったぞ――」


 言葉が終わる前に、クローゼの拳がウルジェラの兜の様な龍装甲に覆われた顔を捉えていた。ただ、そのまま、龍装を殴っても効果があるかは疑問である。


 しかし、クローゼの拳は「小形で鱗の様な小片」に覆われて、その強度を増していた。そして、ギリギリのタイミングで盾魔方陣を展開し、掴んだままで、反発の衝撃をもその内部に伝えていた。


 だが、龍装甲が発揮する鋭いそれで、次の瞬間クローゼも弾かれていた。魔方陣を魔力発動に向けた為に、もろにそれを受けて飛ばされたとなる。


 殴られたウルジェラは、顔にに衝撃を受けてアロギャン同様に鮮血を見せた。龍装甲のそこは砕け、片膝をついて崩れていく。その口から見せる鮮血は赤色をしている。それが、彼女が此方側であったのを示していた。


 そして、彼女は両手をついて項垂れていく。そして、暫くの混迷をさ迷っていた。僅かであるが確実に。そして、それを戻した時には、相手をウルジェラは見上げる事になる。


 上を向く感じのそこには、巨大樹の空間に開けたこの場に差し込む光の加減で、黒の六楯(クロージュ)の黒が銀から金色の煌めきを見せる。そんな、クローゼの立ち姿があった。ウルジェラは、その傷ひとつないその姿に怪訝さをみせる。


 ――如何に、欠片と言えども神具。永劫で重ねた魔力であわせた……それと同等かなのか?


「何だ。 お前は? 」


「魔解剣士とでもしておこうか」


 殴っておいて剣士でもないが、本人は真顔て言っていた。無論、仮面で表情は分かりはしない。そして、その言葉通りに双剣を抜く。


 一応に、様似はなっているその容姿は、黒の六循クロージュの身体の部分を小形(こがた)な鱗が覆っている。言わば「小形な鱗の鎧(スケイルメイル)」の構造をしていた、となる。


 それは、操作可能型自動防護式アクティブプロテクションの四つ目。――魔装甲楯麟(スケール)――である。勿論、ジーア渾身の「魔改造」の結果になる。クローゼの魔力凝縮して実体化する。それを可視化して――造形を整え、輝きを見せて――いるのは、彼女の趣味であるが……。


 クローゼの知識で鮫の肌の様な構造、そして、そのまま、それの歯の様に砕けれは後から再生する。鋭い盾の集合体。見た目には、色が変化する黒の六楯(クロージュ)であった。


 龍装神具を模した、龍装甲の突き抜こうとする様を砕いたそれが、どれ程なのかと言えば……。デュールヴァルドの一撃を受けて、踏ん張った為にクローゼは嘔吐した。と言えば分かりやすい。――躊躇するカレンから、レイナードに変わり、淡々とした彼の一振りであった。


 それほどの彼の魔力と彼女の魔動術式になる。黒の六楯(クロージュ)の装備にクローゼの魔力を通して具現化する特殊な装甲、連結再生する小形の盾の集合体になる。


 そして、空域を制する不可侵領域(フィールド)は、他の二つのを同時に使えないが、魔装甲楯麟(スケール)はそれを可能にする。勿論、不可侵領域(フィールド)も発動可能であり、これが、彼の言う「秘密兵器」になる……


 ……至って真面目に「魔解剣士」と名乗ったクローゼは、今までに無く集中していた。彼にとってその言葉すらどうでも良い感じであった。相手が神の眷属なら、その類いは二度目になる。そして、色々と含む……獄属であった。


 大きく呼吸をして、クローゼは集中力を高めて崩れた感じのままのウルジェラに向かった。カレンなら一息な距離を彼は駆けた。龍装甲から発揮されるその軌道がクローゼには迫る、今度はそれに対して空間防護(スペース)を斜めに当てて軌道を反らし距離を詰めていく。


 意識と視覚は御せていた。それは、恐らく唐突な覚醒に繋がる道かもしれない。


 続けざまに繰り出される、龍装甲の突くそれは、近付けば刺すに変わっていった。速さの増したそれは、自動発揮と、魔装甲楯麟(スケール)の硬度で対処出来ていた。


 ――とりあえず、どう剥ぐか……


 クローゼの目にはゆっくりと見えるそれも、端から見れば、連続の輝きと煌めきに、突き刺されるクローゼの音が、ウルジェラを追いかけるの構図になる。


 そのクローゼは、時折蹴りを入れ、竜硬弾を近距離で放ち剣の痺れを感じていた。……現実的に考えれは、ウルジェラが下がる必要はないかもしれない。しかし、クローゼのその意図が、あからさまに「繋ぎ目を狙う」が見えていた。


 砕けた顔の龍装甲に掛かる手を、ウルジェラは離す事が出来ない。そして頭には――止まって先程のを受けてはならないと。そんな思考に……そして、手放してしまった精霊の弓とは遠ざかるばかりである。


 ……ただ、目の前に迫るクローゼにも、ウルジェラは十分打撃をあたえていた。――それでも、ウルジェラは留まる事が出来なかった。……遅い足で下がる事しかである。


 迫り行くクローゼは、何故か淡々としていた。自身も、何ヵ所かは打撃として身体に到達して、クチから流れる温かさを感じながらである。


 ――流石に、神具だな……魔方陣じゃ止まらない。追いかけてるから、突かれると意外と痛い。


「刺さるよりましか」


 追いかけながら、絶え間なく攻防をして、クローゼはウルジェラを観察していた。それは、その繋ぎの基点らしきを探し狙っていたとなる。当然、心臓(コア)辺りのそれであるが、ウルジェラの顔を隠す手が邪魔だった、となる。


 短いながらも不毛な展開。クローゼのいつもの感じになる。防御に変重している彼は……結局の所決め手に欠けるのである……


「下がれ。一旦、動きを止めてやる」


 その時間に割って入る、クローゼが戦闘型魔導師と呼んだベイカーの声がした。それにクローゼはあからさまに振り替える。追い足が止まりウルジェラが距離を取った。そして、向いた流れの光景がクローゼに入る。


 そこには既に、魔方陣を展開したベイカーの姿が……。


「クローゼ・ヘルグ。避けろよ」

「はぁ? 」

極限なる破壊の力(デストラクション)


 避けろと言うベイカーの声がクローゼに届き、そのまま魔力を乗せた明確な起動の呪文が、クローゼに聞こえて、あの時の黒点のそれが発動するのが見えた。


 ――避けろってか、おっさん。いきなり全力かよ。


 そして、ここで彼は、勇傑なりを御すに至る。その僅か一瞬で空間防護(スペース)を展開し、それに対物衝撃盾(シールド)の衝撃を当てて横に避ける様に飛んで見せた。


 クローゼは、それで幾ばくか後退し、崩れた体制で顔を上げる。その目の前を黒い魔力が通り過ぎ、龍装甲のそれがその後から伸びていた。


 交錯するその瞬間を、クローゼは、勇傑なりを通して見ていた、であった。




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