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朝食

 この話はいったん止めようかと思っています。もっとちゃんと設定をしっかり煮詰めないと、後で取り返しの付かない事態に成りかねないので……。(実際、後々の伏線になっているのに誰かさんの装備を間違えていて真っ青になりました( ̄□ ̄;)!!。ヤバいヤバい)

 まあ、少し纏まったらこのエピソードくらいは書き上げたいので、少々気長にお待ちください。

 桃である。

 それはもう、見事な桃があった。

「う……ぐ……ぐ……」

 元は白磁のようだったお尻を綺麗な桃色に輝かせているのは、もちろん女神ライムである。因みにきっちり百回叩かれた。

「うう……酷い」

「当たり前だ。罰なのだから」

 地べたに這いつくばり、下着を上げる気力も失った彼女にも魔物は容赦ない。

「それよりもライム。お前はまず、このゴブリンに言わなければならない事があるのではないか?」

「ぐっ━━」

 なんとか顔を上げれば、魔物の隣にいるゴブリンがフードの陰からじっとこちらを見つめている気配があった。

「……ごめんなさい。あなた達にはとても酷い事をしてしまいました」

 そう言ってライムは頭を下げたが、元々這いつくばった格好なので通じたかどうか。が、ゴブリンは微かに唸り、それを謝罪として了承したようだった。

「よし。まあ、こんなところか」

 魔物は重々しく頷いた。が、ライムの台詞には続きがあったようだ。

「だけど……」

「む?」

「だけど、アンタだけは……いつか絶対にぶち殺してやる」

「それは構わんよ。何時でも掛かってくるといい」

「く~~~~っ!」

 本気の殺気が込めたが、あっさりと流された。

 魔物は隣のゴブリンをそっと抱えあげ、ライムに背を向けた。

「とりあえずは今日はこの辺にしておこう。寝床くらいは用意してある。お前はそこで寝るといい」

 いつの間にか用意されていた辛うじてそれらしい場所を指差し、魔物はライムの返事も聞かずに奥の方へと消えてしまった。

「くそ……ゴブリン以下の扱いですか」

 モゾモゾとようやくパンツを上げ、言うことを聞かない体を引きずるようにしてライムはぼふっと寝床に倒れ込んだ。

 ━━これはなかなか気持ちいい。

 ライムは一気に全身の力を抜いた。……が、代わりに色々なものが込み上げてくる。お尻の痛み。怒り。そして━━。

「ひくっ……」

 次々に涙がこぼれてくる。分かっている。分かっているのだ。

 こんな待遇もこの程度の罰も。彼女が犯した罪からすれば本来あり得ないのだ。だからこそ、悔しい。悲しい。情けない。

「分かってるよぉ……」

 敷き布に顔を埋め、ライムはただひたすら泣き続けた。


 意識が覚醒してくると、まずは食欲をそそるいい香りが漂っていた。そう言えば昨日からろくに食事を取っていないような気がする。

「……あれ?」

 起き抜けでうまく働かない頭でライムは考える。ここは何処だろう。それに自分は何を━━。

「あ、そっか。昨日は━━あ痛つつ……」

 起き上がろうとして痛みに思わずお尻を押さえる。

「思いきりやられたしなぁ……あれ、これは?」

 いつの間にか体の上からさらにもう一枚毛布のような物が掛けられていた。━━と、入り口の方から足音がする。昨夜の魔物かと一瞬身構えたが、現れたのは木べらを手にした少年だった。

「お、起きたね」

「え?あ、はい」

「酷い顔してるね。ほらこれ、ついでに目が覚めるよ」

 ライムは慌てて冷水で湿らせたらしい手拭いを受け取り、泣き張らした顔をゴシゴシと拭った。冷たい感触がとても気持ちよかった。

「ふう……」

「さ、朝メシにしようか」

 ……ぐうぅ。

 ご飯と聞いて正直に腹の虫が鳴った。

「!?」

 少年は笑ってライムに肩を貸し、入り口まで連れて行ってくれた。そういえば、疲れているにしてもやけに体が重い。

「あ……」

 入り口の辺りには簡素なテーブルと椅子が幾つかと火にかけられた鍋。そして先客がいた。

 昨日のゴブリンシャーマンが大人しく座っている。

「ちょっと待っててくれ」

 少年はライムをゴブリンの隣に座らせ、いそいそと鍋に向かう。

「…………」

「…………」

 ぶっちゃけ気まずい。何せ、昨日は命のやり取りをした相手である。ただ、昨日から思っていたが随分と物静か(?)なゴブリンである。

 そういえばいつも全身マントなのでまともに姿すら見ていないのではないだろうか。

「ほい、お待たせ」

 良いタイミングで少年が朝食を並べていく。まあ、とにかく今はあれこれ考えるより目先の食欲である。

「いただきます」

 腐ってもそこは穀物の女神。日々の(かて)に対する感謝は忘れない。

「あ、美味しい!」

 具だくさんの煮込み(スープ)を一口食べると、思わず声が上がる。空腹も手伝ってライムは夢中で食べた。


「それだけ食欲があるなら大丈夫そうだな。━━ほら、カイル。まだ熱いから気を付けてな」

「カイル?」

 お腹がぱんぱんになるほどお代わりをして、ようやく落ち着いた所に少年がお茶を入れてくれた。

「ああ、そもそも名前が無いものだから、俺が名前を付けさせて貰った」

「そうなんだ?カイル、ね」

 『カイル』と名付けられた彼(?)は相変わらずフードを深く被ったまま物静かにお茶を(すす)った。

「さて━━と。ライム?」

 少年は二人の間に座り、それまでとは打って変わって真面目な顔でライムを真っ直ぐに見つめた。

「は、はい?」

「今後の事について話したいんだが、良いか?」

「あ、良いけどその前に」

「何だ?」

「あなた誰?」

 ごいんっ。

 思わず少年がテーブルに頭を打ち付けた。雰囲気ぶち壊しである。

「あ、あれ?そう言えば俺、お前さんの前でこの姿を見せた事が無いな。とは言え、まさか気付いていないとは思わなかったが」

「姿?何の話?」

「何だ。昨夜は我をぶち殺すなどと言っていたのを自分で忘れたのかね?」

 がごんっ!

 今度はライムが派手に頭を打ち付けた。

「え?ええっ!あ、あ、アンタ、昨日の魔物!?」

「本当に気付いていなかったのか……。黙っていれば良かったかな」

「……うぞ」

「とんだポンコツ女神も居たものだ」

「ポンコツ言うな!」

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