Episode 3
がらがらっ……
と、ドアを開けるつもりだった。
が、がらっ、きゅっきゅっ、がたっ。
あれ、開かない……
うわっ!ドア外れてるじゃん…最悪。
ドアの建付け悪すぎ…
教室の中では、どっと笑いが起こる。
はぁ……
新学期早々、クラス中の笑い物だ。
消えてぇ……。
ふと後ろを見る。
──── 違和感。
桜井さん…笑っていない?
どこを見ているのか見当もつかない虚ろな目で、クラスの人たちを見ている。
そこに冷たい光を感じて、思わず僕も身震いする。
それも一瞬の事で、次の瞬間には何も違和感は感じなくなっていた。
細かい事は気にしない主義の僕は、もう忘れる事にした。
心にちょっとしたわだかまりを残して。
「おい!何を呆けているんだ!お前ら早く教室に入って来い!」
あ、こっちもすっかり忘れていた。
て言うかこの教師、語尾に「!」が付く頻度高くない?
そうどうでもいいことを考えながら、僕は自分の席を探す。
あったあった。窓側の、後ろから2番目。
なかなか悪くない席だ。
桜井さんは?と思って、彼女を目で探すと…
隣にいた。
よく考えたら、「坂本」と「桜井」って、番号近いからなぁ…。
そのままHRが始まる。
さーて、何をするでしょ~か!
そこの君、ピンポーン!
自己紹介でした~
そう考えて、1人で悲しく笑う。
勿論頭の中でね。
そこはあったりまえだよ。
クラッカーだね。
はぁ…もういいや、今日の僕はテンション高い。
そうこうしているうちに、自己紹介の順番が回ってくる。
やばっ、内容考えてない…
「はい次っ!坂本!」
ここはオーソドックスに行こう。
「坂本大和と言います。2年の時はA組で、特技はフルートです。」
よっしゃ。順調!あとは「よろしくお願いします」だけだ…
「よろしくお願いしまし、しっしゅ!」
やっば…………
盛大に噛んだ。
また教室が笑いに包まれる。
あーあ…
ついてない。
僕が激しく赤面していると、次は桜井さんの番だった事に気づく。
あの子はどんな事を言うのだろうか…
かなり気になる。
耳を傾けてみよう。