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王国の盾~特異なる者。其れなりの物語~  作者: 白髭翁
第四章 王国の盾と精霊の弓
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七~力強き者。強者は強者たれ~

 権力――他者を支配し従わせる力。支配する者がその力を背景として、支配下の者に加える強制力。純粋な力や魔力に組織。集団としての武力。また、富や地位。それが支配者の力になる。


 それを持って、クローゼは権力者は強さを集めたがると考えたのである。ただ、彼が出会ったそれらは、決して強制で『そう』あった訳ではない。彼自身が、良く分かっていた事ではある。


 そして、クローゼも、若干の自覚が有るように権力者であった。だだ、自分自身で何故か、鉄の国最強戦士と試合っていたのではあるが……。




 そんな彼の新たな権力の象徴となる、王都ロンドベルグにある竜伯爵(グレイブ・ヴルム)の屋敷となる場所。そこに、色々な意味で力持つ者が集まっていた。――先ずは、目立つ所で、十三番目の魔導師となった彼と二人の魔導師だろう。


「大体、こんなもんじゃない? 後は、ユーインに面倒見て貰うから」


「『こんなもん』処じゃないだろ。竜伯爵(グレイブ・ヴルム)は何と戦う。……ああ、魔王か……」


「たぶん、ヴァンリーフ邸ですね。クローゼ……密かに張り合ってましたからね」


 クローゼの屋敷に、防護の術式を施していた三人の魔導師の内、クローゼ付きのジーアが終了を告げる。それに、ベイカーとアレックスが言葉を続けていた。


 彼らの作業に立ち会っていた、レニエの促しが入り、休憩の場に集まっての会話であった。


 促しをした彼女は、自身の父親の屋敷の名前をアレックスに出されて、僅に表情を変えていた。ただ、全くの当主然とした態度は変わらず、ジーアのそれには了承を向けていく。


「何にか、凄いものを見た気がしますが……何がどうなっているのかは……分かりませんでした」


 レニエの後ろに、当たり前の様に立つ二人。その内クローゼの副官のは、彼女に付いて刻まれる術式の施術を見ていて、驚きが出た。


「まあ、分からないのも仕方ないんじゃない。普通は、魔導師三人掛かりとかないでしょ。ねぇベーカー?」


「お前は、年上に敬意とか……まあ、今さらだな。ユーリ君だったか、ノースフィールの屋敷やタイラン師伯の屋敷でも、ここまではしない。と言うより、魔導師がする方が希だ。アレックス君に聞いたが、ヴァンリーフはもっとなのだろう。信じられんよ」


 ユーリの疑問に、分からないのは普通で、これが普通ではない事だと、ジーアとベイカーは答えていた。その流れで、名前を出されたアレックスは、テーブルに両肘をついて、紅茶の熱さを揺らしていく。


「ヴァンリーフ邸は師匠のだから、別の意味で凄いよ。ユーリ君は師匠の所に行った事ないから、分からないかもだけどね。僕が言うのもあれだけど、クローゼ君と同じで……師匠もあれだからね」


「あれですか……」


 アレックスの言葉で、理解出来てしまった事になのか、ユーリはそんな雰囲気で呟いていた。そんな流れで、アレックスの隣に座っていたジーアが、立ち姿のレニエに疑問を見せる。


「レニエちゃんは、何となく分かるんでしょ。時々直しの言葉してたから」


 ジーアの呼び方には、レニエも馴れる時間が必要だったが、それには、若干の笑顔を返していた。


――私的な部分では、カレンも『ちゃん付け』でジーアに呼ばれていた――


 勿論、可笑しな事ではない。彼女にも思案の形があって、クローゼの付きの者にはそれで統一していた。ただ、アレックスだけは、本人の全力否定を受けて、アレックス君と呼んでいる。


「宮中伯の屋敷で、代わりに何度も立ち会いましたので。何となく場所と形を覚えておりました。……過ぎたる言は失礼いたしました」


「堅苦しいのは、無しっていったじゃない。失礼なんて事無くて、凄いよって事なの。ねぇ、ベーカー。そうでしょ」


 会話を振られたベイカーの『唐突に?』の顔に視線が集まる。そして、「お前なぁ」と彼は自身だけで呟いて、レニエの視線を確認した。


「まあ、見ただけでなら、そういう事になるな」


 見たまま、困った表情から出た言葉は無難であった。そんなベイカーはレニエの表情で、何となく話が落ち着くのを理解した感じになる。そして、余計になる一言を言ってしまう。


「ところで、地下の――」


「――浄化致します」


 レニエの遮りで、恐らく『大魔導師の弟子一』才能ある魔導師の彼は、視線を泳がせる。ベイカーは、彼女の倍ほど極と獄の繰り返しを見ている。それでも、数日顔を合わせただけな――年下の彼女が動かした、眉の僅かな動きにそうなった。



 その場所は、屋敷の地下に作られた大きめな空間の事になる。そこには、所謂(いわゆる)変性な嗜好の拷虐な器具が置かれていた。当然、レニエの『ピクッ』と動いたそれで、既に撤去されていたのではある。


 そこに、再び触れてしまったベイカーは、反らした目線に『何を蒸し返してるんですか』とユーリの口の動きを入れていた。そして、それを見つけた者達がいた場所を視界を入れる。


 ――気配が朧なフードに仮面の数人の男女――


「と、ところで、彼らは一体? 魔導師の我らが見付けれなかった……いや、何者ですかこの者達は?」


 レニエの威圧感ではない静寂な圧力。それに、ベイカーもクローゼが彼女と初めてあった時と同じに、捕らわれていた様であった。


竜伯(ブラーフヴルム)皇帝(カイザー)が遣わされた影の者(シャッテン)です。レニエ様の手の者になります」


 その質問に、レニエがヘルミーネに促しを向けたので、彼女は簡単にそう説明していた。勿論、秘匿の為に素顔は隠している。当たり前に皇帝の傍らのヘルミーネは顔を知り、そして、レニエとの繋ぎでクローゼの副官のユーリも、その顔の認識を共有している。


 ――物理的なからくりと術式で隠された、扉とその場所を彼らは、経験則で見抜いたとなる――



「地下の件は、他言無用に願います。あの様なモノが、国王より賜った屋敷にあったとなれば、王家にも当家にも、良からぬ噂が流れるやも知れません。ですので御配慮頂きますよう」

 

 そう、レニエの声がその場に通っていった。その冷静でどこか寒さを伴う様な言葉。それに続き「また、この場の事全て、当家の当主にも無用に願います」と付け加えていた。


 ――彼女の『私のクローゼ』には余計な事をさせない。好きな事をして貰う。そんな気持ち表れた様に見えた……




 レニエの思いの先のクローゼは、鉄の国の玉座の間、その一枚岩と思われるような床の上で、双剣を奮っていた。絶え間無く合わさる金属音が、響く中でである。そう、剣と斧は金属音奏ででいた。


 ――対物衝撃盾(シールド)ねじ曲げるって、ヴォルグかよ。てか、かなりギリギリまで圧縮してるのに、届きそうとかどんなパワーだよ。


 驚きに、剣を合わせるクローゼが、そんな思考をしていた。それは、自動発揮される魔方陣の反発をレェグルの戦斧はものともせずに、クローゼに迫っていた状況によってだった。


 レェグルは、全身鎧(フルプレート)を思わせぬ動きであるが、決して速い訳ではない。だが、打撃の瞬間の速度と威力は格段であった。その差が、レェグルの力量を際立たせていた。


「風……いや、魔力を纏うか――中々なのだな」


 武器の強度の差が小さい為に、クローゼはそれを剣で受けて、通常通りに――自身の魔力を挟んだ――衝撃を逃がしていた。その過程で、時折距離が開く。そして、繰り返される光景になる。


 仕掛けるのは、レェグル・ヴーグ・カリュプス。


「おおっ」の声で、直線的に距離を殺して詰めてくる。それをクローゼがかわす方向に、戦斧を向けていた。その途中にクローゼが、通常展開の空間防護(スペース)を合わせる。


 だが、彼はそれを物ともせずに身体ごと当たり、盾魔方陣を砕き距離を詰めていた。始めの何度かは、レェグルに驚きをもたらした。それでも止める事は出来なかったのだが。


 恐らくは、かなりの衝撃の筈である。しかし、鎧とレェグルの力と体幹で「ふごっ」の音と共に、それを受け切って進んでいた。


「痛いが――それだけなのだが」


 クローゼが闘牛士のように交わした方向から、レェグルの戦斧が、その言葉に乗って襲いかかる。


「盾魔方陣――砕いて来るとか。どれだけだ!」


 下方からの風を切る感じに、クローゼは剣を併せてそれを受け流す。その(さま)に体の返し――残りの側を撃ち下ろす。その光景に、レェグルの回転する独楽の様な動きが重なり――煌めきと湾曲の音の流れが表れていく。


「風切りで、切れんとは――恐れ入ったのだ!」


「こっちが驚きだ、その威力――」


 一撃の重さの勝負に、クローゼの表情が微かに明るくなる。速さの質の違いに、心踊るそれであった。


 ――切るとか。分かって、言ってるんだろうな。でも、何で切れると思うんだ……。


 迷いではないクローゼの思考。それと併せて彼は、レェグルに剣擊を浴びせる。……捉えてはいるが、こちらもレェグルのずらしで鎧には通らない……。


 クローゼの剣擊に、レェグルは戦斧のあらゆる箇所を巧みに使い攻防を体現していた。絶え間無く、言葉通りに絶え間無く……肩で息をするほどの連劇が起こっている。


 ただ、その肩を現しているのは……クローゼだけである。そして、その連劇の合間に、レェグルの言葉が乗る。


「どうした、息が上がっているぞ。まだまだ、これからなのだが!」


 レェグルの言葉をルーカスは聞いて、若干の落胆を見せる。変わらずの金属音が、心地いい感じのする場景。それを彼は、高い位置の玉座に身体を預けて観ていた。


 ――レェグルが敗れる事は無いな。風切りで切れぬ魔力は凄いがそれだけた。(もど)きの魔術師か。なるほどな。……まあ、ジャンの顔を……なっ?


 ルーカスの思考を断ち切る音と場景、それに続く上がる驚きの声。


――レェグルの身体と柱の衝突の光景であった――


それを見て、ルーカスは光景を一瞬遡る……幾度目かの立ち合いから少し開く間合い。その状況に戻していた。


 その視点から、クローゼは左の剣を逆手に持ち後ろに秘匿する。そのまま残りの剣先をレェグルに剥けていた。


「こちらも、まだ触りだ。……貴方なら全力でも大丈夫だと思うが、もしもの場合は御容赦を――」


「なんの気にするな――来い」


 全力で、クローゼは間合いを駆けて――レェグルと目線を合わせる姿勢て飛び込でいく。一段上がったクローゼに、レェグルは刃を向けるではなく、柄を引き上げた。


 重なる向けた剣先とレェグルのそれに、クローゼが背中から刃を下から合わせる。だが、滑る柄が延びて剣を叩き落としていた。


 しかし、それが狙いだとクローゼは言わんばかりに、落ちてきた斧刃の根元。それを剣で押さえて身体を入れる。また、弾かれた持ち手は、それでなく自ら別の意図を持っていた。


 そうそれは、レェグルの戦斧の柄を抜けてクローゼの魔方陣が展開するから。――勿論、狙いは衝撃を当てる『あれ』であった。


「これで駄目なら諦める――」


 発動から反発の衝撃に、クローゼは声と共に自身の魔力魔量を全力であわせた。


 その結果の光景をルーカスは見たとなる。


 だが、一瞬の思い返しの直後に、ルーカスの視点に僅かに動くレェグルに向けて、クローゼが蹴擊を入れる様が入ってくる。

 そして、レェグルの声が響いて……止まった。――彼の胸のプレートの空間が胸板に届く様相に変形を見せていた。


「王よ。この辺りで。先ずは治療を――」


 意識を断ち切られた、レェグルの崩れと項垂れをルーカスは見て、「ああ」とか「そうか」で、僅に口を動かした。勿論、衝撃の沈黙を破ったクローゼの促しが、切っ掛けだったのかもしれない……。



 ――殴り倒しただと。……あのレェグルだぞ。


 ルーカスは、その思いとは別に驚きの表情はせずに、一応の終息までを的確にまとめていた。そして、玉座の間に一つの段落が見えてくる。

 それに、改めての対峙にクローゼは、立ち姿を見せていた。表情と感じは若干の違いはあるが、周囲からの視線は明らかに違っていた。


「魔法使いと謀ったのか。と言いたいが『もどき』であったな。クローゼ・ベルグ」


「痛み入ります。……それで、レェグル殿は?」


「気絶しただけだ。戻ってから暴れたほどだ。心配ない。……気持ちが落ち着くまでは別室だがな」


 ルーカスのそれを聞いて、クローゼは「どれだけ、頑丈ですか」と呟きをいれた。それは単純に、逃げ場の無い、あの衝撃の結果の感想である。


「強ち嘘ではない。という事だな、お前と言う男の事については。周囲がそう認めているのが、予にも分かる。勿論、強いのも分かった」


「強さの基準は分かりません。ですが、戦場でレェグル殿と対峙したら、結果の予想はできませんね」


「結果に、謙遜するのは戦士に対して侮辱とも取れるぞ。クローゼ・ベルグ、強者は強者たれ」


 ルーカスの言葉に、クローゼは直ぐに答えず、暫く考える仕草をしていた。なぜか、簡単なリズムを指先で当てた腰と刻んでいた。そして、改めた表情をする。


「御認め頂けたと理解します。王よ。それて宜しいですか?」


「構わん」


「ならば、私の申し入れも御一考のほど願います」


「良かろう」


「王に、二言は?」


「無い」


 そこまでの言葉をクローゼは、ルーカスから引き出して、『強者は強者たれ』に戻った。


「先ほどの謙遜の話ですが。実は、途中から、あざとい考えが少しありました。あの状況で、私に全力を向けるのは無理だと思ったからです」


「何故だ」


「明らかに、短い得物の無防備な魔術師で、隣国からの使者。こちらは自身で全力でと言ってるのに、レェグル殿には、幾ばくかの他者の意向が……対峙して思いました。卑怯ではないか? と。必死だったので、始めには、そこまで気が付きませんでしたが」


 回りくどい感じの言葉に、ルーカスの表情が僅に動いていた。ただ、周りからは何となくの雰囲気が出ている。


「レェグルが、手を抜いたと言うのか」


「いえ、そんな事は感じませんでしたが、試合うと真剣な。の違いでしょう。レェグル殿はあくまでも、試合う上での全力ではないかと。こちらは形振り構わずなので……」


「土俵が違うとでも言うのか?」


「はい。ですから、戦場なら結果は分からないと申し上げただけで、他意はなく。まして侮辱等思いもよらずです。純粋に、王に強者と認められたのは素直に喜べますが」


 ルーカスは、クローゼのそれに一定の理解を見せていた。だが、彼の掴み処のない雰囲気に、戸惑いも見せる。

 そんな二人の対峙に、レェグルの大きな声がしてきた。当然、制止を振り切って。……いや、引き連れて、その場に来た感じになる。


「王よ。あの御仁はまだあるか。もう戻った、今度は別の手で競いたいのだが」


「レェグル。待てと言ったぞ」


「もう戻った。胸板の痣も痛くないのだが」


 レェグルが、ルーカスの視界に入る頃には、彼を掴み留め置こうしていた者――見たままに屈強なドワーフらの戦士――達も諦めの感じで、王に頭を下げて引き下がっていた。


 完全に開放されたレェグルは、上半身を晒しており、それをルーカスに向けて問題無いの意思を示している。そして、クローゼを視界におさめて更に歩き出した。


「おおっ。戦士殿。これにあったか。生まれて始めてなのだ、殴り倒されたのは。他の氏族(クラン)の戦士にもされた事はないのだが……」


 要領を得ない、興奮気味のレェグル。その暑苦しい感じの肉体が、クローゼに迫っていく。若干下がるクローゼに、レェグルは戦い最中の感じて距離をつめていた。


「今一度。機会を。あーと……」


「いや。困りますが」


 直線的に迫るレェグルが、クローゼの名を改めて聞く流れに続き、彼は、力比べだの何だのと機会を要求していた。少しばかりの時間をレェグルが、自身のそれとして費していく。それは、ルーカスに『男らしさ』を問われて引き下がるまで続いた。


「ならば、飲み明かそうではないか」


 下がり様にレェグルそう言って、何故かバルサスの横にあり場を決めたのだった。そのバルサスは一連の流れを見て、それが義弟の言った流れで収まったのに、軽い言葉を出していた。


「普段の小僧からは、想像出来んが、なかなかやるの。義弟が入れ込むのもなんでか分かるな」


「バルサス殿。あの男、最初あの時『駄目なら諦める』と。本当の全力なのだと感じた。まあ、飛ばされたのだが」


「負けたのに、清々し顔をしとるの」


「正面から負けたのだ。恨みも持てん。……世は広い。まさか魔術師に負けるとは」


 クローゼが、ルーカスと対面して会話を続ける中、で彼らの会話も交わされていた。


――強者(つわもの)強者(つわもの)を知り、強者(つわもの)強い者(きょうじゃ)を知る。そんな感じになる。


「レェグル・ヴーグよ。あの男は、魔術師でなく。魔王じゃ。義弟の弟子が小僧の魔力魔量は魔王級と言うとった。小僧の事をお前は聞いてないがの」


「イグラルードの最強戦士は、魔王級……なのですか。成る程……面白いのだが」


 二人が、その話題の先に見たクローゼは、ルーカスとの会話の最中、それも唐突に「そういえば、風切り(アンウィル)って何ですか」と雰囲気を変えてルーカスから、呆れた感じの表情を向けられていた。


 それに関して、一応の説明を受けて、ルーカスの言葉がありその場が終幕を迎える。結果的に、クローゼは、正面からドワーフの王ルーカス・ヴーグ・アウルムに、エルフに不穏があるが『積極的な出征は控える』の言葉を引き出すに至る。


 その後、暫くクローゼは、この地にとどまり歓迎を受ける事になった。それは、独特な芋料理と所謂、強い酒と格闘して行くことと同義となる。

 その間にクローゼは、レェグルを始めとしたドワーフの九つの氏族の戦士達と酒の席で、幾度かの勝負をして、度々敗れる事になった。


「酒飲めないし、腕比べなんて勝てる訳がない」


 クローゼは、バルサスにそう愚痴をこぼして「男だろう。頑張れ」と満足げな顔を向けられていた。


 紅茶の入っていない酒を飲まされ、男臭い感じの中で、彼も意外と楽しい事に気が付き始めた辺りて、帰る予定の日をバルサスの随員から告げられる。


 どちらが名残惜しいのか、又来い――又来るの流れを経て、クローゼは一路ヴァンダリアの地を目指して飛ぶ事になる。


 だだ、バルサスの手荷物……と彼は言い張っていた量の多さに、随員の内一人を置いてきぼりに? を挟んで予定の日に無事に転位型魔装具を使う。勿論、全員でだったのは幸いであった。



 と、クローゼの鉄の国での物語の頁は、一区切りとなった。屈強の戦士な王に、強者(つわもの)強者(きょうじゃ)たれと云わしめて、それぞれの氏族とも親交を深めた。


 そして、最後に追記しておく。風切り(アンウィル)とは、エルフの風の鎧を切る為の刃先の加工の事である。副次的に、魔力を切る事が出来たという感じの物であった。


 勿論、バルサスはそれを施す事が出来る。当たり前であるが、彼が考案したのだからになる。



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