忘れていた記憶
「その子の名前なんて言うんだ?」
康人は思い切って理奈に聞いた。
「なんでそんな「」と聞くの?」
理奈は少し俯きながら答えた。
「あの子はもうそろそろ死んじゃうの……余命3ヶ月よ」
突然の告白に康人は唖然とした。まさかあの10年前の女の子だったらと思うといてもたってもいられなかった。
「じゃあその子に会わせてくれないか」
康人はどうしても確かめたかった。その理奈の友達があの女の子なのか
「…いいわ。じゃあ私についてきなさい」
そういって理奈はスタスタと歩いていった。
ゲーセンから歩いて20分くらいの時、理奈の友達が入院しているという病院についた。エレベーターに乗って四階についた。そして理奈の友達の個室に理奈がノックした。表札に書いてあった名前は
「中野悠佳」
どこかで聞いたような聞いたことのないような名前だった。
「どうぞ」
中から声がした。病室に入ると身体中点滴だらけの女の子がいた。見ていて痛々しい。
「理奈ちゃんいらっしゃい、でその男の子は?彼氏でもできたの?」
「違うわよ!彼氏とかじゃなくてただの友達よ。なんか悠佳に会わせてほしいって」
「へえ、でも私この人知らないよ」
その言葉に康人は少しショックを受けた。もしあの時約束した女の子だったらその子も忘れていることになる。
「はい、今日UFOキャッチャーでとってきたぬいぐるみ!」
理奈は悠佳に康人がとってきたぬいぐるみをあげる。
「わあ、ありがとう嬉しいな。今日はうまくいったみたいね」
理奈は少し困った顔をしたが
「う、うん!今日は一発目でとったよ!」
と嘘をついた。康人はど突いてやろうかこの野郎と思ったが面倒なことになるのでやめた。
「あ~嘘ついたな理奈ちゃん。実はその理奈ちゃんの友達がとったんでしょ」
悠佳は嘘を見抜いたようだ。
「なんで分かったのよ!」
「だって理奈ちゃんは一番の友達だもの」
とそこで悠佳は
「ところで君、名前は?」
「真中康人だけど」
「真中康人…?もしかしたら君と会ってるかもしれない」
その言葉に康人は驚いた。もしかしたらこの子があの時約束した女の子だろうか。そこで康人はあの鉛筆を出した。
「あの、この鉛筆見覚えないかな?」
康人はその鉛筆を差し出すと
「え、その鉛筆私が持ってたものだけどなんで持ってるの?」
その言葉に康人は怒りを覚えた。お互いの事を忘れないために渡してくれた物なのになんで忘れてるんだよ!
「悪い……ちょっと用事思い出した。今日はもう帰るわ」
そういって康人は病室を出て行った。
「え、ちょっと!」
理奈が呼び止めたがもうその病室に康人はいなかった。
康人は病院を出て怒りと涙が出ていた。