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王国の盾~特異なる者。其れなりの物語~  作者: 白髭翁
序章 王国の盾と記憶の点
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零~プロローグ~

2021/09/15 微編集修正

 ――始まりの天なる()――


 ()は、ここを天極と天獄の間の世界(ドラゴニアード)と称し、物語を(つづ)る場所として見ていた。

 その(つづ)られる物語の(ページ)に、瞳を合わせる神の視点の一つが、唐突で不明瞭な異質を見つける。


「これは何処(どこ)から? ここにあった? 異なる階からなのか?『否』……異世界とは、そうかあれか。ならば追いかけて見るか。なるほど面白いものだ」


 その・は、異質が現れた(ページ)に合わせ行き、それが、新に(つづ)られた者が見た光景に続いて行く……




 続く光景は、森の中を流れる川の(ほとり)で、開けた場所。そこで、大勢が入り乱れる場面だった。それは『異なる意識体』が、唐突に見た景色になる。


 その景色は色褪(いろあ)せて不鮮明だが、唯一、鮮やかな色彩を放つ人物が中心に映っていた。


 ――それは、騎士の様な()()ちで、膝をつき項垂(うなだ)れた者――


 それを異なる意識体は『何処かで会った気がする』と『いや、もっと違った気がする』と感じる。

 ただ、それが『何か?』に行く前に、その姿に違和感を覚える。


 違和感を(いだ)く様相。――それは、紫色の細長い物体が身体(からだ)を貫き支え、姿勢を保っていたからだろうか。

 明らかに致命的な状況を、意識がその刻(・・・)そう認識した。


 やがて、異なる意識体に見える景色全体に色彩が広がり、人物を取り巻く波の様になって行く。


 駆け寄り何かを叫ぶ者。庇うように両手を広げ、周囲に指示をする者。慌てて何かを取り出そうとしている者。頭を抱えて呆然とする者。


 それを見ているのか、感じているのか、異なる意識体には分からない。だだ、その人物を取り巻く光景が、次々に鮮明になってくる。



 ――そして、急激に視点が変わる――



 森の木々が緑色の地面に変わり、視線の先が鮮血で美しい色合いを見せていた。そして、人物を巻く場景が消え、集まる人々の表情が映し出される。


 それと同時に、表現出来ない程の痛みが、それまで聞こえなかった音と共に現れた。


「クローゼ様――」


 誰かが放った言葉に、今度は自身の目とは分からないが、視線を向ける。


 そこには、金色の美しい髪を後ろで束ねた、若い女性の騎士がいた。そして、その女性がこちらに手を伸ばし、近づきながら声を出す様子が見えてくる。


「誰か、白の竜結晶を早く」


 彼女は束ねた白金の様な金髪(プラチナブロンド)を揺らしながら、そんな言葉を周りに向かって叫んでいた。

 そのまま彼女は、こちらの身体(からだ)を支えるように寄り添い、何とも言えない表情で覗き込で来る。


 不安と焦りが入り交じった様な表情を見せる彼女が、誰なのか分からない。ただ、向けられた先が自身だとは分かった。


 呼び掛けられる言葉に、『返事を』と思ったけれど、音を出すこと出来ない。それにもどかしさを感じて、何の根拠がある訳でも無く『大丈夫』のつもりで微笑みを浮かべてみた。


 ただ、そうすると思っただけで、実際に出来たのかも分からない。けれど、彼女の顔が僅かばかり緩んだのが見えて――良かったと思った。


 そして、「ああっ」と言葉にならない声を出す。


 ただ、出した音と同時に、彼女の頬を伝うものを見つけて複雑な気持ちになった。そして、最初の点に戻る。


「ここは……どこ……」


 そう、疑問を言葉にしたつもりで、景色が遮断されていくのを感じる。そして、意識が薄れる中で、彼女の手が『光輝く』のを見た。――そのまま、視界が無くなり、時が止まった……気がした。




 入れ替わる視点と交わる思い。紡がれた世界と綴られる世界。それを起点に、それぞれの物語。


「成る程。物語の中に溶け込んだ……」


 そんな(ページ)を見るのが、()である。


右往左往。失礼致します。


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