表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/18

危機

 奥深い山中。

 残念ながら「彼」の危惧した通りの事が起こっていた。

 そこには身体の所々に返り血を受け、口許には残虐な笑みを浮かべながら、ゴブリンシャーマンを追い詰める女剣士の姿があった。

 他に立っているゴブリンはすでに居らず、皆倒れ伏している。

 ある者は脚を貫かれ、ある者は頭部から血を流してはいるが、まだ死んだ仲間は居ない。が、それはゴブリンが抵抗したからではない。女剣士が手加減をしたに過ぎない。いや、手加減などという生易しいものではない。

 (なぶ)っているのだ。猫が何度も獲物を離しては捕まえるが如く。

 ゴブリンとて集団ともなれば決して油断の出来る相手ではない。素人が甘く見ては返り討ちに会う事もある。だが……女剣士は強かった。魔法を放ち、見事な剣技で相手に一太刀も入れさせることなくゴブリンの群れを圧倒していった。むしろ彼らは善戦したと言える。

 しかし、それもこれまでのようだった。

 女が剣を上段に構えた。対するゴブリンシャーマンも切り裂かれたマントから覗く全身は満身創痍(まんしんそうい)ながらも未だ戦意を喪失していない。片手に杖を、もう片方の手にはショートソードを逆手に持つという一風変わったスタイルで構える。

 女剣士の口許が再び歪いびつな笑みを浮かべ━━。

「!?」

 頭上から何かが降ってくる。女剣士が素早く後ろに飛び退くと、そこに黒い塊が墜ちてきた。

 土煙を上げつつ立ち上がったのは闇色の魔物。

「すまない。遅くなったな。━━おっと」

 目の前のゴブリンシャーマンに軽く手を上げると、流石に張りつめたものが切れたのか、そのまま倒れ込んできた。

 それをそっと地に寝かせると、嘲あざ笑うような声が響く。

「ははっ、何それ?ゴブリンごときに援軍?何の冗談かしらね」

「そうだな。だが生憎と本当の話でね」

 そう言って振り返った「彼」と女剣士が対峙する。

「言葉を話す化物(バケモノ)?あっはっはっはっ!」

 狂気じみた声が辺りに木霊(こだま)した。

 ━━こいつは?

 顔に手をあて、身体を(よじ)らせて笑う彼女に、「彼」は首を傾げた。

「ホント、笑っちゃうわ!私なんかには化物かゴブリンあたりが相応(ふさわ)しいって?ははっ何なのよこれ!」

 ━━こいつはまさか!?

「やってらんないわよ!!」

 ━━そうだ、こいつは━━!

「こいつは━━やさぐれている!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ