報酬
それから数日間、カイルとライムは怪我や闇落ちによる影響の残った身体を癒すために魔物の下で過ごした。
そしてある朝に━━。
「もうすっかり元気になったようだね」
その日の朝食を取りながら、魔物は二人を見て安堵したように言った。
「ん、私は元気だよ?むしろ、カイルの方が血を流したりした分大変だったんじゃない?……やったのは私だけどさ」
『闇落ち』したという事実がよほど堪えたのか、ライムは自分で言ってからずーんと凹んだ。
「どちらかというとライムの方がヤバかったんだが……そこは腐っても女神という事かな」
「腐っても……(涙)。って、私が?」
「ああ。闇に染まっている間は身体なんか労らないからな。しかも自覚が無いから相当な無茶をしていても気づかない」
「……道理で正気に戻った時に身体がやたら重かった訳だ」
「そういう事」
「はぁぁ……。貴方にはちゃんとしたお礼をしないといけないわね」
そこでライムははた、と気づいたように首をかしげた。
「そういえば、私をどうにかするってカイルからの依頼だったのよね?そのゴブリンからの報酬ってなんだったの?」
「報酬?報酬は…………あれ?」
「どうしたのよ」
「なにが報酬なんだろう?」
ごいんっ。
「私が知るか!」
またしてもテーブルに頭を打ち付けながらライムが突っ込んだ。
「そういや報酬なんて確認してないな」
「それを聞きもしないで依頼を請けたの?本当にお人好しね貴方」
「人じゃ無いけどね」
「そういうボケは要らん!」
━━と。
「ホウシュウハ……ワタシ……」
「ん?」
「え?━━今のって……カイル、貴方なの?」
それは、それまでいつものように頭からマントを被り、静かに食事を取っていたカイルから発せられた言葉だった。
「ソウ……。ワタシガホウシュウ。ダカラ━━」
カイルはその華奢な手で自らフードをまくり、初めてライムにその顔を晒した。
「!━━貴女は!?」
「わたしは……これから貴方のモノです。魔物様」
褐色の肌に獣の耳を持つ幼い少女は、そう言って魔物に深々と頭を下げた。
彼女の正体は次の話で。
でも、分かる人には分かるかな(-_-;)??