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秘密

作者: 一角黒馬

とある曲を聴いて、「秘密」って綺麗だな、と思い考えた話です。

「秘密のノート」

それは、気付いたらそこに置いてあるノート。

一ページ目の一行目にだけ、「あなたの一番の秘密を教えてください」と書いてあって、自分の一番の秘密を書いて捨てたら、その秘密が結果的に幸福を連れて来る。



約一週間前、「秘密のノート」に、一番の秘密を書いたんだ。

完全に信じていた訳では無いけれど、どうしても辛くて、藁にも縋る思いで書きこんだ。

これで、少しでも罪が軽くなれば、と。

けれど、何日経ってもまだ罪悪感に苛まれて、猫を見ると気分が悪くなって、時々あの衝動に駆られた。

やっぱり、「秘密のノート」なんてただの噂にすぎなかった。誰かが悪戯で、机の上に置いたんだ。

じゃあ、これからもこのまま生きて行くんだ。

そう思うと、吐き気を催すほどの強い衝動に駆られた。

押入れの中にある汚れた袋を乱暴に開け、いつものように中を覗く。

袋の中には、無数の骨。嫌な臭いもする。

それを見つめていたら、涙が零れ落ちた。

こいつがまだ小さかった頃の事を思い出す。最初は威嚇ばかりしていたけれど、ミルクをそばに置くと、警戒しながらも、ミルクを飲むのだ。

安物のカニカマの置く場所をどんどん自分に近づけると、パクパク食べながら近づいて来て、最後は警戒が解けたのか、長靴の紐で遊ぶのだ。

短い脚でトコトコ歩くこいつが好きだった。成長して少しツンデレになったこいつが、唯一の友達だった。

「ニャァ」と、いないはずなのに、まるでそこにいるかのように、こいつの声が聞こえる。

俺は、何て奴なんだ。

あんなノートに頼って罪を軽くしようなんて、楽になろうなんて。

「救われる訳……」

もう、普通の人にはなれない。俺は、友達殺しだ。

どうか、俺を罰してくれ。


数日後、迫ってくる大型車が見えたのに、体が動かなかった。

当然はねられて、体に強い衝撃が走った。

あのノートは本物だったのだろうか。死んで苦痛から逃れる事が許されてしまった。

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