わりーごわいねがー?
「は?女神?お前さんがか?」
「……悪かったわね、こんな女神でさ」
舞台変わって、再び大岩に胡座をかき、首を傾げる魔物。
違うのは目の前にぐるぐる巻きにされて転がされた女剣士、もとい女神。
引っ捕らえてみれば、女神にしても年若い。見た目は少女と言っていいくらいだ。……が。
「ふむ。ちなみに何の女神だ?」
「…………」
ぷい。
転がされたまま器用にそっぽを向く。
「ふう……ゴブリンの次はひねくれ女神か。まあいい。名前は?それくらいは教えて貰えぬと適当に呼ぶがいいか?」
「……ライム」
ボソッと辛うじて聞こえる声で一言。
「ほう、名前と顔だけは可愛いものだな」
「うっさい。バケモノに可愛い言われても嬉しかないっつーの」
「大丈夫だ。性格は我の外見と大差無い」
「ふんっ!」
結局。
この二人(?)の対決は見事に魔物の勝利に終わった。高位ではないとは思われるが、そこは流石に女神。戦場となった辺りは魔法や剣撃による痕跡がまざまざと残っていた。恐らくは魔物が意識的にゴブリンから彼女を遠ざけなければ皆巻き添えを喰らっただろう。
「大体アンタこそ何なのよ!単なるバケモノがどうして私の攻撃を悉く躱せんのよ!」
「躱さねば死ぬからだ」
「あ━━っもう、いいからさっさと殺しなさい!」
じたばたゴロゴロ。
「こら、あまり動くと━━」
ごすっ。
「~~~~~~!」
かなり痛そうな音がした。
「と、なるだろうな」
縛られているので頭を押さえる事も出来ずに暫く悶えていたが。
「……ぐすっ」
「あ」
「もういいから殺してよ~~~どうせ私なんかゴブリン相手にするくらいしか能が無いんだから~~~」
思いっ切りべそをかき始めてしまった。非常に面倒臭い女神である。
「━━ライ麦の女神」
「!?」
魔物が呟いた言葉にライムが思わず顔を上げた。最も涙やら……やらで酷い有り様だったが。
「やはりそうか。すまぬな、我はこれでも鼻が利くのだ」
「うわ~~~ん!!そうよ!ライ麦の女神よ!文句ある!?」
「それで?それがどうしてゴブリン狩りに繋がるのだ」
ここから先はライムが号泣してしまい、暫くは話を聞くどころではなかった。