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お仕置き!

「落ち着いたか?」

「……はい」

 そこは魔物が塒ねぐらにしている山奥の洞窟だった。そこに魔物とライム、そして一応の依頼者代表として傷の手当てを終えたゴブリンシャーマンが揃っていた。

 泣き腫らした顔でちびちびと暖かい茶を飲んでいる彼女は拘束も鎧も外されてはいるが、もちろん逃げる気力など残っていない。……ぶすったれた表情は相変わらずだが。

 甘い香りのするお茶が妙に美味しい、とライムはぼんやり思っていた。

「あー……何だ。つまり」

 ライムの肩がピクリと震えた。

「要するに、だ。最近はライ麦を栽培する農家も農地も減って与えるべき加護もロクに無く、信仰心も集まらず」

 見る間にライムがしおしおとしょげていく。

「仕事が無くてやむなくゴブリン退治や害獣駆除に精を出して」

 どよ~~んとした空気が漂う。

「もはや自分の本分も見失って、(しま)いにはゴブリンを倒すのに執着して依頼も無いのに狩りまくった、と」

 そのゴブリンシャーマンが深く被ったフードの陰から何だか憐れんだ目をして見ている気がした。

「ふう……。確かにゴブリンは厄介者として忌み嫌われたりするが、これでも(れき)とした妖精族であり森の住人だ。単にゴブリンだからと言って意味無く殺す道理は通らん」

「……仰る通りです」

 自分は何故、魔物に説教などされているのだろう。これでも女神なのに。

「でも、(はん)逆の神竜だって女神のくせに人間を敵に━━」

「それは違う」

「……え?」

 それまで呆れこそすれ、一度も怒りを見せなかった魔物が不意に語気を強めた。

「彼女は確固たる信念を持って人間と敵対したのだ。単なる八つ当たりのお前さんとは訳が違う」

「…………」

「いや、今は関係の無い話だったな」

 魔物は呆気に取られるライムのカップをひょいと取り上げ、火にかけてあった鍋から熱いお茶を注ぎ、再びライムに手渡した。

 恐らく自分は「彼」の触れてはいけない部分に踏み込んでしまったのだろう。

 彼女に背を向けたまま腕を組んで考え込む魔物に対し、ライムじぶんは何をやっているのだろうという思いが膨れ上がっていく。

 それから何となく虚しい時間が過ぎて行き、せっかく飲んだお茶の暖かさも失った気がする頃。

「━━よし」

 何かを決意したらしい魔物が顔を上げた。そしてライムの方へと歩み寄る。

 ━━ここまでだろうか。ライムは観念した。

「ライムとやら」

「はい」

「お前のしでかした事はどんな理由があろうとも許されるものではない。それは分かるな?」

「……はい」

「だから我は敢えて『禁』を破り、お前に罰を与える」

「…………」

 ライムは目を閉じた。━━と。

 くるり。

「え?」

 ライムは頭を後ろにして魔物に小脇に抱えられた。そして。

「えええ!ちょっと何を!?」

 魔物はライムのパンツを一気にずり下げた!

 これからゴブリンにでも犯されるのだろうか?

「昔からな」

「は??」

「悪さをしたガキには━━(ケツ)百叩きと相場が決まっているのだ!」

「うそぉぉぉっ!!」

「さあ、覚悟しろ小娘」

 そして魔物は高々と手を上げた。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

 それから小気味いい音と悲鳴が夜空に響き渡った。

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