灰色の世界で
前編
俺は……俺が嫌いだった。なにも出来ない無力な俺が…… ……
頭の中に響く謎の声が俺を呼んでいる。「俺?俺って誰だ?俺、俺は……」ふと俺は目を開けるとそこには、駅のホームで倒れてしまったらしく、人が呼び掛ける声が聞こえてくる。あのホームで起きたことは夢だったのかと思うと、ホッとした。あんなことが現実ならばおそらく俺は、正気を失っていただろう。俺は、体を起こし、冷静に辺りを見回す。俺はこの時多分顔が真っ青になっていただろう。なぜならそれは、呼び掛けてくれていた人は全員灰色だった。
「うわぁぁぁぁぁ」
と俺は思わず叫び走りだし、駅を飛び出す。ここがどんな世界かも知らずに。だが俺はこの灰色の世界の、風景をどこかで見た記憶があった。そうここは俺が住んでいた、あの色のある世界と地形が全く同じだったのだ。そして俺は不思議と落ち着いていた、駅を飛び出した時はなかった冷静さを取り戻した。俺は、この灰色の世界をどこかで知っている。それは地形が一緒とかそうゆうことではなく。
「ここは俺が住んでいた場所なのか……」
そんな訳もないのに呟いてしまった、意味がわからないことを。だがそんなことをゆっくり考えている暇もなかった。突然頭にノイズが走ったよう日な、そんな感覚が襲いかかる 、俺は頭を抱え路上でうずくまってしまった。そのノイズとともに、頭
に意味がわからない映像と音声がながれこんでくる今。最初は幸せそうな家庭の映像と笑い声だが、続く映像は凄惨で悲鳴、叫び声聞くに耐えない音が頭に響く、そして最後に俺は見てはいけないものを見た。それは俺が今最も愛している人間の死ぬ映像だった……俺は呟いてしまった。
「俺は……無力で……誰も守れない屑だ……」
その言葉が意味するものは全く分からない、だがこの流れてくる映像と音声は、俺のものだ。
後編
今俺は、自宅前にいた、そう灰色の世界の自宅だ。ただ俺の頭に、ノイズが走る。あの残酷な、誰の記憶かもわかならない声と、映像がながれる、いや俺の記憶だ。あれは紛れもない俺の記憶だ。そうこの記憶は、この世界、灰色の世界の、俺の記憶だ。あの初めて、ノイズが入ったときから三時間ほどたっていた。時間は、持っていたスマホで、確認できた。この灰色の世界は俺がいた、色のある世界と、色があるか、ないかの違いだけなのだ。スマホは、ちゃんとLTEも繋がるし、色のある世界で知っていた場所も行ってみた、俺の行っている学校や、電車も乗った。いつも使っている定期券も使えた。だが俺は自宅には、入るのを躊躇していた。そう、本当は、俺がいてはいけない世界なのだ。だがしかし、もう一人の俺というものも、見てみたい気がするものだ。だが怖かった、あの記憶あの最悪の……ノイズがまた走り始めるそして、俺は倒れる。頭を抱え、
「ぐあぁぁぁぁぁぁっっ」
叫ぶ、激痛が走る。これは頭の中をトンカチでなぐられているような、耐えられない激痛、俺は自宅の前で意識が途絶えた。