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七話…side魔王

久々の更新です。

今回はこれまた久々のルナsideです。

……これは何の苦行だ。


城の中央部の一角にある会議場。その王座に座りながら、


俺は今、そう叫びたい気持ちだった。


「ですから、勇者共をなぜ生かしているのです! 」


「陛下の言葉に耳を貸さずに襲ってきたのだから殺しても問題はあるまい!! 」


今回、勇者達がこの城へ襲来した事から開かれた緊急会議。議題は勇者達の処遇について。城にいる重要官職の者十数名と、地方から駆けつけた地方代表数人が会議場に集った。


本来これは別にやる必要のない議題だ。勇者が来た時にどう対応するかは、数年前には既に決めていたのだから。


だが、どうやらまだ納得していない、不満があるものはいたようだ。


先ほどから勇者を殺せだのなんだの散々叫んでるのは、数百年以上前から生きている魔族の長老たち。


幾人もの魔王に仕えてきたという彼らは、その度に、歴代魔王が勇者に殺されるのを何度も見てきたという。その為、人間をかなり敵対視している者が多い。


いつもの会議なら、長老の一人であるセンがそれなりの抑止力となってある程度スムーズに話が進むが、今その当人は勇者達の所へ行かせている。


よって、議題の内容もあって段々と会議からただの言い争いになりかねない状況に陥り始めている。いや、もう陥っている。


……ハァ。


「いい加減にしろ。この話は既に結論が出ていたはずだ」


「しかし、状況が状況です! 陛下、もう一度お考え直しを」


俺はため息混じりに注意をするが、やはり長老の半数以上が納得していない。そのうちの一人が声を荒げる。


しかし、状況が状況って、何のことだ。彼らが殺しにかかって来たのは想定の内というかそれを前提で進めてきた。それでわざわざ予定を変える必要はないだろうに。


しかし、俺が口を開こうとすると、遮るように違うものの声がかかる。


「陛下、考え直す必要はまだないと思います! 」


「そうです!幸い、勇者は聖力を枯渇させていると聞きました。なら計画に問題はないのでは! 」


勇者達を排除したいと考えている長老達とは違い、まだ若い者達は人間と友好関係を築くのに賛成の者が殆どだ。


そもそも、人間と敵対するということに、何のメリットがあるのだろうか。勇者が現れれば数が急激に減らされて時には全滅の危機に陥ったこともあるという、魔族に。


むしろデメリットしかない。


「ええーい! 小童どもは黙っておれ! 貴様らは今までの魔王様達の死を見ていないからその様に楽観的でいられるのだ!」


「そう言うジィさん達が黙ってろよ! あんたらの考え方はもう古いってんだよ老ぼれ時代遅れジジィ!! 」


「なにぃ! 言わせておけば貴様……」


……これでは最早口論でも無い、ただの口喧嘩だ。


長老達と若い者達の言葉の応酬を聞きながら、また深々と溜息をつく。


……もうそろそろ止めるか。さすがにこれ以上放っておくと、手を出しかねない。どちらも頭に相当血が上っている様だ。


「本当にいい加減に「双方、その辺りで止められたら如何ですかな」……ノレス」


俺の言葉を遮る様に、その老若の口喧嘩を止めた者がいた。俺のすぐ左側に座り、見た目白髪の老人の姿をした男。いつも俺の右側に座るセンに並び長老の中でも最も高齢とも言える彼はノレス。俺の側近の一人だ。


「ノレス殿、邪魔をしないでいただきたい。我々は今、この小童共に」


「何をされようと?まずはその掲げられた右手を降ろされよ。此処は言葉をかわす場じゃ。此処での暴力行為は地位の剥奪だという事を忘れたのか? 」


「……っ! 」


ノレスはゆっくりと立ち上がってそう言いながら、右手を掲げてなんらかの攻撃手段に出ようとしたであろう長老達の方を睨む。一方若い者達は彼が仲裁に入ると、すぐに大人しく下がっていた。


何か言いたげな長老達も渋々といった感じだが引き下がる。と、ノレスは俺に目を向け、片目を瞑る。ああ、助かったよ。


「今後の予定は何も変わらない。以前から計画していた通りに動く。異論は無いな? 」


これは最終確認だと全員の顔を見渡す。やはり長老達のほとんどが不満げだったが、口を開く事はなかった。















「ようやく終わった…か…」


「お疲れの様ですな、陛下」


「……アレで疲れずに済むと思うか。お前は」


「……いいえ。今回のは私もさすがに頭を抱えていましたからな」


あの後、俺は会議室を出るとすぐに執務室へ直行。机へ思わず突っ伏しかけた。


最も、ゆっくりとしている場合ではないので、今も既に書類仕事を片付けている最中だが。


「しかし、今回もまた奴等は陛下に殺気を放っておった様ですな」


「……いつもの事だ。隠しているつもりだろうが、少しも隠せてない」


「全くですな。私めにもビンビン伝わってきましたゆえ」


話すのは会議にいた内の一部の者達について。……魔王即位当初からどうやら不満を持たれている様で、その者達からは攻撃はないが突き刺さる様な視線をよく感じる。


尤も、俺の掲げる目標からすれば確かに、そこそこの古参達からはいい印象を持たれてないだろうが……。


……あまり野放しにはできない、か。尤も、今も別に何も対策を立てていないわけでは無いが。


「……ところで、件の勇者の方々は今、どうされておられるのですかな? 」


「ああ、彼女達は今城内で好きにしてもらっている。念の為それぞれ一人ずつ護衛をつけているが……」


ノレスの問いにそう答えながら、俺はふと、あるものに意識を集中する。


……どうやら彼女達は案の定、はぐれてしまったようだ。


幸い彼女は、レナはとても分かりやすい目印を持っているから、すぐに場所を探し出せるが……あそこか。なんともまあジャストタイミングで、良いのか悪いのかわからない場所に飛ばされたな。


俺は、メモ用として机の上に置いている手のひらサイズの紙を一枚とる。そしてそこに今探し出した彼女の居場所を記し……


「陛下? どうなされましたか? 」


「いや、何でもない」


すぐに護衛のモモの所へその紙を落とす。これなら合流はできるだろう。





……もう少し、様子を見てみるか。

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