ゴブリンスレイヤーと灰色の魔神
連載の形式を取ってはいますが、現段階では読み切りです。本来は非常に長いシリーズ物で長らく暖めていた構想があるのですが、それらを全部書くには一生掛かっても終わらないかも知れません。
でもそれだと死ぬまで発表出来ないで終わってしまう可能性もあるので、少しずつ小出しに書いていこうかと。
とある国の人里離れた山奥に、風変わりな魔物が棲んでいた。
その風貌は辛うじて人型はしていたものの、大きな一つ目、鋭い爪や節くれ立った灰色の体はどう見ても人ではないものだった。
だが、この魔物は色々とらしくない生態をしていた。特に人を襲ったりもせず、むしろ偶然山越えをする旅人や行商人に目撃されたり遭遇したりしてもまるで我関せず、といった風に基本何ら行動を起こさないのである。
それどころか、勇気ある冒険者が語り掛けたところ会話が出来たとも、また或いは内乱や戦争から逃げ、遭難しかかっていた民を手助けして麓ふもとまで送り届けたとも、更には話を聞き討伐に赴おもむいた剣士と意気投合してしまった等々、何とも奇妙な噂が近隣の村に流れる始末である。
結局の所、人間に特に害は無いとしてその存在は黙認され、この森に流れ着いた経緯や目的も明かされぬまま年月は過ぎて行った。
━━さて、この状況はどういった事か。
その魔物━━とりあえず「彼」と呼称しよう━━が、目の前の光景に頭を悩ませていた。
岩の上に胡座をかき首を傾げる彼の前には数匹のゴブリンが物々しい出で立ちで群れなしていた。
各々武器を構え殺気立ってはいるが、それは彼に対してではない。どちらかというと辺りを警戒しているのだ。
そしてその中央に立つ、小柄な全身にマントを頭からすっぽりと被っている、簡易な装飾の入った杖を持つ一匹(おそらくはゴブリンシャーマン)が彼に片言の人間の言葉でこう言ったのだ。
「タ……タスケテ……クレ。コロサレ……ル」