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9話 「再生!小隊長から副隊長!」

 あれからどうなったのか。キースが目覚めるとそこはカテーナ基地本部診療所であった。

「俺は? どうなったんだ」

「アーデルハイド少佐がキース少尉を担いできました。あなた、足の出血が酷くて気絶してましたのよ」

と看護婦が言った。

そうか。俺は。負けた。

 結局軍は高地から撤退せざるを得なくなり、もとのカテーナ基地に引き返した。結局戦果もないままただいたずらに兵を消費しただけという結果になった。

「なにも戦果なし、か。上層部は総入れ替えだなこりゃ」

 師団長ファウストや、独立念力連隊どくねんのパルコ連隊長はおそらく今度こそ責任をとり左遷または更迭される。

「やってらんねえな」

キースはベットに乱暴に横たわる。反動で体がバウンドし、負傷した右足が痛む。

「やぁ!キース少尉」

と後ろからベットをのぞき込む形で顔が現れた。

「うわ!レンツ!脅かすなよ。足の傷が開く!」

そういって上体を起こす。

「足、大丈夫そう?」

レンツが問いかける。

「大丈夫じゃねえよ。でも切断してないから、しばらくすりゃ元通りさ」

そういうと、レンツは微笑んだ。

「ところで話、聞いた?キース」

「いきなりなんだよ。話?」

いきなりすぎて話についていけないキースは聞き返す。

独立念力連隊どくねんの再構築。」

「聞いてはないが、そんな気はしたね。大隊で残ったのは元第二中隊の第二第三小隊だけだからなぁ。連隊としても半数を失ったんだ。機能しないだろう。で、やっぱりだいぶ変わるのか。」

とキースが言った。

「さぁ。それはいまから始まる幹部会で発表するだろう。僕着任一週間なんだけどなぁ。新しい部隊になるのか」

レンツは言った。

「ここ、かなり古い部隊だぜ。解体ってことはないだろう。」

「どうだろうね。まぁ、後で報告するよ。」







 中央方面軍の総合作戦室で、幹部会が行われることとなった。

「では第六師団、独立念力連隊の合同幹部会を開催いたしますっ!!!」

司会参謀が怒声ともとれる声をあげた。

「中隊でやった幹部会とは規模が違うわね。」

ローゼが軽口をたたく。

するとレンツがローゼを見て言った

「なんか、組織って感じだね」

「どんな感じよ。それ」

そうこうしてるうちに、今回の議題、独立念力連隊どくねんの解体についての説明が始まる。

「では師団長より独立念力連隊の即時解体についてご説明いただきます」

 ファウストが前に出ると、おもむろに語り始めた。

「今回の高地奪回戦及び、高地の夜襲における損害は甚大である。約半数を失った独立念力連隊は今日を持って解体。同時に第六師団遊撃念力支隊、通称遊念隊を編成するものである。支隊長、前へ」

前に出てきたのは、一人の少女、アーデルハイドであった。






 幹部会が終わるとレンツはローゼを連れてキースの元に報告に訪れた。

「キース少尉、君の配属が決まったよ。支隊長管轄部隊だとさ」

レンツはいった。

「なんだそれ。」

キースは怪訝そうな顔で質問する。

「さあ。詳しい説明はされなかったよ」

レンツ達にもあの場では編成名が行われただけで、詳しい存在意義が定義されていなかった。

「お払い箱部隊か。もしくは、雑用部隊よきっと。あのお嬢はなに考えてるかわかんないわ。まぁ、とりあえず組織図を渡しておくわ。」

ローゼは言う。

「おや、あんたはさっきの。えっと、話すのは初めてだな。うーんと見たことはあるんだが......。名前は?」

キースはローゼとは直接に話したことはなかった。今日が初対面である。

「私はローゼ。君と同じ下士官組だよ。この前任官したの。もっとも、君の方が才能があったから、昇任は早いけどね。」

ローゼは言う。

「まぁそれはさておき、みてみなさいよ。」

ローゼは組織命令系統を広げる。

 そこには、支隊隷下(支隊の細かい指揮系統の部隊のこと)7小隊の他に、直属部隊、『支隊長管轄部隊』という名前があった。

「あちゃぁ~。ついにおれもお払い箱かぁ~」

キースがおどけてみせる。

「それにしても雑用がほしいだけ何じゃないの?あのアーデルハイドっていう少佐、だらしないって噂だもの。」

「だらしないかは別として、時間にはルーズだよ」

レンツは言った。

「それにしても連隊長、大隊長をさしおいてこの師団所属の念力部隊の長になるって、絶対身体売ってるぜ。昇進が早すぎる」

とキース。

確かについ一週間前までは、一中隊長が、今や、再編した規模縮小したとはいえ、連隊クラスの部隊を一少佐が取り仕切るとは異例中の異例だ。

「ま、上司の傀儡ってところかしら」

ローゼは言った。

すると背後から凛とした声が聞こえた。

「みなさんよろしい?」





 いきなり高飛車な声が後ろから聞こえてきて、三人は仰天する。

端整な顔立ちからは、特に表情は読みとれず、怒っているのか、笑っているのかわからなかった。

血の気が一気に下がった。

「うお!あ、これは、中、いや、支隊長。」

ローゼは焦って敬礼する。

「いえ、あのこれはその!」

と続けてレンツとキースも敬礼する。

「別に怒んないわよ。陰口なんてなれてるわ。ただ勘違いしてもらって困るのは、遊念隊長管轄部隊は雑用でもなんでもないわよ。ここに来たのは、副隊長としてのあなた達に、細かい任務を教えるため。」

「師団は、一般兵を敵の高能力念力部隊の前に出したら、犬死にすると考えています。今回もそう。師団兵の死者は千名を超えてるわ」

「そして下級念力者達もやはり、犬死にになる。そこで」

「私はこの支隊長管轄部隊は、対上級念力者の部隊にしようと考えた」

ここでローゼは口を挟む。

「あの......レンツ少尉と私、十級と五級なんですけど。たしかに私はギリギリ上級に属します。でも私より強い者は他にもいると思うんですが」

「あなた達は例外よ。ついでにブラームス准尉も」

「ブラームスもいるのですか」

「ローゼ少尉は事務能力にたけているため、純粋に事務的秘書としてほしいだけよ。モリトールだけじゃたりないのよ。ブラームス准尉は情報処理の腕を。そしてレンツ少尉は。まぁ、後で話すわ」


「隊長、なんかあるの?」

ローゼがレンツに問う。

「うーん? まぁ、あるっちゃああるかも」

レンツは曖昧な返事をする。

「ま、そういうことで、遊念隊長管轄部隊の説明終わり。じゃあね!」

「は、はぁ」

キース達は呆気にとられていた。

「て、よく考えたらあたしは結局雑用じゃない?!」

とローゼはいった。

「やっぱあの女支隊長、どさくさに紛れて、事務要員ほしかっただけだったな」

キースが笑いながら言った。

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