プロローグ…side魔王
小説家になろう初投稿になります。
不定期連載ですがよろしくお願いします。
最初は魔王sideです。プロローグ短いです。
この世界では何百何千の時の間、魔族と人間が争っていた。
魔族達を束ねるは、魔王と呼ばれる途轍もなく大きな魔力を持つ者。
その魔王に対抗し得るは勇者と呼ばれる、大きな聖力を持ち聖剣を扱う者。
両者は幾度も幾度も衝突し殺し合い、片方が死ねば代替わりを続けてきた。
これまでの歴史の中、一体何人の魔王と勇者が死んできただろう。
出会えば殺し合うのは最早宿命だ。
…だが、本当にそうなのだろうか。
本当に、魔族と人間は、魔王と勇者は殺し合わなければならないのだろうか。
…否。俺はそうは思わない。
「魔王!あなたを倒しに来たわっ! 」
数人の仲間とともに魔王城へ、その最上階の謁見室へとやって来た勇者一行。
一番前に立つのは、勇者らしき女性…いや、少女。
見たところまだ二十歳にはいってないだろう、まだ子供っぽさが残る顔立ちに、この世界では珍しい黒髪に、空色の目。その手に持つのは宝石が散りばめられた白銀の剣…聖剣。
その後ろにいるのは勇者の仲間であろう三人。
一人は大剣を背に吊るした茶色い短髪の大男。見た感じ四十代といったところか。無精髭を生やし、格好からして如何にも冒険者といった感じだ。そしてその立ち姿は隙がない。
二人目は魔導士らしき金髪碧眼の少年。歳は勇者より少し下くらいか。少し体より大きいマントを羽織り、赤い宝石のついた杖を握っている。そして何より彼からは人間には滅多にない大きな魔力が感じられる。
三人目は修道服に身を包んだ金髪碧眼の少女。おそらく聖女だろう、勇者と似通った気配…強い聖気を感じる。歳は大体先の魔導士と同じくらいか。
…聖女はこの部屋に入ってきたときからずっと魔導士の後ろに隠れている。というか魔導士が聖女を庇うように立っているという事か?格好は魔導士だが、王女を守る騎士のようだな彼は。
……思考がそれた。あの二人の関係性も気になるが、今は置いておこう。
それに、勇者の陰に隠れているのがいるな。一瞬銀髪が見えた。あの大きさだと妖精か。
この思考の間、一秒弱。
それよりもずっと重要な事を勇者に聞かなければならない。
「それは、俺と殺し合いに来た、という事でいいのか? 」
答えは分かりきっていることだが、問いかける。
勇者が魔王を倒すというのはつまり殺すということ。普通ならば魔王も抵抗するから必然的に殺し合いになる。
「そうよ。それ以外にないわ! 」
予想通りの答え。そしてその後ろでは既に大剣を抜いて構えている男、杖を構え呪文を唱え始めた少年、水晶玉の様なものを持ち聖句を唱え始めた少女がいる。
勇者自身も聖剣を構えると、聖剣が聖力を纏い青白く発光する。そして体からも強大な聖気が伝わってくる。
俺はその様子を見て、一つ溜息を吐いた。
本当に、予想通りだ。ほんの少しだけ期待していたが。やはり、根本的な意識が変わるのは難しいようだ。
気合が入っているところ申し訳ないが、ここで俺が放つ言葉は一つ。
「断る」
その時の勇者一行の固まりようは少し面白かった。
俺はルナ。十数年前、先代魔王が勇者に倒されてから数日後、魔王になった。
これは魔王になったその時、そこにいた魔族達に言った事。
「俺は勇者達と、人間と、共に生きていけるようにしたい」
こんな意味のない、くだらない戦いは止めて。
魔族も人間も、この戦いに不干渉だった他の種族も、そんな事はできないと、不可能だと思うだろう。
だが俺は、あの約束の為にも。
……その不可能を、可能にしよう。
次話は勇者sideです。